【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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367話

「『マッハパンチ』!!」

「ガウッ!!」

「『サイコキネシス』!!」

「フゥッ!!」

 

 相手のなつき現象に関する情報をとにかく集めるために、まずは小手調べの攻撃。とは言っても、この小手調べにも相応の力は込めており、両手両足におにびを纏っているゴウカザルは、両足の焔を定期的に爆発させながら駆けていく。

 

 この進軍に対してフーディンは、念の波動を放ってこちらの動きを阻害しようと試みるものの、おにびを爆発させることで移動しているゴウカザルは、空中でも自在に起動を変化させることが出来るので、この波に捕まることなくぐんぐんとフーディンとの距離を縮めていく。

 

「空中機動を得ただけでこんなに変わるなんて……フーディン!!『シャドーボール』を展開しながらいくつかゴウカザルに向けて発射!!」

 

 いくら素早さに自信のあるフーディンとはいえ、ここまでの動きをされ続けたら絶対に近づかれる。そう悟った相手は、自身の周りに4つのシャドーボールを顕現させ、自身の周りを周回させる指示。即席の護衛ビットを作成し、近づかれたときの保険の準備を始めた。

 

 確かに、フーディンの周りを高速で回るその技は、やっとの思いで懐に入ったこちらを追い返すだけの圧はありそうだ。

 

 けど、これだけではゴウカザルは止まらない。

 

「ゴウカザル!!両手をうちつけて!!」

 

 サイコキネシスをやめ、シャドーボールにした事で視認性がむしろ良くなったこちらは、展開と同時にこっちに向けて打たれた球を全てよけながらフーディンへと一気に距離を詰める。しかし、完全に距離を詰めた訳ではなく、フーディンの周りを回るシャドーボール手前で止まったゴウカザルは、その場で勢いよく拳をうちつけ、両手のおにびを大爆発させてフーディンに熱発を飛ばした。

 

「フッ!?」

 

 まさかの爆発に煽られてフーディンが1歩後ろに下がり、同時にシャドーボールの周回が止まってフーディンへの道が出来る。

 

 ここが攻め時。

 

「『マッハパンチ』……と見せかけてジャンプ!!」

 

 けどボクは、ここでフーディンに攻撃を当てずに、その場でジャンプをさせる指示を出す。

 

「くっ、よく見てるな」

「何度この手の攻撃を見てきたと思ってるのさ!!」

 

 その理由は、ゴウカザルの後ろから迫るひとつのシャドーボール。

 

 展開と同時に攻撃としても放っていたこの技を、サイコキネシスで操作することでブーメランのように返し、ゴウカザルを後ろから奇襲しようとしていた。それを確認できたからこそ、ボクはゴウカザルにジャンプを指示していた。これによって、本来ゴウカザルにあたる予定だったその黒球は、逆にフーディンへの直撃コースへと変化。ゴーストタイプの技ということもあって、当たれば間違いなく大ダメージだし、さらに追撃のチャンスにもなる。そのボクの考え通り、返ってきたシャドーボールはフーディンにあたって爆発し、フーディンの身体は大きく仰け反る。

 

「今!!」

 

 今度こそ絶好の追撃チャンス。

 

 右拳を振りかぶって、まっすぐストレートの準備に入ったゴウカザルは、そのままフーディンとの距離を詰めていき……

 

「掛かったな」

「ガウッ!?」

「っ!?」

 

 突如ゴウカザルの周囲に、テレポートで瞬間移動させられたらしい4つのシャドーボールが出現。これに驚き、一瞬だけ動きが硬直してしまった瞬間を見逃さなかったフーディンが、スプーンの先端をゴウカザルに向けながら、瞳を青色に発行させてサイコキネシスを発動。4つの黒球に指示を出し、その全てを中心にいるゴウカザルに向けて集合させ、大きな爆発を起こしてきた。

 

「『フレアドライブ』!!」

 

 フーディンの特殊攻撃力から放たれる4つ分のシャドーボール。

 

 こんなものを一気に受けてしまえばこれだけで戦闘不能になりかねない。なので、こちらは全身に焔を纏うことによって技への耐性を得て受け止める。

 

「ガ……ウァッ!!」

 

 シャドーボールがゴウカザルの周りで爆発すると同時に、ゴウカザルの叫び声とともに爆ぜる紫の焔。

 

 相殺し合った2つの攻撃は、辺りに黒煙を残して、周囲の視界を奪い去る。

 

「ゴウカザル!!」

「ガウッ!!」

 

 目が使い物にならない状況で、しかし確かに気配を感じとったボクはすぐさま名前を呼び、同時にゴウカザルも足元を爆ぜさせ、空中へと躍り出る。すると、先程までゴウカザルのいた場所に、白色の大きな球が通過していく。

 

 フーディンの放ったきあいだまだ。

 

「やっぱり煙を使って来た!!」

「いい予想だ。けど、まだ終わりじゃない!!」

 

 きあいだまを避けてほっと一息をつく、なんてことは出来ず、避けた先のゴウカザル目掛けて更に飛んでくるきあいだまとシャドーボールの弾幕を避けるべく、再び足のおにびを爆発。空中をピンボールのように弾かれながら高速移動を開始したゴウカザルは、サイコキネシスによって操作され、追尾してくるシャドーボールときあいだま相手に必死の鬼ごっこを行っていく。至る所で爆発しながら空中をかけるその姿は、紫色の流れ星が暴れているように見え、ちょっとした幻想的な空間を作り出していた。

 

「フ……ッ」

 

 そんな目にも止まらない戦いを行っているところで少しだけ聞こえるフーディンの息を吐く声。

 

 この声に嫌な予感を感じたゴウカザルは、空中を飛びまわりながら警戒度をはね上げる。すると、飛び回っているゴウカザルの目の前に、突如として1つの黒球が現れる。

 

 さっきと同じく、テレポートによってすぐに移動させた球だ。

 

「ガウッ!!」

 

 このままではぶつかってしまうゴウカザルは、右手を前に出して小さな爆発を起こし、自身の動きを急停止。黒球に当たる寸前のところで、ピタリと動きを止め、被弾を回避した。

 

「ディッ!!」

 

 しかし、追いかけられている途中で止まれば、後ろからの攻撃に追いつかれてしまう。むしろそこを狙っていたらしいフーディンは、ここぞとばかりにサイコキネシスを放ち、周囲全てのシャドーボールときあいだまをゴウカザルへと集中していく。

 

「ガアアァァッ!!」

 

 次々と自分に向かってくるあまたの攻撃を前に、ゴウカザルがとった行動はインファイト。

 

 両手両足のおにびをさらに発火させた彼は全方向に向かって拳や蹴りを繰り出して、全ての攻撃を殴り、蹴り返す。

 

 本来ならゴーストタイプであるシャドーボールも、おにびによってほのおタイプが付与されている拳のおかげで殴ることが出来ており、ゴウカザルによって返されたものは全て紫の焔に包まれ、ある程度の距離を進んだところで爆発。紫の火花を散らしながら消えていくその様は、ちょっと小さな花火大会だ。

 

 とはいえ、さすがに全てを弾くことは出来ていないみたいで、ゴウカザルの身体には少しずつ傷が増えていく。それでも攻撃の大半を弾き終えたゴウカザルは、ある程度乗り切ったのを確認したところで、両足のおにびを爆発。フーディン目掛けて一直線に飛び出して、右腕を大きく引き絞る。

 

 その速度は凄まじく、瞬きした瞬間には、ゴウカザルはフーディンの目の前に立っており、地面に左足を踏み込み、今まさに右拳による渾身のブローを解き放とうとしている瞬間だった。

 

「『テレポート』!!」

 

 このままではやばいと悟った相手は慌てててレポートして緊急脱出。ゴウカザルの目の前から一瞬で姿を消す。が、その行動は予想通り。

 

「右斜め後ろの上!!」

 

 テレポート先を瞬時に確認したボクは、その位置を素早くゴウカザルに伝達。するとゴウカザルは踏み込んだ左足を軸に身体を回転させ、身体の向きをフーディンに向けながら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 テレポートで避けられることを最初から懸念していたゴウカザルは、シャドーボールの1つを予め右手で掴んでいた。さっきの拳で殴ろうとする動きも、後ろに引き絞って今から殴ると見せかけることで、手にシャドーボールを握っていると思わせないためのブラフだ。

 

「ディッ!?」

 

 テレポートで範囲外に逃げたことに一瞬でも安堵してしまったフーディンはこの攻撃に被弾。こうかばつぐんであり、且つおにびの性質も纏っているシャドーボールを受けたせいで、やけどを負いながら、さらに無視出来ないダメージをその身に刻む。

 

「ディ……ッ!!」

 

 フーディンは、コウキを心配させまいと、やけどを気合いで治した。

 

 しかしやっぱりやけどは瞬時に治ってしまい、フーディンの身体から焔はすぐさま消えていく。が、それでもダメージが入っていることに変わりはなく、そして最初からこれで終わると思っていないこちらは、シャドーボールを投げ終えた時点で既に足を爆発させ、フーディンへの距離を一気に縮めており、今度こそ拳を叩き込むために右腕を引き絞る。

 

「『マッハパンチ』!!」

「ガウァッ!!」

 

 シャドーボールの直撃を受けたフーディンは少し怯んでしまっており、この攻撃を躱す術がない。テレポートだって、痛みで集中力が切れているせいで上手く発動しない。そうやって次の動きへ移るのに手間取っている間に、ついにゴウカザルは懐へ入り込む。

 

「いけッ!!」

「ガウッ!!」

 

 渾身の右ストレートが、フーディンの身体の中心を真っ直ぐ貫く。

 

 激しい衝撃とおにびの爆発が、少し離れているボクの耳にも確かに響いてくる。

 

 間違いなく大ダメージ。ともすれば、戦闘不能になってもおかしくない威力。

 

「フ……ディッ……!!」

「なっ!?」

「ガウッ!?」

 

 が、その一撃は、フーディンの身体にギリギリ触れているぐらいのところで勢いが死に、ピタリと止まっていた。

 

 原因は、フーディンの両手とお腹に纏われているサイコキネシス。

 

 サイコエネルギーを局所的に溜め込むことによって、限界まで斥力を高めて盾とし、ゴウカザルの攻撃を何とか受け止めていた。

 

 勿論、タダで止められた訳では無い。さっきも言った通り拳はちゃんと触れているし、おにびの爆発もちゃんと起きている。その証拠に、フーディンはかなりのダメージを負い、且つ3度目のやけど状態に陥っている。

 

「フー……」

 

 フーディンは、コウキを心配させまいと、気合いでやけどを治した。

 

 しかし、その3度目のやけどもすぐに完治。拳の衝撃も大部分を殺されているため、ダメージはあるが致命傷では無い。

 

 そして何よりも……

 

「ガ、ガウッ!!」

「ディ……ッ!!」

 

 伸びきった右腕を、フーディンが掴んで離さない。

 

「ゴウカザル!!『フレアドライ━━』」

「『サイコキネシス』!!」

 

 フーディンの腕から逃れるために、無理やり全身に炎を纏って爆発させようとするけど、同時にフーディンが両手のサイコパワーを一気に解放。ゴウカザルの身体を中から揺さぶって来る。

 

「ガウッ!?」

「ゴウカザル!!」

 

 ゼロ距離から叩きつけられるこうかばつぐんの大火力。フーディンに比べてここまで大きな被弾の無かったゴウカザルだけど、こちらもそんなに打たれ強い方ではないため、かなり大きなダメージを受けることとなる。

 

 けど、まだ倒されたわけじゃない。

 

「ガ……アァァッ!!」

「ディッ!?」

 

 むしろ、特性のもうかが発動する範囲まで削られたゴウカザルは、全身の火力を更にあげて大爆発。腕をつかむために至近距離にいたのが逆に働き、ゴウカザルの巻き起こした攻撃がフーディンにもクリーンヒット。強力な衝撃はフーディンの身体を大きく後ろへ吹き飛ばし、コウキの足元まで転がっていった。

 

 間違いなく戦闘不能のダメージ。ゴウカザルも大ダメージを負ってはしまったものの、フーディンの体力を削り切るダメージを返すことには成功しているだろう。

 

 ただ、問題は相手がコウキだという事。

 

(確かにフーディンに致命傷は与えたし、ゴウカザルをフーディンから離すこともできたけど……どれだけダメージを与えてもコウキにはあれが……)

 

『フーディン、戦闘不能』

 

「……え?」

 

 またなつきによる無限耐久モードへと突入してしまうことを危惧したボクは、しかし、次の瞬間に聞こえてきた機械音声の言葉を前に、呆気にとられた声を零してしまう。

 

(フーディンになつき耐えが発生しなかった……?なんで……?)

 

 ガブリアスの時に散々発動していた、体力がギリギリのところで耐えてしまう理不尽な現象。

 

 今回も発動してボクを苦しめると思っていたその現象が、なぜか今回は発動することなくそのままフーディンの体力を削り切る結果となった。

 

 その理由が全く理解できなくて、ボクは勝っているのに、その事実を受け止めるのに時間がかかってしまった。

 

「戻ってくれ、フーディン。……よく頑張ってくれたな」

「……」

 

 リターンレーザーを当てられて、ビールの中へと戻っていくフーディンを見送るボクとゴウカザル。

 

 これによってバトルフィールドからはフーディンが退場していき、場にはゴウカザルだけが残される結果となる。このことから、やはりなつき耐えなんて起こしておらず、こちらの攻撃がちゃんと決め手になったのだということがよく分かった。

 

 でも、だからこそ腑に落ちない。

 

 ガブリアスとフーディンの、いったいどこに差があったというのか。それがわからない。

 

(ガブリアスはなついていたけどフーディンはなついていないとか……?いや、そんなバカな話あるはずないよね……確かケーシィはフカマルよりも速く出会っているはずだし、そもそもコウキが手持ちのポケモンで差別じゃないけど、関わりに差をつけるような人間じゃないことはボク自身が知ってる。っいうか、なつき現象のせいでやけどが3回も治されてるわけだから、なついていなかったわけがないよね……)

 

 頭の中で1つの仮定を出してみるものの、すぐさまその考えを否定する。

 

 ボクやヒカリ、ジュンと同じで、コウキだってポケモンのことは大好きだ。そんなコウキが、ボクにとってのヨノワールみたいに、特別な思い入れのあるポケモンの存在はあれど、じゃあ他のポケモンのことをおざなりにするのかと言われると絶対にそんなことはない。それにやけどを強制感完治する現象は確かに発生しているのだから、フーディンにだってなつき耐えと言う現象は起きてもおかしくはないはずだ。

 

 それなのに起きなかった。

 

(もしかして……)

 

 そこまで考えて、ボクの中に新しい1つの仮定が生まれる。

 

 あくまでも仮定だけど、現状ガブリアスとのバトルと、フーディンとのバトルを思い出して気づいた差と共通点を考えると、どうしてもこの仮定が頭をよぎって離れない。

 

(次の相手で……そこを見極めたい……!!)

 

 これからの自分の動きの方向性を見極めたボクは、気合を入れてコウキの動きの注視する。

 

 フォーディンをボールに戻し、腰のホルダーに戻したコウキは、そのままゆっくりと3つ目のボールを手に取り、構えた。

 

「いくよ、ピクシー!!」

「ピッ!!」

 

 そんなコウキから解き放たれる3人目のポケモンはピクシー。

 

 元気よく、かわいらしい笑顔を浮かべながら現れた彼女は、楽しそうに指を振りながらこちらを見つめてきた。

 

「ピクシー……」

 

 一見強そうには見えないそのポケモンは、しかしむしろボクの警戒心をより上げる。

 

「ピッピッピッピ~」

 

 声をあげながら指を楽しそうに振るピクシーは、しかしゴウカザルを見つめながら隙をさらさないようにしている。そのアンバランスさが、どこか不気味で、こちらの心を不安で掻きたてていく。

 

「ピクシー。両手に『ムーンフォース』を構えながら『コスモパワー』!!」

「っ!!『マッハパンチ』!!」

 

 不安があるということは行動に少しだけためらいが生まれるという事。そのためらいをしっかりと確認したコウキは、その間にピクシーに指示を出す。

 

 この指示に従ったピクシーは、空中で振られている指の先端にピンク色の光を集め、さらにその状態で身体に光を溜めていく。

 

 行われた技は、自身の防御と特防を上昇させる技、コスモパワー。

 

 この技を使って、自身の耐久をあげながらゴウカザルと戦おうという考えだろう。その考えを阻止するべく、こちらはゴウカザルにマッハパンチを指示。素早く飛び出したゴウカザルが、紫色の拳を構えながらピクシーの目の前まで走り抜ける。

 

(指先に『ムーンフォース』を溜めていたから、もしかして昔と違って攻撃寄りにシフトチェンジしたのかと思ったけど、やっぱり戦い方は変わってなかった!!)

 

 元々コウキのピクシーの戦闘スタイル自体は知っていたけど、コウキのピクシーを見るのは一年以上ぶりだ。そのせいもあって、戦い方が変わっている可能性を危惧したせいで出だしが少し遅れてしまった。結果、コスモパワーを1回行われてしまったけど、一段階ならまだ挽回が効く範囲だ。ゴウカザルの速度があるのなら尚更。

 

「行けッ!!」

「ガウッ!!」

 

 そんなボクの期待に応えるように、拳に力を込めたゴウカザルがピクシーの懐に到着。そのまま右拳のストレートを全力で解き放つ。

 

「流して」

「ピッ!!」

 

 此方の速攻に対して、しかしコウキは一切焦る顔を見せない。

 

 冷静に一言そう告げたコウキの言葉に返事をしたピクシーは、右手の光を左から右に振り、ゴウカザルの拳を彼女から見て右側にそっと流す。

 

 そのままゴウカザルとすれ違うように移動したピクシーは、背中の羽を羽ばたかせて空中へジャンプ。ゴウカザルの攻撃が簡単に届かない位置へと移動する。

 

「『めいそう』」

「ピ……」

 

 そこで次に行うのはめいそう。

 

 自身の集中力をあげて、特攻と特防を強化する技。

 

 コスモパワーに続いて、2つ目の自身を強化する技を許したことに、少しだけ焦りが募るけどすぐさま深呼吸。ここで焦って攻撃してもうまくいかないだろう。

 

「ゴウカザル!!岩を使って!!」

「ガウッ!!」

 

 ガブリアスとの闘いで残っていた岩を利用するために掛けたゴウカザルは、落ちている岩に次々と拳を叩きつけて空中へ打ち出す。

 

「ガード」

「ピッ」

 

 雨のように飛んでくる岩の弾幕に対して、相手は両手のムーンフォースを巧みに操って弾いて行き、自身に直撃しないようにしていく。

 

 普通に拳で弾くのではなく、ムーンフォースを纏ったところで弾いているので、ゴウカザルの拳によって焔を纏った岩に直接触れることはなく、そのおかげで彼女にやけどが入ることはない完璧な防御手段だ。

 

 けど、防御に行動力を割いていることに変わりはない。

 

「ゴウカザル!!」

「ガウッ!!」

 

 この隙に足の裏のおにびを爆発させたゴウカザルは、空中を弾かれるように移動してピクシーの真後ろを取る。

 

「『フレアドライブ』!!」

「ガウアァッ!!」

 

 そこから放つのは自身の体力を犠牲に放つゴウカザルの十八番。

 

 体力の多いピクシー相手にこの技を使えば、もうか発動まで削れているゴウカザルの体力は技の反動で倒れる可能性が高いけど、コスモパワーとめいそうを見ている以上、ここから時間を掛ければ掛けるほどこちらが不利になるので、ここでいろいろ犠牲にしてでもピクシーを倒すのは大事だ。そう判断してのゴウカザルの特攻は、周囲に物凄い熱波を放ちながらピクシーへ突撃していく。

 

 またなつき耐えが発生する可能性は高いが、それでも致命傷が入るのは免れない。そうなれば、ピクシーもほぼ倒されたようなものだ。

 

「本当に強くなったね。欲を言えばもっと『めいそう』と『コスモパワー』をしたかったけど……うん、今のゴウカザルを倒すのなら十分かな」

 

 しかしコウキはまだ焦らない。

 

「ピクシー。『アシストパワー』」

「ピッ!!」

 

 冷静なコウキの指示を受けたピクシーは、全身からピンクの光を発射。自身を中心として、球状に放たれたピンクの光は、まるでピクシーを守る壁のような存在だ。

 

 勿論、単純な技威力だけ見れば、まだ能力を合計4段階しか上げていないアシストパワーではゴウカザルの強化されたフレアドライブを止めることは不可能だ。

 

「けど、逸らすことに集中するならこれで充分だ。ピクシー!!回転!!」

「ピッ!!」

 

 しかし、そこを理解しているピクシーは、そのまま自身の身体を右回転させて、自身を守る光の球も同じように回し、ゴウカザルを身体ごと右に誘導。突撃することに集中していたゴウカザルは、急に力の方向を逸らされたことによってバランスを崩し、そのままピクシーの右側を通り抜けて地面に着地。派手な爆発音を奏でながら、ゴウカザルは不時着しないように何とか着地だけはしっかりした。

 

「ゴウカザル!!後ろ!!」

「ガウッ!?」

 

 が、爆走状態から急に着地したばかりで足が痺れて、少し動きの止まったゴウカザルの後ろから迫る2つの光球が、息つく暇を与えるのを許さない。

 

 回避も防御も間に合わないゴウカザルの背中にこの攻撃はしっかり直撃し、大爆発。流石に体力を削られすぎたゴウカザルが、一段階とはいえ、めいそうで威力が上がったこの攻撃を耐えられる道理はない。その煙が晴れた中心では、目を回して倒れるゴウカザルの姿があった。

 

『ゴウカザル、戦闘不能』

 

「うん、何とかなったね。ありがとうピクシー。これでゆっくり『めいそう』と『コスモパワー』を指示できるよ」

「ピッ!!」

 

 倒れたゴウカザルを見ながら頷くコウキは、満足そうにピクシーに声をかける。

 

 このままピクシーを要塞化させて、こちらを詰ませるつもりなのだろう。

 

「さぁフリア。おれのピクシーを突破できるか?」

「……」

 

 挑発するかのように声をかけて来るコウキを前に、ボクはただ静かに、視線を返し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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