「キルリア!!とにかく前に!!」
キルリアを出した瞬間とにかく前に走ることを指示するボク。ポプラさんがマホイップで全抜き態勢を整えるということは、あちらの勝利条件はキルリアと戦っている間にとにかく自分の能力を上げまくること。そしてマホイップの覚える強い変化技としてよく挙がるものがめいそうととけるだ。恐らくポプラさんがマホイップに覚えさせている変化技もこの2つと確定させていいだろう。足の遅いマホイップだと、ボクの残りの手持ちたち全員を倒すのなら耐久力もあげないと上手くいかないはずだ。
(ボクのキルリアは攻撃技こそ特殊攻撃だけど、戦い方は手にまとって懐に潜り込んでからの打撃技だ。正直ボク自身、どっちの技扱いになるのか検証してないからわかってはいないけど、それはポプラさんからしてもそうのはずだからどちらの変化技から行うのか迷うはず……迷うよね?)
動きだけで相手の能力を下げてくるようなとんでも観察力を持っている相手だけに、不安になるところも多いけど多分大丈夫なはずだ。ちなみにボクは特殊技判定になると予想はしている。あくまで予想だからあてにはしてないけど。
「マホイップ。あんたの練度を見せてやりな」
対するポプラさんのマホイップは、自身の体の色と同じピンク色のクリームを一気に広げていく。
ボクのマホイップの何倍もの量で。
(やっぱり相手の方がクリームを使い慣れている!!)
水色だった地面は一瞬にしてピンクに染まり、まるで津波のようにキルリアに押し寄せてくる。
「キルリア!!」
「キルッ!!」
だがそれはわかっていたこと。ボクのマホイップにできてポプラさんのマホイップにできないことなんてない。最初からそのつもりで戦っている。
押し寄せてくるクリームの波を目の前にして、キルリアは全く怯む様子など見せずに両手にサイコキネシスを構え、前に突き出して走り出す。サイコキネシスによって起こる斥力によって海を割るようにクリームを裂きながら走るキルリアは、クリームの中から飛び出てくるどくびしも綺麗にいなしながらどんどん距離を詰めようと足を進めていく。が、いくらなんでもクリームの量が多すぎてなかなか距離を詰められない。
(クリームだけならまだしも、途中に混じっているどくびしをいなすのにどうしても注意しないといけないから一歩遅れてしまう)
しかし距離は着実に詰まっているからここは踏ん張りどころだ。こちらが進撃している以上あちらもとけるやめいそうをする暇はないはず。
(ここで一度手を休めるくらいなら多少の被弾も覚悟で走るべき!)
目の前から迫ってくるクリームの波を押しのけて受け流して、飛んできたどくびしに対して足元の岩を蹴り上げて弾き、とにかく前へ。そんな一歩間違えればどくとクリームの海に落とされる状況でも決しておびえた表情を見せない勇敢な仲間は、ついにクリームの波をかき分けてマホイップを眼前に収めることに成功する。
「まずは1発!!『サイコキネシス』!!」
右手にサイコパワーをためた全力の右ストレートを構えるキルリアは、その拳を思いっきりマホイップに叩きつけようとして……
「マホイップ、後ろからだよ」
「ホップ!」
「キルッ!?」
「後ろから!?」
後ろから延びてきたクリームに背中を押され、前慣性を思い切りつけられてしまい、そのままマホイップを飛び越えて飛んで行ってしまう。
「キルリア!!岩を掴んで!!」
「マホイップ、『とける』」
慌てて地面に落ちている岩を掴んで何とか体を止めるものの、その隙にとけるを一回積まれてしまう。
「完成まであと8回だねぇ」
「くっ、キルリア!岩に向かって『サイコキネシス』!!」
不穏なカウントダウンをきいてすぐに行動を起こすキルリア。ここから走って距離を詰めるとなるともう一回とける、ないしめいそうを積む時間が生まれてしまう。それを阻止するべく足元の岩を殴ってマホイップの方に向かって弾き飛ばす。
かなりのスピードをもったその塊は、マホイップの方に寸分たがわず飛んでいき、しかしその途中でまるで触手のように地面から生えたクリームが岩をからめとった。
「さっきも思ったことだけど、まさかこのマホイップ……」
「おや、これくらいできて当然だと思うんだが?」
ポプラさんの言葉とともにどんどんその数を増やしていく触手。
(間違いない。地面に広げて離れた後のクリームも自在に操れるんだ)
自分から分離したクリームはもはや自分自身ではなく、ただの物体でしかないと考えていたボクにとっては寝耳に水な思考。そして何より恐ろしいのが、分離したクリームを操れるということは今このフィールド全てがあのマホイップの体の一部となってしまっている様なものということ。ピンク色の中にほんのり水色も混じっているあたり、ボクのマホイップのクリームも取り込み始めているように伺える。
「これがピンクの戦いというものさね。『めいそう』」
「っ!キルリア!!『かげぶんしん』!!そのまま『マジカルリーフ』と『サイコキネシス』!!」
あと7回。
触手に囲まれている中で安全にめいそうを行うマホイップに対して、こちらもかげぶんしんで数を増やして突撃を行う。触手による遠距離からの攻撃は確かに厄介で、かげぶんしんで相手の狙いを分散させてもこちらの進撃がかなり遅い。その間にもう1回めいそうを行われてしまう。
あと6回。
キルリアの右手に集まるマジカルリーフの刀と、左手に集まっていくサイコキネシスのエネルギーをしっかりと構え、そんな悠々としているマホイップに致命打を与えんととにかく走る。右から飛んでくる触手にかげぶんしんを当てて塞き止め、左から来る触手はマジカルリーフの刃で縦に切り裂き、サイコキネシスの拳で殴って飛ばし、前から迫る触手にぶつけて相殺させてさらに前へ。足元を掬うように伸びてくるクリームの触手を飛び越え、後ろから迫ってきた触手はその場で回転斬りを行うことによって後ろを向いている時間をとにかく少なくして走り続ける。
再び場所はマホイップの目の前へ。既にめいそうを2回にとけるを1回となかなかやばい状態になってきているが、ボクのキルリアの攻撃に寄った戦い方だとまだ何とかなる状況だと信じて猛攻撃を叩き込む。
上段にマジカルリーフを構え、マホイップに振り下ろす態勢をとったキルリアに対してマホイップはクリームの盾を生成してマジカルリーフをからめとろう画策する。それに対してこのまま刀を振っても無意味と判断したキルリアが、サイコキネシスの斥力によって盾を吹き飛ばすために左手を突き出す。
見事クリームを吹き飛ばし、今度こそマジカルリーフを叩き込もうとした所で、しかし向こうもただでは攻撃させて貰えず、キルリアの足元から突如現れたクリームの触手がキルリアの足を絡め取り再び遠くへ離れるように投げ飛ばす。
「マホイップ。次は『とけ━━』」
「ここだキルリア!!『サイコキネシス』!!」
キルリアとの距離が離れたことに安心して再び変化技を行おうとした所で、
「よし!!」
「やるねぇ」
先程まで奮闘し、しかし後ろに投げられてしまったキルリアが『ボンッ』という音と共に虚空に消える。いつの間にか本体と入れ替わっていた分身が相手の攻撃を肩代わりして、その隙に本体がしっかりとダメージを与えることに成功した。とけるやめいそうで防御面が強化されているとはいえ、相手の不意を着くような攻撃はしっかりとしたダメージを与えるに足ると判断できる。ここから一気に流れを掴んでそのまま畳かけようと左手にもサイコキネシスを纏い、ラッシュを叩き込もうとしたところで……
「だけど甘いよ。『ドレインキッス』」
「なっ!?」
右手で思い切り殴られたことなんてお構い無しにドレインキッスで反撃をしてくるマホイップ。反撃をされると思わずろくに防御態勢を取らなかったせいか、思い切り吹き飛ばされてまた距離を離されてしまうキルリアの姿を見て、またゆっくりとめいそうを行われてしまう。しかも、せっかくぶつけたサイコキネシスも、ドレインキッスによる効果で回復されてしまっているため帳消しにされている。めいそうによる火力アップがかなり効いてしまっていた。
(これで後5回……なんだけど、なんであんなにもダメージが……?)
「おやおや、あんた、不正解した時のペナルティを忘れたわけじゃないだろう?」
「まさか……」
最初の問いで変わったのはすばやさだった。
2問目で変わったのは特防……いや、今思えば防御も一緒に下がっていたのかもしれない。トゲキッスが特殊技しかしてこなかったし、ユキハミはもう倒れてしまっているから、確認することはついぞかなわなかったけど……
そして3問目。
順当にいけば変わっているのは……
(物理攻撃、および特殊攻撃か!)
「あんたのキルリアの攻撃はどっちに分類されるのかは流石のあたしにもわからなかったから最初は少し迷ってしまったが……まぁ、あたしにはあまり関係ない事だったね。途中で種に気づかれて想像よりも能力を下げられなかったことだけが不安材料だったが、そこも問題なしさね」
(よりにもよって攻撃が下げられるの、ことこの場面においては本当につらいね……)
ユキハミの時は攻撃を受けなければよかっただけだから対して問題はなかった。━━いや、極論の話だから下がらないに越したことはないんだけど━━それに対して今回は1秒でも早く倒さないといけない大事な場面なのに、肝心の火力が落ちているのはかなりまずい。下げられたときに何を下げられたのかがわからないのがこんなにも響くとは思わなかった。
(1回キルリアを後ろに下げる?いや、その間にとけるとめいそうを積まれるのは何としても避けなきゃ……けど、今の火力が落ちたままのキルリアでドレインキッスを一度ももらわずに倒し切るのってかなりの……)
「悩んでいるとは余裕だねぇ。『めいそう』」
「ぐっ……!!キルリア!!走って!」
悩んでいる間にまた積まれてしまっている。
悩むにしても攻撃している間に同時並行で考えないとこちらに時間がない。
「『かげぶんしん』!!」
とにかく相手にこれ以上積ませるわけにはいかない。
完全に積みきるまであと4回。
現在積まれている数だけでもすでにかなり不利状況に陥っているけど、この後まだダイマックス……いや、キョダイマックスをのこしていることを考えると何が何でも阻止しないといけない。
(完全に積み切ったキョダイマックスマホイップと戦うとか絶望的だ……)
かげぶんしんをおこない、四方八方から襲い掛かるキルリアを見ながら頭の中も高速で回していき、どうするべくきか考えていく。
「マホイップ、クリームを爆発させな」
ポプラさんの指示の下、マホイップが大量のクリームを圧縮し、その圧力を一気に抜くことによって元の大きさに戻ろうとする反動を利用した爆発によってクリームが飛び散り、周りを囲もうとしていたキルリアたちが巻き込まれて後ろに飛ばされる。
「『とける』」
とける2回。めいそう4回。
いよいよ取り返しがつかなくなってくる。
(ルリナさんの時にしたあれをもっと昇華させる!!)
「キルリア!!もう一度『かげぶんしん』!!さらに全員で『マジカルリーフ』!!」
2桁に迫るほどの数に増えるキルリアたち。その全員がそれぞれマジカルリーフで作った刀を構えている。
「マホイップ、構えな。何か仕掛けてくるよ」
ポプラさんの言葉を軽く流しながらキルリアたちが前に走る。そのキルリアたちを止めるべく、クリームの触手がいたるところから伸びていき、分身体に対しては攻撃を。本体に対してはクリームによる拘束を狙ってくる。
(キルリアを倒さないように捕まえて、その間に積み切ろうって考えだね。かげぶんしんしているのに本体が見抜かれているのはもう考えない。あんなことをする観察眼を持っているのならむしろ当然みたいなところあるしね)
さっきは分身と本体の入れ替わりをうまくできたけど、同じ轍を踏まないために本気でこちらを観察し始めたといったところか。
「走って!!」
とにかく前に走り出す。
本体を守るように配置された分身たちが伸びてくるクリームを切り落としながら進んでいくのに対して、マホイップは分身を消すことを目的としたドレインキッスを混ぜてくる。めいそうを4回積まれているため、すでにとんでもない火力になっているこの技を受けることは不可能なので、巻き込まれないように分散していく。
分身体に気を遣う余裕は全くないので本体だけに目を向ける。分身体の動きはキルリアを信じて任せるしかない。
本体を拘束しようと伸びてきたクリームの触手を、ドレインキッスをよけてからすぐに戻ってきた2体の分身が切り裂き守る。次いで後ろから接近してきた2つの触手は、遠くに離れた1匹の分身体が本体に向かってマジカルリーフの刀を投げ、1つを打ち落とし、その刀を受け取って二刀流になった本体のキルリアがもう1つをきりおとすことで処理する。
一方マホイップは、後ろの触手にキルリアが気を取られていた間に前にいた2匹の分身体をドレインキッスで撃破。そのまま本体を捉えるべく、クリームの触手をキルリアの前から2、後ろから2、足元から1の5本の布陣で差し向けてくる。
これに対しキルリアは、まずはジャンプで足元の触手をよけて後ろに刀を投げ、背後から迫る2本の触手を切り裂く。
この行動を見た相手は手ぶらになったキルリアに対して、一度は避けた足元の触手をさらに伸ばして今度こそキルリアを捉えようとする。しかしその触手は、先ほどキルリアが投げた2本の刀を分身体のキルリアが、足元の触手を切り裂きながらキルリアの手元に帰るようにサイコキネシスで軌道を操作したためその刀に撃ち落とされる。さらに、この2本を受け取り再び二刀流になった本体のキルリアはそのまま走り抜け、目の前に立ちふさがる2本の触手を切り払い、マホイップとの距離を着実に縮めていく。
「……なんて子だい本当に。ポケモンもトレーナーも、いい意味でおかしいやつだねぇ」
ルリナさんのカジリガメを倒したときのマジカルリーフの刀の操作を、分身体も交えてより複雑にパスを回していくことでどの角度から攻撃が来ても対処できるように動くキルリアたちは、流石のポプラさんもぼそっと呟いていた。
徐々に詰まるマホイップとキルリアの距離。あと数秒もすればマホイップの懐に潜り込むことが可能だろう。
「いける!」
「安心するのは速いよ」
手ごたえを感じ始めたところでポプラさんからの一喝。その言葉を合図にマホイップの真正面に再び圧縮されたクリームの塊が生まれる。
(また爆発される!!)
全方位に衝撃を放つ準備をするマホイップ。あれを喰らえばまた無条件に1回積まれる。
「キルリア!!」
「キル!!」
キルリアの呼び声に答えた、残った分身が一斉に本体へと駆け寄る。その行動を見たマホイップは、集合させるとまずいと感じ取り、慌ててしまったせいか先ほどより早いタイミングでクリームを爆発させる。
「ぐっ!?相変わらずなんて威力……っ!!」
圧縮が不十分だったせいで先ほどよりかはまだ爆発の規模は小さかったものの、キルリアくらいのポケモンを吹き飛ばすくらいなら十分なその威力に思わず腕で顔を覆うボクや観客たち。その威力の大きさに誰しもが再び距離を離されたと想像した。しかしその想像はキルリアの前に展開された
本体と、集まった分身体の全員が持っているマジカルリーフの刀を、一度ばらばらにしてサイコキネシスで再構築することによって巨大な盾に作り替えられたそれは、クリームの爆発を受け止めて後ろのキルリアたちを守っていた。
「マホッ!?」
「やるねぇ」
まさかこの爆発を防がれると思っていなかったマホイップが驚愕の声を上げ、隙をさらす。
その瞬間、マジカルリーフの盾が真ん中から割れて、そこから本体のキルリアが飛び出した。
完璧なタイミング。今からマホイップが次の攻撃を防ぐ時間は存在しない。
(この一撃で倒せるとは思わないけど、せめて致命傷だけでも与える!!)
「キルリア!『サイコキネシス』!!」
「キルッ!!」
キルリアの両手が今までにないくらい眩しく輝きだす。流れをこちらに引き込む、今までのキルリアからしてみれば明らかに強力な、歴代でも最大火力のそのエネルギー。
ここまで何度もクリームに邪魔された鬱憤を晴らすべく、遠慮の一切を排除したその一撃。右腕を限界まで引き絞ったその腕は、マホイップに致命打を与えんと本気で打ち出される。
「いっけええぇぇぇっ!!」
ここから上がる反撃ののろし。キルリアの右手から放たれる虹色の光がさらに光だし、もはや輝きすぎて逆に青色にしか見えなくなってきたその光がついにマホイップに当たると確信したその瞬間。
「キルッ!?」
「……え?」
何が起きたのか、キルリアから放たれていた光によって全く前を確認できなかったボクには何が何だかわからず、思考がショートしてしまう。そのまま光が収まり、サイコキネシスさえ維持していないただの拳は、マホイップに当たるころには完全に威力が死んでおり、水を叩くような音がむなしく響くだけに終わった。
「……っ!マホイップ!この隙を逃さないよ。叩き込みな。あんたの『アシストパワー』を」
「しまっ!!」
一体どうしてこうなったのか。なんで技が不発したのか。ボクも観客も、そしてあのポプラさんすらも把握できなかった予想外の出来事に、しかし、こここそが反撃のチャンスと、長年の経験によりすぐさまイレギュラーに対応したポプラさんだけが反応をし、ボクたちに生まれてしまった致命的な隙を確実についた。
しかも放たれた技はアシストパワー。
自分のどれかの能力が上がれば上がるほど威力の上がっていく技。完全に積みきっては居ないものの、かなり能力を底上げされたマホイップのその一撃は、爆発でも起きたのではないかと思うほどの爆音を奏でる。
「キ……ルッ!?」
「キルリアッ!!」
そして、そんなとんでもない威力を秘めたアシストパワーはキルリアの体を正確にとらえ、キルリアの体はボクの目の前にまで吹き飛ばされる。慌てて声をかけるが、ここまでめいそうを4回、とけるを2回も積んで、一時的にとはいえ超火力へと進化したその一撃を、すでに体力が削られていたキルリアが耐えられるわけもなく、地面に落ちていく。
「キ、キ……ル……ッ」
「キルリア……キルリアッ!!」
「マホイップ……しっかりやるよ。『とける』そして『めいそう』を2回」
それでも意識だけは意地でも手放すまいと、必死にはいずるキルリア。そんなキルリアの視線の先にはどくびしがあった。ポプラさんの言葉なんて全く耳に入らない状況で、それでもキルリアのやろうとしていることだけは分かった。
キルリアの特性はシンクロ。それは相手に自分と同じ状態異常を付与するというもの。つまり、今ここでキルリアがどくびしを受けてどくになれば、マホイップもどくになる。そうすれば、積まれまくってろくにダメージの入らない現状でもスリップダメージであるどくは確かなダメージソースになるから。
だからキルリアは自分はもう勝てないから、自分がチャンスを逃したせいでこんなことになってしまったから、せめて後ろに託すために、そんな責任感から自分からどくびしを掴もうとしていた。だから……
「もう、いいよ。キルリア」
「……キル」
そっと、止めるように指示をする。キルリアは充分戦ってくれた。そんな子に自分から苦しむ行動なんてして欲しくない。
結果こそ確かに残念だったけど、誰も君を責める人なんてボクの仲間たちには居ない。もし、この試合を見ている人たちが文句を言ってくるのなら、ボクは君のそばで守ってあげる。ポプラさんのエース相手にこんなにも凄い大立ち回りを演じて見せてくれたのだ。絶賛こそすれ、批判なんてできるわけが無い。だから……
「そんな、悲しそうな顔をしないで?ありがとうキルリア。君は本当にすごく頑張んばってくれた。君を尊敬する。後でいっぱい、褒めて甘やかしてあげるからね?」
「……キ……ル……」
悲しそうな、それでいて悔しそうな顔を浮かべながら、しかしボクの言葉を聞いて少しだけ柔らかくなった表情を浮かべながら、キルリアは完全に意識を手放した。
『キルリア戦闘不能!!勝者、マホイップ!!』
審判からの言葉を聴きながらキルリアをボールに戻す。するとポプラさんから声がかかった。
「よっぽど好かれているんだねぇ。健気な子だよ。自分からどくにかかろうなんて」
(やっぱり気づかれてたか。そりゃそうだよね)
キルリアがシンクロでどくを伝染す作戦すら看破していた発言。考えてみれば当たり前で、あんなにもクリームに触れていたのにキルリアは1回たりともどくびしに触れていない。これはポプラさんがキルリアの特性を警戒していたため。だからさっきの場面、たとえボクが止めなかったとしても、ポプラさんはクリームを使ってどくびしをキルリアから離しただろう。キルリアにこれ以上自分を責めて欲しくないから、ポプラさんが気づいてなくても止めたけどね。
「自慢の、仲間ですから……」
「そうかい」
頑張ってくれたキルリアのボールをそっと撫でてあげる。このバトルが終わったらしっかり回復させて思いっきり抱きしめよう。
「いい関係だよあんた達は。もっともっと強くなれるだろうさ」
「ありがとうございます」
ポプラさんからの嬉しい言葉。だけど浮かれている場合じゃない。
「だが、今回ばかりはもうチェックメイトって言わせてもらうさね」
「……」
ポプラさんの言う通り、戦況は最悪。とけるを3回、めいそうを6回、限界の限り自分の能力を上げきったマホイップが鎮座するこの状況は、ポプラさんの描いた盤面そのままになってしまった。リフレクターとひかりのかべこそ時間切れで無くなったものの、もはや壁の1枚、2枚程度誤差でしかない状況だ。なんせ、あのマホイップにアシストパワーがあるのが発覚したから。
「降参を薦めるよ」
間違いない。ここから勝てるビジョンなんてボクには全く思いつかない。けど、降参だけはしたくない。
「……嫌です。最後まで戦います」
「そうかい」
まるで予想通りと言った顔でマホイップに構えさせるポプラさん。勝ち確盤面でも全くの油断なし。余計に付け入る隙が無くなった。
(……本当にどうしよう)
諦めたくはない。けど、ここから逆転する未来も全然思いつかない。
絶望的な状況。
ジムチャレンジ初の敗北の足音が聞こえはじめた。
アシストパワー
全抜き型マホイップ最強火力の技。
これがあるからポプラさんはとけるも採用していたんですね。
1段階上がる事に威力が20上がるので、このお話で打った段階では、防御、特攻、特防が4段階上がっているためここに基本威力の20を足して推定威力260になります。
最後はさらに全部2段階ずつ増えているので、今打つと威力380……頭おかしいですね。
マホイップ
ポプラさんのマホイップは体から離れたクリームをも操ってきます。
感覚としては某海賊漫画の覚醒みたいな感じですね。
キルリア
キルリアの身に何があったのか。
アニポケをしっかり見ていた人なら心当たりがあるかもしれませんね。
さて、とうとう要塞になってしまったマホイップ。
絶望度半端ないですね。