【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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368話

「ピッピッピ」

 

 背中の羽を動かして空を飛ぶ妖精。

 

 軽快な声と共に指を振り、楽しそうにこちらを見る姿は、しかしボクにとっては、道の真ん中で立ち塞がる悪魔のように見えてしまう、そんなポケモン。

 

 コスモパワーとめいそうによって、特に特殊方面に対して要塞化し、上げた能力を活かして、アシストパワー、もしくはムーンフォースで攻め立てるという行動が、コウキのピクシーの主な戦術。ピクシー自身がてんねんの特性を持っているということもあり、自分の積み技は通すのに、相手の積み技は通さないという理不尽な戦法によって色んなポケモンが倒れているのを見た覚えがある。出来れば、このピクシーだけは1度だって能力を積ませることなく突破したかったが、残念ながらそうは問屋が卸さないみたいで。

 

(やっぱりそう上手くいかないよね……)

 

「戻って、ゴウカザル。頑張ってくれたね」

 

 ゴウカザルを戻しながら、このピクシーについてどうするかを考えるボクは、すぐさま3つ目のボールへと手を伸ばす。

 

 実は、このピクシーの対策自体はちゃんと別で用意はしている。というか、ここまでピクシーの戦術を理解しておいて、そして厄介だという感想を持っているボクが、なんの対策もとっていないというにはさすがに勝つ気が無さすぎるし、ここ数ヶ月何をしていたんだということになってしまう。

 

 こういう能力を積んでくるポケモンは、準備期間が長く、対策が取りやすい一方で、1手間違えてしまえばそのまま詰みになってしまいかねない力を持っている。それを止めるためにも、しっかりとした対応をしなくちゃならない。

 

 その対応を、この子に任せる。

 

「行くよ、マホイップ!!」

「マホッ!!」

 

 ボールから飛び出すボクの3人目の仲間はマホイップ。

 

 エルレイドと同じく、ガラル地方で仲間になったコウキの知らない新しい仲間。

 

「マホイップ……」

 

 自分の知らないポケモンを前に、警戒心を上げながらじっと見つめてくるコウキ。

 

 コウキ自身、ゴウカザルを倒されて後投げしてきたのを理解している以上、このマホイップに何かしらを仕込んでいるというのは警戒する。けど、知識のないポケモン故にどこに警戒をするべきかがわかっていないため、この警戒にも限度はある。

 

 言ってしまえば初見殺し。

 

 人によっては卑怯とか言いかねないけど……正直こうでもしないとこの天才には勝てないし、チャンピオンというのは得てして対策を取られる側の人間だ。情報が出回っている分そういう展開になりやすい。その点から考えても、コウキ自身は卑怯とは一切思わないはずだ。

 

(むしろ、自分の知らない戦法に喜んで飛びつきそう……)

 

 そんなことを考えながら、ボクはマホイップとともにピクシーをじっと見つめる。

 

「さぁ行くよマホイップ!!まずはフィールド作り!!」

「マホッ!!」

 

 マホイップを繰り出し、まずこちらが行うのはもはやテンプレとなったクリーム散布。

 

 マホイップが自由に動ける空間を作成し、本来動きの遅いマホイップの機動力を上げる、ボクの中ではお馴染みの動き。たとえマホイップというポケモンをあまり知らなかったとしても、ボクの試合を見ているコウキなら、この動きくらいは分かっていることだろう。

 

「マホイップは特殊寄りのポケモンだよな……ピクシー、『めいそう』」

 

 マホイップのクリーム散布は、機動力を上げるものであって火力を上げるものでは無い。また、ピクシー自身はそんなに素早く動くポケモンでもないため、機動力勝負はそもそもしない。むしろ、今まで自分より速い相手と戦うことの方が多かったため、ただ速いだけの相手は慣れているし敵にならない。よって、動きに翻弄されずにいつも通り動けば問題ない。そう判断するのは特に間違いではなく、実際ボクがコウキの立場にいたとしても、同じようにめいそうを指示しただろう。

 

 だからこそ、この思考を利用する。

 

「マホイップ!!『みわくのボイス』!!」

「マホッ!!」

 

 クリームの散布を終え、潜り込み、空中でめいそうを行っているピクシーの真下に位置取りをしたマホイップが、真上に向けて可愛らしく、しかしどこか不安を感じさせる音波にて攻撃を行った。

 

「『みわくのボイス』……?」

 

 マホイップから発せられた攻撃の正体を知らないコウキは、初めて聞くその名前に首を傾げながら、しかし機動力が低く、且つめいそう中でそもそも攻撃を避けられないピクシーに特に追加で指示をすることは出来ないので、大人しく戦況を見守り続けていた。

 

「ピッ!?」

 

 すると、程なくして音波がピクシーに直撃。しかし、コスモパワー1回に、めいそうを2回積んで、特防を3段階上昇させている彼女に、この程度の攻撃は対してダメージにはならない。言ってしまえば警戒するに値しない技だ。

 

 この技が、相手を攻撃するだけの技であるのなら。

 

「ピィ〜???」

「ピクシー!?」

 

 空中で音波を受けたピクシーが、突如目を回しながら空中をフラフラし始める。

 

 状態異常、こんらんの兆候だ。

 

 みわくのボイス。

 

 この技は、相手が何かしら能力を上昇させた後にぶつけると、そのポケモンを強制的に混乱させるという追加効果を持つ。今回はめいそうで能力が上がったところにこの技をぶつけたから、ピクシーは混乱してしまったというわけだ。

 

 これがピクシー対策の技()()1()

 

「そういう効果か!!けど、既に何回か能力は成長させているからダメージはそこまで無い……ならこの混乱を乗り越えて……」

 

 みわくのボイスと言う技の性質をすぐさま理解したコウキは、しかしダメージ自体は大したことがないのをすぐに理解。こんらんという状態異常はどうやらなつきによっても治すことが出来ないみたいで、そこだけは相手視点なかなか面倒そうなところだけど、コウキクラスになれば、こんらんなんて頭をわざと地面にぶつけたり、むしろこのこんらんを利用した戦法すら取ってくるだろう。だからこそ、コウキは特に焦る様な表情を見せることなくどっしり構える。

 

 たとえマホイップがめいそうなどを行ってきても、その分自分たちもめいそうとコスモパワーをすれば間に合うと理解しているから。

 

 だから、その余裕を一瞬で覆す。

 

「マホイップ!!『じこあんじ』!!」

「なっ!?」

「マホッ!!」

 

 この状況をゆっくり打開しようと考えている相手に対して、こちらが行ったのはじこあんじ。

 

 これは相手の能力変化をそのまま自分にも写すという技で、今でいえば、めいそう2回とコスモパワー1回分の成長をまるっとマホイップにも反映させたという事になる。

 

 これがピクシー対策その2。

 

「そっちが積むのなら、こっちは真似し続けるからよろしく!!」

「けど、こっちは『てんねん』……いや、そうか!!」

 

 そして能力をモノマネしたこちらが行う技は勿論これ。

 

「『アシストパワー』!!」

「マホッ!!」

「ピッ!?」

 

 ピクシーに向かって放たれたピンクの光が、綺麗にその身体にクリーンヒットし、ピクシーが地面に落ちていく。

 

 本来であれば、相手をモノマネして自身の特攻を上げたところで、てんねんという特性がそれを無意味なものに変えていく。が、アシストパワーの特徴による、術者の能力が成長しているほど威力が上がるという効果までは無効化出来ない。勿論特攻上昇分は防がれている以上、ダメージが抑えられるのは確かだけど、それでも決して無視できない威力を維持することは出来る。それに……

 

「マホイップ、『めいそう』!!」

「マホ……」

 

 威力が足りないのなら、逆にこちらがここから積めばいい。

 

「くっ、ピクシー!!」

「ピ……ピッ!!」

 

 空から落とされた衝撃でこんらんから立ち直ったピクシーは、頭を振りながら起き上がり、こちらに向かって視線を向ける。が、コウキの指示はすぐには飛ばない。

 

 相手がめいそうをしたのならこちらもめいそうを行いたい。てんねんがある分、積み合いは本来有利なはずだから。

 

 しかしその行動をみわくのボイスが封じてくる。

 

 いくらこんらんをすぐにどうにかできるからと言って、じゃあ進んで受けたいかと言われるとそうでは無い。治すにしろ、利用するにしろ、どうしたって若干のラグは出来てしまう。その隙にマホイップからアシストパワーが飛んで来ようものなら、削られるのはピクシーだけ。

 

 つまり、ここでのピクシーの最善策は、積むのを諦めて殴り合うことだけ。

 

「本当に厄介に成長したな!!」

「どこかの誰かのおかげでね!!」

「「『アシストパワー』!!」」

 

 そして重なるボクとコウキの指示。

 

 マホイップとピクシーから放たれたピンクの光は、お互いの中心点でぶつかり合い、激しい衝撃を撒き散らして相殺する。

 

(さて……ここまでしてようやくイーブン……)

 

 とまぁ、ここまで自信満々に対策を連ねていったわけだけど、本番はここからだ。

 

 てんねんという特性がある以上、単純な火力勝負は多分勝てない。その分こちらがめいそうを1回多く出来ているとはいえ、それでもアシストパワーでちょっと抗えるようになっただけで、みわくのボイスは強くはならない。つまり、相手に攻めを強要しておきながら、実はお互いの殴り合いはそこまで有利という訳では無いということになる。

 

(コウキが攻めにチェンジしたのなら、こっちももう『めいそう』を積む余裕は無い。さぁ、ここからが本番だ)

 

「マホイップ!!クリーム!!」

「マホッ!!」

「飛べ、ピクシー!!」

「ピッ!!」

 

 お互い殴り合うしかないと判断したところで、まず行ったのが攻撃準備。

 

 マホイップは今の衝撃で散っていったクリームを補填していき、ピクシーは空に飛び上がって有利ポジションを確保。どちらも遠距離技が主体なため、お互いの間にある距離はさして問題じゃない。そこで、マホイップは機動力を、ピクシーは回避と命中をとったという形だ。

 

「ピクシー!!『ムーンフォース』!!」

 

 まず動いたのはピクシー。

 

 空からピンクの球を雨あられと落としていき、マホイップを空から一方的に攻める算段だ。

 

「クリームで受け止めて!!」

 

 対するマホイップは、両手から大量のクリームを放出しながら、そのクリームを網状に整えて展開。飛んできた球全てをクリームの網でキャッチし、そのまま回転。

 

「そのままお返し!!」

 

 ハンマー投げの容量で振り回しながらクリームの網を解き放ち、飛んできたムーンフォースを全てピクシーの方へ飛ばしていく。

 

「避けろ!!」

 

 しかし、投げ返したムーンフォースは、回転しながら返したせいもあってか精度が悪く、ほとんどがあらぬ方に散っているため、簡単に避けられてしまう。

 

 労力をかけて返したのに、結果がこれでは大損だ。

 

 だから、これは避けられてもいい布石。

 

「マホイップ!!『アシストパワー』!!」

「っ!?ピクシー!!()()!!」

 

 突如空から落ちてくる光に何とか反応するものの、しかしそちらに視線を向けるのが精一杯なピクシーは、腕を盾替わりに受け止めるのが限界で、そのまま技に押されて、クリームが広げられた地面へと落ちていく。

 

 そんなピクシーの上には、空中に繋がったクリームの糸から顔を出すマホイップの姿。

 

「ここが室内でよかったよ。おかげで自由に動ける」

 

 先程投げたムーンフォースにクリームを繋げて飛ばすことによって、色んな方向へ飛び散ったムーンフォースがクリームを繋ぐきっかけとなり、至る所に架け橋が出来上がった。

 

 ボクたちが戦っているこの場所が室内だということもあり、今までで1番の複雑さを持った結界を作ることが出来ていた。おかげで今のマホイップは、歴代で1番機動力がある状態だ。

 

「たたみかけて!!『アシストパワー』!!」

「くっ、こっちも『アシストパワー』!!」

 

 地面に落ちたピクシーを見て、さっきまでとは立場を逆転し、今度はこっちが空から技を打ち下ろす。

 

 対するピクシーも負けずに空に向かってアシストパワーを放ち、空中でぶつかり合う。

 

 再び行われたピンクの光同士の衝突は大きな衝撃を起こし、周囲のクリームの糸を何本かちぎる。が、全てが切れてしまっている訳では無い。

 

 ならそこは、マホイップの走れる道筋になる。

 

「捉えて!!」

「マホッ!!」

「ピクシー!!今すぐ飛べ!!」

「ピ……ッ!!」

「逃がしちゃダメ!!捕まえて落として!!」

 

 クリームの糸を辿って地面までたどり着いたマホイップは、そのままピクシーの足元へ移動し、両足に大量のクリームを付着させ、身動きを奪うのを狙っていく。

 

 この狙いを察知したコウキは、すぐさまピクシーに空を飛ぶことを指示。が、当然逃がすつもりのないこちらはクリームの糸を発射してピクシーの右足に接続。そのままクリームを引っ張って、ピクシーを引き寄せる。

 

「『アシストパワー』!!」

「マホッ!!」

 

 そのまま引き寄せたピクシーに向かってアシストパワー発射。炸裂したピンクの光は、ピクシーに大ダメージを与えながら吹き飛ばす。

 

 これまでの蓄積も加えれば、十分致命傷だ。

 

 ピクシーは、コウキを悲しませまいと耐えた。

 

「来た!!なつき耐え!!マホイップ!!追撃!!」

「ピクシー!!『ムーンフォース』だ!!」

 

 大きく吹き飛び、クリームの上を転がりながら、しかしグッと歯を食いしばっている姿から、なつき耐えが発動したのを感じたこちらは、これをチャンスと捉えてすぐに追撃。クリームを泳いで飛んでいくピクシーを追いかける。

 

 対するピクシーは、転がりながらも何とかギリギリのところで態勢を整えて、迫ってくるマホイップに大きなムーンフォースを1つ発射。動線上のクリームを蹴散らしながら、まっすぐマホイップの方へと飛んでいく。が、既に周りはクリームまみれ。つまり、マホイップには無限の機動力があることと同義。故に、ただ真正面から迫るだけの技に当たるはずもなく、右にズレて技を避け、そのままピクシーの足元へ。

 

「っ!?」

「『アシストパワー』!!」

 

 コウキの息を呑む声を聞き流しながら放たれるピンクの光によって、今度はピクシーは空中へ打ち上げられる。

 

 ピクシーは、コウキを悲しませまいと耐えた。

 

(これで2回……!!)

 

 再びなつき耐えを発動させ、何とか態勢を整えたピクシーは、苦しそうな表情を浮かべながら空中に浮かぶ。

 

(……いけそう)

 

 何となく、なつき耐えに対してどうするのがいいのか分かりかけてきたボクは、自然と拳に力が入る。

 

 流れは悪くない。可能ならこのまま押し切りたい。

 

「『アシストパワー』でもっと攻めて!!」

「マホッ!!」

 

 3発目のアシストパワー。

 

 これでまたなつき耐えが発生するか、はたまた倒れてくれるのか、どちらにせよ、ここでようやくピースが揃いそうな気がする。

 

 が。

 

「……フッ」

「っ!?」

 

 小さく聞こえたコウキのちょっとした笑い声。それを聞いた瞬間、背筋を悪寒が駆け抜ける。

 

「いいこと思いついた。ピクシー!!自分中心に『ムーンフォース』!!」

「ピッ!!」

 

 嫌な予感を全身で感じているボクを他所に、ピクシーは自分の身体から月の光を放ち、自分そのものをムーンフォースの球に変更。この力を持ってアシストパワーを弾きながら、どんどん自身の輝きを増していく。

 

「そのまま転がれ!!」

「ピッ!!」

 

 そして完全なピンクの球体となったピクシーは前方に高速回転。地面に着地しながら周囲のクリームを弾き、そのままマホイップの方に突っ込んできた。

 

「そして『アシストパワー』!!」

 

 そして回転を維持したまま放たれるピンクの光は、ピクシーの回転に合わせて放出されるため、傍から見たら球に丸鋸の刃が着いたものが高速回転しながら迫ってきているように見える。

 

「ちょ!?マホイップ!!逃げて!!」

「マ、マホ……ッ!?」

 

 全てを切り裂く光のチェーンソー。それがこちらに向かって突っ込んでくる様は、1種のホラー映画を見させられている気分になる。

 

 その圧力に一瞬だけ気圧されたマホイップの回避行動が遅れ、動き出しはしたものの、攻撃の動線上から逃れることは出来ず被弾。マホイップは大きく後ろに飛ばされることとなる。

 

「ピクシー!!そのまま追いかけろ!!」

「マホイップ!!」

 

 飛ばされたマホイップに追撃するべくさらに回転して突っ込んでくるピクシーを前に、クリームの触手を伸ばして壁に付着させ、それを引っ張ることで何とか軌道から横にズレて回避。マホイップの身体をギリギリ擦らない位置をピクシーが駆け抜ける。

 

「反転!!」

「ピッ!!」

 

 が、一息つく暇もなく、ドリフトするかのように綺麗なUターンを決めたピクシーは、再び避けたばかりのマホイップに向かって突撃。

 

 地面を擦る激しいスキール音を奏でながら爆走する様はもはや暴走族だ。

 

「くっ、『アシストパワー』!!」

「マホッ!!」

 

 このまま逃げ続けても埒が明かない。どこかでこの暴走車とは向き合わないといけない。その向き合い方について1つの解答を出したボクは、マホイップに迎撃を指示。真っ直ぐ突っ込んでくるピクシーに向かって、全力の光を解き放つ。

 

「そんなもの、轢き倒せ!!」

「ピッ!!」

 

 しかし、そんなこちらの反撃なんて露知らず、ただただ力で捻り潰さんと爆走してくるピクシーは、さらに回転を強くして貫通力を上昇。そのままマホイップの攻撃を打ち破り、再びマホイップを吹き飛ばす。

 

「このままトドメだ!!」

「ピッ!!」

 

 とばされたマホイップを追いかけて、今度こそ追撃を決める準備を整えるピクシー。

 

 ほんのりホップしながらこちらに向かってきていることから、さっきと同じように右か左に逸れたところで、すぐさまドリフトを開始して、今度こそ逃がしてはくれないだろうことが見て取れる。

 

 絶体絶命のピンチ。

 

 けど、まだ想定の範囲内で良かった。

 

「マホイップ!!上!!」

「マ……マホッ!!」

 

 度重なるダメージでかなりギリギリのマホイップ。けど、今回は飛ばされることを分かっていたため、自分から後ろに飛ぶことでダメージを減らし、且つ後ろに大量のクリームを展開することによってクッションとして耐えた。そのおかげで苦しそうな声を上げながらも何とか反応して、天井に向かってクリームを発射し、上に向かって飛び上がる。

 

「今度は上か!!逃がすなピク━━」

「ピッ!?」

 

 急に標的を見失ったピクシーに対してコウキは、空にいるマホイップに向かって追撃するためにジャンプの指示を出そうとする。が、それよりも先に、ピクシーの回転が止まってしまう。

 

「壁!?いつの間に壁際に……いや、クリームで隠したのか!!」

 

 その理由は、ピクシーが壁にぶつかってしまったことによって自傷したから。

 

 クッションに使用したクリームによって壁が隠されていたため、距離感が狂ったピクシーがジャンプをする前に壁にぶつかってしまっていた。

 

 これによってダメージをまた受けることとなったピクシーは、ここでも踏ん張りを見せる。

 

 ピクシーは、コウキを悲しませまいと耐えた。

 

「今!!『アシストパワー』!!」

「マホッ!!」

 

 自傷によって起きたダメージを何とかなつき耐えで持ちこたえたピクシー。けど、そこを一番の隙と捉えたこちらは、真上からピンクの光を打ち込む。

 

 壁に頭をぶつけ怯んでいるピクシーにこの技を避けるすべはなく、光がピッタリ直撃。大きな衝撃音とともにピクシーに大ダメージを与え、ついにピクシーが倒れる。

 

『ピクシー、戦闘不能』

 

「……よし、やっぱりそういうことなんだ」

 

 4回目にして、ようやくなつき耐えを発動することなく倒すことのできたピクシーを見て、確信を得たボクは突破口が見えたことに喜びが漏れそうになる。

 

(このなつき現象には回数制限があって、それはどの現象が起きてもカウントされるんだ)

 

 なつき現象の効果は大きく3つ。

 

 1つはボクたちを苦しめてくるなつき耐え。

 

 1つは状態異常を治すもの。

 

 そしてもう1つが急所に攻撃が当たるもの。

 

 もしかしたらもっと種類があるのかもしれないけど、少なくとも今分かっているのはこの3つだ。そしてこれら全部含めて、合計3回までが発動可能。だからフーディンは耐えることなく倒れた。なぜなら、既に状態異常回復を3回行ったあとだから。

 

(条件がわかったなら、いける!!)

 

 ここに来て明確に見えてきた攻略法に希望が見え、どんどんやる気がみなぎっていく。

 

「マホイップ!!頑張るよ!!」

 

 その猛りを表に出すかのように声を上げ、マホイップを鼓舞する。

 

 もしかしたら、本当にもしかするかもしれない。その可能性を前に、心臓の音がどんどん早くなる。

 

 けど……

 

『マホイップ、戦闘不能』

 

「え?」

 

 どうやら現実はそんなに甘くないようで、機械音声のジャッジを聞いて視線を前に向ければ、そこには目を回して倒れるマホイップの姿。

 

 どうやら、最後の被弾の時点で体力は限界だったみたいで、ピクシーを倒せたことに満足してしまい、そのまま緊張の糸が切れてダウンしてしまったらしい。

 

(そっか……そんなに限界だったんだ……)

 

 コウキに勝てそうという気持ちが先行しすぎて、マホイップの体力まで目がいっていなかった。

 

(……落ち着こう、まだ喜ぶのは早い)

 

 ようやく見えた勝利への道を前に、ボクは改めて心を引き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なつき

正確にはなかよし度ですが、最近の実機ではなつきとなかよしがくっついています。また、今現象で発揮される効果の1つに、『掛け声に合わせて技を避けた』と言うのがありますが、避けるはアニポケ時空では日常茶飯事なので今回は入れていません。便利な指示ですね。また、実機では確率で発生するだけで別に回数制限はありません。このあたりは、コウキさんの成長の余地ですかね。……これ以上発生されるといよいよ心折れる人が増えそうですが。




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