【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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369話

「戻ってくれ、ピクシー」

「マホイップ、ゆっくり休んで」

 

 ダブルノックアウトの引き分けという結果で終わったピクシーVSマホイップのフェアリー対決を見届けたボクとコウキは、お互いのポケモンに向けて労いの言葉をかけながらリターンレーザーを当てて、ボールの中へと戻していく。

 

 可愛らしい見た目からは想像もつかないほど激しいバトルをしてくれた両者には拍手しかない。コウキ相手に1歩を引かなかったことを誇りに思いながら、マホイップのボールを腰に戻し、頭を整理する。

 

(ようやくなつきの原理を理解した)

 

 何をするにしても3回の回数制限があるというのを理解したのは大きい。今までどこまで耐えるのか分からず闇雲に走っていたのに対して、3回という明確なゴールがあるのであれば、こちらとしてはとてもバトルが組みたてやすい。

 

(最多4回のトドメが必要という点ではきついのに変わりは無いけど、それでも、目標がある時点で十分戦える!!)

 

 お互い3人の仲間を失っていよいよ後半戦。

 

 ちゃんとコウキの背中を捉え続けている。

 

(このまま、追い抜く!!)

 

 覚悟を決め、4つ目のボールを手にすると同時に、コウキも次のボールを構えてボールを投擲。

 

「いけ、ブーバーン!!」

「いくよ、グライオン!!」

 

 ボールから現れたのはコウキからはブーバーンでボクからはグライオン。

 

 ブーバーンはともかく、グライオンはいろんなことが出来るポケモンだけど、少なくともボクのグライオンは、ガンガン前に攻めていくタイプだ。故に、このバトルはさっきの変化技からのあれやこれやと言った戦いにはならない。

 

 正真正銘、真正面からの殴り合いだ。

 

「『クラブハンマー』!!」

 

 その挨拶として、まずは右のハサミに水を纏ったグライオンが、空から滑空しながら突っ込んでいく。

 

「『かえんほうしゃ』!!」

 

 対するブーバーンは、右腕の砲台をグライオンに向けて発射し、激しい焔を叩き付けようとする。

 

 このまま直進すれば被弾するのは確実。なので、右ハサミを構えたグライオンは、その状態を維持したまま右側にローリングを行い、かえんほうしゃを回避。そのままブーバーンの目の前に到着したグライオンは右ハサミを大きく振りかぶった。

 

「地面だ!!」

 

 が、グライオンの攻撃が届く前に、ブーバーンの左腕が地面に接着され、その状態でかえんほうしゃを発射。地面に添えられた砲台から解き放たれた焔は地面で反射。そこから空に向かって立ち上り、グライオンを下から打ち上げる炎の柱を作り出した。

 

 急に下から現れた炎の柱を前に、回避が間に合わないグライオンは被弾して空に打ち上げられる。

 

「グライオン!!」

「グラ……ッ!!」

 

 しかし、ただでやられるグライオンじゃない。

 

 打ち上げられた勢いそのままに天井まで飛び上がったグライオンは、両手のハサミを力強く天井に叩きつける。

 

「『ストーンエッジ』!!」

「グラッ!!」

 

 叩きつけられた場所を中心に出てくるのは岩の柱。しかしそれはよく見る地面から生えたものではなく、天井から垂れ下がる鍾乳石のような形をとっており、天井にびっしりと敷きつめられたそれは、天井ごと落ちてきそうなほどの圧迫感を与えてくる。

 

 そして、その圧迫感を現実のものへとする一撃をグライオンは行った。

 

「『じしん』!!」

 

 ストーンエッジのためにたたきつけた場所と全く同じ場所を殴るグライオン。これにより、今度は天井にじしんが走り、今しがた生えてきた柱全てが根元から折れ、一気に落下。まさに岩の雨と呼ぶべき攻撃が、ブーバーンへと降り注いでいく。

 

「『きあいだま』!!」

 

 対するブーバーンは真上に向かってきあいだまを打つことで、自分にだけは攻撃に当たらないように迎撃。落ちてくる岩の数が多すぎるせいで、こうするしか防御手段がないから的確に動いて行く。

 

 結果、フィールドの至る所に岩の塊が落ちてくるものの、ブーバーンの所には粉々になった小石がパラパラと落ちるだけに留まる。

 

「……『どくづき』」

「グラッ!!」

「バッ!?」

 

 落ちてくる岩をやり過ごしてほっと息をつくブーバーン。

 

 その呼吸の隙間を狙ったグライオンが、落ちてきて地面に刺さった岩の影から、毒をまとった尻尾の針を突き出して攻撃。完全に不意をつく形となったブーバーンの背中に綺麗に突き刺さる。

 

 残念ながら追加効果のどくは発生しなかったものの、少なくともかえんほうしゃで受けたダメージよりは少し多めに返せたはずだ。

 

「ブーバーン!!『かえんほうしゃ』!!」

「ブゥ……ッ!!」

 

 どくづきを背中に受けて前に飛んだブーバーンは、このままでは岩の柱にぶつかるというところで右腕を突き出してストップ。その状態で右腕から無理やりかえんほうしゃを放つことによって、反動を起こしてグライオンの方にジャンプ。そのまま左腕をグライオンの方に向けながらどんどん距離を詰め、間の距離が埋まった瞬間に左腕からかえんほうしゃを解き放ってきた。

 

「『クラブハンマー』!!」

「グラッ!!」

 

 対するこちらは、右ハサミに水を纏って相手の左腕を下から打ち上げるように振るい、砲台の角度を上に曲げる。

 

「『どくづき』!!」

 

 右腕は後ろで左腕は真上に向けられたブーバーンに反撃の術はない。そこを狙って、身体の中心点に毒を纏った尻尾を真っすぐ突き出すグライオン。

 

「ひるまず最大出力!!右腕を少し左に曲げろ!!」

「ブバァッ!!」

 

 が、そんな追い込まれた状況になってなお、向こうが取った行動は回避ではなくかえんほうしゃの出力アップ。その際、肘に当たる部分を少し曲げることによって噴出角度を変えたブーバーンは、真上に掲げた左腕を起点に右回転。そのまま遠心力を乗せた右腕を、手の甲部分でラリアットみたいにぶつける動きをしてくる。

 

 かえんほうしゃによって加速したその右腕は、グライオンの尾を右から殴りの受け、こちらの攻撃は不発。尻尾を逸らせたブーバーンは、そのまま勢いよく一回転したのちに、その回転をピタリと止めて、右腕の砲口をグライオンに合わせる。

 

「もう一発!!」

「飛び上がって!!」

 

 グライオンにあわされた砲台から再び放たれるかえんほうしゃを、グライオンは地面を殴って、その反動で飛び上がることで回避。身体を宙に持っていくことで、かえんほうしゃの軌道から逃げていく。

 

「逃がすな!!左腕で追え!!」

「グライオン!!すぐに滑空で岩の柱を障害物に!!」

 

 空中に飛びあがって避けたグライオンだけど、そのグライオンを逃がしたくないブーバーンは、今度は真上にあげていた左腕を使ってグライオンを追尾するプランに変更。火を噴き続ける左腕をゆっくりと降ろし始めていく。

 

 ただ、飛び上がったら左腕に狙われるというのはボクも予想したので、ボクはグライオンが右腕のかえんほうしゃを避けたのを確認した瞬間、すぐさま地面に降りるように指示。これに従ったグライオンは、飛び上がった身体をすぐさま地面に向けて滑空させ、左腕の射角より下且つ、右腕では狙えない位置取りを意識して、岩の隙間を高速で飛び回る。

 

「『クラブハンマー』!!」

 

 ある程度飛んでブーバーンの集中力を乱したところで、今度はこちらの攻撃。水を纏ったハサミを岩の柱にぶつけ、水を纏った岩としてブーバーンに発射。これならブーバーンにこうかばつぐんで攻撃できるし、水があるおかげでかえんほうしゃでもすぐに撃ち落とされることはない。

 

「くっ、『きあいだま』!!」

 

 このままでは岩に被弾してしまう。そう判断したコウキは、かえんほうしゃからきあいだまへと技をチェンジ。かくとう技であるこの技なら素早く岩を砕けると期待しての変更だろう。実際両腕を突き出して、白い球をどんどん打ち出して岩を砕いていくその姿は、まさしくコウキの狙い通りの姿と言える。

 

 しかし、きあいだまと言う技自体にちょっとした溜めがいることと、ほのおタイプのブーバーンがかくとう技を得意としていない事が相まって、若干のやり辛さと動きのぎこちなさを感じる。勿論、練度はかなり高いため、あくまでもかえんほうしゃと比べての話ではあるし、一般人からすればこれでも充分脅威ではあるけど、少なくとも今のボクにとっては、これは付け入る隙にはなる。

 

「『じしん』!!」

「グラッ!!」

 

 ブーバーンが岩を落とすのに必死になっている間に、両腕を勢いよく地面にたたきつけてじしんを発生。強烈なゆればブーバーンめがけて襲い掛かる。

 

「地面に『かえんほうしゃ』!!」

 

 いくらなつき耐えがあるからと言って、さすがにこの技を受けるのを許容できないブーバーンは、地面に向かってかえんほうしゃを発射し、その反動で宙に浮かび上がってじしんを無理矢理回避。

 

「『クラブハンマー』で岩を打て!!」

 

 しかし無理やり空中に飛び出たことで無防備をさらすこととなったブーバーン。そこをめがけてこちらは再び岩の弾幕を発射していく。

 

「腕を振って弾け!!」

 

 空中ではきあいだまのチャージをするための踏ん張りが効かないのか、壊すのではなく弾くことに動きを変更したブーバーン。確かに、ブーバーンの腕はかえんほうしゃやきあいだまを放つための反動に耐えられるだけの強靭なものになっているため、これをぶつけるだけでも充分な威力となる。それを証明するかのように、ブーバーンの繰り出す腕の振り回しによって、自身の身体に小さなダメージを刻みつつも、ブーバーンは岩を弾くことに成功はしていた。

 

 けど、空中で腕を振るっているブーバーンは、それに手いっぱいで他の動きが出来るようには見えない。

 

「グライオン!!『どくづき』!!」

「グラッ!!」

 

 その隙を狙って、岩の影から飛び出したグライオンが尻尾の毒で一閃。毒を纏った強力な一撃が、ブーバーンの身体に直撃した。

 

「ブッ!?」

 

 岩を弾くことにリソースを使っていたブーバーンにこの攻撃まで避けることは出来ず、お腹に攻撃が直撃したブーバーンは地面に落とされる。

 

「ブ……ッ!!」

 

 ブーバーンは、コウキを心配させまいと自力でどくを治した。

 

 この攻撃によってなつき耐えが発生するところまでダメージを与えるとまではいかなかったものの、追加効果のどくが発生。なつき現象が起きて、ブーバーンのどくが治療された。

 

「追撃!!『じしん』!!」

 

 どくが治されるのは想定内。むしろ、なつきの使用回数が減ってくれるので願ったりだ。今更こんなことで驚くこともなく、素早く追撃するために今度はじしんを発生させるつもりで、グライオンは大きなハサミを使って地面へと叩きつけようとする。

 

「ブーバーン!!『ハイパーボイス』!!」

 

 これ以上の攻撃をさせたくないブーバーンは、どくづきを受けて倒れた状態のまま、両腕をこちらに向けると同時に強烈な音波を発射。まさかこの状態で反撃してくると思わなかったグライオンは、ハサミを地面につける前に攻撃に被弾し、音波によって空中に打ち出される。

 

「もう二度と地面には着地させない!!『サイコキネシス』!!」

「くっ、『ストーンエッジ』!!」

 

 ブーバーンに弱点をつけ、且つグライオンの一番の得意技であるじしんは、相手視点一番警戒しなくちゃいけない技だ。それを完全に封印するために、グライオンの位置を空中に釘付けにするべく、ブーバーンは周りに落ちている岩を次々と打ち出してきた。

 

 この攻撃に対抗するために、こちらも岩の弾丸を発射。空中でぶつかり合う岩と岩は、お互いで相殺し合って砕け散り、空中に砂ぼこりが巻き上がる。

 

(この砂に隠れて……)

 

「『ハイパーボイス』!!」

 

 視界を奪う砂ぼこりを利用すれば攻撃が出来るかもしれない。そう考えたボクだけど、その考えを打ち崩すかのようにコウキはすかさず音波の攻撃。砂ぼこりを一瞬で吹き飛ばし、さらにその奥にいるグライオンまでをも吹き飛ばしていく。

 

「くっ、ならもう一回!!天井に『ストーンエッジ』と『じしん』!!」

 

 地面に着地できないのなら、やっぱり天井を利用するしかない。

 

 ハサミを天井に打ち付けたグライオンは、そこから再び岩の柱を作り出し、じしんによって砕き、岩の雨としてブーバーンに落とす。

 

 ブーバーンに対しては十分強力な武器になる連携だけど、すでに一度使ったこの攻撃が上手く入るとも思えない。

 

 実際、コウキはすぐさま対処してくる。

 

「『きあいだま』を『サイコキネシス』で動かせ!!」

 

 ブーバーンの腕から打ち出される2つの白い球。それが空中で自由自在に動き回り、落ちて来る岩を次々と打ち砕きながらグライオンを追い詰めていく。

 

 落ちてくる岩に対処しながら、そのうえでグライオンにも攻撃してくる嫌な動きを前に、グライオンの動きがますます制限されていき、天井から降りようとしていたところをまた天井に戻されていく。

 

 仕方がないのでこちらは3回目のストーンエッジとじしんの連携を発動。壊されるとは分かっていてもこれくらいしかやることがないし、いっそのこときあいだまを身体で受けることを前提に突っ込むことも視野に入れる。

 

 ひこうタイプを持つグライオンならば、きあいだまが当たったくらいでは大きなダメージにはなりえない。必要経費と考えるのであれば、充分許容範囲だ。

 

「グライオン!!」

「グラッ!!」

 

 そんなボクの思考を読み取ったのか、グライオンは1回頷くと同時に地面に向かって急速落下。きあいだまが近くにあろうとも気にせず落ちていく姿は、まさしく覚悟を決めたポケモンの顔だ。

 

「そうくると思ってたよ。ブーバーン『ハイパーボイス』!!」

「ブバッ!!」

 

 が、そんな此方の行動を阻害するためにあちらが発動した技はハイパーボイス。

 

 ブーバーンの両腕から放たれた音波が、落ちて来る岩の側面を反響することで複雑な軌道を描き、落ちてくる途中のグライオンを全方位から包み込むように襲い掛かってきた。

 

「グラァッ!?」

「グライオン!?」

 

 空中で予期せぬ被弾をしてしまったグライオンは、両耳をハサミで防ぎながら悶えてしまい、身体の動きが止まってしまう。

 

「最初からこれを狙って……」

「『きあいだま』で処理していたらいつかはしびれを切らすと思っていたからな!!」

 

 ここにきてようやく自分の動きを操作されていることに気づいたボクは、しかしできることが何もないのでひたすら耐え続けるグライオンを見守るしかない。

 

「グラァ……ッ」

「グライオン……頑張って……!!」

「メインウェポンが『じしん』だったのが災いしたな。このまま落とし切るぞ!!『かえんほうしゃ』!!」

 

 音の反響につかまって動けないグライオンに対して、逆に反響によって、自身が攻撃しなくても勝手に攻撃が続いてくれるブーバーンは、ハイパーボイスがグライオンを包んでいる間に、両腕を前に向けて次の攻撃の……いや、とどめの攻撃の準備をする。

 

「ブーバーン、『かえんほうしゃ』!!」

「ブーバァッ!!」

 

 大きな掛け声と解き放たれるブーバーンの最大火力。そのあまりにも高い熱気によって、まわりの空気を歪めながら突き進む炎の波は、空中で苦しむグライオンを更に追撃するように包み込み、大きなダメージを与えて来る。

 

 音に続いて全身を焼く焔。それはグライオンの体力をゴリゴリと削ぎ落とし、戦闘不能まで一直線に連れて行こうとしてくる。

 

 抗うグライオンは、両ハサミを必死に耳に当てながら身体を振り回し、何とかしてこの檻の中から逃げようと画策するも、ブーバーンの火炎が掴んで離さない。

 

「グ……ラ……」

 

 そんな絶望的な状況が続くこと数秒。ついにグライオンの全身から力が抜け、空中で姿勢を維持できなくなった彼が、真っ逆さまに地面へと落ち始めていく。

 

「ふぅ……よくやったよブーバーン」

「ブバッ」

「グライオン……!!」

 

 火炎と音の檻から落ちてくるボロボロのグライオン。

 

 その姿は見ているだけで痛ましく、ついつい目を逸らしたくなる。

 

 けど、ここまで戦ってくれた仲間を前に、それは許されない。

 

 そのままじっと、落ちてくるグライオンに視線を向け、ついに地面に不時着する時が訪れ……

 

「……グラ」

 

 グライオンのにやけ顔が目に入ったのを確認したボクは、すぐさま指示を飛ばす。

 

「『じしん』!!」

「グラァッ!!」

「「っ!?」」

 

 地面に自由落下する勢いを両手のハサミに乗せたグライオンは、そのまま勢いよく地面に叩きつけてエネルギーを爆発。彼を中心とした全方位攻撃を行い、勝ったと油断していたブーバーンに奇襲をしかけていく。

 

「ブバッ!?」

 

 急に襲いかかってきた大威力の攻撃を前に、ブーバーンの身体は1度大きく吹き飛ばされ、しかし何とか受身をとって最低限のダメージに抑えることには成功した。が、それでも受けた傷は大きく、ブーバーンは右手と右膝を地面に着けた状態で、肩で息を始める

 

「よしヒット!!もう1回『じしん』!!」

「グラッ!!」

「やられたふりをして、自然に地面に近づいたのか……とにかく2回目は不味い!!ブーバーン!!ジャンプだ!!地面に『かえんほうしゃ』!!」

 

 この機を逃さないためにも、すぐさま追撃を仕掛けるグライオンは再び地面を殴ってじしんを発生。強烈な追撃を持って、勝負を決めにかかっていく。

 

 対するブーバーンは当然これを回避するために空中にジャンプ。先程も見た対策だし、そのうえで空中から落とされた過去を持つ以上出来れば取りたくなかったであろう手だと思うけど、背に腹は抱えられないと仕方なくやった行動。それでも、せめて反撃だけはしっかりと行おうと思っているみたいで、かえんほうしゃで打ち上がると同時に両腕をグライオンの方に向け、迎撃の準備を整えていた。

 

 クラブハンマーかどくづきをすれば、攻撃は出来ても手痛い反撃を食らうだろう。

 

 もっとも、この動きはボクにとって有利でしかないが。

 

「グライオン!!『ストーンエッジ』!!」

「しまっ!?」

 

 両腕をこちらに向けていると言うことは、下からの攻撃は返せないということ。

 

 3度地面を殴ったグライオンから放たれた岩の隆起は、ブーバーンの真下から発生し、ブーバーンの身体の中心を直撃。そのままその巨体をぐんぐんと持ち上げ、天井から鍾乳石のように逆さまに生えている岩との間にサンドイッチさせ、ブーバーンに致命の一撃を当てる。

 

 ブーバーンは、コウキを悲しませまいと耐えた。

 

「グライオン!!」

 

 致命傷を受けながらもなつき耐えで倒れなかったブーバーン。

 

 これで2回目。

 

 あと1回発生させれば倒せるようになるし、未だに空中にいて、且つ大ダメージのせいで怯んでいるブーバーンは格好の的だ。そこを目掛けて空を飛ぶグライオンは、尻尾の先に毒を溜めて突き出した。

 

「『どくづき』!!」

「グラァッ!!」

 

 放たれた毒の一閃は、寸分違わずブーバーンの身体を直撃。空中に浮いているその身体を地面へと叩き落とし、大きなダメージを与えた。

 

 ブーバーンは、コウキを悲しませまいと耐えた。

 

 もっとも、どうせなつき耐えをされるので、ダメージの量なんて大して関係は無いのだけど。

 

 ただ、これで3回目が発動した。

 

 それはつまり、もう何があっても相手は耐えられないということ。

 

 それが例え、状態異常だとしても。

 

「……くっ、トドメに『どくづき』を選ぶのは賢いな」

 

『ブーバーン、戦闘不能』

 

 そう言葉をこぼすコウキの言葉と重なるように、ブーバーンが倒れ、戦闘不能となる。

 

 なつきによって耐えたはずの彼の頭には紫の泡が立ち上っており、それがどくによってトドメを刺されたことを如実に物語っていた。

 

 なつき耐えによって3回の制限を使い切ったブーバーンは、どくづきの追加効果で受けてしまったどくを治すことが出来ずに倒れてしまっていた。

 

「よし……よし……!!いいよグライオン!!」

「グ、グラァッ!!」

 

 ボロボロになりながらも、それでもまだ立ち続けるグライオンが、大きな声で勝鬨をあげる。

 

 なつきの原理を理解したことで、確実に詰めの1手が効率よく行えている。

 

 もちろんそれ相応の代償を払ってはいる。けど、これでコウキに勝てるのなら、それは安い代償だ。

 

(もう少し……あと少し……頑張れ……!!)

 

 いよいよ目前に迫ってきた出来事を前に、ボクの拳はどんどん強く握りこまされていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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