時が止まる。
呼吸が止まる。
思考が止まる。
突如押し付けられた、暖かく、柔らかく、そして潤いを感じるその物体。
ボクの唇に確かに押し付けられたそれに気づくのに、かなりの時間を使った。
1分?1秒?それとも10分?はたまた1時間?
そんな時間経っているはずないのに、思わずそれくらい経っているのでは?と錯覚させてしまう程の衝撃を受けてしまったボクは、ユウリがボクから離れ、真っ赤な顔と、恥ずかしさから潤んだ瞳をこちらに向け、しかしそれでも決して逸らされない視線を持って、ようやく自覚する。
「……っ!?」
自覚してしまえば、反応は一瞬。
何をされたのか全てを理解した瞬間、ボクの顔は自覚できるレベルで真っ赤になり、頭がパニックになる。
助けを求めようと視線だけをユウリの奥に向ければ、驚いた顔をして固まるホップとビート、そして、同じく顔を真っ赤にし、両手で顔を覆いながらも、指の隙間からしっかりと目を覗かせてこちらを見つめるマリィの姿。
どうやら、彼女たちもユウリの行動に驚いているらしく、この時点で助けになんてならないことがわかった。
「フリア!!」
「は、はい!!」
そんな絶賛頭パニック中のボクの頭の中に響く、ユウリの声。
その声に思わず上擦った声で返事をしたボクは、改めてユウリと顔を合わせて、視線を繋げる。
「私は、あなたが好き!!」
同時に叩きつけられる、最大限の好意。
まっすぐストレートにぶつけられたその言葉はボクの心に突き刺さり、心臓の音を1段階加速させる。
「そばにいたい、一緒にいたい、離れたくない!!」
そして追加で落とされるその言葉は、ボクの胸にさらなる痛みを与えてくる。
「でも、フリアの約束も夢も、全部わかってる。今は追いつけていても、また離されるのもわかってる」
心臓の音がうるさい。胸が痛い。呼吸が苦しい。
「だから……これは宣言!!」
けど……
「フリアがシンオウチャンピオンになるのと同じように、私もガラルチャンピオンになってみせるから!!だから!!」
この痛みが、この煩い音が、とてつもなく心地いい。
(ああ……そういうことだったんだ)
同時に、やっと理解する。
とても簡単な答えを。
「その時は、私と付き合ってください!!」
ボクが答えに気づくと同時に、ユウリから伝えられる最後の想い。
その想いを、覚悟を、信念を。
全てを受けてしまったボクの頭は、自覚したことと相まって、どんどんスッキリしていく。
(なるほど……それは、ヒカリに言われても仕方ないや……)
ここまで来てしまえば、もう苦笑いしか出ない。
こんな簡単なことに気づかないなんて、そして動き出さないなんて、『意気地無し』と言われても仕方がない。
(そうだね……うん、その通りだ……)
心の中で深く頷き、意識を目の前の少女に向ける。
全てを吐き出したのか、恥ずかしさから顔を真っ赤に染めあげながらも、それでも少しスッキリした表情を浮かべ、しかしここから先のことに怯えているかのように、ほんのり不安げな表情を浮かべるユウリ。けど、ボクからの返事を聞くまでは逃げられないと覚悟を決めた彼女は、真っ直ぐこちらを見つめてくる。
(さぁ、答えを返そう。分かりきってる返事を……!!)
彼女はここまでの勇気を見せてくれた。
ここで答えを引き伸ばすなんてありえない。
だからボクも、心からの想いを真っ直ぐぶつける。
「ボクも……ユウリが好き」
今しがた気づいた答えを口にする。
1度口にすれば、もう止まらない。
「ユウリといると楽しくて、暖かくて、心地よくて、ずっと一緒にいたくなる。……けど、ボクの夢も諦められないし、夢を1度捨てたボクは、これを果たさないと顔向けできない。だから……!!」
ユウリの言う通り、これは宣言。
絶対に約束を果たすための、宣誓。
「必ず、チャンピオンになって迎えに行くよ。その時は、ボクと付き合ってください」
ボクとユウリの、視線と言葉が絡み合う。
もうそこに、恥ずかしさはちょっとしか無い。
「……ふふ」
「……あはは」
気づけば、お互いの口から漏れたのは小さな笑いだった。
恥ずかしさが完全に消えたわけじゃない。それは、お互いの頬から消えない赤色が物語っている。けど、それ以上に、ボクとユウリの間には確かな繋がりがあった。
「絶対に、追いつくから、待っててね」
「絶対に、迎えに行くから、待ってて欲しい」
返答になっていないようで、しかしボクたちだけには理解できる確かな言葉のやり取り。
「……またね」
「……うん」
もう言葉はいらない。
だって、絶対に切れない約束を交わしたから。
どちらともなく右手を上げたボクとユウリは、そのまま勢いよくハイタッチ。
パチンという快音を響かせ、その音を合図に、お互い背を向けて歩き出す。
次に会う時は、お互いがチャンピオンになっているのを信じて。
「……全く、それができるなら早くしなさいよ」
「ごめん、お待たせしました」
改めて搭乗口へと続く道に足を向けたボクを待っていたのは、頬を掻き、気まずそうな表情をうかべるジュンとコウキ、そして呆れた口調で言葉を零すヒカリ。ただ、その全員がさっきの光景に思うところがあったのか、ほんのり頬を赤くしている。その事実が、さっきまで忘れていた恥ずかしさをぶり返させてくるけど、それを表情に出さないように必死に押しとどめる。
「……ちゃんと答え、出せたわね」
「うん。もう迷わないよ。……だからコウキ、覚悟しててね?」
「……わかったよ。ったく、愛の力って恐ろしいなぁ……」
「……うるさいよ」
「……オレは何が何だか分からなかったぜ」
「あんたは一生かかっても分からないから気にしなくていいわよ」
「どういうことだよ!!」
「ほらほら、ヒカリもジュンも、言い合ってると時間遅れちゃうよ?さ、行こう」
気づけば帰ってくるいつもの4人の日常風景。
少し浮ついた心を、このやり取りを持って落ち着けたボクは、今度こそ飛行機へと歩いていく。
(さよなら、ガラル地方。またいつか……!!)
新たな約束を胸に刻み、次はもっと大きな存在となって帰ってくることを誓って。
この日ボクは、シンオウ地方へと帰って行った。
☆
「……行っちゃったとね」
「だな……あ〜あ、こんなことならもっとバトルすれば良かったぜ」
「いいじゃないですか。どうせまた来るんですからその時に戦えば」
ガラル地方から飛び立った1機の飛行機を見ながら、マリィ、ホップ、ビートが言葉を零す。
どんどん小さくなっていく飛行機を見送っていると、その大きさと逆比例するかのように寂しさが大きくなっていく。けど、この気持ちに押しつぶされることは無い。
「大丈夫だよ。だって、フリアたちとはもっと大事な部分で繋がっているから……」
胸に手を当て、ドクドクと聞こえる少し速い心音に耳を傾けながら、さっき交わした約束を思い出す。
この約束を忘れない限り、私の心が萎むことは絶対にないと言えるから。
「どうしたの?顔赤いよ?」
なんて事を考えながら、横から感じた視線に目を向けてみれば、そこには未だに頬を赤くしているマリィの姿があったので、思わず声をかけてみる。
「いや、いきなりあんなもの見させられたらこうなると!!こっちの気持ちも察してほしか!!」
「マリィやヒカリが煽るからだもん。私悪くないもん」
すると返って来るのは抗議の声。その内容に理解できない訳では無いし、もし私がマリィと逆の立場だったら多分同じことを思ってしまうだろう。けど、こればっかりは文句を言わせて欲しい。
「さんざん意気地無し意気地無しって言うくせに、行動したら文句言われるのは納得いかない……」
「限度を考えろって言ってると!!ユウリの中には0か100しかなかと!?」
「うるさ〜い!!もう決めたんだもん!!後悔だってしてないもん!!」
「うぅ〜……無敵状態のユウリがここまで強いとは思わなかったと……」
そこから始まる恥ずかしがっている人同士の軽い言い合い。
別に喧嘩している訳では無いただのじゃれあいだけど、ホップとビートは特に何も言ってこない。というか、2人ともどう関わってきていいのかを決めあぐねているみたいで、少し離れたところで何かを話している。
そうやって周りの様子を見てみれば、少しだけ心は落ち着いて……
「……ありがとうね、マリィ。少し言葉は強かったけど、それでも押してくれたから覚悟を決められた」
「別に、お礼を言われるほどではなかと。あんなこと言わなくても、ユウリなら何時か行動してたと」
「でも、それは今日じゃなかったと思うから」
マリィの言う通り、いつか解決した問題かもしれないけど、これに関してはいつかではダメで、今日だったからこそ、こんなにもいい結果になったんだという自負がある。
勿論ここがゴールでは無い。むしろスタートラインをようやく切ったと言っても過言では無い。けど、少なくとも今は、私の心は燃え上がっている。
「だから覚悟しててねマリィ?チャンピオンの座もフリアも、誰にも渡さないから」
「……はいはい、フリアはいらないから、チャンピオンだけしっかりと取らせてもらうと」
そんな私に触発されたのか、マリィの目にも炎が宿るのが見えた。
ジムチャレンジは終わったばかりで、ダンデさんに公式で挑める機会は遠い。けど、それでも既に目標を定めた私たちの足は止まらない。
「なんだ?アニキへの挑戦か?悪いけどそこばかりは譲れないぞ!!」
「ぼくを差し置いて先に挑ませるわけないでしょう?次はぼくの番ですよ」
さっきまで離れていたホップたちも、ここは譲れないとばかりに割って入ってくる。
私たちは友達であり、仲間であり、ライバルである。
その関係がとても心地いい。
(ふふっ、フリアたちもこんな気持ちだったのかな?)
仲間たちのおかげで私の心はどんどん燃え上がり、気づけば4人揃って足が勝手に動き始めた。
行先はワイルドエリア。
「じゃあ早速、みんなで特訓しよっか!!」
私の声にみんなが頷き、歩いていた足は、気づけば駆け足となっていく。
(絶対に……追いつくから!!)
その足にもう、迷いも躊躇いも一切ない。
この道の先にある光を目指して、ただ我武者羅に駆けていく。
そんな私たちの未来は、多分とっても素敵なものになるんだろうなって思えた。
☆
長いようで、けど短い旅だった。
シンオウ地方から離れて、ガラル地方で経験した濃密な体験は、ボクを一回りも二回りも成長させてくれた。
そんな、ボクにとって運命の特異点と言っても過言では無い大冒険から帰ってきて数ヶ月。その期間を使ってボクは、改めてシンオウ地方を軽く周り、自身の力を見直し、そして新しい力を育てて、とにかく研鑽を積んでいった。
特に重要視したのは、ヨノワールとのつながりと、ガラル地方から帰ってくる日に、とある人から受けとった1つの石について。
それは、いつの間にかあるものを手に入れていた、ボクの手持ちのとあるポケモンとの組み合わせによりとてつもない強化を受けていたため、これに気づいたボクは、すぐさまその力を使いこなす準備を整えていった。
本当はシンオウ地方に来て直ぐに行動を起こしたかったけど、それが出来なかった理由がこの石のせいだ。
正直、まだちゃんと使いこなせている気はしないけど、それでも強力な手札のひとつにはなっているはずだ。そう信じてボクはついにこの場所に足を踏み入れる。
「……」
前は踏み入れることの出来なかった、機械的な空間。
白を基調とした近未来チックなその空間は、時折緑の光を走らせ、奥にある殿堂入りを記録する空間へと吸い込まれていく。
(ついに……ここまで来た……!!)
ようやく足を踏み入れることのできた空間を前に、1度目を閉じ深呼吸をした後に、ここに来るまでに戦った人たちを振り返る。
『アッハハ!!前と比べて見違えるように強くなったね!!ボクもここ最近はかなり特訓したつもりだったんだけど……つもり止まりだったみたい。……うん、良い表情になっているし、これなら期待できるかもね!!じゃあほら、早く先に行っておいで!!みんな君のことを待っているからさ!!』
むしタイプ四天王、リョウさん。
明るく、人懐っこそうな笑顔を浮かべた彼は、ボクの姿を見て嬉しそうに笑いながら、先の道への扉を開いてくれた。
『おやおや……『男子、三日会わざれば刮目して見よ』なんて言うけど……まさかここまで成長しているとは思わなかったですよ。ああ、今回は文句なしにあなたの勝ちです。あの人や前チャンピオンが目をかけていたのが、ようやく分かりました。今のあなたなら、この先に進む資格がある……さぁ、さっさとお行きなさい』
じめんタイプ四天王、キクノさん。
穏やかで、しかし底知れない覇気を纏う彼女は、ボクのことを厳しくも優しくて、暖かい視線を持って迎え入れ、ボクの成長を喜びながら後ろの扉を開けて通してくれた。
『……………………………………フゥ、やっぱりきみは、オレの想像通り……いや、想像を超えてくれる男だって信じてたぜ。きみの熱い勢い、気持ち、魂の叫び、ちゃんと伝わった!!……戻ってきてくれて最高に嬉しいぜ。……………………………………わりぃ、本当はもっと色々言いたいんだが、ちと楽しすぎて燃え尽きちまった。…………ほら、次行きなよ。この先であいつが待ってるぜ』
ほのおタイプ四天王、オーバさん。
シンオウ地方で誰よりも熱い彼は、ボクとのバトルを心の底から楽しみ、そして全部だしきってボクと戦ってくれた。最後は本当に燃え尽きたのか、ただただ明るくて、見ているだけでこちらも元気になってしまうような笑顔をもって、ゆっくりとボクを扉の奥へと送り出してくれた。
『成程……これがあなたの本来の力だったんですね。あの時と比べて、随分と見違えた。それにその力……とても興味深い。文献で読んだことはありますが、まさかこうしてお目にかかれるとは思いませんでした。どうやら、私もまだまだみたいです。さて、本来ならその力について是非とも聞きたいのですが……今のあなたには、もっと大切なことが待っているのでしょう。……さぁ、行きなさい。この扉の先で、彼が待っています。ご武運を』
エスパータイプ四天王、ゴヨウさん。
冷静で、冷たくて、どこまでも静かな彼の表情を、確かに崩すことに成功した。その事実を受止め、落ち着いて、しかしその表情の裏に嬉しそうな感情を含ませた彼は、ゆっくりと道を開けて扉の方へ案内してくれる。いつもなら、全てを終えたらすぐに読書に戻り、心を落ち着ける作業に入るはずなのに、今回はその行動を取らずに、ボクを送り出してくれたことに1つの敬意を感じた。
シンオウ地方四天王。
前は超えることすら出来なかった大きな壁。
その壁への再挑戦は確かに緊張したけど、不思議と負ける気がしなかったボクは、そんな気持ちを証明するかのように、ちゃんと乗り越えてここまで来ることが出来た。
ちゃんと成長出来ている。
ちゃんと前に進むことが出来ている。
たしかに、コウキはここまでの道をボクの半分の時間で到達することが出来た。
コウキの1歩はボクより大きい。それは間違いなく彼の凄いところだ。
けど、その分ボクは多くの場所を冒険して経験値を積んできた。
足跡は、ボクの方が多い。それは間違いなく、ボクの誇れるところだ。
(ボクに才能は無い。でも、それは前提だから……!!)
1歩が足りないならその分多く足を動かせばいい。事実、それを実現できたからこそ、今ボクはここにいる。
「ようやく来てくれたな」
目を閉じて集中していた時にかけられた声。その声に反応して目を開ければ、そこにはボクのよく知っている相手が現れた。
「お待たせ、コウキ」
「ああ……本当に待ったぞ」
「ごめんね。こんなにも待たせて」
フタバタウンから一緒に飛び出して、約束を立てて、しかし守ることの出来なかった、ある種宿命の相手とも言えるその存在。
そんな相手と、ついに夢の舞台であるここ、ポケモンリーグの頂点でぶつかり合うことが出来た。
「てっきり、ガラル地方から帰ってきてすぐに挑むと思ってたからさ。思いのほか待たされて、また逃げたのかって心配になったよ」
「本当にごめん。ちょっとやらなきゃいけないことが出てきちゃってさ」
「ま、いいけどな。おかげでおれの方も準備が出来たわけだし」
そう言い合うボクとコウキの腕には、あるものが着けられており、それが少し輝いていた。
「……大丈夫だよ。もう逃げないから」
「……」
見つめ合うボクとコウキ。
その視線がバトルフィールドの中心で絡み合う。
ここまで来るのに、本当に長かった。
一度逃げ出してしまったボクの発言は、正直そんなに信用がない。けど、その信用の無さを、少しは行動で示せたのではないかと思う。その頑張りのおかげか、目の前のコウキもボクを見ながら深くひとつ頷いた。
「正直、もう誰もついてこないと思ってた。この先、1人で歩いて行くのかと思っていた」
目を閉じ、一度下げた頭を、ゆっくりあげながら目を開ける。
「お前がガラル地方にいるって話を聞いて、最初は本当に絶望したよ。とうとうほかの地方にまで逃げたのかって……でも、違った……」
その瞳に、確かな炎が宿っていくのを感じる。
「お前は、自分を乗り越えるために他の地方にまで旅に出て、武者修行をしてきてくれた……あの時の発言は嬉しかったなぁ……」
そういいながらコウキが想起するのは、ボクがリーグの時に発言した言葉。
あの時はまさか聞かれているとは思っていなかったけど、あとから聞けば、あの時点ですでにガラル地方に来ていたらしいコウキは、この発言をばっちり聞いている。そう考えると少し恥ずかしさがこみあげて来るけど、この発言がきっかけで再会してすぐにいつもの空気に戻ることが出来たので、そういう観点で見ればこれは必要経費だ。
あの発言のおかげで今、こうしてちゃんと向かい合えている。
「本当に嬉しかった。こうしてまた向かい合えたことが。こうしてまた夢を一緒に追いかけられることが。……こうして、また本気でぶつかれることが」
空気が変わる。
圧力が変わる。
目の前の人間が、ボクの知っているコウキから、ボクの知らないチャンピオンの姿に変わっていく。
(……凄い)
思わず息をのむ。
拳に力が入る。
自然と、最初のモンスターボールに手が進む。
「見せてくれフリア。お前のこれまでの軌跡を。お前の成長の姿を。お前の……今の本気を!!」
ダンデさんと相対した時に似た、チャンピオン特有の強者のプレッシャーを放ちながらこちらを見て来るコウキ。
昔のボクなら、この気に押されて逃げていただろう。
けど、この空気はもう経験した。
「うん……ぶつけるよ。ボクのこれまでの軌跡を……経験を……全部!!」
もう怯える必要はない。
もう逃げることもない。
だって今は、間違いなく対等な立場だから。
「全力で行くよ、コウキ!!」
「全力で迎え撃つぞ、フリア!!」
チャンピオンの コウキが
勝負を しかけてきた!
「いくよエルレイド!!」
「走るぞガブリアス!!」
「エルッ!!」
「ガブァッ!!」
お互いの声と共に投げられた2つのモンスターボール。そこから飛び出してきたのは、ボクからはエルレイドで、コウキからはガブリアス。
気合の入った2人はボールから飛び出した瞬間に声をあげながら相手をにらみつける。
お互いやる気満々。今すぐにでも突撃したそうなほどの気迫を感じる。
「エルレイド……観戦はしたことあるけど、こうして相対するのは初めてだな」
「ガラル地方で仲間になった子だからね。けど、変わってるのはお互い様でしょ?」
「まぁな」
コウキの手持ちは変わらないけど、ボクの手持ちはガラル地方の冒険を経て6人から11人に増えている。今回は、そんな11人の中から選んで闘うことになっているため、コウキにとってはちょっと新鮮なバトルになっているだろう。
そんなバトルに、更なる新鮮さが追加される。
掲げるのは両者の右腕。
そこにつけられたバングルに輝く1つの石。
「エルレイド!!」
「ガブリアス!!」
その石に左手の人差し指と中指を添えながら、お互いが相棒のポケモンの名前を呼ぶ。すると、バングルから4筋の光が伸びていき、お互いのポケモンが持つ石からも返事を返すかの如く伸びていく光と接続され、エルレイドとガブリアスが光に包まれる。
そして……
「「メガシンカ!!」」
「エルッ!!」
「ガブァッ!!」
その光を弾くとともに、姿の変わった両者が姿を現す。
「「いざ……勝負!!」」
夢にまで見た決戦。
その火蓋が、ようやく切って落とされた。