早く……やりたい……
「キルリア、『ひかりのかべ』!!」
「アブリー、『あまいかおり』!!」
「ゴーリキー、『ローキック』で相手の機動力をそいでください!!」
それぞれ相手の攻撃を受け止めるないし、動きを阻害する技を選択していく。
攻めてくる野生のポケモンたちの攻撃は決して強いというわけじゃない。けど場所が悪すぎる。下手に攻撃を壁に当ててしまえば洞窟が崩れてしまい、ボクたちはそろって仲良く生き埋めだ。そんでもってこれがボクたちの身に危険が及ぶだけならまだ……いや、だめだけども……まだいい。問題はボクたちがここで倒れれば預かり屋で待っている人たちまでもが危ないという事。奇跡的にこの吹雪が止んで、みんなが無事に冒険を再開できるようになるかもしれないけどどうもボクが思うにこの吹雪はそんな簡単に止むものとは思えない。ただのカンでしかないんだけど不思議とそう確信できる何かがある。とにもかくにも、ここで倒れるわけにはいかない。少なくとも燃料だけはとどけないと……
(最悪でもボク個人が犠牲に……いや、これはユウリが怒りそう……)
あんまり自分を犠牲しすぎるといよいよ怒られそうだ。風邪ひいただけであんなに怒られていたもんね。ただ現状燃料を送るためにも誰かがここに残って抑える役を担った方が効率がいいのも確かだ。というのも今現在ボクたちのを襲ってきている野生のポケモンたちがいる場所は幸いにも出口につながる道を塞いでいるわけではない。つまりは誰かはここで引き受けて、ほかの人で燃料を持ち運べば被害はかなり抑えられるはずだ。
(みんなを巻き込みたくはないけど……でもボク1人って言うのも……)
しかし悩んでいる暇なんか一切ない。もとより選択肢は1つ。なんせまだまだ練度は低いとはいえ、ここにいる野生のポケモン全員をさすがにボクだけで抑えるのには限度がある。少なくとも、ここにいる人と燃料を全て届けるまでの時間稼ぎはしないといけない。もちろん燃料を運ぶ人の護衛にも誰かいないとダメだけど……そこは彼に任せるしかない。
「セイボリーさん!!」
「!?」
穴掘り兄弟と言い合いをしていたため反応が遅れていたセイボリーさんが後ろから近づいてくる気配を感じてすぐさま大声で呼ぶ。いきなり名前を呼ばれたことに驚くセイボリーさんだったけど今はそんなことを気にしている余裕はない。
「みんなを連れて早くこの洞窟から脱出を!!預かり屋までの間のみんなの護衛をお願いします!!」
「それはっ!?……いえ、分かりました。このワタクシにおまかせを!!」
ボクが何をするのかすぐに察したセイボリーさんは一瞬息を飲むけどそこは前半のジムを乗り越えた猛者。すぐさまどの行動が最良か判断して自分がするべき行動をとってくれた。
「みなさん!!急ぎ荷物を持って脱出を!!先行はワタクシとサイさんが、殿はクツさんにお願いします!!野生のポケモンに襲われる前に速く!!」
セイボリーさんの発破に、野生のポケモンに襲われたせいで体が硬直していた人たち全員に活が入り、弾かれたように行動をする。慌てて行われる退却行動は、しかしセイボリーさんの的確な指示のもと効率よく迅速に行われていき、ちらりと横目で確認しただけでも既に片付けは終了しており、なんなら先頭を行くと宣言していたセイボリーさんとサイさん、そして一部の人たちはもう前に歩き出している。
(セイボリーさんのこういう時の行動力と統率力の高さはほんとにすごいや。この速度で退却してくれるならボクも時間稼ぎが簡単だ!!)
思わぬ誤算に少し気が楽になる。
「フリア……」
退却して行ったみんなを視線だけで見送っていると逆方向からボクを呼ぶ寂しそうな声が聞こえる。みんなの無事を一通り確認できたボクは今度はその声の方向に視線を向ける。するとそこには不安そうな顔をしていたユウリがいた。
(……あまりこういう顔をして欲しくないなぁ)
これが最善のはずなのにどこか悪いことをしているような気がしてならない。変にズキズキ痛む胸を無理やり押さえ込んですぐに要件を伝える。
「ごめんユウリ。それにサイトウさんも……2人とも、危険に巻き込んでしまうことに本当に頭が上がらなくて申し訳ないんだけど……ここでこの子たちを足止めするのを手伝ってくれる?」
「っ!?」
「……」
ボクのお願いにユウリは物凄く驚いた表情を返してくる一方で、サイトウさんは先程から全く変わらず目のハイライトが消えていて何を考えているのか分からない。両者全く逆の反応。どちらもボクの予想とは違う反応なので少し不安になる。けど……
「わかった!!任せて、私頑張るから!!」
「愚問ですね。みんなの為です。ここで手を貸さなければガラル空手の名が廃ります」
どちらもテンションの差こそあれ、気合十分とボクの横に並び立つ。
「……ごめんね。危険な役割に付き合わせちゃって」
「むしろ逆だよ。ありがとう」
「え?」
意外な言葉にこんな事態にも関わらず意識と視線がユウリに吸い込まれてしまう。その視線の先にあるユウリの表情はとても穏やかで、嬉しそうで、何より誇らしそうだった。
「ガラル鉱山や4番道路でご飯作る時、アオイさんたちの預かり屋にポケモンハンターが襲ってきた時、第二鉱山で野生のポケモンに追われた時……いつだってフリアは一人で勝手に前走って解決しちゃうんだもん。でも、今日は違う。こうやってちゃんと私に頼ってくれた。それが凄く嬉しいんだ~。だから、私今回は張り切っちゃうよ!!」
「そんなこと……」
思ってたんだ。なんて思ってしまった。シンオウの時と違って対等な立場の人といるんじゃなくて、旅として先輩と後輩という立場。ボクはあまり意識していなかったけどユウリにとってはボクは追いかけたい背中になっていたのかも……?ってちょっと自意識過剰かな?
「成程……師弟関係なのですか」
「うん!私にとってフリアは目標だからね!!」
「そ、それは誇張表現が過ぎるような……」
「私にとってはそうなの!さぁ、フリアに頼られた私は今ややる気満々気分最高!!行くよアブリー!!」
「リー!!」
ユウリの声に鼓舞されたアブリーがさらに前に出て敵を自慢のスピードで優雅によけながらあまいかおりでどんどん動きをのろくさせていく。その動きはカブさんと戦っていた時よりもかなり良くなっているように見えて、先ほどの気分最高の言葉が決して嘘じゃないことがよくわかる。
ボクの行動たった一つでここまで動きが変わるなんてちょっとこそばゆくてムズムズしちゃう……
とにかく!
「そんなに慕ってもらっているなら少しは活躍しないとね!行くよキルリア!!」
「キル!!」
「わたしたちも、負けないように!!ゴーリキー!!」
「グオオオ!!」
そおらく三十分も抑え込んでしまえば野生のポケモンもあきらめてくれるし、それだけ経てばセイボリーさんたちも脱出できるはずだ。ガラル第二鉱山と違ってこちらには仲間もいる。きっとあのころよりも楽に乗り切れるはずだ!!
ボクたち三人はさらに士気を挙げて究極に気を遣う戦いを乗り越えんと張り切っていった。
☆
「……どれくらい経った?」
「もう、かなり経ったと思うんだけど!?」
「私の空腹度的に……おそらく一時間半は立っているかと……」
「いつまで粘るのこの子たち!?」
あれからとにかく洞窟に傷や衝撃が行かないように粘ること長時間。たった今明かされた衝撃の事実にあれだけ高かった士気もかなり削られていた。アブリー、ゴーリキー、キルリアの顔にもいい加減疲れが見えてきている。格下との相手とはいえこの数にこの時間……むしろ今までよく耐えててくれてた方だ。しかしそれ以上に……
「なんでこんなにもあきらめが悪いんだ……」
ガラル第二鉱山でも言ってたけど野生のポケモンは基本的に本能に従って動く。そして本能の中で一番大きいのは言わずもがな生存本能だ。生きるためには相手に背を向けて逃げてやり過ごしたり、負けをおとなしく認めてこれ以上被害を受けないように服従ないし、反抗の意思が無いように見せかけたりするのは当然の行動だし野生のポケモンがよくとる行動だったりするのも事実。実際にガラル第二鉱山でもカジリガメたちは最終的には逃げるようにボクから離れていった。
けどここにいるポケモンたちは明らかに違う。
レベルだけで言えば正直あのガラル第二鉱山で戦ったカジリガメと同じくらい……いや、中にはそれよりもレベルの低いポケモンだってたくさん視界に入っている。そして三対多数とはいえ、トレーナーが指示を出し、洗練された動きによって戦う高レベルのポケモンが後れを取る理由なんてない。ここまで実力差があれば野生のポケモンだって勝てないことを悟って引くのが普通だ。もちろん例外はいると思うけど少なくともここにいるポケモンたちはとてもじゃないけどそんなに気性が荒かったり、負けず嫌いな個体がいたりするわけじゃない。なのになぜこんなにも粘ってくるのか。
「いくらなんでも粘りすぎです。中にはもう戦闘不能状態で体を小さくする個体がいてもおかしくないです」
「ポケモンって自分の命の危機が迫ると体を回復することだけにエネルギーを使うために体をものすごく小さくするんだっけ?」
このポケモンの特性はかなり昔に研究されているし、この特性を利用して作られたものがモンスターボールだ。知っている人は知っているポケモンの不思議な特性の一つ。
「でもそれは最終手段だしその状態になるってことは、本当に命の危険って意味だからそこまでは追い込みたくないんだけど……」
こちらとしてもそれは最終手段だ。けどあちらはそんなことお構いなしに攻めてくる。中には自傷ダメージがあってもお構いなく……いや、むしろボクたちは基本攻撃技を振っていないため相手のダメージはもっぱら自滅ばかりだ。こんなことは初めてだから余計にわからない。
(なんでこの子たちはこんなにも死に物狂いで戦っているんだ……?)
これだけ頑張るってことはそれなりの理由がないと説明がつかない。
(だとしたら、もしかしてだけど今重要なのはここで彼らと戦う事じゃなくてどうして彼らはこうなっているのかを考えて根本的なことを対策しておいた方が確かなのかな……)
少し遅すぎるかもしれないけどボクたちがここからちゃんと撤退するにはここで根本的解決をしておかないとその行動に移すことができないし、ここに採掘に来るのは今日が最後じゃない。この後のことを考えても早急にこの問題は解決するべきだ。
「キルリア!!つらいかもしれないけど『ひかりのかべ』を強くして受けることだけを考えて!!」
「キ……キル!!」
息を切らせながらも指示に従って今までにないくらい強力なひかりのかべを展開してくれるキルリアに感謝。
「ユウリ!サイトウさん!!もう少し行ける?」
「きついけど……勿論!!まだ大丈夫!!」
「わたしもまだまだ行けます!!」
アブリーとゴーリキーがひかりのかべで対処しきれないものをしっかりと抑えてくれる間に高速で頭を回転させていく。
(相手をよく観察して……何かないか……相手のおかしいところ……)
戦っているポケモンをしっかりと見て情報を整理する。行動。技。立ち回り。あとは……
(ハトーボーにオンバット、コロモリ、チェリムにチェリンボ、マラカッチ。そしてヒポポタスにゴビット、ヤジロン……)
戦っているポケモンを順番に見て今度は奥にいるポケモンを見ていく。そして奥に控えてかすかに見える震えているようにも見えるかげ……
(奥で震えているのは戦っているのが自分の家族や親だから?だとしてもここまでは……)
さらに視線を凝らして奥の影を見る。そこには震えているポケモンの中に混じって横になっているチェリンボの姿……
(あれ……そういえばそもそもなんでここに
さくらんぼポケモンとサクラポケモンであるチェリンボとチェリムは本来なら木の上に生活して生きているポケモンだ。陽の光を浴びるためにそういったところに生息しているのに陽の光の当たらないところに自分から足を向ける必要性はもちろん一切ない。となると当然洞窟になんて生息しているはずがないわけで……。
(そう考えるとおかしなポケモンが目についてくる……)
さっき挙げた中だとハトーボーとマラカッチがそれに該当する。
(本来生息しないはずの場所にいるポケモン。その結論はすごく単純だ。間違いなく今まで住んでいた場所に住めなくなったからそこから避難してきたという事……その原因もまた物凄く単純で外が今、止まない猛吹雪に見舞われているから。でも……)
これだけだと体感まだ三十点くらいの答えにしか届いていない。
(もっと深く考えて……)
もっと分析して考えてみる。
そもそもなぜこの洞窟に移動しようと考えたのか。さっき猛吹雪が吹いているからではと結論だてたけど、実際のところポケモンの生命力はボクたちが想像しているよりもはるかに強い。チェリムで例えるなら陽の光を浴びていないときだと花びらをたたんだいわゆる『ネガフォルム』と言われる状態になるんだけど、この状態の花びらの強度は実はかなりすさまじく、図鑑説明にもある通り弱点であるひこうタイプのポケモンが攻撃する程度では全然意に介さないほどだ。軽い弱点攻撃なんて跳ね返してしまう。となると、吹雪にさらされるだけではもしかしたらネガフォルムになるだけで簡単に耐えきってしまうのではないだろうか?この辺は推測の域になってしまうけど軽い弱点攻撃を跳ね返すことができるのなら、自然に発生する吹雪なんて耐えられるのが普通なのでは?という結論はあながち間違えてもいない気がする。
(ましてやワイルドエリアなんて過酷な状況に身を置いているポケモンならなおさらだ)
預かり屋にいる人たちが吹雪に対策を取って、暖かかったり、暑い時も暖房器具をあらかじめ準備していたところからわかる通り、ワイルドエリアに居を構えている人は対策なんてできて当たり前だ。それをより苦しい環境下で住んでいるポケモンが対応できていないはずがない。そんなポケモンがじゃあなんでこんなところまで移住しているのか。いや、移住せざるを得ない状況になっているのか。
(もしかして……
「っ!?」
頭の中に何かが駆け巡る感じがする。何か大きなカギが一つ解けたようなそんな気が……
(そうだよ、考えてみたらそれこそ簡単だ!!ここにいるポケモンはひこうタイプ、くさタイプ、じめんタイプ……みんなこおりタイプが弱点のポケモンじゃないか!!)
こおりタイプのポケモンによる意図的な長期間の強烈猛吹雪。それならこの季節外れの時期による謎の長時間猛吹雪も説明がつく。本来ワイルドエリアは数時間で天候が変わるほど気候の荒い場所だ。コロコロ変わる気候はそれだけ厳しい自然で柔軟な対応が求められる。しかし逆に言えばそれは
頭の中でまとめていくとどんどん納得がいってしまう。
(くそっ、もっと早く気付けるはずじゃないか!!)
自分が思う以上に単純すぎる答えだ。そこまで頭が回らなかったことにむしろ疑問が残るくらいだ。
(じゃあこの吹雪がこおりポケモンによる意図的な攻撃だとして、奥で倒れている子はおなかが減っていたからだと思っていたけど……もしかして吹雪ダメージももらってて本当に動けない状態なのか……)
そしてもう一つ、実は気になっていたこと……
(この子たちのレベルの低さ……)
ここハシノマ原っぱはワイルドエリア全体で言えばかなり北の方。それはつまりレベルの高い個体が多く存在する場所という事だ。にしてはいま襲ってきているポケモンたちのレベルが低すぎる。もっと高くてもいいはずだ。
(おなかがすいてて傷も負っているなら野生のポケモンならオボンのみやオレンのみ、フィラのみといったきのみを摂取して回復する。ならこの状況で
その答えは恐らく1つ。
(食料や回復アイテムをこの子たちの保護者がとってきているのでは?そしてここにいる個体はみんなその子供の個体。それならば!!)
あまりレベルが高くないのも、生存本能がまだ甘いのも、ここを死に物狂いで守る個体と奥で震えているだけの個体がいるのもものすごく納得がいく。
(ということは今はこの子たちの親はこの猛吹雪の中体を張って食料とかアイテムを探してきていることに……この状況で……?いや、だってこの子たちの親ってことは親のタイプだって……)
全員こおりタイプに弱いはず。そんな中で外に出てしまえばどうなるか。ましてやボクたちがこの洞窟に入って採掘して、そしてここで彼らとバトルを続けている間もずっときのみを探しているのだとしたら……
「ユウリ!!サイトウさん!!今すぐ洞窟の入り口を見てきて!!」
「「……え?」」
いきなりのボクの発言に意味が分からずハテナを浮かべる2人。けど詳しく説明している時間が物凄く勿体ない。だから簡潔に素早く!!
「この子たち、多分子供の個体だ!!きっと今親が食料を探しに行ってるんだ!!だから戦い方や本能がまだ甘い!!だとしたら……」
「フリアの考えが当たっているなら、もういい加減親が帰って来て来るかもしれないってこと!?」
「するとわたしたちは……っ!?ゴーリキー、下がって!!」
ボクたちの言葉に焦りを感じた野生の子たちがここに来てさらに攻撃の手を強める。これはまずい!!
「このままだと私たち挟まれて逃げ場が無くなっちゃう!?」
「わたしが先に駆けて道を空けておきます!!ですから2人は……」
「違う、そうじゃないんだ!!」
やっぱりユウリもサイトウさんも、果ては野生の子たちまで勘違いを起こしている。説明の時間が圧倒的に足りなさ過ぎて攻撃を凌ぎながら伝えるのが難しすぎる。
(こうなったら一か八か……!!無理やり野生の子たちに敵意はないことを伝えるしかない!!)
幸いこちらは受けたり抑えたりすることしかせず、あちらを傷つける行動はとっていない。行動しだいでは誤解がとけるかもしれない。そのためにも……!!
(あのチェリンボがカギ!!)
「キルリア!!」
「キル!!」
「フリア!?」
「フリアさん!?」
ボクが前に走り出しながらキルリアの名前を呼ぶと、キルリアがボクの心を読み取って何をしたいのかを把握し、一緒に走り出してくれる。ユウリとサイトウさんが驚いているけど申し訳ないが今はとにかく野生のポケモンたちを落ち着かせることが先決だ。
目の前のハトーボーとコロモリが放ってくるかぜおこしをキルリアがひかりのかべで防ぎ、真正面から突進してくるオンバットを、キルリアを抱えながらスライディングでくぐり抜ける。すぐさま起き上がり前に走り出すと他のポケモンが立ちはだかったり技を構えたりで通せんぼをしようとしてくる。
「キルリア!!『マジカルリーフ』!!」
「キル!!」
空中に出来上がる草の塊たち。ちょっとやそっとじゃ壊れないこの塊を今度はボク自身の足場として次々と飛んでいく。カブさんとの戦いでキルリアがしてくれたことのモノマネだ。
(天井が低いせいでかなり動きづらいけど……今はこれしかない!!)
マジカルリーフの足場によるパルクールを終え、チェリンボの姿がはっきりと見える。
(もう少し!!)
最後に立ち塞がるのはゴビット。小さな、けど確かな勇気を携えた戦士は少し怯えながらも拳を構える。けどボクもここは引けない。そのまま前に走るボクを見てゴビットはシャドーパンチを構え、恐る恐る放ってくる。
「あぐっ!?」
「フリア!!」
「フリアさん!!」
腕で防いだとはいえポケモンの力で放たれた強力な技。物凄く痛いし痺れるし、何よりも反動で後ろに飛ばされる。それはつまりゴビットと今まで切り抜けてきたポケモンたちの間に倒れることを意味し、すぐにボクを囲む包囲網が完成する。ようやく足を止めたボクにトドメをささんと構えるポケモンたち。
「いっつつ……凄い連携……あっという間に囲まれたや……」
「フリア!!すぐ助けるから!!」
「けどこの距離は……っ!!」
ユウリたちが援護に入ろうと慌ててこちらに駆けてくるけど間に合いそうにない。けど……
「キルリア〜っ!!」
ボクの叫び声に全員がハッとしてチェリンボの方を見る。するとそこにはキルリアが飛んで向かっている状況があった。ボクがゴビットに殴られた瞬間もう片方の腕でキルリアを前に投げておいた。故に起きたこの状況。
ボクの周りにいたポケモンたちが踵を返してキルリアの方に駆ける。
だけどボクを包囲することに時間を使ってしまった今、もう間に合わない。その間にもキルリアとチェリンボの距離がいよいよゼロになろうとしている。 そしてついにキルリアの拳が届く距離に到達した時……
「今!!キルリア、『
「キル!!……キル〜」
キルリアから癒しの水が放たれてチェリンボを優しく包み込んでいき、減った体力を回復していく。
チェリンボの顔がみるみる良くなっていくのが遠目から見てもわかり、チェリンボが攻撃されると勘違いしていた野生のポケモンたちはみんな呆然として立ち止まる。
(今のうちに……っ!!)
痛む右腕を何とか持ち上げてキルリアのもとへ駆けつけチェリンボの容態を確認する。
「こうして近くで見ると酷い凍傷の痕……待っててね。すぐに手当てしてあげるから。キルリア、そのまま『いのちのしずく』を維持してて」
「キル!!」
急遽始まる応急手当に野生のポケモンたちが何が起きているか分からずにタジタジになってしまう。あれだけ激しかった戦いが急に止んだことによって一気に静かになる洞窟。その間に後ろから近づいてくる足音。恐らくユウリとサイトウさんのものだろう。
「フリア、大丈夫!?」
「右腕、かなり腫れていますが大事無いですか?」
「これくらいなら平気。それよりも2人にお願いしたいことがあるんだけどいい?」
ユウリとサイトウさんに右腕のことを指摘された瞬間痛みを自覚してジンジンと熱を帯び始めるけど今はきっとボクのことを優先していい時じゃない。ユウリは明らかに悲しそうな、そして心配していそうな表情をしており、サイトウさんも目のハイライトを戻し、憂いの表情を浮かべている。この2人にそんな表情をさせてしまっていることが本当に心苦しいけど、グッとこらえてお願いを述べる。
「今すぐ洞窟の入り口を見てきて欲しいんだ」
「それは……私たちだけで脱出しろってこと?」
「ううん、違うよ。むしろちゃんとここに戻って来てくれないとちょっとボクが困るかも……」
一瞬ユウリの顔が悲しみから怒りに変わったけど違うとわかった瞬間ほっと安堵の息をこぼす。
さすがにここで先に帰らせたら怒るじゃ済まないことはボクだって理解出来る。逆の立場なら多分ボクも怒るからね。
「では、なぜ入り口の確認を?彼らの親が帰ってくるのであればここで待てばいずれ来るのでは……?」
「そうなら嬉しいんだけど……多分違う。ボクの予想が正しければ……」
サイトウさんが至極真っ当な答えを返してくれる。けど、もしボクの予想が当たっているのだとしたら……この吹雪の中、長時間こおりが苦手なポケモンが危険とわかっていてなお外に出ているのだとしたら……
「洞窟の入り口で怪我しているポケモンが沢山いると思う。だから、そのポケモンたちを連れてきて欲しいんだ。その子たちも、手当てしてあげたい」
最悪の場合、命を落としているかもしれないから……。
旅仲間
フリア→ユウリたちは旅仲間。一緒にいるの楽しい。
ユウリ→フリアは先輩であり目標でありいつか追いつきたい存在。隣に立ちたい存在。
という感じの差。
フリアくんは初めての後輩という存在にいまいち考えや感覚が回ってなかったりします。
この辺はサトシとショータみたいな感じです。
吹雪
というわけで実は自然発生では無い。かもしれないです。
引きこもっているポケモンの時点で少しタイプに偏りあるって思った方は意外と多そうな気もしてます。
では原因は……?
死にものぐるい
お母さんやお父さんが帰ってくると信じて自分のいる場所を守る。
そりゃ死にものぐるいにもなりますよね。
パルクール
フリアくんの意外な運動神経。
前の預かり屋でも手すりに腰掛けて滑って降りてたりと意外とアクティブです。
さすがにスーパーマサラ人には勝てないと思いますが……
真夏に吹雪の話を書くのは少し変わってるなぁと……
いえ、異常気象なだけで実際の時間軸は冬では無いですけどね。
しっかし暑い……早く秋にならないかなぁ。