【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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この小説にて、ノーマル・ゴーストの複合はいないと言いましたね。あれは嘘です。
いえ、今日嘘になりました。
ヒスイゾロアークいいですね!
ミラーを意識しないといけないのであくタイプ入れるとして……個人的には新しくこおりタイプを覚えたら幅広がりそうだなぁと思いました。
欲を言っていいならムーンフォース覚えませんか?(ヨクバリス)


56話

「はぁ……はぁ……か、勝てた……」

「ブイブイッ!!」

 

 審判からの勝利者宣言を受けた後、急に体に襲ってきた疲労感と達成感のせいで力が抜けてしまい、思わずその場に腰を落としてしまうボク。イーブイも、勝ったことが嬉しくてボクの方に飛び込んでくるものの、ダメージが大きすぎるのかその足取りはかなりおぼつかない。何度もこけそうになりながら、それでもボクと嬉しいと言う感情を共有したいがためだけに必死にこちらに駆け寄ってくる姿に少し心を打たれながら、しっかりと受け止めて抱きしめてあげる。

 

「ありがと……よく頑張ったね」

「ブイ〜……」

 

 頭を撫でながら抱きしめてやると、嬉しそうに鳴きながら頬ずりしてくる。その感触がとてもくすぐったく、同時に心地いい。腕の中でしっかりと感じる暖かさを噛み締めながら、ようやく勝ったんだという実感が湧いてくる。さいみんじゅつが当たってしまった時は本気で負けを覚悟した。今までのジムリーダー戦も運勝ちなところも少なくなかったけど、今回は本当に運が良かっただけな気がする。シンオウ地方でのジム戦よりも明らかに苦戦していることに内心苦笑いしか浮かんでこない。もちろん、シンオウ地方のジムリーダーが弱いという訳ではなく、これはボクの腕前を考慮した上で相手が手持ちや戦い方を調整しているからというのが大きいんだけど……それにしても辛い戦いだった。

 

「……お疲れ様でした。……すごく、楽しかったです」

「オニオンさん……はい!ボクも楽しかったです!」

 

 いつのか間にか疲れ果てて眠ってしまったイーブイをモンスターボールの中に戻して休ませてあげているところにオニオンさんが声をかけてきた。肩が僅かに上下しているあたり、オニオンさんもかなり本気で戦ってくれたということだと思う。ありがたい話だ。

 

 疲労感から抜けてしまっている腰を何とか持ち上げてオニオンさんと向き合う。さすがに地面に腰を落としたままではカッコがつかないからちゃんと立って話さないとね。あまり実感無いし、ボク自身過度に期待されても困るんだけど、仮にもシロナさんという天上の存在のうちの1人から推薦されているうえ、はるばるシンオウ地方から来ているということもあって、シンオウ地方代表みたいな扱いをされている節もある。さすがにボク1人の行動で全て決められるとは思わないけど、ちゃんとするに越したことはない。

 

「……イーブイであんな動きする人……初めて……見てるだけでワクワクしてしまいました……あなたとは、ぜひまた戦いたいです」

「ボクも、正直さいみんじゅつを受けた時点で負けを確信してしまいました。本当に運に助けられたところが大きいので次こそは気持ちよく勝ちたいです!」

「……運も実力のうちです……ボクも……起きられた時反応できなくて……最後負けちゃいましたから」

「「…………っふふ」」

 

 お互いに控えめな性格なため妙な譲り合いが発生しているのがなんだか面白くて、お互い笑みがこぼれてしまう。どこか会話や趣味もそれとなく近い辺り、親近感も湧いてくるし存外似たもの同士なのかもしれない。

 

「……改めて、ラテラルジム突破……おめでとうございます!……ここを突破した証……ゴーストバッジ。……ぜひ受け取ってください」

「ありがとうございます!!」

 

 そんなオニオンさんの手から渡されるのは、リングケースの左下を占めることとなるゴーストバッジ。紫色の魂が蠢いているような、そんな印象を受けるマークの描かれたそれをしっかりとはめておく。これで半分埋まったことになる。まだまだ道は遠そうだ。

 

「……あなたの益々の活躍……期待してます」

「ボクも、今度は納得いく勝ちを得るためにまた挑みに行きますから!!」

「……はい!」

 

 オニオンさんの右手としっかりと握手をする。ボクがこのジムミッションを制覇した時、今度は本気のオニオンさんと戦う機会を手に入れることが出来る。そのためにも、次のジムもしっかり頑張ろう。

 

 降りしきる大歓声の中、そう決意しながら取ったオニオンさんの手は、汗のせいかほんの少し冷たく、けど確かな熱さを感じさせられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、お預かりしたポケモンたちはみんな元気になりましたよ」

「ありがとうございます!」

 

 スタジアム内の回復システムを利用させてもらい、無事に元気いっぱいの状態となって帰ってきたみんなを改めて腰のホルダーにセットしていく。ちなみにジムミッション前に預けていたあのボールも、オニオンさんと戦う前にまた預かってもらっていたけど、そちらも今は回収済みだ。あのボールはかなり特別なので無くす訳にはいかない。しっかりと手元に置いておかないとね。

 

「おめでとうございますフリアさん」

「ん?」

 

 腰に着いた6つのボールにどこか安心感を覚えながら、その表面をそっと撫でることでみんなを労っていると、後ろからボクを呼ぶ声。もはや聞き慣れてしまったその声は、振り返る際に声が出ておきながらその実、ボクのよく知るあの人のものだという、大方の予想はできていた。

 

「ありがとうございます。サイトウさんも見てたんですか?」

「ええ、ホップさんとマリィさんと一緒に見させてもらってましたよ」

 

 その声の主はサイトウさん。ボクたちよりも少し早くジムミッションとジム戦を行った彼女は、既にこのラテラルジムを攻略しており、何時でも先に進んでいい状態だったりする。その時の試合も見させてもらったけど、かくとうタイプ特有の意外と広い技範囲での多彩な攻めや、かくとうタイプにちょくちょく見受けられる特性、こんじょうによっておにびのやけどをむしろ力に変えて殴り倒すという突破の仕方を見せてくれた。かくとうタイプの特徴を十分に生かした戦いは、さすがかくとうタイプのエキスパートと呼ぶにふさわしい内容で、同時にこれは真似出来ないなぁとちょっと悔しい思いをしたのは内緒だ。

 

 サイトウさんの試合を直で見たのは始めてで、そのパワフルな戦い方は見ていてとても盛り上がるものだった。と、同時に彼女もボクの戦いをしっかりと見ていると思うと、果てしてあの運勝ちに納得してくれているかどうか……

 

「あはは……あまり褒められた勝ち方してないからその辺がちょっと不安なんだけどね……」

「そうですか?わたしは寧ろ、嫉妬してしまいそうなほど素晴らしい試合だったと思いますよ」

「嫉妬……?」

 

 褒められていることはニュアンスから伝わってきたけど、嫉妬という単語がどういう意味を含めて言っているのかがよく分からなかった。ボクに何かそういう感情を向けられるような場面があったかと言われると正直思い当たる節がないんだけど……

 

「あんなにオニオンが楽しそうにバトルしているのは久しぶりに見ましたから」

「……」

 

 少し違う方を見ながらぽつりとつぶやかれたその言葉に、ボクの頭をよぎったのはラテラルジムミッション挑戦前に聞いたオニオンさんの過去の話。

 

「そういえば、言ってましたね……」

「あ、いえ。そう重く受けて止めてほしいわけではないんです」

 

 サイトウさんと足並みをそろえながらラテラルスタジアムの観客席へと歩いて行く。サイトウさんがここまで来てくれたのは、ボクの試合の終わりを見て迎えに来てくれたからだろう。きっと今頃マリィとホップが、ボクの次の順番であるユウリの応援に全力を尽くしていること思われる。ポケモンたちの休憩も終わったので、ボクもその応援に向かいたい。

 

「単純に、道場ではかなり浮いていましたし、もともと体が強い方ではないので少し孤立していた彼のそばに一番長くいたわたしが、フリアさんのように楽しませてあげることができなかったのが少し悔しかっただけです」

「そんなこと……」

 

 そんな観客席へと向かう道中に語られるのはサイトウさんの心の声。ボク個人としては、ポケモンバトルを楽しみたいという気持ちはもちろんあるけど、ただ全力でぶつかって勝ちたいという気持ちが前提としてあって、かつたまたま試合内容が、お互いが最高に楽しいと思えるバトルになったという結果論の話でしかないため、なんというかこそばゆい。あとちょっとした罪悪感のようなものが……

 

「すいません、少しめんどくさい人の戯言と思ってください」

 

 そういいながら、頬をかくサイトウさん。

 確かにはたから見たら確かにそう思われちゃうかもしれない発言だ。

 

「ボクはそうは思わないですよ」

「……え?」

 

 けどボクの思いは違う。ボクの発言にサイトウさんが少し驚く声を上げたのを確認して、自分の話を続ける。

 

「ずっとそばにいたのに相手の心を満たせないのって悔しいですよね」

 

 サイトウさんの悩みを他人事と一蹴できない理由はそこだ。なんせボク自身ができていないのだから、ボクに彼女の悩みを笑う資格は一切なかったりする。むしろ、しっかり前を向いて向き合っているあたり十分ボクよりすごい。

 

「ボクにもそういう人がいてですね……そのうえでボクは逃げちゃった側の人ですから……」

「……フリアさんレベルのトレーナーでも、挫折することがあるんですか?」

「挫折だらけですよ。ほんと、ボクなんてまだまだですからね……みんなボクを持ち上げすぎなんですよ」

 

 観客者しかり、ジムリーダーたちしかり、ユウリたちしかり、ボクよりすごい人なんてごまんといるのだからそんなにもてはやされても困るところはあったり。

 

「では意趣返しを……わたしはそうは思いません」

「……え?」

 

 先ほどと立場が入れ替わったやり取り。その事がおかしかったのか、はたまたしてやったりという気持ちからなのか、サイトウさんがふっと微笑みながら続きを話す。

 

「たとえそうだったとしても、今あなたがこうやってガラル地方のジムチャレンジに挑んでいる以上、その大切な方を笑顔にすることはまだあきらめていないのでしょう?」

「それは……」

 

 サイトウさんの言葉への反論が思いつかない。

 

「それに、あなたが何と言おうと今ガラル地方のあらゆる人があなたのバトルに引き込まれています。それは紛れもない事実であり、あなたが持ち上げられるべき素晴らしいトレーナーである証拠でもあります。わたしにはフリアさんの挫折がどれほど大きなものか想像することはできませんし、軽々しくわかるなんていう事も言ってはダメだということは承知しています。そのことで自信を失い、多大な不安感が自覚していないところで常に残っている可能性もあるのでしょう。それでも……」

 

 並んで歩いていたサイトウさんが、少し顔をこちらに傾け、身長差故、少し覗き込むようにしながらボクに告げる。

 

「少しくらいは、わたしたちの言葉を信じて自信を持っていただけませんか?」

 

 その顔が物凄く優しくて、もしボクに姉がいたらこんな顔で微笑んでくれるのかなと幻視してしまい、それがまたとても恥ずかしく感じて思わず顔を背けてしまう。

 

「……そ、そこまで言うなら……えと……ありがとうございます」

「ふふふ……どういたしまして。と言っておきますね」

 

 なんというか、やけに恥ずかしいし照れてしまう。このような言葉をかけられた経験がないせいか、どうも変な気分になってしまう。

 

「それに、フリアさんみたいないい人なら許されるかもしれませんが……もし、自分に勝った相手がお調子者で、そのうえで自分なんてまだまだ甘いなんて言われたら不快に思いませんか?」

「成程……」

 

 サイトウさんに言われて頭に思い浮かぶのは、ボクより数段強いジュンが、ボクに勝った後にやにやしながら「オレはまだまだ本気じゃないんだけどなぁ?」なんて嘯く姿。

 

「……とりあえずクロスチョップからのDDラリアットを喰らわせてやらないと気が済まないですね」

「……想像力豊かですよね、フリアさん」

 

 リアルでやられたら絶対にぶちかましてやる。

 

「まあ、程度の違いはあれそういう事です。ユウリさんが顕著ですけど、わたしだってあなたを目標にしているトレーナーの一人なんです。少しは誇ってください。でないとあなたに負けた人や、あなたを目標にしている人が報われません」

「は、はい……善処します」

 

 こうまで言われてしまっては何も言い返せない。空手稽古中心の生活を送っているはずなので、少し失礼かもしれないけど、あまりおしゃべりが得意なように見えなかったんだけど、ガラル空手はそのあたりも修行しているのかもしれない。なかなか侮れない。しかし、ここでふと思った疑問が一つ。

 

「でも、確かにいい試合をしてるかもしれませんけど……毎回ギリギリ突破ですよ?どんなところが気に入られているんですか?」

 

 振り返ってみても楽にジム戦を突破した記憶は一切ない。注目選手と言われるくらいなら、むしろこのあたりは鼻歌でも歌いながら突破しないとダメな気がするのだけど……

 

「それは、フリアさんが()()()()()()()()ってみんな気づいているからですよ」

「え!?」

 

 サイトウさんの言葉に一瞬固まってしまう。まさかボクが手を抜いていると思われているのだろうか?だとしたら物凄く心外なのだけど……

 

「っと、これでは少し語弊がありますね。正確には、()()()()()()()()()()()()()()から、でしょうか」

 

 サイトウさんに訂正されてようやく合点がいく。確かに、ボクはまだ一匹だけ出していないポケモンがいる。それはシンオウ時代からのボクの大切なパートナーであるあの子で……

 

「……え、もしかしてバレてます!?」

「かなり噂になっていますよ?」

 

 サイトウさんに言われて慌てて携帯を取り出し、先日ユウリたちに教わったSNSを確認してみる。するとそこには『フリア選手、素晴らしき戦いを見せるも今回も最後のボールに手をかけることは無し!!』と、大きくトップに書かれていた。

 

「な、なんで……特に言いふらしてなんかないのに……」

「ちょっと観察力のある人ならすぐに気づきますよ。なんせ、ターフスタジアムでの挑戦の時から常に出しているポケモンたちよりも一つ多くボールをホルダーにつけているんですから」

「そんなところまで見てるんです!?」

「注目選手の手持ちポケモンなんて、他者から見たら気になって仕方がないものだと思うのですが……もっと言えばジムリーダーの間でも噂になっているみたいですね。中には誰がフリアさんの切り札を引き出させるかの競争をしているんだとか」

「う~わ……」

 

 サイトウさんに言われて改めて調べると、確かにキバナさんが、『その調子だ!オレさまとのバトルまでその隠し玉とっておけよ!!オレさまが引きださせてやる!!』と呟いているのが確認できた。

 

「もしかして、ボクの時だけ若干難易度あがっている理由これだったりします?」

「かもしれませんね。少なくとも、オニオンも可能なら引き出したいと言っていましたよ」

「うわ~……」

 

 思わず頭を抱えてしまう。違うんです。これは舐めプとか手抜きとかもったいぶっているわけではなく、単純にボクの修行というか、積み重ねをしっかりしていきたいという気持ちからなのであって……なんて思いながらうんうんうなっていると背中をサイトウさんにぽんぽんと叩かれる。

 

「まあまあ。そこは仕方ないと割り切ってください。わたしも気になっている人のうちの一人なので、楽しみにしていますね。それよりも……そろそろつきますよ」

 

 サイトウさんの声に引き寄せられて前を向くと、だいぶ歩いていたのか観客席への入り口までたどり着いていた。目の前の階段を抜けてしまえば、そこは先ほどまでボクが立っていたフィールドが見渡せる場所。そこから少し歩けば見知った顔が二つ並んでいる。

 

「マリィ、ホップ、やっほ」

「フリア、お疲れ様」

「おおフリア!しっかりお前のバトル見させてもらったぞ!凄く熱かったぞ!!」

「うん、ありがと。なんとか勝ててよかったよ」

 

 2人からの軽い激励に思わず頬が緩んでしまう。やっぱりこの二人からの言葉はひどく落ち着くね。帰ってきたって感じが凄くする。さて、ここまで来たからには、気になるのは今闘っているユウリの状況だ。残念ながら、最初から観戦できていないボクはどういう状況なのか全くわかっていない。なので、ここは最初から見ているであろう2人に説明してもらうためにしっかり聞いておく。

 

「2人とも、今の状況わかる?」

「あ、そうだよ!!フリア、大変だ!!」

 

 質問を投げかけてみると、帰ってくるのはホップの慌てた言葉。そのあまりな慌てっぷりに、少し不安感が膨れ上がる。そして……

 

「……ユウリ、負けるかも」

「っ!?」

 

 その言葉に弾かれたように首を動かし、バトルフィールドを眺めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(どうしようどうしようどうしよう!!)

 

 今現在バトルフィールドで戦っているサニゴーンとアブリボンの戦いに指示を出しながらも、私の頭の中は焦りで埋まっていた。開幕の時点で先発をエレズンに決めていた私は、タイプ相性でデスマスに勝てずに落としてしまい、その仇を取るためにアブリボンで何とか勝利。次に出てきたミミッキュに対しては一度アブリボンを下げて回復させつつ、ラビフットで勢いを取り戻そうとした。けどここが一番問題だった。

 

 それはラビフットが開幕でのろいを受けてしまったこと。

 

 何とかミミッキュに対して勝利こそ納めてくれたものの、想定以上に体力を削られちゃったから次のサニゴーンにあえなく惨敗。そして今、アブリボンを再び登壇させて、サニゴーンと戦ってくれてはいるんだけど……

 

「……サニゴーン、『げんしのちから』」

 

 サニゴーンから放たれるいわタイプの技を受けてしまい、アブリボンもたった今倒れてしまう。アブリボンにとってこうかばつぐんの技をサニゴーンという強力な特殊攻撃が可能なポケモンから直撃させられたら、元々かなり消耗していたアブリボンが耐えられる訳がない。

 

(あと……1匹……)

 

 もう後がない私の手持ち。

 

 それに対してオニオンさんは、サニゴーンはまだまだ元気だし、この後ろにゲンガーも控えている。それは実質2対1の状況になっているということ。

 

「……お願い、ヒンバス!!」

 

 私の最後の1匹、ヒンバスを投げる。現れるのはお世辞にも強いと言える見た目をしていない、実際他のポケモンと比べてみても見劣るところの多いポケモン。観客席も、私の最後の仲間を見た瞬間、呆れたような、失望したような、そんなため息がちらほら流れたのが聞こえた。

 

 ヒンバスをバカにされている。そんな気がして悔しくて、でもそれ以上に……

 

(作戦が……思いつかない……)

 

 何をすればいいのか、どうすれば勝てるのか、私が勝つビジョンが全く見えない。

 

(負けちゃう……)

 

 頭の中が負の感情で埋め尽くされる。今この瞬間も、サニゴーンはげんしのちからの準備をしており、あと数秒もすれば発射してくるだろう。

 能力が何段階も上がっているサニゴーンの攻撃を、今のヒンバスが受けたり、避けたりすることは……きっと……

 

(次戦う時は……もっとしっかり作戦を……)

 

 

『ユウリィィッ!!』

 

 

「っ!?」

 

 突如響く声に反射的に反応し、観客席に目を向ける。するとそこには、私の憧れている人の姿。バトルフィールドから観客席はかなりの距離がある。それこそ、ただの話声はもちろん、大声で叫んだところで普通は選手には絶対に届かない。現に、フリアの叫び声を聞いた人はほとんどいないだろう。それでも私にははっきりと聞こえた。そして……

 

 

『諦めちゃダメだ!!』

 

 

「ヒンッ!!」

 

 フリアと目が合っとき、フリアから、そしてヒンバスからも叱咤激励が飛んでくる。

 

(そうだ、私、何をしているんだ……)

 

 ヒンバスはまだ戦ってすらいない。なのに、もう次の挑戦のことを考えてしまっている。

 

 もう、このバトルを諦めてしまっていた。

 

(最低だ。自分のことならまだしも、大切なポケモンのことすら信用してなかったなんて……ごめんなさい……)

 

 観客の空気に流されて、相手の強さに飲み込まれて、そして、何よりヒンバスの周りからの評価を鵜呑みにして全く信じてあげてなかった、そんな私が何よりも許せなくて、悔しくて悔しくてたまらない。

 

(まだ、バトルは終わってない!もう致命的なまで手遅れなのかもしれない。けど、ヒンバスがやると言ってくれているのなら……それを信じてあげなくちゃダメだ!!フリアなら、絶対そうするから!!)

 

 私の憧れた人の前で無様な姿なんて晒したくない。胸を張って、あなたに憧れていると言えるような、そんなトレーナーになるために、こんなところで挫けちゃダメだ。

 

「……サニゴーン、『げんしのちから』」

 

 ようやく心の整理が出来た。しかし、その間に技の準備を終えたサニゴーンから無常の一撃が放たれる。今からこれを躱すのは不可能だ。けど……

 

「ヒンバス!!受け止めて!!」

「ヒンッ!!」

 

 そもそも避ける必要なし。げんしのちからが直撃し、確かに深手をおってしまうものの、ヒンバスにはこの技がある。げんしのちからを気合で耐えきったヒンバスに対して、私は起死回生の一手を指示する。

 

「ヒンバス!!『ミラーコート』!!」

「……なっ!?」

 

 受けた特殊技を2倍の威力にして返す技。げんしのちからの効果で威力が上がっていることが逆に仇となり、とんでもない威力の反射がサニゴーンを襲う。いきなりの反射に元々すばやさのかなり遅いサニゴーンが、そんな急に飛んでくる反射に反応できる訳もなく、直撃してしまいそのまま地に伏す。

 

 ヒンバスの体力はかなり削られた。けど、最後の1匹までの希望は繋げた。

 

 オニオンさんがサニゴーンを戻しながら、次のポケモンを構えている間にヒンバスに声をかける。

 

「まだまだ、行けるよね?」

「……ヒンッ!!」

 

 苦しそうに、けど、絶対に諦めないといった返事を返すヒンバス。そうだ。諦めなければ、なにか起きるかもしれない。そして、それ以上にここで諦めたらフリアに合わせる顔がない。フリアと肩を並べて立って、見てる人皆を熱くさせるようなバトルをするのが夢なのに、そんなことは絶対に許されない。だから!!

 

「ヒンバス!!絶対に勝つよ!!」

 

「ヒンッ!!」

 

 絶望的な状況でも絶対に諦めない。その意志を見せつけるような咆哮。同時に、ヒンバスの体が青白く発光する。

 

「え?」

「……これは」

 

 観客も、選手も、オニオンさんも、フリアを除いたみんながヒンバスに驚きの視線を向ける。光に包まれたヒンバスは、そのシルエットを大きく変えていく。小さい体は長く伸びていき、その先端には扇子のような形に並べられた鱗のようなものが見え、頭と思われる場所からは、流れるように2本の髪のようなものが生えていく。

 

「これって……」

 

 ヒンバスが進化した。それは分かる。けど問題はそのシルエットの正体で……

 

「ミロォォォオッ!!」

 

 その姿を私は知っている。シンオウ地方のチャンピオンだったシロナさんの手持ちの1匹だったから。けど、そのポケモンへの進化方法はシロナさんが口に出さなかったため、知ってる人がほとんどおらず、ずっと謎のままになっていた。

 

「ミロカロス……」

 

 いつくしみポケモン。この世でいちばん美しいと言われるポケモン。フリアに、ヒンバスにポフィンを食べさせ続けるように言われ、それを守り続けたからこそなったその姿。

 

(……本当に、フリアは凄い。ありがとう……フリアからこんな素敵な贈り物貰ったんだ。絶対に勝つ!!)

 

「ミロカロス!!」

「ルォッ!!」

 

 ミロカロスの返事を聞いてすぐさまボールに戻し、赤い光を纏わせる。

 大きくなったモンスターボールを空中に投げ、再びミロカロスを場に出す。

 

 

『ルォオオオオオッ!!』

 

 

 場に君臨するは、ダイマックスしてもその美しさを損なわない美の化身。

 その圧倒的な存在感に、全ての人が魅了され、言葉を失う。

 

「さぁ……行くよ!!」

 

 フリアに最高のプレゼントをもらった今の私は、もはや、誰にも負ける気がしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フリア選手の勝利!!』

 

「……やはり勝ちましたか」

 

 スマホロトムに映る試合の放送を見ながら無意識に言葉が口からこぼれる。

 

「ここで待っていたのが無駄にならなくて良かったですよ」

 

 座っていたベンチから腰を上げながら軽く背を伸ばす。ガラル鉱山で出会ってから、何度か会う機会はあったものの、タイミングが悪くずっと戦えていなかった相手。

 

 そして何よりも、ぼくが戦うのを楽しみにしている相手。

 

 なぜそんな感情を抱くのか、自分でも分からない。だからこそ、その気持ちを確かめるためにも早く戦いたい。

 

「この気持ちの正体……はっきりさせましょう」

 

 ぼくの意識は、今だけは会長よりも、ジムチャレンジよりも、そしてねがいぼしよりも、フリアのことを最優先にしか考えてなかった。

 

 だからだろうか……

 

「ビート選手、ちょっといいですかね?」

「はい……?」

 

 

「……少し、いい話がありましてね?」

 

 

「何を……っ!?」

 

 後ろから近づいてくる2つの影に、全く警戒できなかったのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フリアの手持ち

そりゃバレますよね。
そういえばヤローさんや、オニオンさんは腰下あたりにモンスタボールのホルダーつけてますけど……ハイパーボールやダークボールは別で使ってますよね……
あの中身は何なんでしょうね?

ミロカロス

このタイミングで進化です。
兆候であるウロコはもう出してましたしね。
記憶の中では私もルビサファでしっかりと手に入れた覚えがあるんですが……当時の私が一体どうやって進化の情報を手に入れたのかがわからない……

ビート

おや、ビートの様子が……?




前回みんなの技構成を書くのを忘れていましたね。
内訳書いておきます。

デスマス

たたりめ
かなしばり
ぶんまわす
おにび

ミミッキュ

かげうち
のろい
きりさく
みちづれ

サニゴーン

のろい
げんしのちから
おにび
たたりめ

ゲンガー

ベノムショック
たたりめ
さいみんじゅつ
ふいうち

VS

ジメレオン

みずのはどう
とんぼがえり
ふいうち
アクアブレイク

ユキハミ

こなゆき
むしのていこう
こごえるかぜ
ようせいのかぜ

マホイップ

マジカルシャイン
じこさいせい
めいそう
マジカルフレイム

イーブイ

まねっこ
でんこうせっか
スピードスター
かみつく

この予定で書いてましたけど……使ってない技もありますね。
全部活躍させるのはやはり難しいです。
実機と比べていくつか変えている技もあり、個人的には強さというより厄介さが増えている感じですかね?
キョダイゲンガーはあれくらい強くなっても誰も文句言わないと思います。

相変わらずバトルシーンは書いてて楽しいですね。
ネタが尽きないかだけが心配ですが……




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