【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

67 / 374
改めて見て回ると皆さんシロナさんに苦戦してたみたいですね。
個人的には、チャンピオンにはこれくらい強くあってほしいですね。今までのポケモンで戦ってて最高に楽しかったチャンピオンでした。
結果としてフリアさんのパーティを組んで冒険したのですが、こういう縛り……というよりコンセプトですね。それを作って遊ぶのはとても楽しいです。

さて、化石掘りましょうか()












67話

「ブラッキー!!」

「ブラッ!!」

 

 数多のシャドーボールをあくのはどうで撃ち落としつつ、自分自身の体をも使って受け止め、そのうえでつきのひかりで傷を癒していくブラッキー。

 

「平気?」

「ブラッ!!」

 

 まさに要塞。

 

 からをやぶるによって攻撃力はかなり上がっているはずのシャドーボールをものともしないその姿に頼もしさを凄く感じる。他の技だって、サイコショックに関してはこちらがあくタイプになったためそもそもダメージを受けないし、ギガドレインでは火力が足りないため問題なく受けきることができる。さっきまでの撃ち落とすか避けるしか出来なかった状況から、受け止めるという選択肢が増え、さらにつきのひかりで回復も可能。そして何よりタンク役だけではなく、あくのはどうで弱点を突く大ダメージも狙える。今この場において、ここまで強力な味方もいないだろう。

 

「モルペコ、『オーラぐるま』!!」

「バチンキー!!『はたきおとす』だ!!」

 

 つきのひかりによって回復できたモルペコとバチンキーも戦線に加わることによって再びこちらが押し始める状況。やはり、頼みの綱のからをやぶるさえも受け止めてしまうブラッキーの耐久力がどこまで行っても相手の勢いを削いで行く。敵側としてもブラッキーを落としてしまわないと何も出来ないというのはわかってはいる。けど、その焦った気持ちが敵の行動を縛っていき、ブラッキーに攻撃が集中することによって発生する相手の隙を、モルペコとバチンキーが確実に仕留めていた。

 

 ブラッキーを中心に回っていく戦闘。

 

「『つきのひかり』で回復したら今度は右上に『あくのはどう』!!」

 

 既にポットデスの動きにも目が慣れた。これならもう見失うこともないし、不意を付かれることも無い。再び体力を回復させ、すぐさま攻撃を先読みして置いておくことによってまた1匹のポットデスが堕ちていく。もはやその総数はかなり減っており、もう少し減らすことが出来れば両の手でも数えることが出来るくらいになってきていた。

 

「あと少し……!!」

「勝てるぞ!!」

「うん!!」

 

 見えてきた勝利を前に、しかし先程のようなこともあったため全員油断することなくさらに気を引きしめる。次にこちらの勢いを崩されたらさすがに立て直せる気がしない。そういう意味でも今掴んでいるこの流れは最後まで死守する必要がある。絶対に押し負けてはいけない。逆に言えば向こうは何がなんでも押し返したいこの状況。動き出すのなら、このタイミング。

 

 

「ティッティーッ!!」

 

 

「「「来るっ!!」」」

 

 大声で響き渡るリーダーのポットデスの叫び声。その声と同時に残りのポットデスが一斉に守りに入ってリーダーの壁となる。その強固なる壁はいくら進化し防御は強くなったと言っても、攻撃側に関してはむしろ弱い方と言って差し支えないブラッキーでは、バチンキーとモルペコと力を合わせても突破は出来ない。

 

 安全が約束されたエスパーの壁の奥で自分の体を洗練させていくポットデス。

 

 1つ。

 皮が剥がれ、無駄な部分が除去される。

 

 2つ。

 皮が剥け、より体が細くなる。

 

 3つ。

 殻を破り、守備を捨て、最高の火力と素早さを手に入れる。

 

 3回連続で行われるからをやぶる。あのリーダーのポットデスは今、誰よりも脆く、そして誰よりも速く、誰よりも凶悪な個体へと成った。

 

 今までのくだけるよろいとからをやぶるによって駆け回ったポットデス達とは一線を期しており、あの子が放ったシャドーボールは、速すぎて精度が少し悪かったためブラッキー達に当たることこそなかったものの、流れ弾としてぶつかった木の幹が簡単にえぐれてしまうほどの圧倒的火力を内包していた。

 

「……なんて威力だ」

「さすがにこれは受けられなかとよ」

 

 ホップとマリィがそのあまりにもたかい威力に困惑の表情を浮かべる。そんな2人の心が移ったのか、モルペコとバチンキーも同様に驚きの表情を浮かべていた。けど……

 

「ブラッ!!」

「……行けるんだね。ブラッキー!!」

 

 ブラッキーだけは、むしろこの時を待ってたと言わんばかりの好戦的な笑顔を浮かべていた。正直、ボクには今のブラッキーが何を考えているのかは分からない。けど、あれだけ自信満々に構えているその姿を見ると、信じてあげるのがトレーナーというものだろう。

 

「わかった……信じてるよ、ブラッキー!!」

「ブラァッ!!」

 

 ボクの声に応え、吠えながら前に走るブラッキー。ポットデスの近くまで走りより攻撃の構えを取る。しかし当然スピードはあちらの方が圧倒的に上なため、すぐさま離れて迎撃を部下に任せるリーダーのポットデス。ブラッキーに突撃する残り少ないポットデス部隊。相手としては落としたいブラッキーが前に出てきたのだから狙わない手はいな。けどそれはこちらもよくわかっていること。

 

「モルペコ!」

「バチンキー!」

 

 この戦いのトドメを担えるのがブラッキーだけということを自然と理解している2人からの素早いフォロー。接近してきたポットデスをオーラぐるまとはたきおとすによって素早く弾き飛ばす。

 

(ブラッキーがどんな技を使えるようになったのか……正直まだ全部は理解できていないところがある。それに進化して自分のタイプが固定化されたせいか、たぶんもうまねっこによる奇怪な動きもできないとみていいと思う)

 

 まねっこによる変幻自在な戦い方は、しんかポケモンという無限の未来を兼ね備えていたイーブイだからこそできた技だ。あくタイプとしての進化を果たした今のブラッキーは、一つの事柄に特化はしたものの、イーブイの時のような柔軟さは失われている。だけど……

 

(ポットデスに対して自信満々に走り出したあの動きを見るに、おそらくブラッキーは今のポットデスを倒すに値する技を一つ抱えていると思っていいんだと思う。そしてあくのはどうによる遠距離もできるはずなのに、わざわざ自分から近付いているところから、その技が物理、ないし近接技だということも想像できる。ならボクがいまブラッキーのためにできることは……)

 

「ブラッキー、地面に向かって『あくのはどう』!!」

 

(ブラッキーがあのポットデスの懐に潜り込めるように道を作ってあげること!!)

 

 地面にぶつかった黒色の波動によりあたりに土煙が巻き上がりブラッキーの姿を隠していく。

 

(まずは姿を隠して相手の視界を阻害する!)

 

 土煙でブラッキーを隠したことで、ブラッキーの正確な位置は相手にはわからない。ただ、土煙から外に出ることができるわけじゃないからこれだとまだポットデスの懐には潜れない。

 

「ホップ!手伝って!!」

「わかったぞ!!マリィ!!」

「OK。周りの奴らは任せて!!」

 

 ホップに応援をお願いしたボクは土煙の中にブラッキーを隠したため出来たわずかな時間で懐からボールを一つ取り出す。一方でホップはバチンキーに指示を出して周りにどんどんはっぱカッターを集めていく。ボクの意図をしっかりとくみ取ってくれたみたいで物凄く助かる。

 

 急にあわただしく動き出したボクたちの様子を見て勿論黙っている相手ではないけど、この間に邪魔をしてくるポットデスの群れは、繰り返し発動していたオーラぐるまによって最大まで加速し切ったモルペコの大爆走によってその足を止められてしまう。しかし、はたから見ても全速力で駆けていくのがよく見えるその姿は、この状況を長く維持することは難しいということの証明にもなっていた。短時間とはいえ、群れを一匹で引き受けている時点で十分凄いしありがたいのでこれ以上の贅沢は言えない。モルペコの頑張りを無駄にしないためにも急いで準備をしなくてはいけない。

 

「お願いキルリア!」

 

 その間にボクが呼び出すのはキルリア。この子にお願いするのはバチンキーと一緒にはっぱを集めること。バチンキーははっぱカッターで、キルリアはマジカルリーフで葉を集めていき、集まったはっぱをキルリアのエスパーでさらに集めて大きな一枚の葉にする。

 

「ぺ……コ……」

「二人とも、もう限界!!」

 

 マリィの言葉を聞いて前を向けば、走り疲れたのかモルぺコが地面に倒れてへばっている姿が見えた。あとでポフィンをたんまりあげて労ってあげよう。モルペコの頑張りもあってこちらの準備も完了。あれだけ戦場を駆け回っていたことも手伝って、ブラッキーを包む土煙の量はかなりのものになっていた。

 

「ホップ!」

「おう!!」

「キルリア!」

「バチンキー!!」

「「吹き飛ばせ!!」」

 

 キルリアとバチンキーで二人そろって構える大きな一枚の葉っぱは、まるで祭りの大団扇を振るうかのように上から下の振り下ろされる。台風でも通ったのではないかという程吹き抜ける強烈な風に、地面で踏ん張ることができないポットデスたちはその場にとどまることが精いっぱいで動くことができない。それはポットデスのリーダーも同じことで、さらにそのポットデスたちを覆うように、ブラッキーを包んでいた土煙が風に流されてポットデスたちに向かっていく。相手の視界を完全にふさぐ妨害の一手は、確実にポットデスたちの統率を一時的に機能停止のすることに成功する。煙のせいでこちらも中の状況を正確に判断することはできないけど、ポットデスたちの慌てたような声が聞こえてくるあたり、かなり焦っているように感じる。

 

 相手が見せた明確な隙。この間に背中を向けてテントまで走れば逃げ切れるかもしれないとふと頭の中に浮かんだけどすぐに考え直す。なぜなら、ポットデスたちは確かに混乱しているものの、それはとある一匹の個体を除いていたため。

 

「ティーッ!!」

 

 リーダーである個体が大声とともに地面に向かってシャドーボールを放つ。限界まで磨き上げられた特殊攻撃によって放たれたその一撃は、一瞬にして衝撃だけで土煙を吹き飛ばす。

 

「っ……あれだけの煙を簡単に吹き飛ばすって……本当におかしな火力とよ」

「積み技の恐ろしさがよくわかるぞ」

 

 その火力の高さに顔を腕で覆いながら愚痴をこぼす2人。確かにこの破壊力は圧巻だし、敵に回している現状恐怖感までも植え付けられそうだ。土煙のせいで一時的にボクたちを見失っていたリーダーのポットデスがボクたちを再び見つけて、今にも恨み殺してきそうなほど激昂したその瞳をこちらに向けているところも後押ししているだろう。

 

 そのあまりにも重い圧力と視線に思わず唾をのむマリィとホップ。だけどボクたち3人、誰一人として今ここで負けるとは微塵も思っていなかった。忘れてはいけないのは、今までやってきたこの作戦はすべてブラッキーをポットデスの下へ送るための作戦だということ。土煙と暴風によって周りを見るすべを失っていたポットデスは今まで誰を相手に苦戦していたのか、そしていま最も注意するべき相手は誰なのかということが抜けている。

 

「ブラッキー!!」

「ブラッ!!」

「ティティッ!?」

 

 ()()()()()から聞こえてくる声にようやく気づいたポットデスが慌てて見上げると、そこには攻撃態勢に入っているブラッキーの姿。もうかなり近くまで接近しているこの状況ではもう避けるすべはない。

 

「ティティッ!!」

 

 それでもなおあきらめないポットデスは避けられないと悟った次の瞬間、せめてもの反撃と言わんばかりにブラッキーに向かって突撃を敢行する。特殊技ばかり打ってきたあたり、ポットデスという種そのものは特殊攻撃を得意としていそうなところから物理攻撃は弱そうに見えるけど、限界まで殻を破っている今のポットデスが相手だとただの体当たりでも致命傷を受けかねない反撃の一手。いくら耐久があるブラッキーとはいえ大ダメージは免れない。だけど、ブラッキーはそんな状況でもその自信にあふれた表情を崩していない。なら、トレーナーであるボクはブラッキーを信じるだけだ!

 

「いっけえええ!!」

「ブ……ラァッ!!」

 

 ポットデス渾身の体当たりを綺麗に受け流し、お返しにと紫と黒を混ぜたような、深い闇を纏った後ろ足が的確にポットデスを捉え、とてつもない音とともに木の幹に叩きつけられる。

 

「あれは……『イカサマ』だぞ!!」

「ブラッキーはそれを狙ってたとね」

 

 イカサマ

 

 自分の攻撃力ではなく、相手の攻撃力を利用して攻撃するあくタイプの技。本来攻撃が得意ではないブラッキーでも、相手の力を借りることによって大ダメージを狙えるカウンターよりの技。からをやぶるによって自身を強化しているポットデスにここまで刺さる技もない。

 

「……ティ……ィ」

 

 そのまま地面まで落ちてきたポットデスは戦闘不能に。目を回して倒れるその姿を見たほかのポットデスたちも、リーダーが倒れたことによって戦意を失い次々と逃げていく。

 

 ポットデスたちの慌てた悲鳴が聞こえる中悠然と歩いてくるのは、この戦いで進化を果たし、見事相手の親玉を打ち取ったボクの大切な仲間。

 

「……おつかれ、ブラッキー!!」

「ブラァ!!」

 

 その功労者を抱きしめ、しっかりと労ってあげる。

 

 ルミナスメイズで起きた死闘は、こうして幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ただいま~」」」

「みんな!?けがはない!?大丈夫だった!?」

 

 ポットデスの軍団を退けたボクたちは、自分たちの手持ちと彼らの軽い治療を済ませるとテントを立てている場所へそそくさと帰宅していた。もしあの状況からまた援軍や反撃でもきたら困るからという理由で、本当なら目が覚めるまで見守っていてあげたかったけどこればかりは仕方ない。

 

 テントに帰ってきたボクたちを迎えたのは物凄く慌てたように安否を確認してくるユウリ。ヤバチャはちゃんと手当をすることができたのか、ヤバチャ用のものと思われる小さなベットの上でゆっくりと眠っている。この様子なら明日には目が覚めそうだ。よかったよかった。ほっとするボクたちに対してユウリは未だに焦った表情を崩すことは無いけど、ユウリからしてみれば自分を逃がすために残った人たちのことなんだから心配するに決まっている。みんなそれを理解しているため若干の申し訳なさを感じながらも、あの場面ではあれが最適解だったのも事実だと思うから、せめて少しでもその不安感をぬぐってあげるためにも、ゆっくり優しくユウリと接する。

 

「ううぅ、よかったよ~みんなが無事で~」

「はいはい、心配かけてごめんね」

「ユウリの方も無事治療が終わっているみたいでよかったぞ」

「私だけでできる最低限のことだけだけどね……本当ならポケモンセンターに連れていきたいんだけど……」

「ボクが見た感じちゃんと治療できているし大丈夫だと思うよ。傷も深くないみたいだしね」

「うん……」

 

 ボクが思った嘘偽りのない言葉をユウリに投げかけるもののやっぱり不安はあるみたいで、視線をヤバチャから外さないユウリ。そんなユウリのためにボクも、さらに安心感を与えられるようにできることはやってあげよう。

 

「出てきて、ブラッキー」

「……え?ブラッキー?」

「ブラッキー、『つきのひかり』をお願いしていい?」

「ブッキィ」

 

 ボールから出てきたブラッキーにつきのひかりをお願いしてヤバチャを癒してもらう。すると、ヤバチャから聞こえてくる寝息がさらに穏やかなものへと変わっていく。これでユウリも安心できるはず……

 

「よし、ユウリ。これでだいじょ━━」

「そのブラッキーどうしたの!?」

「ふぇ!?」

 

 うぶ。と続く言葉を遮って手を握って詰め寄ってくるユウリ。

 

「近い!近い!!」

「そのブラッキー、もしかしてあのイーブイ!?進化したんだ!?うう~、なんで私はその瞬間を見てなかったの~!!」

「さ~て、モルペコにご飯あげてねないといかんね~。今日も疲れたと~」

「俺もさすがに疲れたから早く寝なきゃだぞ~」

「ちょぉ!?」

 

 そんなちょっと暴走気味のユウリを横目にそそくさと自分のテントに戻っていくマリィとホップ。間違いなくこのユウリをボクに押し付ける気だ。

 

「ほ、ほら!モルペコたちにポフィンをあげたいしもうちょっと起きてても……」

「今モルペコは頑張りすぎて疲れから眠気が来ちゃってるからまた明日貰うけんね」

「俺のバチンキーも同じだからその申し出は明日いただくぞ!」

「ひどい!?」

「さあフリア!!何があったのかちゃんと教えて!!」

「ならその説明も明日の朝に……」

「今知りたい!!」

「なんでぇ!?」

 

 ボクの説得もむなしく各々が自分のしたいことのために動き始める。

 

「ああ、この感覚……シンオウを思い出す~……」

「はいお茶。ちゃんと教えてくれるまで聞くからね?……私だけ先に逃げさせられて……ほんとに心配したんだから……」

 

 昔の振り回され具合を思い出していた時に呟かれるユウリからの言葉。先ほども言った通り、ユウリからすれば自分だけ安全圏にいてみんなは危険な戦いをしていたんだ。その不安度はおそらく本人しかわからない。そう考えると彼女の行動も納得できるわけで……

 

「わかったよ。順番に話すからちゃんと聞いててね?」

「うん!!」

 

 そんな彼女のために開かれた2人きりのお茶会。日付も変わり、あと数時間もすれば日も登り始めるであろうそんな夜遅い時間。神秘的な森の奥で密かに、けどどこか和やかに、ゆっくりと時間が流れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バチャバチャ!!」

「うん、もう完全復活みたいだね。よかったよかった」

「ヤバチャ~!元気になってよかったよ~!」

 

 お茶会による説明も終わり、就寝して目が覚めたボクはささっと朝食を取り終えて昨日保護したヤバチャの容態を確認していた。といっても、朝食を食べている途中に起床したヤバチャは、そのままボクたちと一緒にポフィンやお茶を美味しくいただいており、その時点でもうすっかり昨日の傷も癒えていたので今行っているのは最終チェックという名の確認だけ。実際にしっかり確認してみてどこにも傷は見当たらない。正真正銘完全復活だ。今もユウリとじゃれている姿を見れば、体に見えない体内の傷というのもありそうにないしね。自分のことを身を挺して守ってくれたユウリにかなりなついてしまったのか、昨日は紅茶を優先していて聞く耳を持たなかったユウリの言葉をちゃんと聞いているあたり、話の流れによってはこのまま……なんて考えてしまう。というより、もう100パーセントそういう流れになりそうだ。あとはユウリの考えを聞くだけ。

 

「さて、ユウリ。昨日聞いたけど改めて聞くね。そのヤバチャ、どうする?」

「……」

「バチャ?」

 

 ピンク色の色違いヤバチャが、今までじゃれていて笑顔だったユウリの顔が急に真剣なものへ変わったため疑問を浮かべながらユウリを見つめる。どうしたの?とでも言いたそうなヤバチャの顔に向かって、ユウリは真っすぐ言葉を紡ぐ。

 

「昨日の時点だと、あなたにはしたいことがあって、私が縛っちゃダメなんだろうなって思ってた。けど、今は違くて……ヤバチャ。私はあなたと一緒に冒険がしたい。ついてきてくれる?」

「……バチャ!!」

 

 空のモンスターボールを手のひらに乗せながら問うユウリ。それに対するヤバチャの答えは、自らモンスターボールの真ん中に存在するボタンに体当たりするという形で返された。ヤバチャを吸い込んだボールは、1回、2回、3回と揺れ、そのままポンという軽快な音を立てて、このボールがヤバチャのものであるという登録を済ませる。それを確認して思わず笑顔になったユウリは、そのボールを高らかに投げる。

 

「出てきて!ヤバチャ!!」

「バッチャ~!!」

 

 ボールから飛び出したヤバチャは再び元気よく返事をしながらユウリに飛び付いて行く。これにて正式にユウリの仲間になった。

 

「これからよろしくね!ヤバチャ!!」

「バチャ!………バチャ!!バチャチャ!!」

 

 改めて挨拶を済ませる2人をマリィ、ホップ、ボクの3人で微笑ましく見守っていると、何かを思い出したかのようにヤバチャがユウリの袖を引っ張る。

 

「バチャチャ!!」

「どうしたのヤバチャ?」

「……カップを指さしてる?」

「「「え?」」」

 

 マリィの言葉につられてヤバチャの視線を追ってみると、確かにその視線はユウリのカップに向けられていた。しかし朝食をとっくに終えたユウリのカップはもう空になっている。何か飲み物を求めているようには見えない。

 

「う~ん、もしかして、昨日の紅茶が飲みたいのかなぁ?」

「そう考えるのが妥当な気がするぞ」

「でもまだ直せてないし……」

「一応作れないことはないし、またボクが淹れる?」

「じゃあ……お願いしていい?」

「任せて~」

「ありがと。じゃあ準備するね」

 

 未だにかけたままのポットだから作ってもかなりの量をこぼしてしまうことになるけど、作れないわけではない。ヤバチャがお願いしているのならできる限り答えてあげるべきだ。そう考えてユウリが再びカバンからポットを取り出す。それを受け取って紅茶を作ろうとしたその時。

 

「バッチャ!」

「あ、ヤバチャ!!割れやすいんだから急に飛び付いたら危な━━」

 

 ユウリが取り出したポットに飛び付いたヤバチャの体が青白く光りだす。

 

「「「「え!?」」」」

 

 その光景は昨日も見た、だけど昨日は起こりえなかった現象。開いた口がふさがらず、ただ呆然と見守ることしかできなかったボクたち。そしてその光が終息した瞬間、現れたのは……

 

「ポルティー!!」

 

 ピンク色の体を浮かせ、元気よく飛び回る色違いのポットデスの姿だった。

 

「……昨日は進化しなかったのに」

「……何で進化できたと?」

「訳が分からないぞ……」

「……図鑑に見落としがあったかな?」

「ポルティー!!」

「あ、ちょっと!!」

 

 ボクが図鑑をポットデスにかざしてより詳しく調べようと思った瞬間、いきなり明後日の方に飛び出すポットデス。その姿を見て、慌てて片づけをしてキャンプ地から走り出したボクたちは、ポットデスをひたすら追いかけ続けていくうちにいつの間にか次の目的地であるアラベスクタウンに到着していた。ルミナスメイズの森出身であるヤバチャ……否、ポットデスがボクたちをここまで案内してくれたのだろう。アラベスクタウンに到着してようやくポットデスがしたいことに気が付いたボクたちは4人そろってポットデスに礼をした。その時に浮かべていたポットデスの笑顔は、永遠にボクたちの記憶に刻まれることだろう。

 

 改めて、ポケモンの神秘に触れたボクたちはそのまま足を踏み入れる。次なる挑戦の場となる、アラベスクタウンへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポットデスにかざされた図鑑は、しかしその詳細を読まれることなくフリアのポケットに押し込まれることとなる。もしここでポットデスが急に飛び出すことがなかったら読まれていたであろう詳細にはこう書かれていた。

 

『ポットデス。しんさくフォルム』と……。

 

 ユウリが仲間にしたポットデスが、彼女たちが思っている以上に貴重な存在だと知るのは、まだまだ先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




イカサマ

個人的なブラッキーと言えばこの技ランキング1位の技。
あくびとかもあるのですが、こちらはイーブイの時点で覚えるのでブラッキーの技と考えるとこっちな気がします。
ボクもヤミラミを使っているときですが、お世話になった技。

色違いポットデス

というわけで皆さん気づいていたと思いますが、この色違いポットデスはしんさくフォルムです。いったいどんな確率を引いたのか……
ちなみに私の脳内では、この子はカレーを食べた後に来たのであの称号もついていたら面白いなぁと考えていたり……
改造を疑われそうな子ですね。
かけたポットについても、実はユウリさんが骨董屋(正確にはほりだしいちですが)にてもらったあれがそうだったという話ですね。
道具説明にも、あのポットで美味しい紅茶を作ることはできると書いてあったのでその描写も取り入れました。
つまり、ほりだしいちでユウリがあのポットを貰った時点でポットデスの仲間入りが確定していたという事ですね。あの時点からわかった人も多そうです。




続きましてはアラベスクタウン。
色々な意味で異質なジム戦なのでどう書こうか迷ってたり……。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。