【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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前回書き忘れていたのですが、ミロカロスの特性について。
本来すいすいのヒンバスはかちきにはならないのですが、とくせいカップセル等で後で変えられる点や、アニメでも技マシン、卵技でしか覚えないものを普通に成長過程で覚えるあたり実際にはこういう事も起こりえるのではということでこの設定に。

違和感を感じた方には改めましてこのお話ではこういう設定で行くんだと思ってください。


58話

 暗い暗い闇の中。右も左も上も下も分からない。ただ、沈んでいるような気がするという感覚だけが全身を包んでいた。

 

(ここはいったい……ぼくは……なにを……いや、確かラテラルタウンで……)

 

 ダメだ、その先がまるでモヤがかかったようにあやふやで分からない。

 

『ねがいぼしがあれば……この計画を……』

 

(この声は……委員長……?)

 

 そうだ、ぼくは確かラテラルタウンにねがいぼしを取りに来たんだ。急に現れた人がここラテラルタウンにたくさんのねがいぼしが取れる場所があると教えてきたから……

 

(違う……何かが違う……もしそうならオリーヴさんが見つけて連絡をよこすはずです……)

 

 永遠とまとまらない頭を思わず抱えようとするものの、相変わらず身体はなにかに沈んだような感覚を返すばかりで、指や腕はもちろんのこと、髪の毛1本も動かすことが出来ない。ただひたすら下へ下へ、深く深く体が沈み込み、どんどん奥へと引き込まれていく。

 

(このまま……溺れるのでしょうか)

 

 このまま沈みきってしまった時、ぼくはいったいどうなるのか。消えてしまうのか、死んでしまうのか、はたまたみんなから忘れ去られてまた捨てられるのか。

 

(……それもまた、いいのかもしれませんね)

 

 沈み続けていく体を引き上げてくれる人は誰もいない。初めて委員長に会い、手を伸ばしてくれたあの時と違い、本当に誰も助けてくれない。それは仕方の無いことで、わかっていたこと。

 捨てられることには慣れている。

 

 深く深く沈んでいく。

 

 何も見えない闇の中。

 

 ゆっくり目を閉じて、そのまま体を任せて……

 

『ビート!!』

「ッ!?」

 

 突如響く自分を呼ぶ声に目を開ける。暖かく、はっきりと自分を包むその声は、開けた目の先にある眩しい光から確かに聞こえてきたその声は、ぼくを引っ張り出すためにその光をどんどん強くしていき包み込んでくる。その光に体を引っ張られる感覚を最後に、ぼくの意識は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビート……ビート……!!」

 

 体を軽く揺らしながら声をかけ、倒れているビートの安否を確かめるために起こそうとする。

 

 ラテラルタウンの文化遺跡を巡った攻防戦は、結果だけを見るならばオニオンさんの圧勝となっていた。ビート側が、元々自分の得意としているタイプではないはがねタイプを使っていたというのもあるとは思うけど、それ以上にオニオンさんとゲンガーのコンビネーションが物凄かった。地面を潜り、虚空に消え、ありとあらゆる角度から変幻自在な技で攻め立てるその様はトリックスターという名がこの世で1番ふさわしいのでは?と思えるほど鮮やかで、傍から見ているから俯瞰してバトルを見ることができるはずなのに目で追う事が出来ず、戦っている張本人ではないのに翻弄されてしまっていた。

 

 これがジムリーダーの本気の片鱗。

 

 これでボクより年下なのだからやっぱり才能の壁は理不尽だ。なんて思いながらも、これを乗り越えなくちゃボクの目標は達成出来ないからもっと頑張らないと!!と、昔の自分なら諦めそうなところをしっかりと乗り越えるべき壁と捉えているあたり、ボクも少しは成長しているんだなと実感出来た。

 

 話を戻そう。

 

 暴れるダイオウドウを抑えることに無事成功したオニオンさんは、そのままボクたちにジュンサーさんを呼ぶことを指示し、オニオンさん自身はゲンガーと共にビートの捕獲のためにゆっくりと近づいていた。ダイオウドウが負けたことによって癇癪を起こし暴れる可能性と、他のポケモンを繰り出される可能性を潰すための行動。特に、前者はともかくとして後者は少なくともこのジムを突破できるほどに育ったポケモンたちが相手となる。驚異となるのは確実なのでそうなる前に止めたいというのは当然の考えだ。癇癪を起こされる分には、理性がなく、動きが単純になるのでむしろ制圧しやすいのであまり苦にはならないんだけど……そんなビートは見たくない。

 

 以上の2つの可能性を考えて接近したのだけど、ビートが起こした行動はそのどちらでもなかった。それはボクがビートを揺すっていることからわかる通り、気を失って倒れるというもの。ダイオウドウが戦闘不能になって程なくして、まるでダイオウドウについて行くようにゆっくりと膝を折り、地面に伏すビートの姿は操り人形の糸が切れたかのように見えた。幸い体になにか異常が見受けられるという訳では無いので大事にはならないだろうけど、そのあまりにも不自然な崩れ方は、先程の彼らしくない動きと相まって不気味極まりないと感じてしまう。さっき操り人形って比喩したけど、本当に操り人形だったのではないかと思えるようなその動きがどうしても頭の隅に引っかかってしまう。

 

(操り人形……キルリア……セイボリーさん……もしかして……?)

 

「……んん」

「っ!?ビート!!」

 

 あとちょっとで何かに気づけそうなタイミングで聞こえたうめき声。その発生元である下を向けば、ビートの瞼が少し動いたのが確認できた。もう少しで目が覚めそうなその兆しを見たボクたちは、固唾を飲んでその様子を見守る。

 

「こ、ここは……ぼくは確か……」

「ビート……よかった、とりあえず無事みたいだね」

 

 ほどなくして、声を上げながら瞼を持ち上げたビートの姿にほっと一息。特に後遺症も見受けられないのでひとまず安心といったところだろうか。ただ気になる点と言えば、まだ目覚めたばかりで記憶が混濁しているところ。いったい今までに何があったのか、詳しく聞けるといいんだけど……

 

「ビート、何があったか憶えてる?」

「……フリア?なぜここに……いえ、ぼくはいったい何を……」

 

 まだ状況がつかめていない彼に対して急かすようなことはせずに、落ち着くのをじっと待つ。ビートもビートで現在状況を把握したいがために周りを見渡すと、自分を取り囲むように存在する人たち。まだ気絶してそこまで時間がたっていないため、ジュンサーさんなどは駆けつけていない。今からやじ馬や、ジュンサーさんたちが集まってくることを考えると、この場所もどんどんうるさくなっていくことが考えられるだろう。もっとも、ビートはそこまで把握することはできなさそうだけど……。

 

「現状がよくわかりません。あなたに介抱されている理由もわかりませんし……いったいここで何があったんです?」

「……あなたは、そこのダイオウドウを使って……ここの遺跡を破壊しようとしていたんですよ」

「……は?」

 

 質問に対してオニオンさんが回答した瞬間、まるで何の冗談を言っているんだとばかりに返してくるビート。その反応が納得できないのか、ユウリ達の表情は怒りと困惑がないまぜになったものになっている。唯一その表情を仮面で隠しているオニオンさんが、そのまま質問を続けた。

 

「……遺跡の方を見ても……思い出せませんか?」

「遺跡……」

 

 オニオンさんの指につられて遺跡の方を見るビート。そこには、先ほどまでオニオンさんと激闘を繰り広げていたダイオウドウが倒れており、倒れたダイオウドウを介抱するべく、マリィとホップがきずぐすりや、げんきのかけらを使って治療をしているところだった。

 

「あのダイオウドウは……ローズ委員長のダイオウドウ……ですがなぜここに……」

「ビートが、ダイオウドウに『10まんばりき』を指示して遺跡を壊そうとしてたんだよ。……やっぱり思い出せない?」

「そんな、悪い冗談はよしてください。ぼくに何の理があってそんなことを……ぼくはただ、フリアと戦うために待っていただけです」

 

 演技にしてはあまりにも真っすぐすぎるその反応に、流石のオニオンさんもいよいよ戸惑い始める。この様子は間違いなく先ほどまでのことを憶えていない。あれだけのことをしていたのにだ。ビートの言う通り、彼に対するメリットが一切ない所もその信憑性を後押ししていた。しかしそうなると、なぜ彼がこんなことをしたのかが説明がつかない。当然ながら動機もないし、いよいよもってわからなくなってきた。しかし……

 

「……」

「キル……」

 

 ふと横に視線を向ければ、険しい顔をしているキルリアとセイボリーさん。やっぱりこの二人は何かに気づいている。

 

「ねぇ、セイボ━━」

「警察です!道を開けてください!!」

 

 そんな二人に質問をするべく、声をかけようと思った瞬間に響き渡る女性の声。発言の内容からしておそらくジュンサーさんが駆けつけてきたのだろう。その証拠と言わんばかりに、少し遠くの方からサイレン音が聞こえ、こちらに向かって駆けてくる足跡もたくさん聞こえ始める。

 

「オニオンさん。遅れてしまい申し訳ありません。状況を聞いてもよろしいてしょうか?」

「……はい、大丈夫です」

 

 ほどなくして、この騒ぎの元凶であるボクたちの姿を確認したジュンサーさんがこちらに駆け付けて、オニオンさんと会話を始める。会話の内容が気になるものの、今はとにかくビートの介抱が大事だろう。ダイオウドウの治療も終わったみたいで、ホップとマリィもこちらに駆け寄ってきていた。セイボリーさんに聞きたいことがあったものの、残念ながら今はそのタイミングはなさそうだ。少し時間を開けて聞くことにしよう。

 

「立てる?ビート」

「大丈夫です。何ともありません」

 

 手を差し伸べようとすると、それを振り払って自分で立ち、何でもないような顔をするビート。うん、こうしてみるといつもの彼が帰ってきたことに少し安心する。

 

「手くらい素直に借りなさいよ」

「借りる必要のないものを借りて何になるんです?」

「うう~むかつき!!私やっぱりこの人いや!!」

「ユウリがこうもきっぱり人を嫌うところは初めて見たぞ……」

「あたしも、なんだかんだで想像できなかったと……」

「あ、あはは……」

 

 相変わらず相性最悪なビートとユウリの一幕に思わず苦笑いをこぼしてしまう。こういったところを含めても帰ってきた感がしてほっとするね。

 

「お互い無事が確認できて安堵するのはいいですが……まずは事情を話しましょう」

「そうね。そろそろジュンサーさんとジムリーダーさんのお話も終わりそうだし、今度はわたしたちの番かしらね」

 

 サイトウさん、ソニアさんの言葉につられてオニオンさんの方を見ると、あらかた説明を聞き終えたのか、敬礼をしてこちらに歩み寄ってくるジュンサーさん。さて、ここから先はビートの役目だ。正直なんでこうなったのか分からないボクたちから出せる情報なんてオニオンさんのそれと変わらない。きっとジュンサーさんもそれを理解しているのか、はたまたオニオンさんがその部分の説明も終えてくれていたのか、おおよそ予想通りボクたちをスルーして真っ直ぐビートの下へ歩いてくるジュンサーさん。

 

「ではビート選手。次はあなたに事情を━━」

「なんの騒ぎですかこれは!!」

 

(う〜ん、今日はよく言葉を遮られる日だなぁ)

 

 ジュンサーさんの声を遮るようにあげられる声は、ジュンサーさんとはまた違った声質の女声。しかしどこかで聞いたことあるような?と首を傾げていると、その声の主がすぐに現れた。長いブロンドヘア、白のリクルートシャツの上に赤いチューブトップに、黒で統一されたタイトスカート、ストッキング、ハイヒール。その上から白衣を羽織っている、高身長でモデルでもやっていけそうなその出で立ちは、ローズ委員長の秘書を務めるオリーヴさんだ。よくよく見れば、すぐそばにはローズ委員長もおり、今回の事件に対してたまたま居合わせたのか、はたまた呼び出されたのか、どちらかは分からないけど自分の推薦したトレーナーが関わっているから様子を確認しに来たと言ったところだろうか。バウタウンで見かけて以来ということになる2人だけど、あの頃とは違い、仕事モードのため服装は開会式の時にも見たスーツ姿。心の隅でどこか、『あの変な私服じゃなくて良かった』と思っている自分がいた。うん。今オリーヴさんに何故か睨まれたからこの話はやめておこう。話を戻して……

 

(ってよくよく考えたらこのダイオウドウってローズ委員長から借りてきたポケモンって言ってたっけ?)

 

 先程のビートの発言から思い出す。となると、元々この街にいたということかな?それならこのお早い到着も納得だ。

 

 そんなローズ委員長とオリーヴさんは、この騒ぎの中心であるビートの姿を確認し、一直線にこちらに近づいてくる。その姿は、歩いているだけなのに物凄い威圧感があり、まるで海を割るかのように人垣が左右にぱっくりと割れ、2人の歩く道を作っていた。

 

「……委員長のダイオウドウを借りに来たと思えば、なんてことをしているでんですか」

「……」

 

 肝まで冷えるような冷たいオリーヴさんの声。聞いているだけのはずのこちらまで底冷えしてしまう。そこの言葉に対してビートは何も答えない。いや、答えられない。なぜなら彼の言葉を信じるのなら、彼は今までの経緯を何も憶えていないのだから。

 

(何も憶えていないってことは意識は別にあったってこと、もしくは意識を奪われた……かな?そこでキルリアとセイボリーさんだけが反応した。ってことはやっぱり……)

 

 改めて情報を整理した限り、どうしてもひとつの可能性にしかたどり着かない。もしこの予想が本当なのだとしたら、ビートはむしろ被害者だ。そのことを上手く伝えられたのならきっとビートの無実は証明出来る。けど……

 

(証拠がない……)

 

 それを証明する手だてがない。そしてそれ以前にこの予想が当たっているという確信もない。つまり、今のボクにできることは見守るだけ。

 

「……え〜っと、そうそう。ビートくん。まことに残念ですよ。あなたを拾って、スクールにも通わせて、未来あると思ったあなたが遺跡を壊すというガラルを愛していない行動をするなんて……」

 

(……この人)

 

 ローズ委員長の口から綴られるのは今回の事件を責める言葉。その言葉を受けるビートは何も言い返さない。いや、言い返せない。その事にも思うところはあるのだけど、それ以上に気になるところがあった。

 

(名前……憶えてなかった?それともド忘れしただけ……?いやでも、自分で推薦状を出した人の名前を忘れるなんてそんなことある……?)

 

 仮にもこの大きなイベントに挑むに足る実力があると自分で判断した人だ。推薦状を書くことの出来る数に上限があるかどうかは知らないけど、ローズ委員長直々の推薦状となれば数は少ないはずだ。なのに名前を憶えていない……そんなことが本当にあるのだろうか?小さい事だけど気になってしまう。ボクの悪い癖と言われたらそれまでなんだけど……今この瞬間のやり取りでボクのローズ委員長への印象はかなり悪くなっている。一度疑い始めたらなんだかローズ委員長の言葉が全て裏があるように見えてしまい、まともに聞くことができない。

 

(思い込みは避けたいんだけど……)

 

「追って処分を言い渡しましょう。ナックルシティにて、あなたのジムチャレンジ挑戦権を剝奪します……いえ、手続きだけならわたくしだけで十分ですね。あなたはこれから警察との話し合いもあるでしょう。そちらはわたくしの方で処理するので、あなたは安心してこちらでお話をしていてください」

 

(……それが自分が推薦した人への対応なのか)

 

 処罰としては妥当。特におかしなことを言っているわけでもない。けど、それ以上にボクが許せなかったのはローズ委員長の目。

 

 まるで最初から視界に入ってないかのような冷めた目。

 

 それが許せなくて、気が付けば前に歩き出しており……

 

「……あなたは動かないでください」

「ビート!」

 

 ビートにせき止められてしまう。きっと無関係なボクを巻き込みたくないのだろう。そんな彼の不器用ながらも確かにやさしい一面がボクに待ったをかける。こんなことを言われてしまってはますますボクにできることがなくなってしまう。

 

「あなたが集めてきたねがいぼしもこちらで回収させてもらいます、さぁ、こちらへ」

 

 オリーヴさんの一言でジムチャレンジのスタッフが動き出し、ビートからダイマックスバンドとねがいぼしを奪い取り、すぐにローズ委員長の下へ戻っていく。

 

「ではジュンサーさん。よろしくお願いします」

「かしこまりました」

 

 その言葉を最後に、両脇を警察に固められて連行されるビート。恐らくラテラルタウンの警察署へと連行された後は尋問が待っているのだろう。果たしてその時ビートがなんていうのか。それが心配でならない。

 

(罪を全部被る。なんて事しなければいいんだけど……)

 

「さて……オニオンくん。事態の収束に動いてくれてありがとう。君のような素晴らしいジムリーダーがいることを誇りに思いますよ」

「……いえ、ボクは……大好きなこの町を……守りたかっただけなので」

「だからこそです。改めてお礼を、ありがとうございます。そして、フリア選手、ユウリ選手、マリィ選手、ホップ選手、サイトウ選手、セイボリー選手、ソニア君。あなた方にも迷惑をかけてしまい申し訳ない。特にフリア選手に至ってはガラルの人間ではないというのに……」

「……いえ、気にしてません。大事にならなくてよかったです」

 

 もっといろいろ言いたい言葉があったはずなのに、ビートに止められたのが響いて動けない。今ここで動いたら、なんだか彼を逆に追い詰めそうな気がしてしまったから。

 

「さて、わたくしは先ほども言った通り、彼の資格剥奪の手続きのためにナックルシティに向かわなくては……これで失礼します。皆さんも、よきジムチャレンジを!」

 

 そう言葉を残したローズ委員長は踵を返して階段をゆっくりと降りていく。その足の向かう先には複数のアーマーガァが見えるあたり、タクシーですぐにでも戻ることだろう。ビートの資格が剥奪されるのもきっとすぐだ。

 

「……はぁ」

 

 ため息が一つ。

 

 何もできなかった自分に少し嫌気がさす。本当に何もできなかったのか頭の中でぐるぐると考える。けどどれもがたらればでしかないため永遠と答えが出ない。

 

「ねぇ、フリア、どうしてあんなにビートをかばおうとしてたの?」

 

 ボクが考えている間に場が落ち着いて行き、一人、また一人とこの場を離れていきとうとうボクたちだけになった時。ユウリがそっと聞いてきた。振り向けばここに残っているほとんどの人たちがそう思っていたみたいで、セイボリーさん以外は不思議そうな顔をしていた。確かにビートをよく知らない人にとっては……いや、ボクも詳しいと言えるほど長く付き合いがあるわけではないんだけど……それ以上にビートを全く知らないみんなにとってはボクの行動はかなり謎に見えるだろう。特にユウリなんかは相性が悪いせいか嫌っている節まであるし、ホップも苦しそうな顔をしているあたり少なくない因縁がありそうだった。そんな接点のあまりないみんなにとっては至極当然の疑問だ。その質問に対してちゃんと返す。

 

「ビートのことを詳しく知ってるっていうつもりはないけど……少なくともダイオウドウを操る前と後では全くの別人に見えたんだ。だから、もしかしたら何か大きな事情があるんじゃないかって……セイボリーさんもそれに気づいていたんですよね?」

「……」

 

 ボクの言葉にみんなの視線がセイボリーさんに集まっていく。対するセイボリーさんは無言。しかし、今この場ではその無言こそが肯定と見えてしまっていた。

 

「……そのことも込みで、この後お話しするということで構いませんか?」

 

 数秒してようやく口を開くセイボリーさんから聞かされたのは、もともとこの後ホテルに戻ってみんなでお話をするつもりだったのでその時に話させてほしいという事だった。恐らく短くない話になるからゆっくりくつろげるところで話したいという事だろう。

 

「……わかりました。あとでしっかりと聞かせてもらいますね」

「ええ、覚悟しておきます」

「……はぁ、今日はいろいろ波乱に満ちているわね」

 

 ソニアさんがボソッと呟いた言葉に皆で頷く。本当に今日一日で起きたイベントが多すぎて情報を整理し切れていない。それに、まだ遺跡の調査という一番の本題が達成されていない。もっとも、その遺跡も先の事件のせいで罅がかなり広がっており、ただでさえひどい落書きみたいな絵がさらに悲惨なことになっていた。

 

「……もう、これじゃあ読み解くも何もないわね」

 

 ソニアさんもそんな遺跡の様子に思わずうなだれてしまう。調べた結果無駄足でしたならまだましに聞こえるのに対して、調べる前から壊されましたじゃあ納得なんてできるはずがない。ソニアさんの気持ちも凄く分かるし、みんなも歴史に触れるのを楽しみにしていた節があったので残念そうな顔を浮かべていた。また少し重い空気が流れ始める。

 

「……っし!!確かに遺跡は残念だったけど、研究に足踏みはつきものよ!!さぁ切り替えて次の研究地点に行かなきゃ!!」

 

 しかしそんな空気を追い払う気持ちのいい音が鳴る。頬をバシッと叩いて気合を入れなおし、元気よく宣言するソニアさん。そんな彼女に元気をもらったみんなが自然と頬を緩ませていく。こういう時の切り替えの速さは本当にソニアさんのすごい所だと思う。どんなに暗い雰囲気でもあっという間に明るいものに変えてしまうそれは、ボクたちにもしっかりと伝搬しており、あんな事件があったというのにみんなの表情はだいぶ柔らかくなっていた。

 

「とりあえず今日はホテルに戻りましょうか。フリアたちの話も聞きたいし」

「ですね」

 

 ソニアさんの言葉に頷き移動を始めようとするボクたち。しかし、その足が一瞬で止まることに……

 

 ゴゴゴゴという地響きが再び聞こえ始める。

 

「な、なに!?」

「近くの手すりにつかまってください!」

 

 揺れる足場に戸惑っているボクたちにすかさず指示を出すサイトウさん。その言葉に従って近くの手すりにつかまって辺りを見渡すと、罅だらけになっていた遺跡の壁画に異変が起きた。ただでさえ大きくついていた罅がさらに広がっていき、地響きがさらに大きくなっていく。音の発生源である遺跡の壁画を見つめていくと、その罅がとうとう完全に広がりきって壁画を粉々に砕いて行く。自重を支えきれなくなった壁画がどんどん崩れ去っていき、飛び散る岩の破片をキルリアが防いでくれている中、壁画の奥に空間があるのが確認できる。巻きあがる土煙で視界が若干悪いものの、それもすぐに収まり完全に崩れ切って視界が明ける。

 

「……なに、これ」

 

 その先のものを見て思わずソニアさんが言葉をこぼす。その感情は言葉に出していないだけでここにいるみんなが思っていることだった。

 

 崩れ去った壁画の奥にあったもの。それは……

 

「……ポケモン?」

 

 まるでハクタイにある伝説のポケモンを彷彿とさせるような石像。

 

 剣と盾を携えた2匹の凛々しきポケモンがボクたちを見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ビート

実機と同じくここでチャレンジ権剥奪。ですが実機とはちょっと展開が違いますね。
実機プレイした時も展開がちょっと急な気がしたので少し深堀を。

ローズ

実機以上にあっさりというか嫌味っぽくなってしまった気も……ただやっぱり名前をド忘れするのは個人的には引っかかってます。
話的には成長したビートの顔がうんたらかんたらみたいな話らしいんですけど、推薦状書いている人はそれでも忘れないのでは?と思ってしまったり、
もしかしたら私が想像している推薦状と形が違うのかもしれんませんね。

石像

こっちが多分本当の遺跡。
けど隠されて忘れられているってことはやっぱり現地の人もあの落書きを遺跡と思ってたということに……
う~ん……




色違いザシアン、ザマゼンタ配布されましたね。しっかり受け取ってきました。
どちらも名前通り、シアンとマゼンタ色が強くなってていい色でしたね。かっこよかったです。
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