【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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イダイトウが気になりすぎてずっとモヤモヤしています。
本当に楽しみですね。
個人的にはレジギガスのお話も追加されていたら飛んで喜びます。

後、今回は少しお知らせがございます。
あとがきにて、いつもの補足が終わったあとに書いておきますので、普段あとがきを読まない方も全てを飛ばして最後の数文だけ読んでいただけたらなと思います。


43話

「ウルガモス……なるほど、彼がこの異変の犯人だったというわけだね」

「フィィイッ……」

 

 突如巣穴の中に現れたカブさん。本来ならいるはずのない人に色々疑問や質問をぶつけたいところだけどさすがに今の空気感でそれを口に出すことははばかられた。

 

 力尽きる寸前とはいえ未だに大きなプレッシャーを放って睨みをきかせるウルガモスと、そのウルガモスの威圧を真正面から受けながらもマルヤクデと共に涼し気な顔で、しかしこちらもプレッシャーたっぷりで返していくカブさん。

 

 ジム戦の時と似たような空気になりながらも明らかに違う点があり、その違う点にみんなが気づいていた。それは……

 

「ねぇフリア……あのマルヤクデ……」

「うん……あの時戦った個体と全然違う」

 

 マルヤクデから放たれるのプレッシャーの強さ。そのあまりにも強い威圧感にあのウルガモスまでもが少し押されている。

 

(間違いない。あれがカブさんの本気のパーティの1匹だ……)

 

 ジムの時対峙した子が弱いとは言わないけど、見るだけで感じるその力の差。ボクの相棒でさえ勝てるかどうか分からない戦いを繰り広げることになるであろう洗練されたその強さ。ガラル最強のほのおタイプ使い。思わず呼吸を忘れそうになるほどの凄みがそこにはあった。

 

「大丈夫だよ、ウルガモス。ぼくたちは君になにか意地悪をしたい訳じゃないんだ。ただ少し、君を助けさせて欲しいだけなんだ」

「フィィッ……」

 

 優しく、あやす様に声をかけるカブさんに対して未だに警戒心を解かないウルガモス。当然といえば当然の行動なんだけど、もしもしなくても先程までボクたちが戦っていたせいというのも少なからずあるため正直少し申し訳なさが出てくる。しかしカブさんはそんなこと最初から分かってたとばかりに気にせずにコミュニケーションを取り続ける。

 

「本来は寒さに弱く、震えるポケモンたちを温める優しさを持った君たちの事だ。きっとなにか事情があるのだろう?」

 

 目線を合わせて話し合うその姿は、どこか子供に向けて何かを教えるような、そんな優しさを感じる。カブさんがしているというのがさらにその感覚を助長させてくる。

 

「大丈夫だ。さっき戦ったあの子たちも君を傷つけたかったわけじゃない。ただ、いきなり自分たちの住む場所を、大切なものを少しだけ傷つけられてびっくりしちゃっただけなんだ。謝れば許してくれるし、ちゃんと願えば君を手伝ってもあげられる。君も暴れたくて暴れてしまった訳では無い。そうだろ?」

「フィィ……」

 

 あれだけ敵意をむき出しにしていたウルガモスのプレッシャーが少しずつ収まっていき、やがてカブさんのことを信用したのか、もう襲われることは無いと理解しそのまま脱力。安心感からここ数日間戦い続けていた疲れとこの戦いで負ってしまったダメージをようやく身体が理解したのか、意識こそまだあるものの、地面に倒れ込んでしまった。いきなり無防備な姿をさらけ出してきたことになんだか毒気を抜かれてしまい、こちらとしてもどう反応すればいいのか少し迷ってしまうほど。

 

(空気の高低差ありすぎて別の意味で風邪ひきそうだねこれ)

 

 翅から出る鱗粉もなりを潜め、今やカブさんの手を素直に受け入れて気持ちよさそうに撫でられるウルガモス。もうボクたちは何もしなくてもこの子は自分からエンジンシティのポケモンセンターへと足を運ぶことだろう。ようやく一安心だ。

 

「はぁ〜……疲れたぁ……」

「いつになく激しい戦いでしたね」

「まさかここまで忙しくなるとは思いませんでしたよ……」

 

 ユウリ、サイトウさん、セイボリーさんも異変の終わりを感じ取りやっとの思いで脱力。体から出てきた嫌な汗を拭きながら、暑さのせいで少しラフになっていた格好を戻していく。ウルガモスが大人しくなったことと、モスノウたちが元気を取り戻したことによってまた少し巣穴内の温度が下がったためだ。もっとも、ふぶきも放つ理由がなくなってしまったため温度が下がると言っても体感数度下がっただけなため寒い訳では無いんだけどね。単純に汗が冷えてはいけないという理由だ。最後ダイストリームのせいで結構濡れてもいるし……

 

「さて、本来だとぼくが解決しないといけなかったんだけど……申し訳ないね」

「いえ!カブさんがいなければウルガモスのことを助けてあげられなかったので……ありがとうございます!!」

 

 少し苦い顔をしながらそういうカブさんに対してボクも困っていたところだったから気にしないでいてほしいという思いで明るく返す。

 

 正直手詰まりとはいかなかったけどあまりやりたくなかった手しか残ってなかったので本当にありがたかった。さっきも言ったけどウルガモスのレベルが高すぎて、言うことを聞かせることがかなり難しそうだったため今すぐにウルガモスを助ける方法というのが無理やり連れていくしかなく、そのあとリリースをするにしてもまたすぐに暴れる可能性が捨てれなかったためなかなか手が出せなかった。そんなところにほのおのエキスパートの登場だ。安心感が違うよね。

 

「でも、なんでカブさんがここに?」

 

 だけどユウリの質問もボクの頭に浮かんでいた。巣穴の中にいるために今の時間は正確にはわからないけど、体内時計ではおそらく昼を過ぎるかすぎないかくらいの時間だ。ジムリーダーとしての業務……というか、なんなら今は挑戦者と戦っている最中でもおかしくない時間だ。そう考えるとここにいるのは嬉しいがおかしい。

 

「それに関してなんだが今日はジムを急遽お休みにしてもらったのさ。どうもハシノマ原っぱが異常な吹雪に覆われているという連絡が入ってね」

 

 どうやらあの異常気象しっかりと通報されていたみたいだ。

 

(……っていうか考えたら当たり前だよね)

 

 正直ボクでも気づけるような出来事だったんだからもっと早くに気づいて通報している人がいても全然おかしくない。考察から気づけたといってもボクは気象予報士じゃないしね。あれでも全体から見たら遅い方だったんじゃないかな?

 

「空を見上げても雲は一つもないのに下を見れば吹雪が渦巻いてて、並みの人では近づけずそのほとんどが追い返されていた。そして帰ってこなかった一部の人たちもナックルシティに到着したという記録は残ってない……となるとリーグとしても放置できない。そこで白羽の矢が立ったのがぼくというわけさ。ふぶきを操るとなると自然とこおりタイプのポケモンの仕業になる。そうなれば弱点をつけてなおかつ近くにジムを構えるぼくが一番の適任……てね?」

 

 確かにすごく納得のいく答えだ。ユウリも同じみたいでなるほどといった顔をした。

 

「だがすでに予約を取っている人を無碍にすることもできない。幸いにも君たちが持つロトム図鑑が一か所に集まっているのが電波を逆探知した結果わかったから命に別条がないことも確認できたしね。だから少し遅れての行動となってしまった。君たちの救助が遅れたことには謝罪をしよう」

「気にしないでください。カブさんの立場もよくわかっているので……」

「そういってもらえると助かるよ」

 

 忙しい中わざわざ駆けつけてくれたんだ。感謝こそすれ、文句を言うのはお門違いだ。

 

「しかし、まさか原因がウルガモスがいるからとは思わなかったよ……」

「実は……」

 

 こおりタイプの鎮静化だと思ってきてみたらその真逆のタイプ。それもほのおタイプの中ではかなり強力な方と言われるウルガモスが待っていたんだ。カブさんの視点では予想とは真反対のポケモンのお出迎えにかなり困惑したはず。だけどそこはさすがジムリーダー。しばらく思案顔を浮かべているカブさんだったけど、事情を一つずつしっかりと説明していけばすぐに理解してもらえた。

 

「成程。モスノウとウルガモスによる喧嘩が原因だったのか……それでこの状況が出来上がったわけだね……説明を、そしてこのふぶきを止めてくれてありがとう。あとのことはぼくに任せて、君たちは一度預かり屋に戻って休むといい。かなり無茶をしたと見えるからね。ゆっくり休みなさい」

「はい、そうさせてもらいます」

 

 カブさんならすべて任せても問題ないはずだ。これで心置きなく預かり屋に戻れる。

 

「終わったあああぁぁ!!帰れるううう!!」

「ええ、早く帰って休息を取りたいですね」

 

 地面に思わず座り込み腕を伸ばすユウリと同じく体の疲れを少しでも抜こうと腕を伸ばしてちょっとだけリラックスするサイトウさん。

 

「まったく、はしたないですよ」

「そういうセイボリーさんも足震えてますよ?」

「こ、これは武者震いです!!」

「今武者震いするような場面じゃないですよ」

「ははは……」

 

 セイボリーさんをいじったり突っ込みを入れたりのいつも通りの空気に思わず笑みがこぼれてしまう。なんだか安心感を感じてしまい、ようやく日常に帰ってきたって感じが凄いする。いや、まだ安心したらだめだけどね。

 

「ほーら、遊んでないで早く帰るよ」

「はーいって、フリアは体冷えてない?大丈夫?」

「大丈夫だよ。ほら、この通り怪我もしてないし……」

「でもまた雨に濡れたでしょ?早く温めないと!!」

「ちょちょちょ、押さないでって!!」

 

 はっとしたユウリが急にボクの背中を押して出口にどんどんと誘導していく。どうもボクが風邪で寝込んで倒れたあの時からボクに対して過保護になっている気がするんだけど……気のせいじゃないよねこれ?

 

「ほ、ほら、濡れたのはみんな一緒だし他の人が大丈夫なら……」

「フリアは特に心配なの!!」

「なんでボクだけ!?」

 

 確かに前科があるのはわかるんだけどたった一回だけでここまではちょっと過剰な気がするんだけど!?

 

 ユウリに振り回されているボクが視線でセイボリーさんとサイトウさんに助けを求めるものの、微笑みを返すだけで何もしてくれない……いや、セイボリーさんは微笑みじゃなくてにやけ顔だ。

 

「そこのナルシスハット絶対にあとで仕返しするからね!?」

「何ですかその不名誉なあだ名!!」

「うるさい!そのにやけ面なんかむかつくからあとでからさ百倍ポフィンの刑に処してやる!!」

「仕返しがなんか陰湿なのが本当にあなたらしいですね!?」

 

 肉体的ダメージがない分感謝してほしい。

 

「まあまあ。それだけあなたが大切なんですよ」

「ほ、本当かなぁ……」

 

 セイボリーさんに文句を言いながらも引きずられているボクに対して小声で耳打ちしてくるサイトウさん。そんなに大切なら少しくらいボクの言葉を信じてもいい気がするんだ。

 

「明らかにわたしたちと扱いが違うじゃないですか。うらやましいですね?」

「もしかしなくてもサイトウさんもボクをからかって遊んでるでしょ?」

 

 サイトウさんがここまで柔らかく微笑んでいるのは付き合いが短いボクでも珍しいことだとわかったけど、だからと言ってこの状況で見たくはなかったよ……。

 

「……サイトウさんも激辛ポフィンたべる?」

「……フリアさんもなかなか意地悪じゃないですか?」

 

 短い付き合いだけどサイトウさんが甘党だってことはよくわかっている。既にボクのポフィンを気に入っていることもよくわかっているのでこうやって言えばおとなしくなってくれるはず。

 

「仕方ないのであなたをからかうのはやめましょう。けど、少しは彼女のことも考えてあげてくださいね?」

「……わかったよ。まぁ、迷惑や心配かけたのは事実だからね」

 

 それにボクだって嬉しくないわけじゃないんだ。シンオウを旅していた時も無茶に誘われて連れていかれたことはあっても、こんなふうに心配されて手を引っ張ってもらったことはなかったから新鮮な気持ちだし嫌なわけじゃない。

 

 今もボクの手を掴んで引っ張っていくユウリの背中と握られた手を見つめる。

 

(……うん。まぁ、たまにはいいかな?)

 

 握られた手のを暖かさを感じながら、ボクたちは少し駆け足気味に巣穴の外へと出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「速く速く!!」

「ちょ、そんなに引っ張ったら逆に疲れちゃうって!!」

「相変わらず騒がしいですね……」

「退屈しないのでわたしは好きですけどね」

 

 四人の優秀な卵たちが少し急ぎ足でこの巣穴から出ていくのを見届ける。この天候の異常を知った時はかなり厄介なことが待っていると思ったからわざわざ切り札のマルヤクデを連れてきたのだが、ふたを開けてみればまさかの彼らが解決していたという状況。

 

(いやはや、シンオウのチャンピオンと新旧ガラルチャンピオンにそれぞれ認められた子。そしてかくとうジムの秘蔵っ子……みんな推薦されるだけの理由はあるってことだね。本当に今年は豊作だよ。いい風が吹いてきている)

 

 ガラルの、そしてポケモンリーグ界隈の未来は明るい。そのことに自然と頬が緩んでしまう。すぐ横で同じほのお、むしタイプをしているためか意気投合して楽しそうに会話をしている2匹がいるのも、こんな場所でありながらぼくの心をやんわりとさせてくれる一因だろう。

 

「彼らには頭が上がらないな」

 

 大人としては子供にこんな危ないことをさせてしまったのはダメなのかもしれないけど、嬉しいものは嬉しいのだ。

 

「いけないな、年を取るといろんなことを考えてしまう。しかし……」

 

 改めてマルヤクデと楽しそうに話をするウルガモスへと視線を向ける。

 

(ウルガモスがなぜここに……)

 

 ぼくの頭の中は彼らのことからウルガモスのことへを変わっていく。

 

 ウルガモスは確かにガラル地方に生息するポケモン……だがガラル地方ならどこにでもいるわけではない。このポケモンの生息地はガラル地方から東に海を渡った先にあるヨロイ島と呼ばれるところであるためここでお目にかかることはまずない。少なくともぼくは本島に野生として生息しているところは見たことがない。

 

(なぜ、そんな遠い所からわざわざこちらに……?)

 

 ウルガモスが渡り鳥のように海を越えてくるという話は聞いたことがない。

 

 そんなポケモンがなぜはるばる海を越え、そのうえ住処を奪うような行動に出てしまったのか……

 

(う~ん……少しだけ、嫌な予感がするね……後で旧ガラルチャンピオンに話をしてみた方がいいかもしれない……)

 

 まだ、この問題は終わっていない。そんな予感が少しだけした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「お世話になりました」」」」

「いえいえ、お礼を言うのはこちらの方よ。ふぶきを止めてくれてありがとうね」

 

 ウルガモスとの激闘から二日後。ユウリからの提案のため断れず、しっかりと休息を取り、体も温めて万全の状態にしたボクたちはようやく先を目指すために、長くお世話になった預かり屋から旅立とうとしていた。

 

「あなたたちのおかげでこの預かり屋は本当に救われたわ。ううん、預かり屋だけじゃないわね。ここに避難していた人たちも、この近くで洞窟に隠れていたポケモンたちも全員が感謝していたわ。もうみんな先に行ってしまったけど……」

 

 周りを見ていみるとあれだけ積もっていた雪も人もほとんど見当たらず、それには今までのうっ憤を晴らすかのように太陽が燦々と輝いて地面を照らしていた。

 

「まったく、最大の功労者を置いて先に行くだなんて礼儀がなってないわねぇ」

「仕方ないですよ。足止めを長い間喰らってしまったんですから……みんなジムミッションが一番大事ですから。むしろ感謝の言葉をちゃんと残しておいてくれた当たり、十分労ってもらってますよ」

 

 本当に甲斐性無しならボクたちがウルガモスを倒した時点で先に行けばいいだけだ。それなのにボクたちが帰ってくるまで待ってくれていた時点で十分優しい心を持っているといっていいだろう。

 ……さすがに洞窟のポケモンたちが一斉に出迎えてくれた時は無茶苦茶びっくりしたけどね。

 

「あなたたちがそういうならいいんだけど……」

 

 それでもどこか納得していないオーナーさん。そんなオーナーさんに対してユウリが前に出る。

 

「だったら私たちを沢山応援してください!!元気に活躍してみせますから!!」

 

 ぐっと拳を握りながら笑顔でそういうユウリにはどこか人を引きつけるような魅力を感じた。それはオーナーさんも同じみたいでしばらく見惚れていた。

 

「私たちを推してること、絶対に損はさせませんから!!」

「あはは……」

 

 あまりの剣幕に思わず苦笑いをしちゃうボク。だけどユウリの言ってることは別に間違っているとも思ってはいない。期待されることは緊張もあるけど同じくらい嬉しいし、その分応えようって気持ちにもなる。それはセイボリーさんもサイトウさんも同じようで、2人ともしっかりとオーナーさんの顔を見ながら頷いていた。

 

「……そうね。そういうことならあなたたちのこと、しっかり推させて貰うわ。あなたたちがこのジムチャレンジを全て乗り越えて、最後のトーナメントをも勝ち上がっていくのをしっかりと応援する。その時は頑張ってチケットも取ろうかしら?」

「ぜひ見に来てください!!あ、その時は見かけたら手を振って応えますね!!」

「ふふふ、楽しみにしておくわね」

 

 お互い微笑みながら迎える旅立ちの時。うん。やっぱり旅の出発は笑顔でしてもらいたいもんね。

 

「では、行ってきます!!」

「気をつけてね」

「はい!!」

 

 後ろを振り向きながら手を振り預かり屋にお別れを告げ、ボクたちは次のジムに行くためにナックルシティへと足を向けた。

 

「えへへ、思わない足止めを受けちゃったけど……こういうのも悪くないね」

「ま、ハプニングなんて旅にはつきものだしね」

 

 ハプニングと言う割にはなかなか大きかったけどシンオウでもなかなかとんでもないハプニングに巻き込まれたこともあるし、そのことを思い出せば確かに危ない目にもあったけど概ね楽しいと言える範囲で解決してくれたので結果オーライだ。

 

「こうしてサイトウさんにも会えたしね?」

「わたしも、あなたがたと出会えて、こうしてともに旅をできるのを嬉しく思います……フリアのポフィンも食べられますし」

「完全に胃袋つかまれてませんかね、ミスサイトウ……」

 

 一時的にとはいえボクたちのパーティにサイトウさんまでも加わってくれた。さらに賑やかになったメンバーでの旅はもっと楽しくなる。未来を思うだけでワクワクしてきたボクたちの間では自然と雑談で盛り上がり、思わず進む速度がゆっくりになってしまっていたけど、別にボクたちは急いでいる訳でもないし、ジムチャレンジの期間はまだまだあるため気にせずに進んでいく。

 

「……あれ?ねぇフリア、あれって……」

 

 そんな楽しく明るい道中を進むこと数十分。長く滞在したハシノマ原っぱもいよいよ終わりが見えてくるかなと言ったところでユウリがあるものに気付く。ユウリが指を差した方向に視線を向けるとそこには見た事のあるポケモンが。

 

「モスノウにユキハミ?」

 

 それはボクたちと共にウルガモスに立ち向かった勇気ある戦友のモスノウとユキハミの群れだった。どうやらあの巣穴にいた個体全てがここにいるようで、軽いパレードのようになっており、かなり壮観な図となっていた。心做しか温度も少し下がった気がする。

 

「何かあったのでしょうか?」

「いえ、これは……」

 

 サイトウさんの疑問に対して答えのわかったセイボリーさんはボクに視線を向ける。どうやら代表としてボクに前を行って欲しいみたいだ。エスパータイプの使い手だから今さらだけどセイボリーさんは虫が苦手なのかもしれない。少しそれがおかしくて微笑んじゃいながらも、特に断る理由もないので前へ。実際、彼らが何をしに来たのかはボクも何となく想像はできていた。

 

「みんな、もしかしてお礼を言いに来たのかな?」

「フォォォッ!!」

 

 ボクの問に元気に答えるのはリーダーと思われるモスノウ。忙しなく翅を動かすその姿は自分の言葉が伝わったことに喜んでいるように見え、その姿が愛らしくついつい微笑みながら頭を撫でてしまう。ひんやりした感触にちょっと驚いたけど気持ちよさそうに鳴き声をあげるモスノウを見ているとそんなこと気にならなくなり、そのまま暫く撫で続けてしまった。

 

「礼を言うのはボクたちもだよ。君たちが協力してくれたからウルガモスに勝つことが出来たんだ。ありがとうね?」

「「「「フォォッ!!」」」」

 

 ボクのお礼に後ろのモスノウたちもまとめて返事を返してくれる。お互いの健闘を称えあい、満足したモスノウたちは1匹、また1匹と自分たちの巣穴へ帰っていく。

 

「ハミュハミュ!!」

 

 そんな中、1匹のユキハミがボクの足元に擦り寄っていた。

 

「君は……ユキハミ、君もボクたちを案内してくれてありがとうね?」

「ハミュミュ!!」

 

 ボクたちを巣穴まで誘導してくれたユキハミは褒められたことが嬉しいのか、目を細めて明るい声で鳴いてくれた。今回の異変はこの子がいなければ解決できなかったのだ。影の功労者という意味では1番の功績かもしれない。

 ……もっとも、カブさんが1人で解決していた可能性もゼロじゃないけどね。

 

「さて、じゃあ挨拶もできたしそろそろ行こうか」

 

 気づけばあれだけいたモスノウたちも、このユキハミとこの子の親と思われるモスノウしかいなくなっていた。おそらくみんな帰ったのだと思われる。ボクたちも先に進むために足を動かそうとして……

 

「ハミュ……」

「……ユキハミ?」

 

 ボクの靴下を加えて離さないユキハミによって足を止められた。

 

「どうしたの?そんなに強くくわえちゃうと君を引きずっちゃうよ?」

 

 危ないから引き離そうとしてもテコでも動かない強い意志でくっついてくる。

 

「う〜ん、どうしよう……」

「どうしようも何もフリア。きっとこの子、フリアについて行きたいんだよ」

「え?」

 

 ユウリの言葉に半信半疑になりながらもユキハミを見つめる。

 

「そうなの?」

「ハミュ!ハミュ!!」

 

 元気に答えるユキハミから感じ取れるのは肯定の意。

 

「けど……」

 

 ユキハミが行きたいと言っても親がそれを許すとは思えなくて、視線を前に向ける。ボクの視線を受けたモスノウはゆっくりと、そして暖かな目をしながら頷いていた。

 

「本当にいいの?」

「フォォォォッ!!」

「ハミュゥゥッ!!」

 

 モスノウとユキハミ、親子の遠吠え。ここまで言われたら、断る訳には行かないよね?それに……ボクだって、新しい仲間が増えるのは嬉しいから!

 

「じゃあ……行こう!!ユキハミ!!」

「ハミュ!!」

 

 モンスターボールを高らかに投げる。そのボールに自分からぶつかりに行ったユキハミは赤い光とともにボールの中に吸い込まれていく。数回の揺れを行ったモンスターボールはそのままポンと軽快な音を立てて静止した。

 

「……」

 

 まだ少しだけ積もっている雪の上で止まったそれを拾い、もう一度投げる。

 

「出ておいで!!ユキハミ!!」

「ハミュ!!」

 

 ボールから飛び出したユキハミは元気よく返事を返したあと、もはやボクの手持ちたちのおなじみの場所となった頭の上に着地し、気持ちよさそうに、そして楽しそうに鳴きながら軽く揺れ始める。

 

「よろしくね。ユキハミ」

「ハミュミュ〜」

「……ありがとう。そしていってくるね。モスノウ」

「ハミュ!!」

「……フォォォォッ!!」

 

 ボクとユキハミの言葉を聞き、深く頷くモスノウ。まるで『我が子をお願いします』と言っているように聞こえるその鳴き声を残し、空に舞っていくモスノウを見届けたボクたち。

 

「さぁ、新しい仲間も加わったし、どんどん先に進もう!!」

「「「お〜!!」」」

 

 ここですることは本当にもう無くなった。ならば次に進むだけだ。

 

 

 

 

 先へと進み始めるボクたち。その頭上からは先程飛び立ったモスノウによるこおりのりんぷんが舞い、太陽の光を反射してキラキラと輝いていた。

 

 それはまるで、ボクたちと、ユキハミの新しい冒険の門出を祝っているような、そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




吹雪編

ようやく終わりですね。
最初の予定では、じつはユキハミを仲間にすることと、穴掘り兄弟を出すことしか考えておらず、雪も少しだけ降っててたまたまユキハミと出会う程度にする予定だったのですが……気づけば物凄く壮大なことに……
ここまで聞いて察した方もいるかもですが……はい、サイトウさんもここで出てくる予定はなかったです。
けどウルガモス(この子も追加されたお話)とレイドバトルするなら4人にしたいし、ならここから出すのが面白いかもということで出番が早まっています。
個人的にも書きたかったので構わないんですけどね。
こういうお話があった方がアニポケぽいかななんて思いながら書いてました。
……さて、次はどうしましょうかね?

カブ

ストーリー的にはむしろダンデさんが助けに来てたかもですね。
だけどカブさんの方が今回は適任です。
なんせ吹雪で道が余計に分からないところに方向音痴の人なんて向かわせたら……

ポフィン

感想でも書かれていましたけど絶対サイトウさん、ポフィンの餌付けに引っかかりそうですよね。

過保護なユウリ

なんででしょうかね?

ウルガモス

こちらもなぜわざわざこんなところに……?
これだけ強ければそんじょそこらのポケモンなんて返り討ちにしそうなんですけどね……?

ユキハミ

ということでフリア君のガラルでの5匹目……つまりフルパの6匹が埋まりましたね。
予想された方は当たってましたか?
一方でまだ2匹枠が余っているユウリ。
こちらもあと誰が仲間になるでしょうか?
お楽しみに……




さて、前書きに書いてあるお知らせなのですが……

世間を騒がせている某ウイルスのワクチンを近々受けることになりました。
私の周りでも感染者が出ているので受けられる時に受けようという事なのですが……はい、副作用怖いです。
今のところこの作品は定期更新を心がけており、数分の遅刻が1回あったくらいで一応ずっと守れてはいます。
ただ、副作用が出て休む日が増えるとこの定期更新が守れない可能性が高くなります。
この作品、プロットはあってもストックはゼロですからね……
なのでこの先もしかしたらちょくちょく定期更新がされない可能性があることを言っておきます。

毎回楽しく読んで頂いてる方には申し訳ないですかその時はご了承くださいませ……

……さすがに小さい頃肺炎球菌の集合体を患って入院し、医師に「生きているのが不思議です」なんて言われた経験がある身としてはちょっと怖いので……

せっかくここまで続けられているので、私としても定期更新は続けたいなぁと言う気持ちです。
できる限りは書いていくのでよしなにお願いします。

少し長くなりましたね。
要約すると……

ワクチン摂取します。
この作品が更新されなかったら副作用でダウンしていると思ってください。

以上です。

ではまた次回。
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