「ついに来た……ドダイトス……」
ボクにとってヨノワールが特別であるように、コウキにとってはこのドダイトスこそがとても特別なポケモンだ。そしてその特別度合いと言うのは、今のボクとヨノワールのように、一目見るだけでも伝わって来る。
まず普通と違うのはその体格。
ドダイトスと言うポケモン自体、ポケモン全体の中でもなかなか大きいサイズを誇ってはいるが、そんなドダイトスたちの中でも、コウキのドダイトスは更にサイズが大きい。
大木のごとく太い脚で、一歩踏み出すたびに巻き起こるズシンと身体に響いてくるその振動は、そのサイズの大きさが見た目だけではないということを教えてくれる。
もし野生でドダイトスが群れで存在しており、その中心にコウキのドダイトスと同じようなポケモンがいれば、間違いなくそれがリーダー、もしくは親分とも言うべきだろう個体というのがすぐに想像できるレベルだ。そのくらいには一回りくらい大きさが違う。
そしてそのサイズの違いはただの見掛けだましではない。
サイズが大きくなれば、その分動きはゆっくりになるはずなのに、そんな気配をまるで見せないほど機敏に動け、立派な身体から放たれる技はどれも強力で、決して油断できるものではない。
もっとも、ドダイトスと言う種がそもそもあまり速くないので、対応自体はまだ出来なくはないけど。
そしてもうひとつの特徴。それが今もドダイトスの身体を包み込んでいる緑色の淡い光。
(相変わらず、『しんりょく』は常時発動ってわけね……)
それはしんりょくの恒常化。
本来であれば、体力が減らなければ発動せず、この一芸に特価させる修行をしたジュンであっても、ちょっと割合を変化させたりするのが限度だった条件を取っ払われてしまっているというとんでもない状況。
ただでさえ恵まれた体格とステータスをしているのに、それが特性によって無条件で強化されているというのはシンプルに強い。
だからこそ、コウキの切り札として君臨し続けている。同じナナカマド博士からもらったはずなのに、こんなにも差が生まれているのは、ひとえに彼が、バトルだけでなくブリーダー能力にも長けている証だろうか。
「これが正真正銘、最後だ。フリア」
「うん……ようやくここまで来た」
お互い最後のポケモンを場に出し、一通り観察し終わって交わされる言葉。
ここまで、本当に遠回りをしてきた。けど、遠回りをしてきたからこそ、こうやって最高の舞台で、最高の状態で闘える。それが本当に嬉しくて。
(けど、それもここで終わる)
終わらせたいのに、終わらせたくない。けどやっぱり、終わらせたい。
矛盾した感情がぶつかり合い、そのぶつかり合いによってボクの中の熱がどんどん上がっていくのを感じる。
それはどうやら目の前のコウキも同じらしく、目を合わせ合うボクたちは、いつの間にか口角をあげながら指示を出していた。
「ヨノワール!!『ポルターガイスト』!!」
「ドダイトス!!『ぶちかまし』!!」
「ノワアアアァァァッ!!」
「ドダアアアァァァッ!!」
指示を受けたヨノワールとドダイトスは、大声をあげながら真っすぐ突っ込む。
ヨノワールは全身を黒色に染め、ドダイトスは全身に茶色のオーラを纏って、全身全霊の突進を繰り出した。
ヨノワールもドダイトスもそんなに速い方ではないというのに、そんなことを感じさせないほどのトップスピードをもって動き出した2人は、瞬きをした瞬間にはもうお互いの距離は詰まっており、その数瞬後、とてつもない衝撃と爆音、そして痺れが、ボクの全身に襲い掛かってきた。
ヨノワールの視線を借りれば、そこには視界一杯に広がる、必死で力強い、それでいてとても楽しそうなドダイトスの表情。
お互いの頭同士をぶつけ合っているせいか、ドダイトスの感情がダイレクトに伝わってくる気がする。
そして当然、共有化しているがゆえに、ヨノワールのリアルタイムの感情も直に伝わって来る。
(うん……凄く楽しい……だからこそ……絶対に勝つよ!!)
(ノワッ!!)
お互いの頭をぶつけ合いながら、改めて決意を胸にしたボクとヨノワールは、お互いに言葉を交わしながらドダイトスとの鍔迫り合いに一旦の終止符を打ち、大きな衝撃と共に弾かれるように後ろに下がった。
ドダイトスも同じように後ろに弾かれているあたり、お互いの火力は互角と言う事だろう。
その事実が、ますますボクの心を盛り上げてくれる。
「『いわなだれ』!!」
「『ロックブラスト』!!」
後ろに弾かれたお互いが次に放った技は、名前は違えどもやっていることは岩の弾幕の打ち合い。
ドダイトスは口元から岩を、ヨノワールは両手を打ち付けたと同時に召喚した岩を同時に解き放ち、お互いの中心点でどんどんぶつけ合う。
ぶつかり合った岩たちは、その中心点で粉々に砕け散り、砂ぼこりとなってその場に滞留。お互いがお互いの姿を認識できなくなるように隠していく。
(仕掛けてきそう……ヨノワール、弾を手元に)
(ノワ)
その煙を前に警戒心を引き上げ、ポルターガイストで包み込んだ岩をひとつ右手に持って待機。何をされてもすぐに反撃できるように準備をして……
「っ!?左!!」
「ノワッ!!」
左から感じた嫌な予感に従って、右手を思いっきり突き出して叩きつける。するとそこには、いつの間に移動してきたのか、ドダイトスが背中の大木を思いっきりこちらに叩きつけてきている姿が写った。
振り下ろされる大木とぶつかる漆黒の塊は、、ボクの右腕に激しい痺れを伝えながら相殺。が、単純な威力勝負でこちらが負けたみたいで、ドダイトスの位置は変わらず、こちらだけがノックバックしてしまう。
大きく後ろに飛ばされたヨノワールの先には、これまでの戦いによって残った岩石たち。このまま飛ばされたらぶつかってしまう所まで飛ばされたヨノワールは、どうやって受身を取るか少し考える。
「ドダイトス!!もう1回『ウッドハンマー』!!」
「ドダッ!!」
が、考えているヨノワールが動き出すよりも速く走り出していたドダイトスが、もう目の前で大木を構えて待っていた。
「岩の影!!」
「ノワッ!!」
このままでは岩と大木に挟まれてしまうため、ヨノワールは岩の影に潜り、そのまま影の中を移動して一気に距離をとって回避する。
(あの速さにこの威力……間違いない、『からをやぶる』をしてる!!)
本来ならありえない速度と、いくら恵まれている上で特性があるからと言って、ヨノワールを相打ちでここまで吹っ飛ばしてくるその威力を前にすぐに答えに気づいたボクは、努めて冷静に頭を動かす。
「『かわらわり』!!」
「ノワッ!!」
「ドダッ!?」
相手のウッドハンマーをやり過ごしたのを核にインしたこちらは、再び影を伝って、今度は急接近。ドダイトスの身体の下から現れたヨノワールが手刀を叩き込む。
奇襲性を重視したため威力はあまりないものの、それでも急に来た攻撃はそこそこのダメージを与えたみたいで、ドダイトスは小さくない声を上げた。
(確かに威力も速度も凄いけど、その分防御は脆い!!チャンスはある。ここはヒット&アウェイで……)
「地面に『ぶちかまし』!!」
「ドッダッ!!」
この反応を見てちゃんとデメリットはあることを確認したボクは、改めてゆっくりバトルを展開させようとして、しかしドダイトスの大きな足踏みによって考えを崩される。
「うぐっ」
「ノワッ!?」
地面を揺るがす強烈なエネルギーは、影に潜っていたヨノワールを無理やり空中へはじき出す。同時にフィードバックも全身に返ってきたためとてつもなく痛い。
「『ウッドハンマー』!!」
「『ポルターガイスト』!!」
しかし、はじき出されたヨノワールに向かって既に大木を構えたドダイトスが待っているため、痛みに気を取られる訳には行かない。
ボクとヨノワールは両手を忙しなく動かして近くの岩石を招集。ポルターガイストで目の前に瞬時に岩の壁を作り出し、襲いかかる大木に対する防御行動を開始。ありったけの岩を集めて作ったこの壁は何とかドダイトスの攻撃を受け止めきってくれたので、ドダイトスの動きを少し止めることに成功した。
「『かわらわり』!!」
その隙を逃したくないこちらは、ドダイトスの上に位置取り、そこから右の手刀を構えて、直接ドダイトスに叩きつけて地面に落とす。
「『いわなだれ』!!」
さらに地面に落ちたドダイトスに向かって岩の雨を発射。いわなだれに関してはドダイトスにとってこうかはひとつの攻撃だけど、からをやぶるで防御が下がっているのであれば、これでも十分ダメージは見込めると思っての連続攻撃だ。実際この連撃を受けて、ドダイトスの表情は少し苦しそうなものになっている。
「『ぶちかます』!!」
「ドッ……ダッ!!」
そのうえでコウキが指示するのは暴れ行動。
全身に力を溜めたドダイトスが勢いよく両前足を地面に叩きつければ、それだけで周囲に衝撃波が発生。こちらが落としていたいわなだれ全てを粉砕し、更には地面を蹴った反動で空中に飛び出し、ヨノワール目掛けて飛んできた。
「『ウッドハンマー』!!」
「『かわらわり』!!」
一瞬で距離をつめてきたドダイトスが振るう大木を前に、こちらは慌てて白く光らせた両腕をクロスさせながらかわらわりを放って防御。しかし、威力に天と地の差があるのか、鍔迫り合うことなく弾かれたヨノワールは背中から地面にたたきつけられる。
「ぐぅっ」
両腕と背中に感じる痛みに声を漏らすけど、怯んでいる場合じゃないこちらはすぐさま移動を脳内で指示。背中を地面から離し、慌てて飛び退いたところに、今度はドダイトスのぶちかましが突き刺さり、大地が大きく揺れた。
「『ポルターガイスト』!!」
あまりの衝撃に驚いて身体が硬直しそうになるのを無理やり抑えたこちらは、近くの岩を使ってポルターガイストを発射。爆心地であるドダイトスから距離を取りながら放った一撃は、急いでやった事と、手頃な小さめな岩の攻撃ということも相まって、決して大きな攻撃では無いけど、しっかりと突き刺さる。
(『ウッドハンマー』は反動がある技だし、『ぶちかまし』は打つ度に自身の防御と特防を下げる技……だったら、これくらいの攻撃でも効くでしょ!!)
そんなボクの考え通り、ドダイトスはしっかりと怯んだ姿を見せてくれる。やはり、攻撃に全振りしている分、本来の強みである防御力はかなり犠牲にしているらしい。
「構うな!!『ロックブラスト』!!」
「ド……ダァッ!!」
「くっ、『かわらわり』!!」
「ノワッ!!」
しかし防御が手薄いのは相手も理解しているため、少々被弾しようがお構い無しに攻めてくる。
ポルターガイストで大きく後ろに下がったドダイトスは、しかしすぐに態勢を整えて口元から岩の弾丸を複数発射。からをやぶるによって力が増強されているせいで弾速がとてつもなく速く、かわらわりでさばいて行くものの、数秒程で限界が来て被弾が増え始める。
(このままはまずい……っ!!)
さすがに腕へのダメージが大きすぎるのでかわらわりで受け止めるのは早々にあきらめて横に移動。身体の半分を地面の影に埋めながら動くことによって少しでも被弾面積を抑えて回避をする。
「逃がさないぞ!!『ウッドハンマー』!!」
「っ!?」
しかしそんな此方の行動なんかおみとおしと言わんばかりに、回避先に移動しているドダイトスが背中の大木を大きく振りかぶって待っていた。
このままでは直撃コースになってしまうので、慌てて急ブレーキをかけたこちらは、そこからさらにスウェーバックをすることによって少しでも頭を後ろに下げて、相手の攻撃が当たらないようにする。
共有化のおかげですぐに気づいたことと、限界まで頭を後ろに下げたことによってウッドハンマーは葉の部分がギリギリ顔を掠る程度にとどまる。それでも皮膚が擦れた感じがしてヒリヒリとした痛みが返ってくるあたり、ドダイトスの火力の高さを感じるけど、当たらなかったのはとても大きなことだ。
ピンチの後にはチャンスが来る。大ぶりな攻撃故に後隙も大きいドダイトスに対して、すぐさま頭を前に戻したヨノワールは、ロックブラストで発射された岩をポルターガイストで包み込み、思いっきり叩きつける。
「ッ!?」
反撃を受けたドダイトスは、そのまま大きく弾かれ、部屋の壁に叩きつけられる。
「『じしん』!!」
「『ぶちかまし』!!」
ようやく取れたこちらのターン。これを生かすべく、すかさずじしんで追撃を選択したこちらに対して、あちらが行ってきたのはぶちかましによる相殺。が、先ほどのポルターガイストがよっぽど効いていたのか、その動きは半テンポ遅く、攻撃こそ防いだものの、ギリギリのガードとなって態勢が崩れる。
「『ポルターガイスト』!!」
そんなドダイトスに向かって行われる、自身の身体を弾とするポルターガイストによる突進。
ダンデさんとのバトルで編み出した、文字通り全身全霊のこちらの攻撃。これをもって、相手の体力を削り切ってなつき現象を発動させようと試みる。
「ドダッ!?」
ドダイトスは、コウキを悲しませまいと耐えた。
(来たっ!!なつき耐え!!)
結果は大成功。こちらの狙い通りになつき耐えを発生させたドダイトスは、歯を食いしばって無理やり耐えていた。
ドダイトス相手にこの状況はかなり大きい。なぜならそれは、ウッドハンマーが打てなくなるから。
なつき耐えが出たということは、残り体力が少ししかないという事。となれば、自身の体力を削る技はそのまま自身の脱落を意味する。くさタイプの技が『ウッドハンマー』しかないのも確認している以上、しんりょくの効果も無意味になるため、被弾ダメージが一気に下がるはずだ。
(この調子で……っ!?)
最後まで押し切ろう。そう考えた時に背筋を駆け抜ける嫌な予感。その予感に従ってほぼ反射的に腕をクロスして防御の姿勢をとれば、両腕の下から鈍器をぶつけられたかのような衝撃が加わり、無理やりガードをこじ開けられる。
ヨノワールの視界を借りて戦況を見てみれば、そこにはバンバドロがキックするかのように、後ろ向きの状態から足を振り上げて、かかと部分でこちらのガードを蹴り上げていたドダイトスの姿。
「まっず!?」
「『ぶちかまし』!!」
此方のガードが解かれたのを確認したドダイトスは、すかさず身体を反転させて突撃耐性。全身に茶色のオーラを纏ったまま、全力の突進を繰り出してきた。
両腕を上に弾かれた状態のこちらではこの攻撃を避けるのは不可能だ。ならもうここは、最低限の守りだけ準備してヨノワールの体力を信じて耐えるのを願うしかない。
けど、ただで攻撃を受けるわけにはいかない。
「両手を上にあげたまま『いわなだれ』を撃って、残り時間でちょっとでもいいから『ポルターガイスト』で盾を作って!!」
ぶちかましによる突進が当たる直前に、打ち上げられた両腕をそのまま頭上で合わせて岩を召喚。そのまま空に打ち出しながら、周りの小さい石を集めて即席の盾を作成。が、こんな急造の盾なんて当然役に立つわけもなく、身体にとてつもない衝撃が走って来る。
「かふっ!?」
「ノワッ!?」
お腹に突き刺さる痛みによって、肺の中の空気を無理矢理吐き出されたボクと、衝撃によって後ろに吹き飛ばされ、部屋の壁にたたきつけられたヨノワールはとても大きなダメージを負う。
正直、ちょっとでも気を緩めていたら今の一撃で倒れていたかもしれないレベルの攻撃だ。けど、ポルターガイストが少しだけ威力を吸収してくれたため、何とかギリギリのところで耐えることが出来た。
それに、こちらもただやられたわけじゃない。
「ドダッ!?」
ドダイトスは、コウキを悲しませまいと耐えた。
先ほど上に打ち出したいわなだれが空中で反転。そのままドダイトスに降り注ぐことで、再びドダイトスのなつき耐えを消費させることに成功した。
「ノワ……」
「ドダ……」
一連の攻防が一旦終わり、態勢を建て直した両者は、肩で息をしながらお互いを見つめ合う。
こちらのヨノワールはもうボロボロだけど、あちらのドダイトスも、あと1回のなつき耐えの権利を持っているだけ。
もっと分かりやすく言うなら、あと2回攻撃に当たれば倒れる。
「「……」」
ボクもコウキも、そのことはしっかりと理解している。
もうここまで来たら、作戦なんてほとんどない。
あとは、意地と根性だけのぶつかり合い。
「『ロックブラスト』!!」
「『いわなだれ』!!」
どちらからともなく、自然とタイミングの合うボクとコウキの指示。
お互いひとつずつ放った岩の弾丸は、お互いの中心点でぶつかり合い、破壊音と砂埃を小さく立てる。
「「ッ!!」」
その音を合図に、最後の力を振り絞って、ドダイトスとヨノワールが同時に動き出す。
目指す先は目の前のライバルのみ。
それ以外の一切を視界に入れることなくとにかく猛進する彼らは、とにかく相手より速く一撃を叩き込むことだけを考える。
ただ真正面でぶつかり合うだけだと、必要攻撃回数が1回多いボクの方が不利。なぜなら、相打ちだったとしても先に体力が尽きるのはこっちだから。
勝つには、相手の攻撃を完璧に捌いた上で、2回殴らないといけない。
「『じしん』!!」
ということもあり、先に仕掛けるのはボクの方。
前に出ながら拳に力を込めたヨノワールは、そのまま拳を地面にたたきつける。
本来ならこうかはいまひとつの攻撃も、現在の体力状況的に絶対に避けざるを得ない相手にとって、地に足をつけている全てのポケモンが攻撃対象となるこの技は凶悪の一手。これを避けるとなれば、空中に浮き上がるしかない。
「跳べ!!」
当然コウキはそれを選択。力強く地面を蹴ったドダイトスは、その巨体からは想像できないジャンプ力を見せて空中へ飛び出し、じしんを避ける。その姿は、一部の人にとっては驚きの光景だろう。
けど、空中ならドダイトスに避ける方法はない。
コウキのドダイトスなら跳ぶことは出来ると判断した上で、さらにその後に攻撃を仕掛けるために、かわらわりの準備をしながら上を向くこちらは、ジャンプの勢いのまま突っ込んでくるドダイトスにタイミングを合わせる。
このまま行けば、こっちの攻撃は一方的に決まる。
(まだ……手はあるでしょ?コウキ……!!)
しかし、こんな状況でも決して油断はしない。
だって相手はコウキだから。
「『ロックブラスト』!!」
「来たっ!!」
そんなボクの期待に答えるかのごとく、空中にいるドダイトスの口元に岩の弾丸が装填。この岩でこちらに攻撃を先に振らせて、その後隙を攻撃しようという考えだろう。
(大丈夫。そのための『かわらわり』。回転率はこの技が1番だから、後隙をできるだけ減らしながら……)
(ノワッ!!)
(え?)
これからこちらがするべき行動を頭の中で整理したボクは、しかし次の瞬間、ヨノワールの声によって一気に現実に引き戻される。
ヨノワールに借りた視線の先。そこにはロックブラストを構えたドダイトスが、前足を振り上げた姿が映っていた。
(まずっ!?)
と同時に全てを理解したボクは、すぐさま行動を起こそうとする。が、それよりも速く、前足によるぶちかましによって打ち出された岩の弾丸が、ボクの想定よりも何倍もの速度を持って飛んでくる。
口から発射されたものであれば十分対処出来た。けど、それはコウキもわかっていた。だからこそ、ロックブラストの発射に口ではなく、ぶちかましを使った。
速度と威力を内包した弾丸は、そんなコウキの狙い通りワンテンポ速くこちらに飛んできており、反応できるかどうかギリギリの所だった。ヨノワールが声を上げてくれなければ、間違いなく間に合っていない。
(頼む……間に合え……!!)
そこからは、全てがスローモーションになって見えた。
ゆっくりと動く岩石と、迫り来る弾丸を避けようと必死に身体を右にずらすヨノワール。
必死の行動。
当たればこちらが負ける最大のピンチ。
こちらの体力を削り取る、死神の一撃。
その攻撃は……
ヨノワールの回避が間に合い、右手の先を擦るだけにとどまる。
「っ!?」
指先に走る微かな痛みに表情を一瞬歪めながらも、少しほっとするボク。が、ピンチはまだ終わらない。
「ドダッ!!」
弾の次に来るのは、ぶちかましを構えたままこちらに来るドダイトス。
弾丸を避けられることを想定していた彼は、岩を放った状態からそのままこちらに突進をして来ていた。
隙を生じぬ二段構え。
再び訪れたピンチ。しかし、今度は、さっきのように焦ることは無い。
「『ポルターガイスト』」
先程ヨノワールの手を掠めた時にオーラを与えた岩が、巻き戻しのようにドダイトスの元へと戻って被弾。
ドダイトスは、コウキを悲しませまいと耐えた。
これにより、最後のなつき耐えを消費し、同時にぶちかましの勢いを一瞬削いだ。
チャンスは、もうここにしかない。
「ヨノワール!!『ポルターガイスト』!!」
「ノワッ!!」
この一瞬の隙をついて、全身に漆黒のオーラを纏ったヨノワールが、全力の突進をドダイトスに放つ。
「負けるなドダイトス!!『ぶちかまし』!!」
そんなヨノワールを前に、威力を少し殺されながらも、それでもドダイトスが足を振り下ろす。
正真正銘、お互いに最後の攻撃。
全力の力と想いと意地と根性を乗せた魂の一撃。
その2つが、フィールドの中心点でぶつかった。