【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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360話

 黒い渦に包まれたヨノワールの姿が、ダイマックスをしたまま変わっていく。

 

 真紅のモノアイはボクの目と同じ水色へと変わり、首元に集まっていく闇はボクが着けているマフラーを象るように纏われた。そして身体全体はほんのり黒くなり、お腹の口の両端から水色の焔を零しているその姿。

 

 

「ノワアアアァァァッ!!」

 

 

 姿を変えたと同時に声を上げ、黒い渦を弾きながら姿を現すヨノワール。

 

 その迫力は、キョダイマックスリザードンを前にしても決して劣ることは無かった。

 

(……これが、ダイマックスの景色)

 

 視覚を共有しているボクは、ダイマックスしているヨノワールと同じ目線で相手を見る。

 

 ただでさえヨノワールの方が身長が高いのに、さらに高くなったヨノワールの見る世界はとても見通しがよく、会場の観客全員を見渡せ、よくよく見ればユウリたちの姿も確認できる。ボクは平気だけど、高所恐怖症の人が見たら卒倒しそうだし、なんならボクも視界共有を何回もやっていなかったら、この違和感に酔っていた可能性も高いほどだ。

 

「……いつ見ても圧巻だな」

 

 そんないつもと違う感覚に少しだけフワフワしていると、姿の変わったヨノワールを見上げるダンデさんから感嘆の声が聞こえてきた。

 

 きずなへんげによる姿変化はかなり珍しい。ダンデさんからすれば、テレビ越しや観戦者としてはずっと見ていたけど、こうして対面するのは初めての事だ。

 

 ずっと気になっていた姿とようやく戦える。その事が相当嬉しいのか、握りしめている拳が小さく震えているのが見える。

 

「いよいよだ。いよいよそのヨノワールと戦える……待っていたぞ……!!」

「ボクも……ダンデさんのリザードンと戦えるのを……待っていました!!」

 

 ようやくここまで来た。

 

 泣いても笑っても、最後のバトル。

 

 これで、決着が着く。

 

「ヨノワール!!」

「リザードン!!」

 

 ボクとダンデさんの声が重なると同時に、ヨノワールとリザードンが空中に飛翔。

 

 大きな身体を持ち上げて、ある程度の高さまで上がったところでお互いの視線が絡み合う。

 

「『ダイジェット』!!」

「『ダイロック』!!」

 

 ボクの視界の中で、炎の翼をはためかせたリザードンから放たれるのは横凪の大竜巻。

 

 当たれば自身の素早さを上げながらダメージを与えられる強力な技に対して、こちらは地面から自分の背より高い岩の壁を創造し、両手で思いっきり押し込むことで迎え撃つ。

 

 タイプ相性上は有利ではあるけど、ひこうタイプを含んでいるリザードンは、自身と同じタイプの技を使っているため、ダイジェットの威力は少し上がっている。ポケモン自体の練度も、チャンピオンとしてずっと最前線で戦っているダンデさんの方が上だと考えると、少し分が悪いかもしれない。

 

(いや、こっちはその上で共有化している!!なら、まだ押し勝てる!!)

 

 けど、こっちだってダイマックだけじゃないパワーアップを遂げている。なら勝てない道理は無い。そう思ったら自然と力が湧いてきて、ヨノワールとともにどんどん壁を押し込んでいく。

 

 ダイジェットによって岩が削られる感覚を感じながらも、まだまだ余裕が見られる壁に全幅の信頼を乗せてさらに押し込む。結果、こちらの岩は相手の竜巻を潰したのか、そのまま相手側に大きな音を立てながら倒れることとなった。

 

「よし!!」

 

 まず最初の鍔迫り合いはこちらが取った。

 

 なんなら、いわタイプの技はリザードンに対してとてつもないダメージになる。下手をすればこれだけで決着がつきかねないレベルだし、そうでなくても致命傷は免れない。

 

(なら、速く被弾しているであろうリザードンに追撃を……いや、待って……?)

 

 と、ここまで来て違和感を感じたボクは、すぐさま周りに視線を向ける。

 

(『すなあらし』が起きてない……被弾していない!!なら上!!)

 

 ダイロックが相手に当たった際に起きる追加効果のすなあらしが発生していないということは、こちらの攻撃が当たっていないということ。恐らく、ボクたちの視界がダイロックに覆われている間に、攻撃の打ち合いに勝てないと判断したリザードンが、攻撃範囲から早々に退却したということなのだろう。そして、そんなすぐに攻撃範囲から逃れられる方向がどこなのかと聞かれたら、ボクは上だと即答する。

 

 

「リザアアアァァァッ!!」

 

 

 そんな自分の感性に従って上を見てみれば、今まさに攻撃を避けたばかりのリザードンが、大きな口を広げて吠えながら突っ込んでくる瞬間だった。

 

「ヨノワール!!」

 

 突っ込んでくる相手に対してこちらも負けじと構えを取り、大きな手のひらを持って受け止めに行く。

 

 

「ノ、ワアアアァァァッ!!」

 

 

 ぶつかり合うリザードンとヨノワールは、お互いの手を絡ませて組み合い、さらにお互いの額をぶつけあった状態で全力の押し合いを行う。

 

 上から落ちてくるように突っ込んできたため、勢いで勝るリザードンによって、少しヨノワールの高度は下がったものの、純粋なパワー比べはヨノワールの方が若干上だったため、何とか押し切られることは阻止。そこからはお互い互角の押し比べとなり、フィールド中心で大迫力のぶつかり合いとなる。

 

(お……もい……っ!!)

 

 両腕と額にズシリと掛かってくる重みを前に、思わず声を上げそうになるのをぐっと我慢して、ヨノワールと共に力を込める。

 

(だい、じょうぶ……!!力は……勝ってる……!!)

 

 相手の勢いが1回完全に止まっている以上、こちらの方が力比べでは有利のはず。その証拠に、徐々にだけどリザードンが後ろに押されているのが確認できる。

 

「凄いな……リザードンが力負けするか……!!」

 

 そのことはダンデさんも理解しており、自身が不利になっていることに嬉しそうな声色を零す。けど残念ながら、その声を聞いている余裕のないこちらは、この押し比べを終わらせるためにさらに力を決める。

 

「ど……っせいっ!!」

「ノ……ッワァッ!!」

 

 リザードンの手を掴んだまま、身体を時計回りに180°回転させ、リザードンのバランスを崩した上で思いっきり上にぶん投げる。

 

 

「リザッ!?」

 

 

「落ち着けリザードン!!『ダイロック』だ!!」

 

 いきなり上に投げ出されたリザードンは、急に身体を襲う浮遊感のせいで戸惑い、一瞬無防備な姿を見せた。が、冷静なダンデさんの指示を受けて素早く行動したリザードンは、空中にいるからこそ、自身の目の前に岩の壁を作り出し、そのまま重力に従って落ちて潰してこようとした。

 

「『ダイナックル』!!」

 

 落ちてくる岩石に対してこちらは右拳をオレンジ色に染めながら後ろに引き絞り、十分なパワーを溜めたところで思いっきり前に突き出していく。

 

 またもやタイプ相性で有利を取っているこちらの攻撃は、しっかりと相手の岩を粉々に砕いていく。

 

 しかし、ここで油断はせずにすぐに次の準備を整える。

 

 なぜなら、もしボクがダンデさんなら、この砕かれたあの破片を目隠しにして、本命を叩き込むから。

 

 

「チャンピオンタイムよ!!もっと熱く!!『キョダイゴクエン』!!」

「リザアアアァァァッ!!」

 

 

 そんなボクの予想通り、岩の破片の中から飛び出してきたリザードンは、ただでさえエネルギー過多によって口から漏れていた炎を、さらに強く溢れ出させながらヨノワールに接近。ヨノワールの視界を借りて見ているせいもあって、ボク自身にも襲いかかってくるとてつもない迫力と熱気を前に、しかし一切怯むことなくこちらも技を構える。

 

 

「深く深く、もっと強く!!ヨノワール!!『ダイホロウ』」

「ノワアアアァァァッ!!」

 

 

 迫りくる獄炎に対して、こちらは両手に漆黒のオーラを纏って迎撃準備。

 

 共有化による意識の接続をさらに強くしたうえで行われたこの技は、光すら飲み込むレベルの闇となり、見ているだけで吸い込まれてしまいそうなほどの怪しい魅力を纏っていた。

 

 お互いの準備が整ったところで、リザードンの口から放たれる獄炎と、ヨノワールの両手から繰り出される闇の波動。

 

 周囲全てを明るく照らす太陽と、周囲全ての光を飲み込む夜のぶつかり合いを体現したかのような鍔迫り合いはお互いの中心点で行われ、赤と黒の混じった爆炎がフィールドのほぼすべてを覆っていく。

 

(あっ……つ……ッ!!)

 

 その衝撃はボク自身が受けている物は勿論、ヨノワールが受けている分もフィードバックで感じてしまっているので、想像以上に強い熱と威力によってボクの身体を襲ってくる。

 

 もしかしたら、今までで一番大きなダメージが返ってきているんじゃないかと思う程強烈なそれは、しかしここ一番の大舞台であることが影響してか、不思議と耐えることができ、余裕をもって周囲を観察することが出来た。

 

 とはいうものの、黒と赤の爆炎がひどすぎて、ボクの視界もヨノワールの視界も一切開いておらず、観察したところで何も情報はない。強いて言えば、ヨノワールの視界が徐々に小さくなっており、同時に景色が奥へ流れていっているところから、ダイマックスが解除されながら、この爆発の衝撃によって後ろに飛ばされているということがわかるくらいだろうか。

 

(それはつまり、これからボクの背中に衝撃が来るって事!!)

 

 この勢いで飛ばされているのなら、ヨノワールは間違いなく背中から地面に墜落する。だから、それを予期して全身に力を入れて衝撃に備える。

 

 ヨノワールの方でも、少しでもダメージを抑えるためにいろいろ工夫をしてくれているみたいで、予想通り背中に強い衝撃が襲ってきはしたものの、想像よりかは痛みはなかった。

 

(つつ……ありがとうヨノワール。ヨノワールの方は無事?)

(ノワ……)

 

 自身とヨノワールの調子を確認し終えたボクは、視線を空に向けていく。

 

 その先には徐々に晴れていく爆炎が映っており、数秒とせずに晴れていったその先には、お馴染みの姿で翼を広げて空にたたずむリザードン姿があった。

 

「ノワッ!?」

「あちちっ!!」

「リザッ!?」

 

 お互いの姿を視認できるようになったと同時に、ボクとヨノワールの身体には炎が襲い掛かり、リザードンの身体は薄い青色に光りだす。

 

 どちらもお互いのダイマックス技の追加効果による影響を受けている証であり、ダイマックス同士のぶつかり合いが痛み分けと言う名の引き分けで終わったことを証明している瞬間だった。

 

 ヨノワールの身体はキョダイゴクエンの残り火によって焼かれており、リザードンの身体はダイホロウの追加効果によって防御力が低下している。

 

 スリップダメージのせいで体力の消耗は間違いなくこちらの方が大きい。共有化によるダメージのフィードバックも合わせれば間違いなくこちらが負けている。が、リザードンはリザードンで防御が下がっているので、ここから先今回のように相打ちが連続して起きた場合は、総ダメージは相手の方が大きくなっていく可能性が高い。

 

 リードしたダメージを守り切って逃げ切るのが先か、はたまた、ここから大ダメージを与えてひっくり返すのか。

 

(どっちみち、ボクから仕掛けなきゃ勝てないバトル!!)

 

 お互い大将のポケモン同士による最終ラウンド。インテレオンたちが残した氷のフィールドも、先の一撃で全て溶けるないし、砕けてしまったため、周りはもういつも通りのフィールドに戻っている。

 

「リザードン!!『エアスラッシュ』!!」

「ヨノワール!!『いわなだれ』!!」

 

 障害物もギミックもない純粋な殴り合い。そんな状況で始まったお互いの攻撃の初手は、リザードンは空気の刃でヨノワールは岩の弾幕。

 

 打ち下ろされる空気と打ちあがる岩石はお互いの中心でぶつかり合い、これによって空気は霧散し、岩石は勢いを失ってヨノワールの周囲に落ちていく。

 

「っ!!リザードン!!『だいもんじ』!!岩石を焼き尽くせ!!」

(気づくの速すぎ!!)

 

 この状況を見てこちらの狙いを瞬時に理解したダンデさんは、だいもんじによる岩の溶解を狙って、空から強力な熱を内包しただいもんじを発射。その火力はすさまじく、本来なら相性有利であるはずの岩をちゃんとその狙い通り溶かせる威力を備えていた。

 

「『ポルターガイスト』!!」

 

 どうせ溶かされてしまうのであれば、さっさと使ってしまった方が得だ。そう判断したボクたちは、周りに落ちてきた岩石にすぐさま霊の力を浸透させて再び空中へ発射。

 

 ダイマックスの時に行われた、ゴクエンとホロウのぶつかり合いと同じような爆発が再び巻き起こる。が、先ほどと比べればやっぱり規模はちょっと小さめなので、ヨノワールと、恐らく空を飛ぶリザードンも、今回のこの爆発には巻き込まれていない。

 

(行くよ!!)

(ノワッ!!)

「リザードン!!『エアスラッシュ』で煙を飛ばせ!!」

 

 この煙を見てボクたちはすぐに煙に紛れ込む判断をし、ダンデさんは煙を晴らす判断を下す。

 

 この時点でボクとダンデさんの読み合いは一旦ボクたちの負けではある。が、別にここで読み負けたとしてもダメージを受けるわけではないし、現状だと相手はまだボクたちが煙の中にいるかどうかは分かっていない。

 

(全集中で見ていくよ!!)

(ノワッ!!)

 

 煙に潜り込むと同時に襲い掛かって来る風の刃の乱舞。とはいえ、これはあくまでも煙を弾くための物なので、そこまで威力も速度もない。そのため、煙で視界が狭いうえでも、ボクとヨノワールが一緒に視界の処理を行うことで何とか回避が間に合う状態となっていた。

 

「ノワッ!!」

「リザッ!?」

「『エアスラッシュ』の中を無理矢理突っ込んで来たのか!?」

「『かわらわり』!!」

 

 結果、煙はリザードンによってすぐに晴らされるが、煙が消えると同時にヨノワールはリザードンの目前まで移動。その状態から右腕を振り上げ、真っ白に染めながら振り下ろす。

 

「尻尾で受け止めろ!!」

「リザッ!!」

 

 これに対してリザードンは、自身の身体の右側から尻尾を回して、かわらわりに対して垂直になるように伸ばして防御。

 

「弾いて『ドラゴンクロー』!!」

 

 更に、尻尾に宿る焔を燃やし、力を込めてヨノワールの腕を無理矢理弾いて、同時に両手の爪を緑色に輝かせながら反撃の準備を整えてきた。

 

「こっちも負けずに行くよ!!」

 

 弾かれたヨノワールは左手も真っ白に染めながら、反撃のために突っ込んで来たリザードンと対峙。

 

 右腕を右上から左下に振りぬいてきたリザードンの爪に対して、ヨノワールは左手の手刀をその手首に当て阻止。そこから返しとして、右手刀を下から真上に顎を狙って振り上げた。

 

「足を使え!!」

 

 この反撃に対してリザードンは右足を突きだして無理やり止め、左爪を水平に薙いできた。

 

「口で止めるよ!!」

 

 既に両腕を攻撃に使ったヨノワールは手を使えない。が、水平に攻撃してきたリザードンの腕に向かって、お腹の口で噛みつくことで無理やり停止。

 

「そのまま地面に投げつけ━━」

「『エアスラッシュ』!!」

 

 その状態から身体を回転させて、地面に向かって投げつけようとしたところでリザードンが翼を激しく羽ばたかせ、態勢を無理矢理操作。これによってバランスを崩したヨノワールは、地面に向かってリザードンを投げれはしたものの、そこに力は全然入っておらず、そのせいか地面に墜落する前に何とか態勢を整えた。

 

「『いわなだれ』!!」

「『だいもんじ』!!」

 

 あまりダメージが入っていないものの、隙が出来たのは間違いないので、このうちに追撃とポルターガイストの弾を作るためにいわなだれを発射。空中からリザードンに向けて次々と岩の雨を降らしていくが、これだけは絶対に許さないという鉄の意志の下、リザードンから再びだいもんじが発射。さっきに比べて岩が溶ける速度は遅いものの、こちらの岩を確実に消すつもりのようだ。

 

「ヨノワール!!」

 

 このままではポルターガイストの弾としては使えない。けど、溶ける速度が遅いのなら別の使い方が出来る。それを思いついたボクは、ヨノワールに突っ込むことを指示。だいもんじによって勢いが失われているいわなだれに向かって飛び出したヨノワールは、そのまま右腕を白く染めながらいわなだれの下まで到達した。

 

「『かわらわり』!!」

「ノワッ!!」

 

 岩まで到達したところで行ったのは、右腕によるかわらわり。

 

 燃えている岩を殴るのはこちらにもダメージが少し返って来るので出来ればしたくない技ではあるものの、しかしそれ以上に、未だに形を保っている岩がかわらわりによって弾かれたことにより、リザードンに向かってとてつもない速さで打ち出される方がでかい。

 

「リザードン!!『ドラゴンクロー』だ!!」

「リザ……ッ!?」

 

 高速で打ち出される燃える岩は、サイズが小さくなっているとはいえいわタイプの技だ。これを受けてしまえば少なくないダメージを受けてしまうリザードンは、慌てて緑色の爪を光らせて迎撃を開始。が、態勢を整えてすぐにだいもんじを撃っていたこともあってか、そのドラゴンクローにはいまいちキレがなく、完全に岩を弾き切れておらずに被弾。ダメージを受けたリザードンは、そのまま不時着はしなかったとはいえ地面に着地する。

 

「『いわなだれ』連打!!」

「くっ、『ドラゴンクロー』!!」

 

 地面に落ちたところで改めて岩の雨を発射。今度こそだいもんじに消されないタイミングで発射された岩の雨を前に、ダンデさんも渋々と言った顔でドラゴンクローを構え、岩を弾いて行く。

 

 これで弾丸は出来た。

 

「『ポルターガイス━━』」

「ならこうするまでだ!!地面に『だいもんじ』!!」

「リザァッ!!」

 

 早速ポルターガイストで攻めようとした瞬間、ダンデさんが取った指示は地面に向かってだいもんじを放つこと。

 

 リザードンの口から放たれた業火は、地面に着弾すると同時に広がっていき、リザードン周辺の地面を灼熱地獄に変えていく。

 

「ノワッ!?」

「……無茶苦茶すぎる」

 

 これによって何が起きたかと言うと、地面と、その地面と設置している部分の岩の溶解。だけど、これだけ言われたらこれのどこがまずいのかがよく分からないだろう。

 

 問題なのは、これによって地面と岩の境目が無くなり、くっついてしまったという事。

 

 ポルターガイストと言う技は、対象物をゴーストエネルギーで包み込む必要があるのだけど、いわとじめんがくっついて1つの物となってしまったら、このエネルギーで包むことができない。

 

 ダンデさんは、ポルターガイストの対策を、岩と地面を一体化させることで防いだというわけだ。

 

(これじゃあ『ポルターガイスト』は出来ないし、岩を『かわらわり』で砕いたり、『じしん』で地面にアプローチを掛けようとしても、対象物が灼熱化している以上簡単に手も出せない……!!)

 

 さっきはだいもんじが放たれてすぐの岩だったからまだ耐えられたけど、今はもう地面も岩も真っ赤に変色するほど熱を伴ってしまっている。未だにキョダイゴクエンのダメージを受けてしまっている現状で、これ以上熱を触って自傷するのは勘弁願いたい。

 

「『エアスラッシュ』!!」

「『いわなだれ』!!」

 

 此方が攻め手を失っているところで、今度はダンデさんが攻勢に出る。

 

 地面に足をつけたまま翼を羽ばたかせ、風の刃を乱舞。これに対してこちらは岩の雨を降らせて、タイプ相性でゴリ押ししていく。

 

 2つの技はいわなだれの方に軍配が上がり、風の刃を押し切ってリザードンの方へ飛んでいく。

 

「『だいもんじ』!!」

 

 が、当然そんなことを理解しているダンデさんは、すぐさまこの岩を溶解させ、地面に接着━━

 

「そのまま尻尾で打ち返せ!!」

「リザッ!!」

 

 かと思ったら、堕ちてくる岩の1つを尻尾で打ち返し、こちらの方に飛ばしてきた。

 

「ッ!!」

 

 急な反撃に戸惑ったこちらは、身体を右に動かすことで何とか回避。

 

(急な攻撃でびっくりしたけど、これは逆にチャンス!!)

 

 回避された岩は空中に浮かんでいる。これならポルターガイストでキャッチできる。そう思い、振り返ってオーラを飛ばし、今しがた飛ばされた岩を支配下に置いた。

 

「『ドラゴンクロー』!!」

「ッ!?」

 

 けど、この振り返って岩を支配下にする一瞬の隙をダンデさんは狙っていたみたいで、ポルターガイストの準備ができ、改めてリザードンの方に視線を向ければ、いつの間にか目の前にリザードンが接近していた。

 

(ここからだと間に合わない!!)

 

「リザッ!!」

「ノワッ!!」

 

 爪の振り下ろしを前に、こちらが出来たのは、腕をクロスして防御態勢をとるだけ。この攻撃のせいで、ポルターガイストの意地もできないので経った今捕まえた岩石も諦めるしかない。

 

 上から叩きとおされたヨノワールは、そのまま地面に向かって真っ逆さま。けど、灼熱化した地面に墜落するわけにはいかないこちらは、必死に踏ん張って空中で制御。

 

(っぶない!!)

 

 ギリギリのところで耐えたこちらは、すぐさま身体の向きをリザードンへ。するとそこには、獰猛な表情を浮かべたまま、緑の爪を光らせてこちらに突っ込んでくるリザードンの姿。

 

「『かわらわり』で迎撃……行くよ!!」

「ノワッ!!」

 

 対するこちらは、両腕を光らせながら爪に対して迎撃。

 

 ぶつかり合うと同時に周囲に衝撃と爆音を鳴らし、数秒の鍔迫り合いを見せた後に一旦弾かれて距離を取る。

 

「リザッ!!」

「ノワッ!!」

 

 かと思った瞬間には、お互いの距離は再びゼロへ。

 

「押し負けるな!!」

「負けないで!!」

 

 そこから始まるのは目にもとまらぬ両者の乱舞。

 

 空中に何回もひらめく緑と白の輝きは、ぶつかり合うたびに派手に音を奏でながら衝撃と火花を散らす。

 

 その姿はまるで、2人を中心と巻き起こる花火。

 

 瞬きをしている間に衝撃音が5つ以上聞こえているのが、2人の攻撃の苛烈さを物語っていた。

 

 そんな、誰も割り込めない怒涛の殴り合いがずっと続いて行く。

 

 その度にボクの両手が痺れ、ゴクエンによって皮膚が焼かれ、徐々に限界を感じる。

 

(……きついな)

 

 時間にして2分ほどだろうか。

 

 息つく暇もない殴り合いの末、ヨノワールの右手の振り下ろしと、リザードンの右爪の薙ぎ払いのぶつかり合いを最後に、思いっきり後ろに弾かれる両者を見ながら、ボクは頭の中を悩みで渦巻かせる。

 

 ゴクエンによるスリップダメージはもう収まってくれている。あれはやけどと違って時間制限のあるダメージだからだ。とはいえ、体力が削られていることに変わりはない。逆転にするにはやはりポルターガイストのような高火力技が必要なんだ。けど……

 

(その『ポルターガイスト』も丁寧に防がれている……)

 

 此方の攻撃はしっかり抑えられ、あちらは攻撃を続けている。

 

 本当に戦い方が上手い。

 

(逆転の芽が……ない……)

 

「ノワ……」

「リザ……」

 

 距離を取った2人は両者肩で息をしているが、ダメージは明らかにこちらの方が多い。

 

(やっぱり逆転には絶対に『ポルターガイスト』が必要だ。でもどうやって……?)

 

 一番通したい技を通すためのピースがどうしても足りない。そのことを悩んでいる時、ふと頭の中にあることが思い浮かぶ。

 

(いや、もしかしたらこれなら……)

 

 それはとても荒唐無稽で、出来るかどうかもわからない手。

 

(ヨノワール……)

 

 それに失敗したら、間違いなく負ける。

 

(ノワッ!!)

 

 けど、そんな場面なんて今日だけで何回も乗り越えてきた。

 

(うん……やろう!!)

 

 だから、この判断に従うのに何のためらいもない。

 

「いくよヨノワール!!最後の賭けだ!!」

「ノワッ!!」

「来るか……来い!!フリア君!!」

「リザッ!!」

 

 ボクの呼びかけと共に、ヨノワールの周りに黒いオーラが集まり、ダンデさんの言葉と共に、リザードンの周りが灼熱と化して熱が集まる。

 

 お互いが、何となく察し始める。

 

 長いようで短かったバトルに、いよいよ終止符が打たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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