楽しみですね。ダイパリメイク。
ワタクシは生まれた時から進む道を決定されていた。
エスパータイプのジムリーダーを排出している家系に生まれたワタクシは、小さい頃から英才教育を受け、未来にエスパータイプのジムを継ぐことを決められていた存在だった。ワタクシに兄弟等が存在しなかったというのも大きなところかもしれませんね。
そんなワタクシの幼少期なのですが……お恥ずかしいことに、歴代の誰と比べてもワタクシには才能がなかったのです。エスパータイプのジムリーダーたるもの、ポケモンバトルが強いのはもちろんのことですが、トレーナー本人も至高のサイキッカーたれ。これがエスパータイプのジムリーダーに求められるものだったのです。
ですが……
『なぜお前はこんなにも教えているのにテレキネシスしか……それもこんな低い出力でしか行えん!!』
『たかがボール1つ浮かせることができただけで舞い上がるな!!』
『私がお前くらいの時はもっといろいろできたぞ!!』
『お前は歴代1の落ちこぼれだ!!』
本来、テレキネシスはもちろん、テレパシーや浮遊、果ては短距離だけとはいえテレポートすらして見せた歴代の方たちがいた中、ワタクシができたことはモンスターボールを浮かせることだけ。それもワタクシにとってはかなりの集中力を使うもので、少しでも動揺するか、体から離れてしまうとすぐに制御出来なくなってしまい、地面に落ちていく始末。幸い、ポケモンバトルに関しては幾ばくが才能があったみたいで、ジムトレーナーの方たちとも手合わせをしている中、勝率は高くはなかったですが低くもなかったのです。ですが、ここはエスパータイプのジム。求められるのはポケモンバトルの強さだけではありません。故にワタクシのジムでの立場は全くありませんでした。
『おい、あいつ……』
『ああ、歴代1の凡人だとか……』
『いいよなぁ、家系ってだけでジムリーダーになれて』
『オレたちの方がサイキックの出力もポケモンバトルの実力も高いのに悔しいよな』
家族以外からも聞こえてくるワタクシを陰から戒める言葉。当然、最初は悔しくて悔しくてたまらなくて、見返してやるといった反骨精神から努力をさらに増やして、ポケモンバトルの腕も磨いて頑張っていました。しかし、ポケモンバトルの腕はともかく、一向に上がらないサイキックの出力。その事にただただイライラしていた時、事件は起きました。
それはエスパータイプのジムトレーナーであるカーションとのバトルでの話。
サイキックで才能がないとわかったワタクシは当時、ポケモンバトルだけでも強くあろうと思っているときでした。実際にそのころまで成長したワタクシはジムトレーナーの大体の人には勝ち越し始めていましたし、それ相応の実力だったと自負しています。そして、今回戦うこの人に対しても余裕で勝てるだろうと、一種の驕りを見せていました。
しかし、結果は惨敗。
惜敗どころか、手も足も出ない完封状態。
ここで、ただ負けるだけで終わらせて、次勝つために特訓だとなれば良かったのですが、身内からの扱いと周りからの陰口、そして何より才能のない自分への怒りがついに爆発してしまったワタクシは、あろうことかワタクシ自身のサイキックにてカーションを攻撃してしまったのです。ワタクシの出力不足なことと、彼のサイキックの才能の高さゆえ、彼に怪我こそ負わせることは無かったのですが、その事実がさらにワタクシの神経を逆撫でしてしまい逆上。と同時に暴れてしまったのです。
人に向かってサイキックを発動するのは人として絶対にやっては行けない、法にも触れる大罪です。当然、ワタクシはそのバトルの後に大目玉をくらい、そして……
『貴様は我が家系の恥だ!!今すぐここから出ていけ!!』
ワタクシはエスパータイプのジムトレーナーを破門になりました。追い出され、途方に暮れ始めたところでようやくワタクシがしでかしたことを理解した時には既に何もかもが手遅れで、自暴自棄にすらなっていました。
そんなワタクシの下に、当時よりワタクシの相棒だったヤドンが1枚のビラを持ってきてくれました。
『……ヨロイ島の……道場?』
行くあてもなく、やることも無くなったワタクシは、そのビラを片手に、旧チャンピオンが経営している道場へと、足を進めるのでした……
☆
「……確かにあのころのワタクシは未熟も未熟……今でこそマシにはなりましたがほんとに酷い有様でした。ですが、その道場に入ったことで転機が訪れたのです」
セイボリーさんの口から紡がれる彼自身の過去のお話。その内容にボクもビートも口が動かない。想像以上に辛いその過去が、普段の飄々と、そして少し胡散臭いテンションだった彼から想像が出来なかったから。人は見た目にはよらないとは言うけどそれにしたって極端な気がする。人によっては今この場にいるまでに心が折れてしまってもおかしくはないはずだ。
「勿論、道場に入ってすぐの頃は変わらず荒んでいましたよ。道場の主である師匠が、聞いていた話と全然違って弱そうでしたし、特訓にも全く身が入らなかったです。道場の人たちが強くて勝てなかったのもありましたけどね」
それでも今、こうして彼はここにたっている。それだけ大きな挫折をしてもこうやって今、ボクを助けてくれている。その姿がセイボリーさんの背中をより大きく見せてくれた。
「そしてその後も、フリアたちと出会い、こうして一緒に旅をしていく中で確かに成長できたのを実感するのです。勿論、さらなる強敵に心が折れそうなこともありましたが……」
「セイボリーさんは十分強いですよ。ボクが知ってます」
「ワタクシはまだまだですよ……少なくとも、あなたたちに追いつくくらいでないと……」
「……え?」
そっと呟いた、けど確かに耳に届いた彼の言葉に驚くボク。
(ボクたちに追いつく……)
「そのためにも、まずは彼らを退けなくてはいけませんね」
「ほぅ……わたくしたちに勝てるおつもりで?」
「あの日逃げ出した相手に勝てるおつもりで?」
ニヤニヤと口元を歪めながらカラマネロと、さらに追加で呼ばれるシンボラーを構えるカネコンビ。その姿を見て慌てて頭を振り、すぐに戦う準備をする。確かにセイボリーさんはかなり強くなっている。けどさすがに2人同時に相手は……
「フリア、ここはワタクシに全て任せていただきたく」
「で、でも……」
「大丈夫です。あなたたちを超えるという目標ができたのに、ここで苦戦するわけにはいきませんから。それに……」
セイボリーさんの腕が思い切り振り上げられ、サイキックの波動がフーディンとヤドランに伝わっていき、2匹との間に何かがつながったように見えた。瞬間……
「ディン!!」
「ヤァドッ!!」
フーディンがシャドーボールをシンボラーに対して、そしてヤドランはカラマネロに対してシェルアームズを放ち、2体とも一撃のもと吹き飛ばす。
「ワタクシだって成長しているということを、ちゃんとこの2人にもお見せしないといけないので……」
セイボリーさんの口は一切動いていないのに発動された2つの技。それが表す意味は一つしかない。
「なっ、テレパシー!?」
「お、お前はサイコキネシスしか使えないはず……」
「ワタクシだってただ足踏みしているだけではないのです。と言っても、こんなふうに腕を動かしたりしないと伝えられないうえ、射程もまだまだ短いのですが……今のあなたたちを追い返すのならこのくらいで十分です。……もう、ワタクシの友人に手出しはさせません。さぁ、わかったのならお帰りなさい!!」
「「くっ……」」
恐らく本来ならカラマネロもシンボラーも耐えることのできた攻撃。しかし、ふいうちのような形で攻撃を受けてしまったことと、急所を打ち抜いた正確な一撃だったため想像以上のダメージが入り、耐えきることができなかったのだろうと思われる。今セイボリーさんが放てる最高火力。それは確かに、彼の過去の壁を打ち抜いた。
「……今日のところは下がりましょう」
「……これはご報告しなければ」
セイボリーさんの言葉を聞いて後ろに下がるカネコンビは、そのまま音もたてずにその姿を消した。恐らくテレポートによる離脱だろう。となるとカラマネロ以外にも外にだして控えさせていたポケモンがいたのかもしれない。まさかシンボラーとカラマネロの2匹だけで彼らの全力ということもないだろう。
(向こうが引いてくれて助かったのはこっちの方だった可能性もゼロじゃないね)
まぁ、その控えの子が闘いに出てきた場合はさすがにボクも参戦する気だったけど……ひとまず乗り越えることができてよかった。ビートも無事だ。
「ありがとうございますセイボリーさん。助かりました」
「ウルガモスの時のお返しですよ。恩を借りたままというのは嫌ですので。……あなたにはもっとたくさんの恩を借りているのですべて返すのは骨が折れそうですがね」
「そんなに何かした憶えは……」
「ガラル第二鉱山で助けられ、ウルガモスとの戦いでは守ってもらい、ここのラテラルスタジアムやエンジンスタジアムでは挑む前に模擬戦やアドバイスを貰って……これで何もしていないというおつもりで?」
「どの場面もボクだけのちからじゃないですよ?」
「ですが、中心人物があなたであることに変わりはない」
「そう……かな……」
自分の中ではウルガモスの時はサイトウさんがいないとパワーが足りなかったし、セイボリーさんがいないと崩しのきっかけが作れなかった。そしてユウリがいなかったらとどめにつなげることができなかった。それにガラル鉱山の件だってボクははぐれていただけだ。
「ま、ここは素直に受け取っておいてください」
「……はい」
本当はまだまだ否定したいことがあったんだけど、頭によぎったのはサイトウさんにも言われた素直に受け取ること。ここまで言われてしまったからには受け取らないと失礼だ。だけど気になることが一つ。
「セイボリーさんの追い付くって……それはどう言う……」
うぬぼれでなければ、その対象はボクのように聞こえた。けど、ボクはそんなに前を走っていた憶えがなくて……
「ああ、そのことですか。それは……少し言いづらいのですが、サイトウさんとあなたの会話を聞いてしまってですね」
「もしかして……ラテラルスタジアムの中を歩いていた時の……」
セイボリーさんから語られたのはボクの挑戦が終わって、ユウリの挑戦を見学しに行くまでの間のこと。ボクの過去をほんのりと語ったあの場面。ちょうどその部分を聞いていたみたいだ。
「えと……個人的には黒歴史だからちょっと恥ずかしいですね……」
「だからこそ、です」
「え?」
顔を上げると真っすぐこちらを見るセイボリーさん。その目はいつも以上に真剣で。
「ワタクシよりもずっと年下で、なのにワタクシよりもずっと強い人が、それでも壁にぶつかり、挫折を経験して、それでもなお前を向いてこんなところまで一人で戦いに来ているのです。……そんな話を聞いてしまったら、ワタクシも前を向いて行かなければ、格好がつかないではありませんか」
「セイボリーさん……」
そんなふうに思われていたとは思わなかった。せいぜいがちょっともてはやされている少年くらいにしか思われていないと思っていた。でも、こう思われていることが、少しうれしかった。
「最初は嫌な人から逃げるためにあなたにくっついて行くというなんともお恥ずかしい出会いでした。ですが、今は超えるべきひとつの壁として、あなたに出会えてよかったと思っていますよ」
その言葉にボクが微笑んで頷くと、セイボリーさんも微笑みながら頷いてくれた。ぼくとの話が一区切りついたセイボリーさんはそのままビートの下へ足を運ぶ。
「あなたに対しても謝罪を。破門された身とはいえ、元同門のものが迷惑をおかけしました。謝って済む問題ではありませんが、ワタクシから誠心誠意の謝罪を」
「……あなたは、ボクがあなたに対してやったことを忘れたというのですか」
謝罪をしたセイボリーさんへの返答としてビートの口から告げられるのはガラル鉱山にてボクたちも見かけたあの戦いの終わり。才能がないとまで言ったファーストコンタクト。ユウリがビートを嫌っている理由でもあるあの場面。先ほどセイボリーさんが言っていた、嫌な人から逃げるための口実というのはビートのことを指していたのだろう。となれば、今ここにこうやってセイボリーさんが立ち向かって話すだけでもなかなかの勇気がいるはずだ。けど、ここでもセイボリーさんの目は一切揺るがない。
「忘れてなどいませんよ。あなたに完膚なきまでに負けて投げかけられた最低な、そして何よりも正確にワタクシを表している言葉。それを聞いたとき、ワタクシはあなたを呪いたくなりました」
セイボリーさんの過去を聞いてしまった今、才能がないという言葉は彼の心をえぐる言葉でしかない。そんな言葉を初対面で言われたら間違いなくその人のことを憎んでしまいたくなる。それは一緒に過去について聞いていたビートにももちろんわかっている。だからこそ……
「と同時に、フリアたちと冒険をするうちに、その呪いはいつしか目標へと変わっていました」
「は!?」
セイボリーさんの言葉にビートは驚く。
「今思い返せばそういわれても仕方ないほどワタクシはひどい戦い方をしていました。と同時に思い出せば思い出すほど、同じエスパー使いとしてあなたの戦い方は、ワタクシの目には素晴らしく見えてしまったのですよ。……それでも、少し怖くてここまで助けに来るのに少し遅れてしまいましたが……そこは申し訳ないです。重ねて謝罪を」
今度は頭をしっかりと下げて謝るセイボリーさん。その姿に、ビートの顔はやはり納得できないといった顔に。
「なぜ……そんなに真っすぐいられるんですか」
「真っすぐ?はて、ワタクシは自分のことを真っすぐとは思いませんが?」
「あはは、それについてはボクも同感」
「……フリア?いい所なんですが?」
「先に言ったのはセイボリーさんです」
ビートからのまさかの評価に笑ってしまうボクとセイボリーさん。ほんの少しだけ空気が柔らかくなった気がした。
「しかしそうですか……ひねくれたわたくしを所望ですか……いいでしょう、なら言って差し上げますよ。ああ残念です。ワタクシよりも上のエスパータイプ使いがいたと思ったら棄権だなんて……これはエスパー最強の座はワタクシのもので確定ですね~。実にあっけない」
やれやれとおどけたように言って見せるセイボリーさん。その姿がなんだか少し面白くて、同時にいつもの胡散臭い彼のテンションが戻ってきたみたいで嬉しくなった。対してビートはその急な態度の変わりようにまるで毒気が抜かれたかのようにため息をこぼす。
「全く、寝言は眠り状態になってから行ってください。今日ジムリーダーに負けているくせしてその言葉がよく出てきますね」
「うぐっ!?」
まさかのカウンターパンチに今度はセイボリーさんがうめく。全く持って正論なためこれはぼくにもフォローしようがない。
「だいたい、そういう言葉はぼくに勝って初めて言える言葉ですよ。あなたはあれですか?他人の点数を落として相対的に自分の順位があがったことを自分が強くなっていると勘違いするタイプの人なんですか?」
「ちょ、ワタクシに対して急に言葉強くなってません!?」
「あっはははは!!」
毒気を抜かれたことによって大分いつものように話せるようになってきたビート。そうなってしまえばいつものビート節が炸裂するのは言ってしまえば当たり前で……完璧に論破されているセイボリーさんがやっぱりいつものお決まりみたいになっていて、そのことに笑いが抑えきれなくなってしまう。
(ああ、帰ってきたんだなぁ)
それがまた嬉しくて、なんだか今ならずっと笑っていられそうだ。
「全く……まぁせいぜい
「「!?」」
そんな時にビートの口から発せられる言葉。それは一見なんでもない言葉のように聞こえるけど、ボクとセイボリーさんには違う言葉に聞こえた。
頂で待ってろ。
それは言い換えればビートが挑むまでに、エスパーのジムリーダーに立てという事。
「……もちろんです!!」
最初ぼこぼこにされ、そして今では目標の一角となっている人に言われるこの言葉の重みは誰よりもセイボリーさんが知っている。こんな言葉を貰って嬉しくならないはずがない。
「よし!ではさっそく次のジム戦の準備をしなくては!!おふたりとも、ワタクシは先にあがらせてもらいますよ!!セイボリーテレポート!!」
そのままテンションが上がったセイボリーさんはホテルの方へ叫びながら走っていく。
(……近所迷惑にならなければいいけど)
忘れているかもしれないが今は深夜だ。せめて彼に苦情がいかないことを祈ろう。
「はぁ、全く……騒々しい1日でしたよ」
「濃密な1日だったねぇ」
残されたボクたちはまだ帰る気になれなかったのでそろってベンチに腰を下ろす。今度はさっきみたいに距離を離してでなく隣同士だ。
その距離の縮まり具合が、さっきまでのわだかまりが消えたことの証明なような気がしてちょっと嬉しい。
「あなたたちも、よくこんな性格の悪い人を助けようと思いましたね」
「性格悪い?ビートが?え、むしろビートって一見ひねくれてるけど根はいい人だと思ってるよ?」
「どこをどう見たらそう……」
「はいこれ」
それでもまだ完全に振り切れていないのか、まだ自虐ネタに走っているビートにボクが彼をやさしいと思った理由を見せる。
「これは……?」
それはビートの手持ちであるガラルポニータとミブリムについて説明が書かれたポケモン図鑑のページ。そこにはこう書かかれている。
ガラルポニータはよこしまな気持ちを見つけるとたちまち姿を消してしまう。ミブリムは穏やかなものにしか心を開かない。
「こんな繊細なポケモンが手持ちにいるってことは、やっぱりビートは優しい人だよ。間違いない」
「……やはりあなたはおかしいです」
頭に手を当てながらやれやれと、だけどどこか嬉しそうな気配を感じながらそうつぶやくビートに微笑みで返す。誰が何と言おうと、ボクがビートを信じられた理由の一つだ。ポケモンに好かれている人に悪い人はいないってね。
「ですが……この先どうしましょうか」
「帰る家とかないの?」
「あいにくと、孤児院出身なもので……ローズ委員長に捨てられた今、帰る場所はないんですよ」
「えっと……ごめん」
「まあ、気にしないでください」
彼も彼で、セイボリーさんに負けず劣らずの過去があるようで……だからこそ、あのカネコンビに狙われたのだろう。しかし、そうなるといよいよもってどうするか悩む。恐らく今から挑戦権を取り戻すのは難しいだろうし、かと言ってホテルに泊まるにも限度がある。セイボリーさんも今は実家を破門にされている状態だし、ボクに至ってはここの人じゃないから家すらない。そして他の人には絶賛嫌われているわけで……
「はぁ……」
「うーん、いい案が思いつかないね」
2人揃ってお手上げ状態。空気も少しずつ重くなり、何となく嫌な流れに……
(このままじゃあ絶対いいことにならない。せめて気分転換出来れば……)
そう思い見回してみるけど、時間帯は深夜。当然そんな遅い時間に何かある訳もなく……
(……いや待てよ?あるじゃないか。とりあえず気分転換できそうなのが!!)
その気分転換できそうなものは、今ボクたちの目の前に作られているこれだ。
「……よし!!ビート!!気分転換にバトルしよう!!」
「は?」
ボクのいきなりの言葉に素っ頓狂な声を上げるビート。そんなことはお構い無しにボクは続きを話す。
「モヤモヤした時はバトルして発散が1番だよ!体動かして、頭の中スッキリしたらなにか思い浮かぶかも!!」
「……はぁ。あなた、意外とバトルジャンキーなんですね?」
「ポケモンバトルが好きなだけだよ〜。それにいつか約束したでしょ?」
あなたを倒す。
これはビートに言われた言葉。その事を思い出したビートの顔がバトルモードに切り替わる。
「さすがに深夜だから一対一で!」
「ええ、音を立てすぎても近所迷惑ですからね。構いません」
準備ができたボクたちは、そっとモンスターボールを構えるのだった。
☆
「行きなさい、テブリム!!」
ぼくが繰り出すのは1番の相棒であるテブリム。ローズ委員長から譲り受けた、ぼくのいちばん最初のポケモンにしてエース。この子がいたから、ぼくは今まで走ってこれたと言っても過言ではない。
「よーし、じゃあボクは……」
「待ってください」
そんなぼくのポケモンを見て、おそらくキルリアが入っているであろうボールを構えるフリアに対して待ったの声をかける。急に動きを止められたことに疑問をもち、首を傾げるフリア。
(……こうしてみるとわざとしてるのかと疑いたくなるほどあざとい人ですね……いえ、今はどうでもいいんですが)
変な考えをすぐに振り切って続きの言葉を紡ぐ。
「まさかでは無いですけど……
「それは……」
少し意地悪な言い方をする。勿論、短時間とはいえ彼の人となりを見てきた身としては当然彼にそんなつもりがないことは知っている。しかし、ぼくだっていちトレーナー……手持ちを隠された状態の相手に勝ったとしても何も嬉しくなどない。
だから焚きつける。
「言ったはずです。ぼくはあなたを倒すと。それは、あなたの隠し球をも打ち破るという宣言のつもりです」
「……」
「それに……」
フリアに言われ、テブリムたちに信頼されていることを改めて感じ取ったからこそ、今のぼくには手に取るようにわかる。実際にテブリムに信頼を込めて熱い視線を送ると、物凄く嬉しそうな顔で返す彼女がいたから。そして同時に、いつにも増して彼女と強く繋がっているような気がしたから。だからこそ……!!
「今日のぼくは……間違いなく今まででいちばん強いので。何せテブリムと……いえ……」
ぼくの言葉と同時にテブリムが青色の光に包まれる。その光景に思わず声をあげているフリアだが、テブリムと心で繋がっているぼくにとって、これは必然。改めてお互いの気持ちを認めあえたぼくたちはさらに上のステージへと登っていく。そして、光が晴れた時、テブリムは新たな姿をもってフリアに立ち向かう。テブリムが進化した、まるでおとぎ話の魔法使いのような姿。その名を……
「ブリムオン……彼女と本当の意味で、心を繋ぐことが出来ているので」
「リォォオンッ!!」
森の魔女。そう称えられる最高の相棒が一緒に吠える。その姿を見たフリアは……目を輝かせていた。
「凄い!!凄いよビート!!」
真っ直ぐぼくを見る彼の視線が、あの時ローズ委員長に向けられた視線よりもさらに暖かくて、恥ずかしく感じるけどそれ以上に嬉しく思う。ちゃんと自分を見てくれる人にようやく会えた気がして。だが、だからこそ、彼には本気を出して貰いたい。
「こんなの見せられたら……ボクも本気を見せるしかないよね!!」
そう言いながら、彼はガラルの公式戦にて、1度も触れてこなかったボールに手を触れた。
「言っておくけど、この子はビートにとってのテブリム……いや、ブリムオンと一緒でボクの最初のポケモンなんだ。ボクの切り札……頼れる最高の相棒……だから……!!」
ボールに込めるその愛おしそうな視線から、そのポケモンが本当に大事なのだということが分かる。言葉を綴りながらボールを撫でるフリア。そしてついに……
「……覚悟してね?」
「っ!?」
ボールが開放された瞬間ぼくとブリムオンの体を襲う圧倒的なプレッシャー。視界に広がるは真っ暗な闇。そんな闇の中でもうっすらと輪郭が見えた。
それは2mを超える黒の巨体をもち、体には黄色のラインが入っているのが分かる。
灰色の大きな手はあらゆるものを掴み、図鑑の説明通りならばあの世、もしくはお腹の口へと誘われることだろう。
そして1番目に激しく映るのは、赤く怪しく輝くひとつの目。
全てを見通されていると錯覚してしまいそうな、深く、深く、鋭い目。
「さぁ、久々のバトルだ……行くよ……っ!!」
「これが……フリアの切り札……ッ!!」
フリアの言葉と共に、
セイボリー
おおむね公式設定通りの過去。
ちょっとオリジナルキャラ入ってますけど、こんな感じかなと。
ビートともわだかまりが消えてようやくライバルへ。
吹雪でのお話が女性サイドの出番多めだったので、今回は男性陣多めで。
このお話にしたいなと思っていたのでバウタウンから同行させようと思いました。
フリア
いろんな人に目標にされてますね。
ブリムオン
ミブリムとポニータの図鑑説明を見た時からこの展開は頭の中で浮かべてました。
やっぱりビートはいい人です。
切り札
というわけで初登場。
名前は相変わらず出てませんが……もう正体はわかりましたよね?
ポケダンで有名なあの方が相棒です。
正解者も何人かいましたね。
しかし初めて対戦相手から見たフリアさんを書きましたけど……なんかラスボスっぽくなってしまった……なぜ?
相変わらずアニポケのサトシの戦略が凄い……
あんなの思い浮かないです……さすが公式さん。わたしもまだまだですね。