【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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74話

「ユキハミ!!」

「ハ、ハミュ!!」

 

 思わぬ大ダメージを受けながらも、氷の糸の球を自分の着地地点に吐き出してクッション代わりにし、衝撃を何とかやわらげたユキハミは、少しのふらつきを見せながらもまだまだ戦えるという意思表示を見せる。

 

「よし、苦しいけど続投お願いね」

「ハミュッ!!」

 

 毒もそこそこまわり、ダメージも軽くない状態だけど、クチートの時と違いこちらもばつぐんの技で攻めることが出来るこの状況を逃さない手は無いので強気に行く。と同時にさっき起こったことを頭で整理してみる。

 

(ポプラさんが傘を動かしたらその動きを元にトゲキッスがゆらゆら動き始めて、その動きを見ていくうちにいつの間にかユキハミがバランスを崩して……多分この時に特防が下がったとみて間違いないよね……?)

 

 ユキハミの特防が下げられているのはさっきのダメージから見て間違いは無いはずだ。トゲキッスの攻撃力についてはボクはかなり詳しい方だと思っているから。というのも、シロナさんが見せてくれた手持ちの1匹でもあるし、何よりもヒカリの手持ちでもあるため対戦経験というのはトゲキッスに関してだけ言えばそこそこある方だ。そのためどれくらいの火力が出るのかは体が覚えてくれている。

 

 特殊攻撃である以上、特性がはりきりであっても効果はないので、やっぱりさっきはダメージを受けすぎている。氷の糸で防いだのにこのダメージは、さすがにこちらの能力に変化が起きていると考えないと説明がつかない。

 

(トゲキッスの動きを見ていたから下げられた……のかな……?)

 

 となると原因はそうとしか考えられず、他になにかされたことはあるか改めて考えても不思議な動きをされたことしか思い出せない。

 

(くそっ、正解した時に傘をとんとんしていたのも覚えてはいるけど、あの時マタドガスがどんな動きしてたかはボクは見逃してたからわかんない!マホイップはマタドガスを見つめてたからマホイップなら分かるかもだけど……いや、もしかして……でも……)

 

 そこまで考えてようやく自分なりの答えが少し浮かび始める。しかし……

 

(……いや、さすがに荒唐無稽では……?でもそれしか正直想像が……)

 

「トゲキッス、『ドレインキッス』」

「っ!?ユキハミ!!『こなゆき』!!」

 

 考え込んでいる間にトゲキッスが攻撃を仕掛けてくる。慌ててこなゆきで相殺するものの、ユキハミがその余波で少しあおられる。

 

「考え事もいいけどバトルをおざなりにするのはいただけないね。トゲキッス。どんどん『ドレインキッス』を打ちな」

「くっ、ユキハミ!!がんせきふうじの跡の岩に糸を貼り付けて飛び回って!!」

 

 クリームにつけてしまうと氷の糸が溶けてしまうために岩につけて逃げるしかない。まるで爆撃のように落ちてくるドレインキッスの雨を何とか糸の移動で避けるけど、空中にいる相手に攻撃する隙がなかなかない。本来なら自分に氷の糸を沢山巻いて、繭のようにして防ぐというのもありなのだけど、特防がかなり下げられている現状ではできる限り攻撃を受けるという行為はしたくない。幸い、攻撃面に関しては弱体化されてはいないのでボクが判断さえ間違えなければまだ何とかなる場面だ。攻撃が激しいせいでユキハミを交換できないからこそ、いつも以上に相手の攻撃を見て判断し、反撃する。

 

「ユキハミ、『こごえるかぜ』!!」

「『ドレインキッス』で打ち落としな」

 

 しかし相手が空を飛んでいるためかどうしても距離があり、こちらの攻撃が当たる前に簡単に落とされる。その間も相手は悠々と攻撃を続けてくる。

 

「なら……ユキハミ!あそこの岩に糸!!」

 

 ユキハミから少し離れた位置にある岩に氷の糸を張り付けて巻き取る。

 

「何度もさせると思うかい?『げんしのちから』」

「やっぱり流石にばれるか……ユキハミ!!撃ち落として!!」

 

 クリームに埋まっていた岩を糸で引っ張り上げて、そのままハンマー投げのように振り回してトゲキッスに飛ばす予定だったけど、トゲキッスから飛んでくる技がドレインキッスからげんしのちからに変わったため、その攻撃を防ぐべく振り回している岩の標的をトゲキッスからげんしの岩へと変更する。クリームを纏った岩と複数浮かぶげんしのちからのうちの1つがぶつかり、両者がバラバラになって飛び散ったことによって、他のげんしのちからが爆発した衝撃にあおられてユキハミに当たる軌道から少し逸れたことを確認する。さらに、その小さな破片はかなり勢いよく飛び散ったみたいで、少し離れていたトゲキッスにも着弾したのが確認できた。

 

 ユキハミに対してもこうかばつぐんないわタイプの技だが、それはひこうタイプを持つトゲキッスにも言えること。まさかの攻撃に怯んでしまったトゲキッスの動きが、確かに一瞬だけストップする。予定とはちょっと違ったけどここがチャンスだ。

 

「運がいい!ユキハミ!!糸をトゲキッスの足に!!」

「すぐ立て直しなトゲキッス」

 

 ボクの意図を察したポプラさんが慌ててトゲキッスに回避行動を取らせようとするものの、それよりも速く足に氷の糸をくっつけることに成功したユキハミ。

 

「素早い判断……だが、それなら逆に利用させてもらうよ。上に飛びなトゲキッス」

 

 しかし、体格差とポケモンそのものの力強さのせいで、トゲキッスを引っ張って落とすどころか逆にユキハミが引っ張られて宙ぶらりんになってしまう。

 

「力比べは負けるか……」

「その状態じゃあ避けづらいだろう?『げんしのちから』だよ」

 

 そんなユキハミに対してトドメを刺さんと迫り来る岩の塊たち。恐らく特防がとんでもなく下げられているユキハミに取って弱点でもあるこの技は間違いなく瀕死に持っていかれる技。けど、そんな技に囲まれた現状でもユキハミの闘志は全く引っ込まない。

 

「ユキハミ!!自分に『こなゆき』をして凍らせて!!」

 

 自分にこなゆきをふりかけ、自分自身を凍らせることによってユキハミはひとつの氷の塊となる。

 

「それで守るつもりかい?」

「こおりタイプが守りに回ったら弱いことは理解してます。だからこれは攻めるための手段だ!!ユキハミ!!糸を巻きとって!!」

「なるほど、そう来るかい!!」

 

 自分の身を氷で包んだところでげんしのちからに砕かれて終わるだけだ。だからこれは守るためにした行為じゃない。氷の塊となったユキハミは現在進行形で先程くっつけた氷の糸でトゲキッスと繋がっている。この状態でユキハミが糸を巻きとったらどうなるか。

 

「ユキハミ!!そのままトゲキッスに突撃!!」

「ハミュッ!!」

「キッ!?」

 

 答えは氷の塊がトゲキッス目掛けてヨーヨーのような軌道で飛んでいく、だ。

 

 げんしのちからの隙間をくぐり抜けて猛スピード突撃した氷の塊は確実にトゲキッスのダメージを与える。と、同時にぶつかった衝撃でユキハミの体を覆っていた氷が砕け散る。

 

「ユキハミ!!背中に乗って『こごえるかぜ』!!」

 

 氷が砕けて宙に飛んだユキハミは、氷をぶつけられて怯んだトゲキッスの背中にすかさず糸を貼り付けて巻き取り、背中にくっつく。トゲキッスからだと完全に死角になり、かつ反撃もできない位置。故に次のこごえるかぜを防ぐ術はなく、ようやくトゲキッスの機動力を落とすことに成功。目に見えてその動きが鈍くなった。

 

「このまま背中に乗ったまま攻撃━━」

「ローリングで振り落としな」

 

 有利な位置を維持したまま攻撃しようと構えたものの、トゲキッスがその場でローリングすることによって振り落とされる。

 

(けどユキハミはまだ糸を離していない。戻ろうと思えばまだまだ……)

 

「次はこっちの番さね。トゲキッス。糸を引っ張りな」

「っ!?」

 

 また糸を手繰り寄せて戻ろうとしたところに、トゲキッスがユキハミを振り落とした時とは逆回転にローリングすることによってユキハミが無理やりトゲキッスの方に引っ張られる。

 

「ハミュッ!?」

「ユキハミ!!すぐに氷を纏って!!」

 

 トゲキッスの方に引っ張られる。結果自体はユキハミが手繰り寄せようともトゲキッスが引き寄せようとも2匹の距離が近くなるというものだけど、ユキハミが能動的に引っ張るか、それとも無理やり引き寄せるかでユキハミの行動は大きく変わってしまう。

 

 自分から手繰り寄せるのであれば、背中に飛び乗るまでのルートはある程度自分で操作することができる。しかし、相手によって無理やり引っ張られた場合、自分が飛ぶ軌道を操作できないためカウンターを受けやすい。故の氷の鎧。

 

 実際この判断は間違ってはいなかった。

 

「ふむ、糸を切るのが間に合わないと察し防御に回る。いい判断だが……受けきれるのかい?『げんしのちから』」

 

 ただ、特防を下げられているユキハミに受けきれるかが問題だ。ユキハミが引っ張られて飛んでくる軌道上になれべられるげんしのちから。その壁にユキハミが思い切り叩きつけれて地面に落ちていく。

 

「ユキハミ!!」

「ハ……ミュ……ッ!!」

 

 氷の塊がクリームに落ちた衝撃でクリームが飛び散り、げんしのちからによってひびが入った氷が砕け散る。その中から現れるのは、何とか攻撃を防ぎ切ったものの、満身創痍のユキハミの姿。むしろ、まだ立ち上がっているのが信じられないくらいで、今のユキハミを支えているのはまだ倒れたくないという意志だけだ。正直その姿にボク自身が驚いてしまっている。けど、ポプラさんはむしろ当然だといった表情を浮かべており、すぐさまトゲキッスにとどめを刺すように命令する。

 

 たった数秒の反応遅れだけど、ポプラさん相手にその遅れは致命傷で、トゲキッスが今にも倒れそうなユキハミに向かって猛スピードで突撃をはじめ……

 

「キッ!?」

 

()()()()()()()()()()()()

 

「え?なんで……」

「……流石に攻撃を受けすぎたかい」

「受けすぎた……?あ!?」

 

 ポプラさんの言葉につられてトゲキッスの様子を見ると右羽根の一部が凍っていた。自身の機動力の根幹を担う大事な部位が凍ってしまったがゆえに、うまく自分の体を操ることができずにクリームに墜落してしまったのがこれまでの流れという事だ。さらに嬉しい誤算は、忘れているかもしれないがこのクリームの中にはいまだにどくびしが残っているうえ、クチートによって猛毒を防ぐための氷もないため、クリームに堕ちたことによりトゲキッスが猛毒状態になったこと。ばつぐんであるこおり技を何回も受けているためトゲキッス体力もかなり怪しいはず。そこでこの毒は致命傷になるはずだ。

 

(オニオンさんみたいなげんしのちからの追加効果が必ず発動するなんてとんでもないこともしてきてない!もしかしたらユキハミでこのまま……っ!!)

 

「トゲキッス、気張るんだよ。『ドレインキッス』だよ」

「ユキハミ頑張れ!!『こなゆき』!!」

 

 お互いもう自分の体も思うように動かせない状態で放たれる最後の一撃。2つの攻撃は両者の中間で激しくぶつかり合い、こなゆき、ドレインキッスと、技の中では特に強いと言われているわけではないはずの技から聞こえるとはとても思えないほどの轟音が鳴り響き、その音と比例した衝撃波がバトルコートを走る。思わず顔を腕で覆ってしまうボクはすぐさま腕を振ってバトルコートへ目を向ける。そこには……

 

「ハミュ……ミュ~……」

「キッ……キ~ッ……」

 

 地面に倒れて目を回しているユキハミの姿と、何とか体を起こして立ち上がろうと頑張るトゲキッスの姿。技の打ち合いでは残念ながらトゲキッスに軍配が上がってしまったみたいだ。しかし、どくびしによって猛毒にかかってしまい、とんでもないスピードで体力を削られてしまっているトゲキッスはゆっくりとその体を横に倒しながら……

 

「トゲキッス、よくやったよ。最後の仕事だ……『リフレクター』。そして『ひかりのかべ』だよ」

「なっ!?」

 

 最後の力を振り絞って見えない壁を2つ張り、満足げな顔を浮かべたまま地に伏した。

 

 

『ユキハミ、トゲキッス、両者戦闘不能!!』

 

 

「……ありがとうユキハミ。本当に頑張ってくれたよ」

「お疲れ様トゲキッス。ゆっくりお休み」

 

 倒れた2匹に向かってボクたちがそれぞれねぎらいの言葉をかけながらボールに戻していく。

 

 本当にユキハミは頑張ってくれた。クチート、トゲキッスという間違いなく自分にとって不利であるはずの相手2連戦を乗り越えて、ユキハミ自身のちからだけで駆け抜けてくれたのだから。こんな大立ち回りをしてくれて感謝をしないなんてそれはトレーナー失格の所業。というか、そんなことを抜きにしても今すぐ抱きしめて甘やかして、たくさんご飯を食べさせてあげたい気持ちだ。本当にユキハミは頑張ってくれた。しかし、それ以上にボクの心の中は不穏な空気が一気に膨らんでいた。

 

(確かにトゲキッスはこの戦い、『げんしのちから』と『ドレインキッス』しかしてこなかった。頑なに2つの技しかしてこなかったから不気味ではあったけど……まさか残りの技が2つとも壁だなんて思ってもみなかった)

 

 これでしばらくの間ポプラさんのポケモンは物理技も特殊技も、その威力の半分を壁が肩代わりしてくれる。と同時に、今までのようやくポプラさんの狙いがわかり始めた。

 

(ポプラさんの狙い……それは……)

 

「ふぅ……」

 

 トゲキッスの入ったボールを腰に戻し、ため息をこぼすポプラさん。その後、2,3回ほどの深呼吸を終えたポプラさんは最後の1匹が入ったボールをゆっくりと取り出す。

 

 なぜかその動作から目が離せない。

 

「さて……」

 

 最後のハイパーボールを構えるポプラさん。そして……

 

「眠気覚ましのモーニングティー……ようやく効いてきたようだよ。……覚悟しな」

「ッ!?」

「さあ最後はこの子だよ。行きなマホイップ!!」

「マホッ!!」

 

 現れたのはボクも手持ちとして一緒に旅をしている、それでいてイチゴの飴細工をつけ、全身ピンク色というボクのマホイップとは全く見た目が違うマホイップ。しかし、そんなかわいらしい見た目と掛け声が現れたのに、ボクを襲うのは今までよりも何倍も強く重いプレッシャー。

 

(マタドガス、クチート、トゲキッスの3匹がかりで整えられたこの場。間違いない。ポプラさんは最初からマホイップ1匹でボクの手持ち全員を倒すつもりだったんだ)

 

 マタドガスのどくびしで万が一の耐久を許さず、クチートでそれを防ぐ氷を除去し、トゲキッスでマホイップが自分を磨く時間を稼ぐための壁を張る。言われてみれば典型的なエースへ託すための準備だ。問題はそれを4対4の、それもジム戦でしてくるという事。

 

(ここにきて急に前3匹を捨ててエースに極限まで託す編成……そんなの読めるわけない)

 

 道理でここまで倒されてなお焦りが見えないはずだ。このままいけばポプラさんのイメージではマホイップ1匹で全員を倒せるルートまっしぐらだ。

 

「お願い!キルリア!!」

 

 慌ててくりだすボクの3番目のポケモンはキルリア。選出理由はポプラさんの思惑の一つである猛毒を防ぐため。キルリアならエスパーのちからで斥力を放てば、自然とどくびしがキルリアから離れるから。それに、どくタイプにたいしてエスパータイプはばつぐんを取ることができるため、効率よく無効化できると踏んでの選出だ。

 

 実際に着地する時に、足からエスパータイプの斥力を発動することによってクリームをよけ、どくびしをどかしながら着地する。これでもうどく状態は回避出来る。

 

 相手の作戦がマホイップによる全抜き態勢だと言うのなら、こちらがやるべきことは相手がその準備を整える前に倒すこと。となるとこちらは先手必勝こそが勝ち筋。さっそく突撃態勢に移行しようとして……

 

「さあ最強のジムチャレンジャー。これが最終問題だよ」

 

(……この問答を無視して攻撃は……流石にダメかな)

 

 思わずそんなことを考えてしまうけど、これはあくまでジムチャレンジ。流石にそんなことをすればいろいろと問題になりそうだから流石にできない。おとなしく耳を傾ける。

 

「最後はシンプルな問題さ。ずばり、あたしの年齢は『16歳』、『88歳』、どっちかわかるかい?」

「……」

 

 いや、答えはわかる。間違いなく88歳だ。けどここは素直にこう答えていいのかがわからない。

 

(今までの回答は『魔術師』、『パープル』、どっちも正しい事が答えだったよね……)

 

 魔術師はともかくとして、パープルの方はお世辞も何もなしに単純に自分の好きな色だった。今振り返って改めてみたら、確かにポプラさんがつけているアクセサリーはパープルの方が数が多い。となってしまうと、やっぱりここは88と答える方が正しいような気がして……

 

(いや、でも女性に年齢の答えってタブーのような……)

 

 しかし、マナー的な観点から考えてしまえば16歳が答えとなってしまうこの状況。

 

(いやいや、ポプラさんが『16歳?そんなにあたしが未熟に見えるのかい?』なんて怒り出すような人の可能性もゼロじゃないし……)

 

 深く考えれば考えるほど、どんどんドツボにはまってしまうこの問題。

 

「早く答えな。時間は有限なんだよ?」

「ぐぅ……」

 

 さらにポプラさんの催促によって余計に焦ってしまうボクの頭は、ぐるぐると同じ問答を繰り返してしまう。そんな頭をぶんぶん振って1つの回答を口にする。

 

「『88歳』です!」

 

(もう素直に行く!!これでだめならポプラさんの変な技の種を暴いて逆転する!!)

 

 さあ運命の答えはいかに。ボクの答えを聞いてポプラさんはゆっくりと口を開き……

 

「やっぱりあんたにはひねくれが足りないね。正解だけど、対応としては間違っているから不正解だよ」

 

(なんとなくそんな気がしたよ!)

 

「というわけで、不正解者には……わかっているね?」

 

 そういいながらまた傘を独特な動きで回していくポプラさんと、それに合わせて変わった動きをしだすマホップ。今度こそ、どんな種があるのかを見極めるためにじっとマホイップの姿を見つめ……

 

「……キルッ」

「ッ!?キルリア!!目をつむって!!」

「キ、キルッ!!」

「ほう……」

 

 キルリアの体が少しふらついたのを確認して慌ててキルリアに目をつむらせる。と同時にボクの中である一つの仮説が浮かび上がる。

 

(ボクはずっとポプラさんとポプラさんのポケモンたちの動きを見逃さないようにじっと見つめていたけど()()!!何かしてくると()()()()()()()()が相手の狙いか!!)

 

 ボクも全部がわかったわけじゃないけど、おそらくはポプラさんがやっていることは、ボクのポケモンたちが無意識に嫌うもの、もしくは見ているだけで力が抜けてしまうような動きをすることによって相手の能力を下げるというものではないかと予想している。

 

 この説明ではわかりづらいと思うけど、例えばボクたちは何かものを食べるとき、その食べ物が青色だったら気持ち悪さを感じてしまい、空腹でも食べようとは思わなくなってしまう。他にも、大食いの人の食べっぷりを見ていたらこちらもおなかが膨らんだ気がしたり、風鈴の音を着たら涼しく感じたり、血を見てしまったり痛みを想像できるものを聞いたりした時に力が抜けてしまったり等々……

 

 共感覚。プラシーボ。こういった感覚に訴えかける現象はいくつかあるけど、おそらくポプラさんが行っているのはこれに類似すること。その究極系。

 

 ボクやポケモンたちを観察してすぐさま苦手な動きや音を見極めて、その音や動きを見せることによって相手の無意識化に訴えかけて能力を上げたり下げたりする。それがこのポプラさんが行う現象の正体。

 

「あとから気づくものは多かれど、バトル中に気づいたのはあんたが初めてだよ。いやはや、流石シンオウチャンピオンに認められているだけある。流石だね」

「……つくづく恐ろしいことしますね」

 

 変化技をするわけでもなく能力の増減を行うことができるその技術は、言ってしまえば彼女には積み技という枠を必要としない可能性がある。それは、本来は4つしか技が使えないのにそれ以上に立ち回りが行えるというとんでもない技術で。言葉にするならまさしく魔法。70年というとてつもないキャリアがあるからこそ成せる観察力と行動力。

 

(だから異名が『魔術師』……エスパータイプに適性がある超能力者なんかよりもよっぽど超能力じゃないか)

 

「もっとも、種が割れたらまず通用しないいわゆる初見殺しみたいなものだがね。それに本戦ではあまり使わない手法だよ。使う暇がないからねぇ、けど、決まればなかなか強いだろう?さあマホイップ、このまますべて倒していくよ」

「させない……キルリア!!走って!!」

 

 ポプラさんの会話的にどうも何回でも発動できるわけではないからそこは安心だけど、以前油断できない状況。

 

 目をつむったまま走るキルリア。キルリアならエスパーのちからで目が見えなくても相手の大体の位置は確認可能だ。それよりも今は1秒でも早くマホイップを落とさなくてはいけない。恐らくキルリアも何かしらの能力が少し落とされているはずだけど、それを確認する時間も惜しい。ここでマホイップに勝手を許してしまうと、この先、どれだけ手持ちがいても太刀打ちできなくなってしまうから。

 

 積み技を構えるマホイップ。

 

 がんせきふうじの跡の、残った岩のを上を駆けるキルリア。

 

 1分、1秒を争うバトルが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




マホイップ

というわけで、今回はジムリーダー側が全抜き態勢というバトル展開です。
主人公側がこの戦法を取るのはある気がするんですが、相手がする展開はなかなかないのではないかなと思いこの展開に。
さて、ここからマホイップはどのような動きを見せるのでしょうか?

ポプラ

そして、ポプラさんの理不尽問題の種明かしは、この作品ではメンタリズムの一種ということにしてみました。
個人的にはこういうのもありそうだなと思っての解釈なのですが、いかがでしょう?
ここに関しては、むしろいろんな解釈や設定がありそうで、他の人の話や作品を見てみるのも面白そうですよね。
異論はたくさんあるべきところだと思います。




主人公には常に苦戦してほしいという気持ちからどんどんジムリーダーたちが強くなっている気がしますが……フリアさんには頑張ってほしいですね。()
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