夜も深くなり日付も変わってしまったバトルフィールドにて、圧倒的な存在感を放つ黒いポケモンが1匹。その中心に存在する自慢の相棒に向かってボクは声を上げる。
「行くよ……ヨノワール!!」
「ノワァァァァアアッ!!」
名前を呼ばれたヨノワールがボクの声にこたえるように雄たけびをあげる。たったそれだけの行動なのに空気は震え、プレッシャーがさらに膨れ上がったような気がする。その迫力に押されそうになるビートだったけど、ぐっと歯を食いしばってブリムオンに指示を出す。
「ブリムオン!!『サイコキネシス』です!!」
テブリムからブリムオンに進化したその姿は、森の魔女と言われるほど神秘的な姿をしており、またその魔女という名に恥じぬ高い特攻の高さがうりのポケモンだ。そんなポケモンから放たれるタイプ一致のサイコキネシス。当然火力はとんでもなく高く、生半可なポケモンでは受けきることは難しいだろう。しかし……
「受け止めて!!」
「なっ!?」
そんな高火力の技でさえ、まるで効いていないかのように涼し気な顔をして受け止める目の前のポケモン。決して体力が高いポケモンという訳では無い。しかし、防御、特防共にとても高い水準なため、こちらも生半可な攻撃では膝を折らない。……まぁ、ヨノワールに膝があるかと言われたらないんだけど……それは置いておく。そしてもうひとつのヨノワールの強み。それは……
「『じしん』!!」
これだけの耐久がありながらも、決して攻撃面も弱い訳では無いということ。
地面に叩きつけられた拳を中心に、とてつもない振動がブリムオンを襲う。空に飛べることが出来れば避けることができるが、飛べないものは一身にその高火力の技を受けることとなる。火力が高い代わりに機動力の乏しいブリムオンでは避けることはまず不可能。あらゆるものを破壊するじめんのエネルギーが、余すことなくブリムオンへと直撃する。
「ルォッ!?」
「くっ……なんてバカな破壊力なんですか……ッ」
ボクの頼れる相棒。その頼もしい背中を、こうして久しぶりに見ることができたのが何よりも嬉しく、テンションが上がってしまう。こころなしかヨノワールもテンションが高そうだ。ヨノワールのいちばん直近の戦いと言えば、預かり屋でのポケモンハンターとの戦いで活躍してくれた場面だけど、あのときは別行動による単独出撃だったためボクと一緒に戦っていたわけではない。そういう意味では、こうやってボクの指示を聞いて戦うというのは本当に久しぶりで、なんならガラルに来て初めてだ。その事が嬉しくてお互いどんどんギアが上がっていく。
「ヨノワール、『いわなだれ』!!」
地面に手を当てるヨノワールの周りに浮かぶ数多の岩石。大地の刃であるそれらがヨノワールの指示の下、風を切る音を奏でながらブリムオンへと殺到する。
「くっ、『マジカルシャイン』です!」
対するブリムオンは自身を中心に輝く光を放ち、いわなだれの勢いを何とか削ごうと頑張っていた。しかし、それでも勢いを殺し切ることはできずいくつか被弾してしまう。さらには、自分の周りに岩が散乱してしまい、ビートとブリムオンからの視界がかなり制限されてしまう。
視界の制限。それはゴーストタイプのポケモンと戦うにおいて致命的となる。
「……『かげうち』!!」
岩の乱立によってできた死角からヨノワ―ルの影がブリムオンに迫り、影から生えた黒色に染まった手から強烈な一撃をブリムオンにお見舞いする。かげうちが来るとわかっていても、岩のせいで出所がわからず避けることのできなかったブリムオンは、こうかばつぐんの技であることも手伝って大ダメージを受けてしまう。せめてもの反撃として、再びマジカルシャインを構えるブリムオンだけど、そのころにはすでに地面のかげに潜っており、その数秒後にはヨノワールはそばまで帰ってきていた。
かげうちはいわば自分の分身のようなものなので、これを攻撃されれば自分に返ってくるというちょっとしたリスクはあるものの、今の時間帯が夜ということもあり、その影をとらえられることは無い。仮にとらえられるようなことがあったとしても、今度は影ではなく、自分の手によるかげうちを行えば反撃はさばけるしね。遠近両用ができるのがかげうちのいい所だ。
「本当に容赦ないですね!!」
「だって、全力を見たかったんでしょ?」
「そうですけど……いえ、弱音はなしです!ブリムオン!岩に向かって『サイコキネシス』!!」
このままではヨノワールの独壇場。せめてバトルフィールドを元に戻すだけでも頑張ろうと、ブリムオンがサイコキネシスで岩を持ち上げ、さらにそれをこちらに飛ばすことによって逆に攻撃手段として利用してきた。ただでは転ばないその判断に素直に感心しながらも、予想していた行動の一つであるため慌てずに指示を出す。
「『かわらわり』!!」
先ほどのかげうちの手とは打って変わって今度は白く輝きだすヨノワールの大きな手。その大きな手は飛ばされた岩を次々と砕いていく手刀となり、一瞬ですべての岩を砕ききる。
「そのままおかえし!!」
砕かれたことによって小さい石となったそれらを、てづかみポケモンの名を表す大きな手で抱えきれるだけ持ち、そのすべてをブリムオンに向かって投げ返す。
「『ぶんまわす』で防いでください!!」
小さくなったことによっていわなだれの時でさえ速かった石の雨がさらに速くなって飛んでいく。この攻撃に対して、マジカルシャインの迎撃では技が間に合わないと判断したビートはぶんまわすを選択。黒色のオーラを纏った触手を振り回して何とか石を弾く。しかし、その石の勢いと量が多すぎて防戦一方となる。
こんな明らかなチャンスを逃すわけがない。
「ヨノワール、『じしん』」
「「ッ!?」」
力強く握られたヨノワールの拳が再び地面に突き刺さり、巻き起こるはすべてを破壊する大地の怒り。ぶんまわすで石をせき止めていたブリムオンは、地震にまで対応する余裕なんて当然なく、空中に弾き飛ばされる。
サイキックで空に浮くことはできるとはいえ、自由に素早く飛ぶ術を持たないブリムオンは次の攻撃を避けられない。
「ヨノワール!とどめの『かげうち』!!」
いつの間にかブリムオンの真下まで影を伝って移動していたヨノワールが、かげから飛び出して一瞬でブリムオンの懐に潜り込む。ブリムオンが気づいたときには、今度は直接攻撃をするべく手を黒く染めたヨノワールが彼女の真上にて攻撃準備を整えており……
「叩きつけろ!!」
勢いよく振り下ろされたことによって、ブリムオンを地面に叩き落す。
派手な音と土煙を巻き上げながら地面に落ちたブリムオン。
「ブリムオン!!」
ビートの声が響き渡るものの、ブリムオンからの返答はない。しかし、ボクもヨノワールも全く戦闘の構えをとくなんてことはしない。
(これくらいで倒れるような相手じゃないもんね)
土煙のせいで上手く見えないため下手に動かずにどっしりと構えておく。いわなだれを土煙に向かってやたらめったら打つのも構わないんだけど……
(サイコキネシスの出力は本物だから逆に技で返されそうだしね)
それにヨノワールなら相手のサイコキネシス単発なら耐えられる。
「……ッ!!ヨノワール、ガード!!」
土煙に意識を集中させているなか、かすかに土煙の動きが変わったのを確認してすぐさま防御を指示。その数秒後に土煙を吹き飛ばしながらサイコキネシスが真っ直ぐヨノワールに飛んでくる。あらかじめ防御の構えを取っていたためふいうちを喰らう事こそなかったけど、少なくないダメージは確かに貰っていた。
「やっぱり立ってくるよね!」
「当然です!」
「ルオォンッ!!」
ボロボロになりながらも立ち上がり、こちらにしっかりとその視線を向けるブリムオン。その瞳からはこれっぽっちも闘志が消えていない。追い詰められた今こそ最も気を付けるべき場面。決して油断せず、最後まで気を引き締めないとここから手痛い反撃を喰らうなんて良くある話だ。
「まだまだ、ここから追い詰め返してあげますよ!」
「簡単に崩されてあげるわけにはいかないんだよね!!」
「『ぶんまわす』!」
「『かわらわり』!」
黒く染まったブリムオンの触手と白く輝くヨノワールの右手が激しくぶつかり合う。攻撃同士がぶつかり合う甲高い音を奏でながらも、この鍔迫り合いを制したのはやはり攻撃力が高いヨノワール。ブリムオンの触手をしっかりと打ち返したことによって態勢が崩れたのを確認した。こちらもかわらわりを打ってすぐの場面だから次の技への移行か少し時間がかかるけど、自分がどの態勢でも影を伸ばして攻撃できるかげうちなら放てる!
「『かげうち』!!」
「『マジカルシャイン』!!」
ブリムオンの真後ろに伸びた影が爪の形をとってとどめを決めんと襲い掛かる。対するビートは後ろのかげうちに反応することは不可能と判断し、全方位攻撃であるマジカルシャインでまとめて弾き飛ばそうとする。けどブリムオン自身のダメージが大きいせいか溜め時間が長く明らかに間に合っていない。
(かげうちが先に入る!!)
輝く光が放たれるより早く相手の背中をとらえる。そう確信した瞬間━━
「うるせぇぞ!!何時だと思ってんだ!!」
「ッ!?」
「ぴぃっ!?」
いきなり大声で飛んできたお叱りの声にびっくりしてしまい、お互いのポケモンもトレーナーも硬直していしまう。ボクに関しては変な悲鳴まで上げてしまっている始末……かなり恥ずかしい。
どこからともなく聞こえたその大声によってお互いのポケモンの技も中断されてしまったため、なんだか微妙な空気になってしまいどうすればいいかわからなくなってしまう。
「え、えーっと……」
「……はぁ、戻ってください。ブリムオン」
「まぁ、そうだよね……ごめんね、ヨノワール。戻って」
お互い不完全燃焼により若干のもやもやは残るものの、両者のポケモンが聡いため状況をしっかりと判断してくれたから特に不満を述べることなくボールに戻ってくれた。せっかくガラルデビューさせてあげることができたのにこの結果はちょっと申し訳ない。この埋め合わせは必ずどこかでしてあげるとしよう。今回のこの試合に関しても、最初からテンション上がりすぎてじしんとかやっちゃってたあたり、今の時間が深夜だということがすっかりと頭の中から抜け落ちていたみたいだ。
(……うん、流石にこの時間で一発目からじしんは頭が悪すぎた……反省しなきゃ)
というかたとえ普通のバトルであってもいきなり大技は脳死過ぎないだろうか?これがジム戦でなくて良かった。ヨノワールがジム戦にデビューする時が来たらまず落ち着くようにしようと心に決めた瞬間だった。
「しっかし……あ~あ、引き分けか~」
試合展開的には押していたけど中止試合は等しく引き分け。公式試合なら残りのポケモンの数で判断を行うけど今回は1対1だからそういうのもないし完全な引き分けだ。確かに勝ち確定盤面に見えたかもだけど、戦いはちゃんと終わるまで何が起きるかわからない。予想もできない何かが起きて巻き返されることだってあるからボク個人の思いとしては中止試合は等しく引き分けと思っていると言うわけだ。
「何を言っているんですか。あんなの明らかにぼくの負けですよ……あそこからどうやって逆転しろっていうんですか……切り札に偽り無しって感じですね。普通にパワー負けしてしまいましたよ」
ただビートはそう思っていないらしく、彼からは自分の負けだと言われてしまった。正直反論したい気持ちでいっぱいなんだけど、ここで言い返すと彼の性格上ちょっとめんどくさそうな気がするから黙っておく。……うん、睨まれているあたりちょっと心読まれてる気がする。サイキッカーコワい。
「ヨノワール……確かに強力でしたよ。その強さ、しかと心に刻まさせてもらいました。ラテラルタウンという現状ゴーストタイプの本場と言われるここで戦うのもなんだか奇妙の縁を感じますね」
「それに関しては同感。ある意味ここがヨノワールのデビューでよかったかも」
まあ強いて言えば気になるところはサイトウさんにも言われたボクの切り札を誰が引き出すか競争(?)の勝者がまさかのビートになってしまったことくらいだろうか?いや、個人的には隠している気はないし、機会があったら全然オープンする気だったんだけど、なんだかやけに期待されているみたいだし、こうなってしまうと逆に出しづらい……
(もし今日のこの試合のことが浸透しちゃったら変な広まり方するのでは……特にキバナさん凄い荒れそう……SNS、だっけ?あれにすごいこと書いてあったし……どうかバレませんように……)
キバナさんを悪い人というか、文句言う人とは思っていないけど、とりあえず荒れることありませんようにと手を合わせておく。お祈りは大事だ。
「……何しているんですかフリア」
「……ちょっとお祈りを」
そんなボクを見てちょっとあきれているビートだけど、こればかりは許してほしい。
「全く、安心してください。今日のことは誰にも言いませんよ。仮に漏らそうものなら間違いなくあなたになついている人が黙ってないでしょうし……」
「誰の事?」
「なんでもないですよ」
なんて戦々恐々としていたら今度はボクがビートの謎の言葉に頭をかしげる。今日のことを知ってビートに突っかかりそうな人……う~ん、正直思いつかない。しいて言えばユウリくらいだろうか?にしても想像はあまりできないけど。
「ともかく!あなたのその切り札、今度闘う時に必ず攻略します!ですから……それまで、ヨノワールを使って負けることをぼくは許しませんからね。いいですか?」
「……ふふ、いいよ。簡単に負ける気はないからいつでもかかっておいでよ」
明らかに最初よりも元気なビートの表情に思わず笑みがこぼれる。戦いの決着こそ不完全燃焼となってしまったものの、やっぱり戦ってよかったと思える。本当にビートが元気になってよかった。
「とにかく、当面の目標はあなたを叩きのめすことですね」
「随分と物騒だね……でもどうするの?」
ビートと言いセイボリーさんと言いユウリと言い、いろんな人に目標にされていることに若干の苦笑いが出てくるものの、とりあえずそのことは置いておいて、本来の議題であったビートの未来について話をする。元々いい案を出すのに一回頭をすっきりさせるためにこのバトルをしようって話だったしね。
「ヨロイ島の道場を考えてますよ。確か、セイボリー選手のいた場所かつ、元チャンピオンが経営している場所でしたよね。そこに道場破りでもかましてやれば入門させてくれるでしょう」
「いや、道場破りの時点で入門する気ないよね?」
ボクのことをバトルジャンキーとか言っていたけど彼も大概だと思う。流石に道場破りはない。あまりこういうことに明るくないボクでもわかる。
「少なくとも、セイボリー選手を育てている場所なんです。悪い場所ではないでしょう」
「ふ~ん、なんだかんだでセイボリーさんのこと評価してるんだ?」
「うるさいですよ、気持ち悪い笑顔浮かべないでください。彼とのやり取りの時点でわかっていたくせに、そうやっていちいち突っかかるところがあなたの嫌いなところですよ」
「はいはい。ごめんごめんって」
ビートとの軽い口論がどこか心地いいい。やっぱりこうやって軽口を言い合える仲って楽しいね。
「じゃあぼくはそろそろ行きますよ。流石に疲れたので休みたいです」
「ボクも、そろそろホテルに戻ろうかな。明日からラテラルタウンを出てまた旅だしね」
次のジムチャレンジ会場があるアラベスクタウンに行くためにはルミナスメイズの森という場所を抜ける必要があるらしい。森が鬱蒼と生い茂っているため足場も悪そうだし、『メイズ』というだけあってきっと複雑な構造をしているのであろう。慣れない道が続くと思われるのでしっかりと休んで挑まなきゃね。
そんな思いでひとまず今日のところは2人そろってホテルに戻ろうとして……
「アンタたち、ちょいとまちな」
「「!?」」
ボクとビート。2人そろっていきなり聞こえた第三者の声に思わず背筋がピンと伸びる。2人でゆっくりと後ろを振り返ると、そこには1人の老人がいた。
(って、あの人は!?)
超ロング丈のピンク色をしたユニフォームのように見えるデザインの服をワンピース風に着用し、紫のファーと帽子、ブレスレットを着けているほか、こんな時間なのに日傘を持っているその姿。まるで魔女を連想させるようなその装いをした老齢な女性。独特なプレッシャーを放つその人物のことをボクは知っている。
「アラベスクスタジアムジムリーダー……ポプラさん……」
ボクが次に挑む、フェアリータイプのジムリーダーであるポプラさんだ。
「あんたたちのバトル、ちょいとのぞかせてもらったよ」
「あ、あのバトルを!?」
一体いつからいたのか。全く気配を感じなかったため若干の恐怖を感じた。というか今現在進行形で感じている。もしかしたら彼女もこんな時間に迷惑なバトルをしていたボクたちを怒りに来たのかもしれない。そう思いビートと顔を合わせて頷き、いつでも謝れる準備をしておく。老齢ゆえそんなに速く歩くことが出来ないのかゆっくりとこちらに向かってくるのが崖に追い込まれた犯人の気分にさせられて余計に怖い。2人同時にそっと頭を下げて「ごめんなさい」と口を開けようとする。が。
「ふむふむ……」
「って何触っているんですか!?」
「……え?」
いきなり聞こえるビートの声に何が起きているのかさっぱり分からなかったボクは、下げていた頭を上げて状況を確認する。するとそこには、歩く速度的にまだまだ遠くにいたはずのポプラさんがいつの間にかビートの真後ろにたっており、ビートの腕やら腰やらをピトピトと触りまくっているところだった。
(……え、ちょっとホラーなんだけど)
なんで触っているのか、あれだけの距離をどうやってつめたのか、というか、こんな時間に散歩ってもしかしてもう徘徊癖まで出てきてしまったのか――
「失礼なやつだね。あたしはまだまだピチピチだよ」
「ひぇっ!?」
自分でも若干失礼なこと考えているなと思っていたらまさかの言葉にまた体が震える。この人やばい。色んな意味で。
「ま、そんなことよりも……あんたに話があるんだよ」
「ぼ、ぼくに……ですか」
そんな怯えているボクのことは特に気にせず話を進めるポプラさん。どうやら彼女はビートに用があるようで、ボクとの会話(?)の間もしきりにビートにボディタッチをしていた。困惑しながらも何とか返答するビートに対して、ポプラさんはちょっと満足気に頷きながら口を開く。
「服装もピンク。見させてもらった手持ちのみんなもピンク。そして何より、真っ直ぐだけどひねくれている……あんた、やっぱりあたしが思った通りいい人だよ」
「な、何を言ってるんですか。ぼくのスタイルにケチつけるつもりですか?」
「いや、あんたにとってもなかなか美味しい話を持ってきただけさ」
「美味しい話?」
急に現れたポプラさんの話の本題が全然見えてこないせいか、終始振り回されているボクたち。この人の繰り広げる独特の空気感がまるで分からない。
「あんた、アラベスクスタジアムに来る気は無いかい?」
「っ!?」
いきなりの展開で混乱しているところにさらに放り込まれる爆弾のせいでいよいよ頭の中がぐちゃぐちゃになり始める。何故今この瞬間に勧誘なのか。ビートもビートで先程カネコンビに勧誘され、襲われたばかりなせいか一気に警戒度を引き上げる。さすがにあんなことがあったあとすぐではこうなってしまうのも仕方がない。だけどそんな警戒心を一身に受けているポプラさんは、その反応にむしろ笑顔を浮かべる。
「やっぱりいいねぇ。ひねくれてるくせにこういう時は真っ直ぐなのも好きだよ。どうだい、あたしについてくる気はないかい?」
「……」
迷っている。目を見ればわかる。ビートの目を覗き込めば簡単にわかることで、信じていいのかどうかで明らかに動揺している。カネコンビがエスパータイプのジムからの刺客である以上ジムリーダーだからといって簡単に信じられる訳では無いため、ボクも簡単に背中を押すことが出来ない。勿論カブさんやオニオンさん初め、いい人が多いというのはわかるんだけど、信用するにはボクたちはポプラさんという人のことを知らなさすぎる。
果たしてこの人は信用していいのかどうか。
答えの出ないその問に悩んでいるそんな時、ボクの前に影が動く。
「問題を起こしたぼくを、引き抜きたいと?」
「あたしなら捨てられて困ってるあんたをどうにかできるって話しさ。それに、あたしもそろそろ後継者が欲しいと思ってたところさ。さっきのバトルもなかなかピンクに溢れてよかったからねぇ」
「ピンクに溢れる……」
やっぱりこの人の空気感がよく分からない。
「強さならぼくよりフリアの方が上だと思いますが?」
「確かに強い。さすがにシンオウチャンピオンの推薦者さ。ピンクも充分。だけどいささか真っ直ぐすぎるね。フェアリージムに求められるのはピンクはもちろん、真っ直ぐさとひねくれさを両方持ち合わせることさ。あんたならそれをクリアしてる。ま、これはあたしの趣味だがね。……で、どうするんだい?来るのか、来ないのか、今ここで決めて貰おうか」
こんな大事な決断をなぜ急がせるのか。そのことについて一言言おうと前に出ようとしたけど、そこをビートに止められる。そこまでされてボクの頭も冷えていき、冷静に考えられるようになる。
(そうだ。これはビートの未来だ。ボクが口出しをするべきじゃない。彼自身が決めないと……ボクがしていいのは背中を応援するか否かだけだ)
「……やっぱりあんたは真っ直ぐすぎるよ。そこがいい所ではあるけどね」
「え?」
「こっちの話さ。さ、早くあんたの答えを聞かせな」
「……いいでしょう。その話、乗ってあげますよ」
「ビート……」
ポプラさんのボクに対する言葉に一瞬戸惑ったものの、ビートの答えを聞いて直ぐに頭を切り替える。ビート自身がしっかり考えて出した答えだし、カネコンビの時と違ってボクにアドバイスできる範疇を超えているためボクに言えることなんて何も無い。
「よし、決まりだね。ついてきな。帰ったら早速特訓さね」
そう言いながら来た道を戻っていくポプラさん。その後ろをビートがついて行く。
「ビート!」
「……大丈夫ですよ」
そんなビートが少し心配でつい声をかけてしまうけど、振り返って見せたビートの顔はとても穏やかなものだった。
「強いひとなら教えを貰えばいいですし、もし変な人ならこっそり抜け出して今度こそヨロイ島に行けばいいだけです。何も無いぼくに失うものがもうない以上これっぽっちもリスクなんてありませんからね。……それよりもフリア」
「……何?」
「改めてもう一度、ぼくは必ずあなたを倒します。その時を、覚悟しておいてください」
「……うん。待ってる。ビートが帰ってくるのを、上で待ってる」
お互いの手を握り、お互いの健闘を祈る。程なくして握手を解き、ビートはポプラさんの後ろをついて行く。
言葉はもういらない。
あとはお互い、自分の進むべき道を歩むだけだ。
(頑張ってね。ビート)
ルミナスメイズへと消えていく2人の影を見送ったボクは、今度こそホテルへの帰路に着く。
(ボクも、頑張らなくちゃ!!)
新しいスタートを切ったライバルに負けないようにと、改めて心に誓いながら……
ヨノワール
ようやく名前も登場の切り札さん。
なぜ彼にしたか?単純にわたしの嫁ポケだからです。
やっぱり自分の作品だから自分の好きなポケモンを主役にしたいじゃないですか。ね?
登場タイミングが中途半端と思う方もいるかもしれませんが、作中通りフリアさんに隠す気がそんなにないことと、いくら好きとはいえ600属ではないのであまり遅くしすぎるのもちょっと違う気がするのでこのタイミングです。
ラテラルというゴーストジムがあるという事も意識していたり。
それに……盛り上がる場所、まだまだ準備しているつもりなので(自らハードル上げるバカ)
技構成はじしん、いわなだれ、かげうち、かわらわり。
チョッキをもちそうな編成ですね。これは私が初めて育てたヨノワールの型で、たくさん活躍してくれた子です。
所謂思い出補正ですね。
引き分け
ちょっともやもやするかもですが、進化したブリムオンを下げすぎず、しかしヨノワールの強さも発揮してと考えるとこれが一番丸いかなと。
ポプラ
実機よりもちょっと早い弟子ゲット。これによりちょっと次が変わるかも?
ヨノワールのヒントについて
主人公は幼い時にホウエン地方に行ったことがある←ここで出会っている
シンオウ地方の相棒←シンオウで進化する
夜が好き←ゴーストっぽい
拳を握るシーン←手がある
こんなところでしょうか?
他の手持ちも四匹はヒントが出てますね。
考えてみてくださいませ。