「よしよし……ははは、いいこだね~」
長閑で朗らかで、ついつい眠ってしまいたくなるような暖かなお日様が照らす、綺麗な晴天の空。
空に浮かぶ雲1つ1つが、自由な形を成しながら浮かぶその様はどこまでも平和で、これを眺めているだけでも充分時間をつぶせるだろう。最も、先も言った通り、長閑すぎてそのうち昼寝してしまう事間違いなしだけど……
そんなとてものんびりとした空間が広がっているここは、シュートシティの東側に広がる公園の一角。
目だった遊具こそないものの、自然公園としての一面が大きいのか、緑溢れるこの公園には木や生け垣がずらっと並んでおり、等間隔でおかれたベンチでまったりと休憩しながら、この自然の中に身を置くことができるようになっている。花見シーズンになれば、さぞ綺麗な景色を見ながらお花見を楽しむことができるだろう絶景スポットだ。
また、公園の中心にはバトルが出来るようにバトルコートも作られており、そのバトルコートも基本は芝生でできていて、四隅を表す線と、センターサークルに使われているライン以外はすべて緑となっている。そういうこともあってか、基本的に発展力のすさまじいガラル地方の都市の中では、珍しく……と言ったら失礼かもしれないけど、気持ち空気の美味しい所となっている。
今もそのバトルコートでは、小さな子供たちが親のポケモンらしいものを借りて楽しそうにポケモンバトルをしており、中心ではココガラとホシガリスがぶつかり合っていた。
その様子を少し離れたところで、ベンチに座りながら何となく眺めていたボクは、いつの間にか周りに集まってきていた野生のココガラたちを撫でながらとある人を待っていた。
現在時刻は9時50分。
集合時間は10時の予定なので、まだまだ余裕があるということで見た目通りまったりとした待ち時間を過ごしているボクは、しかしその実、少しだけ緊張してしまっていた。
「……距離が近すぎるっていうのも問題なんだねぇ」
「お、お待たせ!!」
その緊張に対して、少しだけ苦笑いを浮かべていると、横から待ち人の声が聞こえた。
この声に反応して、ボクの周りにいたココガラたちが一斉に散っていったのを確認したボクは、待ち人の方へ視線を向ける。
「ううん、全然待ってないよ。今来たばかり」
そちらに向かって、おおよそ大体の人が口にするであろう言葉で迎え入れるボクは、ここに到達した人と目を合わせ、挨拶を交わす。
「おはようユウリ」
「お、おはよう!フリア!!」
その相手はユウリ。
ガラル地方のジムチャレンジと言う一大イベントを、一番長く一緒に過ごした大切な仲間。
今日はそんなユウリと、ガラル地方を離れる前に過ごす、最後の思い出作りの日となっていた。
☆
「「……」」
集合時間よりもちょっと早めに集合したボクたちは、挨拶もそこそこに、2人でのんびりとシュートシティを散歩していた。けど、その間の空気はどこかぎこちなく、少しだけ距離が空いているような気がする。
別に仲が悪くなったというわけではなく、単純に、こうして改めて2人で集合して遊ぶというのが全くなかったボクたちは、いつもと少し違う空気に少しだけどぎまぎしていた。
そのせいで言葉はあまり続かず、特にユウリからはどうすればいいだろうという焦りが少し感じ取れた。
このままでは思い出作りどころではない。
(こういう時は服とかを褒める方がいいんだろうけど……服装もいつもと変わらないし、多分メイクとかもしてなさそう。髪型も変化ないし……う~ん、話の種……どうしようかな……あ!!)
この状況を打破するにはどうすればいいのか、それを考えながら視線を巡らせていくと、とある場所に目が留まった。
「ユウリ、今日って朝ごはん食べてきた?」
「え?えっと……実は、今日は食べてきてないんだよね……ちょっと、そういう気分じゃないというか、いろいろ慌ててそれどころじゃなかったというか……」
「そっか……じゃあ、あそこいこっか?」
「あそこ?……あ」
その先を指差してみれば、ユウリの表情がパッと明るくなる。
その場所はバトルカフェ。
スイーツを楽しみながらバトルもでき、バトルに勝利すれば追加でお菓子をもらえる。トレーナーであり、食べることが大好きなユウリにとっては夢のような場所であり、そしてボクが、ジムチャレンジの開会式を終えて一番最初に寄ったお店でもある、ある意味思い出の詰まっている場所だった。
☆
「エースバーン!!『かえんボール』!!」
「インテレオン!!『ねらいうち』!!」
「バスッ!!」
「レオッ!!」
「ペペッ!?」
「マホッ!?」
バトルカフェのバトルコートにて、エースバーンとインテレオンの技によって吹き飛ばされるペロリームとマホイップ。
攻撃を受けた彼女たちは、そのまま地面に倒れて目を回すこととなる。
「ペロリーム、マホイップ、戦闘不能!!勝者、エースバーンとインテレオン!!」
「よし」
「やった!!」
勝負の決着がつき、審判役の店員さんが宣言をすることによってバトルは無事終了。特に問題なく勝てたことに小さくガッツポーズをとるボクと、少し跳ねながら喜びを表すユウリ。
若干ユウリの感情表現が過剰な気もするけど、ユウリの好みを考えればすぐに納得がいくので、その様子を見て少しだけほっこりする。
「いやぁ、流石ガラルリーグの優勝者と準優勝者!!そんな2人とこうやって手合わせ出来て本当にうれしいですよ!!」
「ありがとうございます」
「こちらこそ、楽しくバトルできてよかったです」
バトルの決着がついて、ペロリームとマホイップを手持ちに戻した店員さんは、嬉しそうな声をあげながら近づいてきて手を伸ばしてきた。それに応えながらボクとユウリは握手を返し、エースバーンとインテレオンを戻していく。
気付けば周りにはそこそこのオーディエンスがいて、みんなから拍手の雨が落とされる。
勿論、バトルスタジアムで貰ったのと比べれば全然大きくはないけど、お店の中と言うかなり狭い空間で、しかもゲリラ的に行われたものと考えればむしろ多い方だろう。目立つことを得意としていないボクとユウリにとっては、これくらいで充分だ。
「お2人の試合、とても楽しく、そして熱く見させてもらいました。よろしければお2人のサインをいただきたいのですが……勿論、その分お菓子もサービスしますので!!」
「お菓子の……サービス……!!」
「はい、大丈夫ですよ。この色紙に書けばいいですか?」
「はい!!お願いします!!」
店員さんからのお願いに対して快く引き受けたボクたちは、さらさらっとサインを書いて店員さんに渡し、お店の隅っこにある2人用の席に着席した。
ここまでくればプライベートの空間と言うのをわかってくれているみたいで、他のお客さんは声を掛けたりすることもなく、たまーにちらちらと視線を向けてはくるものの、邪魔はしないようにと言うのを心がけてはいるみたいで、干渉してくることはない。席も、少し離れた位置をキープしてくれており、ボクたちのすぐ近くにはあまり人は見受けられなかった。
お客さんがまだ少ない時間帯であったことと、ここのカフェの人のマナーが良いことが幸いしたおかげで、かなり過ごしやすい空間になっている。
「んん~……おいひぃ~……!!」
「……ふふ」
もっとも、目の前のユウリは、既にお菓子にくびったけとなっており、周りのことなんて一切気にしている様子はなかったけど。
さっきまでガッチガチになっていたのが、バトルしたことによる気分転換と、美味しいものを食べたことによる幸福度によって、嘘みたいにリラックスした状態となっており、その姿は見ているだけでこちらも笑顔になってしまう程。事実、その顔を真正面から見ることとなっているボクは、ついつい頬を緩めてしまっていた。
「……!!も、もう!!フリアも速く食べたほうがいいよ!!」
「うん、わかってるよ」
そんなボクの視線に気づいたユウリは、顔を見られるのが恥ずかしかったのか、少し声を強くしながらボクに抗議。速くケーキを食べさせようと、ボクの方に一皿押し付け、頬を赤く染めながらそっぽを向いてしまう。
さすがにこれ以上眺め続けるのは失礼と思い、受け取ったお皿に乗ったチョコレートケーキにフォークを入れてひと口。バトルでほんのりつかれた身体にチョコの甘さが染みわたり、相変わらずのおいしさに別に意味で頬が緩んだ。
「うん、凄く美味しい……」
「だよねだよね!!」
ボクの呟くような感想をしっかり聞いたユウリは、まるで自分のことのように嬉しそうに答える。
それを見たボクは、安心して言葉を返した。
「緊張は解れた?」
「……やっぱり、私を気遣ってのチョイスだよね?おかげで少し落ち着けたかも。ありがと」
「ううん、気にしないで。それに、ユウリと2人きりでここに来るのって、ちょっと最初を思い出していいなぁって思ったからさ」
「最初……」
そう、バトルカフェは、ボクとユウリが開会式終わりに出会ったその日に立ち寄った場所だ。
のんびりガラル地方を回ることを決め、バトルカフェに行った後にポケモンセンターに戻った時にユウリと再会。そこでボクからバトルカフェの話を聞いたユウリが『パフェを食べたい』と言ったところから、ボクたち2人でのジムチャレンジの旅は始まった。そういう意味では、ここはある意味冒険の始まりとも言うべき場所だ。
ま、ここはあくまでもその店のチェーン店の1つだけど。
「懐かしいよね。あの時はお互いまだ出会ったばかりってこともあって、こんなに仲良くなかったし、ユウリも少し遠慮気味だったし」
「それって、今は無遠慮になってるって事?」
「距離が近くなったってことだよ」
ボクの言葉に対してジト目で反論してきたので、少し苦笑いしながら返答するボクは、そのまま言葉を続けていく。
「ユウリ、あの時『一緒に行こう』って誘ってくれてありがとう」
「え?」
まさか感謝されるとは思っていなかったらしく、ボクの言葉に驚いたユウリの動きが少し固まる。けど、ボクの声を聴いてくれていることは分かっているので、特に気にすることなくボクは言葉を続ける。
「知り合いのいないこの地で、ボクは1人で旅する気だったんだけどさ、このガラル地方の旅が凄く楽しかったのは、あの時ユウリが誘ってくれたおかげだよ」
あの日、あの場所で、彼女が誘ってくれなければ、ボクはエンジンシティを出発するのが遅れており、そうなればターフタウンでホップやマリィと出会うことがなく、預かり屋での出来事や、ビートに関するあれこれに出会うこともなかっただろう。
ボクにとって、このガラル地方での旅のターニングポイントの1つなのは間違いない。彼女があの時誘ってくれたからこそ、ボクはこのガラル地方で沢山の縁を結ぶことが出来た。
この縁がなければ、出会えなかったポケモンたちもいる。モスノウやマホミル、イーブイがそこに当たる。そう考えると、本当にあの時誘ってもらえてよかった。
「ユウリのおかげで、本当に楽しくて、最高の冒険が出来たよ。ありがとう」
「うん……」
ボクの心からのお礼。それを受け取ったユウリは、しかしあまりうれしくなさそうな表情を浮かべて返事をする。
それはたぶん、ボクの言葉が、別れの言葉に聞こえたから。
「やっぱり……帰っちゃうんだよね……」
「まあね……こればっかりは、どうしようもないかな……」
ボクはガラル地方の人間じゃないし、夢を果たせるのは現状シンオウ地方だけだ。そのためにも、必ずこの場所を離れる必要がある。
その日付も、もう大体のところは相談して決めた。
もう別れの日まではカウントダウンが始まっている。
「やっぱりそうだよね~……」
この話を聞いて、ユウリは悲しそうな声をあげながら机に突っ伏す。
うぬぼれじゃなければ、彼女にとっても、ボクと過ごしたこの生活はとても充実したものと受け取ってくれたという事だろう。
そう考えると、胸に仄かに暖かいものが宿るのを感じる。
「別れたくないなぁ……」
「ボクも同じ気持ちだよ」
ユウリの口からボソッと零れる言葉に、こちらも小さく言葉を零しながら賛同する。
本当に、離れるのが惜しい。
「それでも、フリアは帰らなくちゃだもんね」
「うん……大事な約束があるからね……」
ボクが旅をする前から交わしていた、ボクの原点とでもいうべき一番の目標。
みんなで切磋琢磨し、トップに上り詰めて、最高のライバルで居続けようという、幼いころからの目標。
いつしかコウキだけが先に走ってしまい、ボクたちが引き離されてしまった、そんな夢。
その夢の一歩を踏み出せる瞬間が、今目の前まで来ている。
こればかりは譲れない。
「ずっとずっと追いかけていた目標なんだ。そこにようやくたどり着けるのなら……何においても優先させたい……」
「……そっか」
ボクの言葉を聞いたユウリは、改めて頷き、けど少しだけ寂しそうな顔を浮かべて言葉を続ける。
「いいなぁ……すべてをなげうってでもかなえたい目標……」
「ユウリにはそういう目標ないの?」
「目標自体はある……よ?」
「どうしてそんなに自信なさげ……?」
そんなユウリがぼやきながら言葉を発していたので、自分の方から質問を投げてみると、随分と自信がなさげなユウリの返答が返ってきた。
ユウリの実力ならもっと堂々としてもいいものなのに、やけに不安そうなその姿が気になって更に質問を投げかける。すると、ユウリが更に自信なさげに言葉を返してくる。
「フリアの目標が大きくってさ……しかも、凄い決意の下その約束に向かって駆け寄ってるでしょ?それをこうやって目の前でみちゃうと……なんだか私の目標ってあまり大きくなくて、凄く自分勝手な気がしちゃって……」
自信を失っている理由は、自分の目標と他者の目標……今回で言うところの、ボクの目標との差の大きさを見て、少し奥手になってしまっているらしい。
「……それに、なんだか私の目標が、フリアの邪魔をするんじゃないかなって……」
「ボクの邪魔?」
「あ、えっと……何でもないよ?」
「うん……?」
そこからさらに続いた言葉の内容が気になったので、そこに対して追加で聞き返してみるけど、今度ははぐらかされてしまったので追及をやめようとし……そこであることを思い出す。
「あ、そういえばユウリってリーグ戦の前にさ、ボクに話があるって言ってたよね?」
「え゛っ!?」
「凄い声が聞こえたけど……大丈夫?」
「ダイジョウブダヨ!!」
「なんで片言!?」
あの日の夜に2人で話した内容を思い出してそれを伝えてみると、明らかに動揺した姿を見せるユウリ。どう見たって大丈夫ではないその様子を前に、ボクは自分なりに言葉を並べてみる。
「別に比べる必要はないと思うけどなぁ……」
「え?」
ボクの言葉に呆気にとられたユウリは、口をぽかんと開けて固まった。それでも言葉は聞いてくれていると信じて、ボクは言葉を続けていく。
「目標なんて言ってしまえばその人の自己満足でしょ?自分だけの大切な目標で、大切な夢。それは誰かと比べるものじゃないし、その人が大切にするべき尊いものだよ。たとえどんな小さなものでもさ」
「……それが、もしかしたらフリアにとって迷惑になるかもしれなくても?」
「それこそ今更じゃない?別にユウリからされた今までのことが迷惑だって思ったことはないけどさ、もうボクたちの間にそんな遠慮なんていらないでしょ?」
「それはそうだけど……」
ボクの発言を聞いても、それでも不安そうな表情が晴れないユウリ。
もしかしたら、そんなにも重い内容なのだろうか。
(そうやって悩んでいるユウリを見るのは……嫌だな……)
頭の中で想像するだけで、胸がキュッと締め付けられるような感覚に襲われる。と同時に、この感覚に少し違和感を覚える。
(コウキたちが悩んでいるのも嫌だったけど、ここまで思うことはなかった……なんでユウリにだけこんなに感じるんだろう……)
いつも以上に感じる嫌な感覚に、自分で少し戸惑う。
一体、なぜこんな気持ちになっているのか。その答えがのどまで出かかっているような気がするけど、今はユウリの悩みを解決するのが先と決め、言葉を続ける。
「どんな迷惑でも、ボクになら掛けて大丈夫だよ?だから、遠慮せずに言って?」
ユウリの目を真っすぐ見て伝えるボクの想い。
この想いは悩むユウリに通ってくれたのか、ユウリは少し顔をあげながらこちらに視線を向けるようになった。
その表情は、少しだけ赤みがかっているような気がして……
(あ、あれ……?思っていたのと……ちょっと違う……?それに……なんで……)
悩むというよりは恥ずかしがっている空気を強く感じ始めると同時に、頬を染めながら、少し上目遣いでこちらを見て来るユウリの表情に、さっきとは別の意味で胸を締め付けられる。
「ありがとうフリア。フリアは本当に優しいねそう言ってもらえるのは凄く嬉しい」
「う、うん……」
徐々に大きくなるその感情に戸惑っているうちに、ユウリからどんどん言葉を紡がれる。
その言葉に反応をしようにも、自分の身体の調子のおかしさに少し思考を取られたせいで、そこへの返事がおぼつかない。
肝心のユウリも、ボクの変化に気づいていないみたいで、ユウリの言葉はボクの知らないうちにどんどん進んでいく。
「けど、その優しさに甘え続けるのもどうかなって……そう考えると、言いたくても中々言えなくて……」
「でも、ユウリの言う隣に並び立てるっていうのは、十分達成している気がしたけど……」
「うん、それは私も自負してる。少なくとも、『今の私は』フリアの横に立てていると思う。でも……」
それでも何とかユウリの言葉を咀嚼したボクは、記憶を頼りにユウリの言っていた条件を提示。けど、そのうえでユウリは否定してくる。
その頃にはすでに頬のあかみも消えており、落ち着いた姿で言葉を返してきた。
「シンオウ地方で、また一歩先に進むでしょ?」
「……」
ボクのことをよく知っているからこそ、これからボクの行く場所を知っているからこそ、今隣にいるだけでは足りない。そう思っているらしいユウリの考えが見えた。
ユウリの言う通り、ボクはすぐにでも先に足を進めたい。
ユウリに隣にいて欲しいという気持ちはあるけど、それはボクの足を止める理由にはならない。このせいでユウリの言葉が続かないのであれば、ボクからは何を言っても響かない可能性が高いだろう。
「それでも……聞きたいなぁ……」
「……」
小さくぼそっと呟かれたボクの言葉は、ユウリにしっかりと届いていたのか、かみしめるように俯いて考えこんだ。
「……もう少しだけ待ってくれる?t……もう一度、自分の中でしっかり考えてみる」
「……そっか」
ユウリの悩みを聞くか否か。
本音を言えば凄く聞きたいけど、無理や聞き出すのは、それはそれで違うから。
(どうするのが……いいんだろう……)
ユウリへの気持ち。
ユウリの悩みへの解答。
自分の心の動き。
ここに来て、次々とボクの心にいろんなものが突き刺さって来る。
「とりあえず、お菓子も食べ終えたし、そろそろ他の所もいこっか」
いろんな悩みに頭を動かしているところに、ケーキを食べ終えたユウリが立ち上がりながらそんなことを言ってきたので、ボクも小さく頷きながら席を立ち、店を後にする。
そこからは、2人でブティックを回ったり、遊園地の方へ足を運んだりして、のんびりとした時間を過ごしていった。しかし、ヒカリに言われて設けられたこの時間。きっとなつかしさに浸れる穏やかな時間になると思っていたのだけど、その予想と反して少しもやもやしたまま過ぎていくこととなる。
勿論楽しくなかったわけじゃない。むしろ、ガラル地方の最後の思い出残しとしては、かなり良かった方だろう。けど……
(結局最後まで、ユウリの悩みの答えは出なかったなぁ……)
ユウリの決意が固まることはなった。
それに、まだボクの心の答えも出ていない。
(これは……あとでヒカリに怒られそうだなぁ……)
来そうな未来を想像して、ボクの心は微妙な色をしたまま、残りのガラル生活を過ごしていった。