【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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88話

「んん〜……よし!!」

 

 メロンさんとの思わぬ邂逅を果たし、そこから時間単位で話を聞くことになってしまったため、再び温泉に入ることとなった昨日を乗り越えての今日。バウタウンの時のようにまた風邪をひかないかすごく心配だったけど、特に体を崩す事無く一夜明かすことができたボクは、キルクススタジアムの更衣室にてユニフォームに袖を通していた。

 

「……うん、ちょっと久しぶりに感じちゃう」

 

 928の背番号が書かれた白色のユニフォームは、アラベスクタウンで着て以来なので少しだけ久しく感じてしまう。物理的距離だけで言うなら、エンジンシティからラテラルタウンの方が長かったし、期間も明らかに長かったのに何故だろう?

 

「ラテラルタウンとアラベスクタウンの感覚が短かったからかな……?ま、今はいっか」

 

 ふと頭によぎった疑問だけど、これから迎える大事な挑戦には特に必要な問題では無いのであっさりと切り捨てる。今大事なのは、これから受けるキルクススタジアムのジムミッションだ。

 

「6回目のジムミッション……どんな感じなんだろうね」

 

 ポプラさんのところみたいにわかり易かったらさぞ嬉しいのだけど、あそこはビートという例外がいたから起きた出来事なのであって、今回はそういったイレギュラーもないので、アラベスクスタジアムより前のジムミッションと同じような形式となるだろう。というか、アラベスクスタジアムに関して言えば、どちらかと言うとビートのためのミッションだったしね。

 

 本来のジムミッションは、当然ながらチャレンジャーがジムリーダーに挑むに足るかを試すもの。そしてジムミッションで求められるのはバトルの強さではなく、判断力や観察力といった、トレーナーの視野や思考だ。もちろん、途中でジムトレーナーの人が戦いを挑んでくる場合もあるため、全く求められていないかと言えば嘘になるけど、バトルの強さはジムリーダーが直接戦うのだから、そこで判断すればいいという考えだろう。

 

「フリア選手、準備をお願いします」

 

「は〜い」

 

 名前を呼ばれる。ボクのジムミッションの準備が整った合図だ。

 

 ベンチから立ち上がり、軽く頬を2回叩いて気合を入れ、ボクを呼んだジムトレーナーさんの前に足を運ぶ。

 

「今回、キルクススタジアムのジムミッションではこの道具を使うことになります。落とさないように、しっかりと持って、上手く活用してクリアをめざしてください」

 

 形式的な言葉を述べながら渡してきたのはL字に曲がった2本の棒で、短い方はこちらを握れという意味なのか、グリップのようなものが巻いてあり、長い方は先端に電子部品が付いていて、何かがあったら、光るか震えるかは分からないけど、アクションを起こしそうな雰囲気を醸し出している。

 

(うん。この形状からして何となく使い方は想像できたかも)

 

「詳しい説明は会場でアナウンスされると思いますのでそちらでご確認を。ご武運をお祈りしています」

「ありがとうございます!」

 

 ジムトレーナーの人に見送られて控室から外へ。目指すのは少し暗い廊下の先に見える光る出口。ジムミッション会場への自動ドアを潜り抜け、ボクの視界に入ってくるのはまるで湯けむり小路に戻ってきたのではないかと思わせるような白銀のフロア。あの時と違って、服装がユニフォームという薄着になっているせいか寒さをより強く感じるような気がする。

 

(マフラーつけてもいいよって許可貰ってて少し良かったかも)

 

 いつしか頭に浮かんでいた、チャレンジ中にマフラーをしてもいいのかという疑問をこのジムで解消して、ようやく個人的にはボクのトレードマークのアイテムをつけて挑むことが出来る。薄着にマフラーっていうのが少しミスマッチ感があるけどそこは気にしない。

 

「にしても……うん、やっぱり観客がいるのって緊張するね……」

 

 アラベスクタウンでは観客がいなかったので、ジムミッションにおいては2つ目ぶりの観客なんだけど,ジムリーダーとのバトルは、ミッションに比べて集中度が上がるため周りの声が気にならなくなるんだけど、ミッションだとまだ周りを見る余裕があるせいか、観客の声と視線を強く感じてしまう。言ってしまえば恥ずかしい。

 

 そんなボクの感情を、アナウンサーの声がかき消した。

 

 

『さあここキルクススタジアムのジムミッションは、『制限時間以内に落とし穴を回避してゴールを目指す』というものです!!』

 

 

「落とし穴……」

 

 アナウンサーの声を聞き、気が引き締まると同時にその単語を聞いて、今ボクの目の前にある白色のステージに目を向ける。しかし、そこには落とし穴なんてものはひとつも見当たらず、一面全てが綺麗な白だ。雪で作られていると思われる地面は、倒れ込めばフカフカとしていそうで、思わず飛び込みたいという衝動に駆られそうになってしまうほど。強いて言えば、ポツポツと存在する、氷の山のようなものがチラホラとそびえ立ってはいるものの、それ以外にはこれといって大きな障害物は見えない。

 

(目に見えない……そして入口で渡されたこの棒……何となく読めてきたね)

 

 ここまで観察してようやくこのジムミッションの本題を理解した。入口で渡されたこの棒。これはいわばダウジングマシン。おそらく見えない落とし穴に反応して、ここに落とし穴があるよと教えてくれるから、そこを避けてゴールまで進め。と言いたいのだろう。

 

 

『今貴方様がお持ちになっている、その落とし穴探知マシンにて、見えない落とし穴を華麗に回避してゴールへの道を探し当ててくださいませ!!なお、もし落とし穴に落ちても、下はクッションが沢山引かれておりますので安全面はご安心を。また、1度落ちたからと言って失格にはなりません。初期位置、ないし中間ポイントへと戻されてしまいますが、時間内であれば何度でも挑めますので、最後まで諦めずに頑張りましょう!!』

 

 

「つまり、穴に落ちるとかなりの時間ロスになってしまうと……」

 

 プラスの言葉で埋めつくしてチャレンジャーに希望を持たせてはいるけど、その実、時間という面においてはかなりの致命傷を受けてしまいそうだ。ここから先の景色を見てもゴールが見えないあたり、おそらくこの道のりはそこそこ長い。中間地点がどれくらいのスパンで存在するかにもよるかもしれないけど、ゴール付近で数回穴にハマってしまえば、あっという間に時間は消え去るだろう。

 

「落ちれて5回……と言ったところかなぁ」

 

 視線を上に向けて、掲げられた30分という文字を見ながら大まかな予想を立ててみる。落とし穴からの復帰が、今自分が居るところから右に視線を向けた時にある梯子を使うという観点から見ても、かなりのタイムイートになるはずだ。梯子による昇降はスタミナも時間も必要だからね。本当に、地味にいやらしい設計をしていると思う。

 

 

『では、準備の方はよろしでしょうか!!』

 

 

「っと、集中!!」

 

 アナウンスの声を聞いて、手にしっかりと落とし穴探知マシンを構えて準備をする。

 

 

『いきますよ〜?ジムミッション、スタート!!』

 

 

 アナウンサーの言葉と同時にブザーが鳴り響き、タイマーのカウントダウンが開始する。と同時に響き渡る観客たちの大歓声。

 

「ぴぃっ!?っととと!?」

 

 久しぶりに感じるその歓声の大きさにびっくりしてしまい、落とし穴探知マシンを落としそうになって何とか持ち直す。いきなりマシンを落として破損なんかさせた日には目も当てられなさすぎるので、とりあえず問題が起きなくて良かったと一安心。と、同時に、改めて握り直した落とし穴探知マシンが細かく振動を始める。

 

「これは……」

 

 試しに探知機を向けて、振動を感じる方に向かって少しずつ足を進めると、手元のマシンがだんだんと振動を強めていく。

 

「落とし穴に近づくと強くなるんだね……ってあれ、これアナウンスの人説明していたっけ?」

 

 

『説明しましたけど!?聞いてませんでした!?』

 

 

「ああ!?ご、ごめんなさい!!」

 

 落とし穴に何回落ちても大丈夫かの計算をしている間に説明をしていたらしく、聞いていないボクに対してアナウンサーからのツッコミが飛んでくる。そのやり取りが面白かったのか、観客から笑い声が聞こえてくるのが余計むず痒い。

 

「と、とにかく前に進もう!」

 

 相変わらずボクがジムミッションをすると起きてしまうおかしな空気。なんでボクの時は総じてこうなってしまうんだろうか。アラベスクタウンでのあの正々堂々さはどこへいってしまったのか。

 

(もしかしてボク、カメラ回っているとダメなのか?)

 

 なんておかしなことを考えながらも着実に前に進んでいく。

 

 言ってしまえばダウジングマシンと同じ使い方をして前に進んでいくミッションなんだけど、シンオウ地方ではポケッチという道具にダウジング機能があったし、地下探検でも同じような手法で鉱石を探していたから、こういった道具で見えないものを探すという行為はわりと得意な方だと自負はしている。おかげでこの落とし穴地帯もわりとすいすいと進むことが出来た。とはいうものの、やっぱりダウジングで落とし穴を探しながら進むという兼ね合いで、どうしても足の進みは遅くなってしまうし、普通の迷路に比べて行き止まりもその場所まで行かないとわからないというのが意外とつらく、決してタイムは早いとは言えない。

 

 落とし穴が隠れているせいで迷路の突き当りを憶えておかないと、下手をすれば何回も同じ所をぐるぐるすることになってしまうし、さらに厄介なのが、その突き当りに行くであろう道も、壁が見えていないのと同義であるため歩いてみないとこれまた行きつく先が一緒なのかがわからない。

 

 そんな、今までのジムミッションでは味わうことの無かった慎重な立ち回りを、精神をすり減らしながらも行っていき、何とか進んでいくボク。結果として、一度も落とし穴に落ちることなく、そこそこ順調にチェックポイントに到達できた。けど、進捗具合で言えば、チャックポイントの2つ目をようやく乗り越えたくらいだし、正直まだまだこういった道が続くのかと思うと、ちょっと心に重いものがのしかかってくる。しかも、時計を確認すれば、ここまでに使った時間は15分。つまり、制限時間の半分を使ったということになる。幸いにも、このチェックポイントが最後らしく、あとはゴールまで進むだけ。なんだけど……

 

「たぶんここからが本番だよね……」

 

 最後のチェックポイントに到達した瞬間、室内だというのに吹雪が吹き荒れ初め、視界が一気に白に染まっていく。あれだけ耳に入ってきた観客たちの声も吹雪の音に一瞬でかき消され、観客席の姿も全く見えない。

 

(……これだとカメラ回している意味ないのでは?)

 

 いや、もしかしたら吹雪で見えないからこそカメラが必要なのかもしれないけど……

 

『聞こえるかい……ここまで来たら……見えなくても頑張って進むんだよ……』

 

「これは!?脳内に……直接……!?」

 

『言っておくけど……この声も放送に載るからね……』

 

「あ、はい……」

 

 カメラの心配をしているところに響いてくるメロンさんの声。って、この声どうやって響かせているんだろ?

 

『あんたなら……突破できるだろう……?待ってるよ……』

 

「……そんなに期待されたら、頑張らないとですね!」

 

 まさかのメロンさんからの激励にやる気が少し上がった。吹雪のせいでちょっとくじかれそうになった心が戻っていく。

 

「よし、行こう!!」

 

 気合を入れなおし、再び足を進める。

 

 探知機を使いこなし、落とし穴を避けて、確実に進んでいる感覚を掴んでいく。しかし、吹雪のせいで進行スピードをさらに慎重にせざるを得ないため、時間的にはかなりギリギリだ。このステージを見た瞬間の、5回くらいなら落とし穴に落ちても大丈夫という考えは既に消え去っており、今この状況においては一度でも落ちてしまえばアウトだろう。

 

 メロンさんからの激励のおかげで確かにやる気と根気は回復した。しかし、状況そのものはそんなに良くはなっておらず……

 

(まずいな……この手のタイプなら当然と言えば当然なんだけど、後半に行けば行くほど落とし穴の数が多すぎて、どこを向いても探知機が反応するからわかりづらい……)

 

 本来なら落とし穴の位置を正確に教えてくれるはずの探知機の振動がどこに向けても起こってしまうため予想がむちゃくちゃしづらい。かなり落とし穴に近づかないとそこにあるということがわからないし、吹雪のせいで方向感覚を見失いやすくなっているため、ゴールの方向を常に意識することにも脳のリソースを使わないといけないから、せっかく見つけた落とし穴の場所を覚えておくのもちょっと危うくなってきた。

 

(吹雪のせいで時計も確認できないし、焦りをどんどん呼び込んでくるねこのミッション……)

 

 間違いなく今までで一番難しいジムミッションだ。ここからミッション失敗なんて全然普通にある。

 

(時間も方向感覚も、そして落とし穴の記憶もしなきゃいけない……目標は単純なのに、過程が険し過ぎる!)

 

 それでも何とか食らいついていくボク。あと残り時間は2分くらいだろうか?正確な時間は相変わらずわからないけど、ボクの体内時計を信じるならそれくらい。料理で地味に鍛えられたこの時間感覚を信じるしかない。

 

(残りの落とし穴は右に2つと左に3つ。真正面にもあるけどたぶん左前にはないからそこを行けば……)

 

 考えることと覚えることが多すぎていよいよ頭がぐるぐるしそうになるけど、ここが踏ん張りどころ。最後の記憶と、探知機によって計算した落とし穴の予想位置をくみ上げて、ゴールと思われる方に足を運び……

 

「……っ!!吹雪が止んだ!!」

 

 視界を塞いでいた吹雪が消え去り、もうすぐ目の前にゴールが見えてきた。

 

「時間は!?……あと2分30秒!!間に合う!!」

 

 ボクの体内時計と少しずれていたけど、ボクの予測時間が短い方で誤差が出る分には全然いい。あと2分半なら全然間に合う。

 

 何とか突破できた。

 

 物凄く難しかったミッションを乗り越えた達成感に包まれ、自然と足取りが軽くなる。しかし、だからこそ、最後の最後で油断してしまい……

 

「……え!?」

 

 ゴール手前にて、最後に立ちふさがる……いや、忍び塞がっていた落とし穴に足を取られる。

 

(最後の最後で!?油断しすぎた!!まずっ!?)

 

 ここで落ちてしまえばもうミッション失敗は確定。せめてけがをしないようにと、体を丸めながら落ちた時に受ける衝撃に備える。下にクッションを敷いてくれているとはいえ、落ち方によってはちょっとしたねんざくらいは覚悟しなきゃならないかもしれない。

 

(くそう……悔しいなぁ……)

 

 なんて後悔し、来たる衝撃に備えながら目をつぶっていたボク。しかし、一向に落ちた衝撃を受ける感覚がボクを襲わなくて……

 

「……あれ?」

 

 十秒経ってもクッションに落ちる感覚が来ないどころか、そもそも体が落ちる感覚がないことに違和感を憶えて、そっと目を開ける。するとそこには……

 

「……エルレイド?」

「エル!」

 

 いつの間にかボールから出てきたエルレイドが、ボクを落とし穴に落ちる前に救いだしてくれていた。

 

「あ、ありがとう……」

「エルエル!!」

「うん、凄く嬉しい……けど、ちょ~っと……恥ずかしいかも……」

 

 なぜか、ボクをお姫様抱っこした状態で。

 

「も、もうおろしてくれていいのよ?」

「エルエル!」

「エルレイド!?」

 

 そしてなぜか降ろしてとお願いしたのにそのまま歩き始めるエルレイド。いや、エルレイドの考え自体はわかっている。エルレイドのことだから、サイコパワーでまだあと一つだけ残っている落とし穴の存在を感知して、そこをよけて絶対に安全なところまで運びたいという騎士心からこういう行動をとっているんだろう。とても助かるし、ボクのことをそこまで大切に思ってくれていることは嬉しい。けど、今はもう吹雪がないため、今この姿をばっちりみられているというわけで。結局エルレイドがそのままボクをゴールまで運んでしまい……

 

 

『フリア選手ゴール!!最後はまさかのお姫様抱っこ!!失礼ながら私、少しキュンキュンしてしまいました!!ありがとうエルレイド!!ありがとうフリア選手!!あなたは可愛いです!!』

 

 

「うう!!うう~!!!!」

 

 アナウンサーと観客から聞こえる黄色い声に思わず顔を隠すボク。

 

「エル?」

 

 一方で、まだ何が何だか理解していないエルレイド。悪気がないことがありありとわかってしまうため、彼を責めることもできない。

 

「うう……何でボクのジムミッッションは毎回こうなるの……」

 

 難関ジムミッションを無事突破できたことは嬉しい。けど、なんか大事なものを失った、そんなジムミッションになったのだった……。

 

「……そもそもポケモンの力を借りてよかったのかな……まいいや、今はもう、一秒でも早く帰りたい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キルクススタジアム……とうとうここまで来ましたね……」

 

 自慢のサングラスを人差し指で持ち上げながら、目の前に広がる真っ白なエリアを見つめてぼそっと呟く。こうしてこの広場を改めてみるのは何年ぶりでしょうか。まだ僕がこのジムに通っていて、いわタイプではなく、()()()()()()()()()()を学んでいた時。この場所で練習試合を何度も何度も行い、延々としごかれていたあの時期。別にあの期間が嫌いだったかと聞かれれば、僕はNOと答えるでしょう。確かに厳しい期間ではありましたが、僕自身強くなりたいという思いは確かにありましたので、別に練習がきつくなる分に関しては全然気にはなっていません。

 

 ではなぜ僕がこのジムを離れていわタイプの道へ進んだのか……

 

 こおりタイプが嫌いになったわけでも、このジムが嫌いになったわけでも……いえ、このジムのことを煩わしく思ったことがないかと言われたらウソになりますが……だからと言って、流石にここを出ていくほどの煩わしさかと聞かれると、そんなことはない……と思います。

 

 そんな僕がこのジムを離れた理由は一つだけ。

 

「君が強いんだということを、少しでもたくさんの人にわかってもらうため……」

 

 腰に並んでいるモンスターボールのうち、一つに目が行く。僕がこのジムでこおりタイプを使うにあたって最初に貰ったポケモン。僕のエースと呼ばれているポケモンとは別に、確かな思い入れのあるこのポケモン。

 

 正直に言ってこれは僕の変なこだわりが出てきているだけです。他者が聞いたとしても、そんなに共感してくれる人はいないかもしれません。が……

 

「それでも、やはり君に嫌な思いをさせたままというのは、しのびないのです」

 

 そっと撫で、微笑みながら腰のホルダーに戻し、落とし穴探知マシンを握りなおして吹雪が吹き荒れる道を歩き進める。

 

 ジムミッションの内容は毎年変わるため、事前情報はほとんど意味をなさないと言われています。しかし、当然ながら無限に試験内容を考えられるわけではないので、基本的に何種類かの試験をロ-テーションしているのが基本だと思います。そして僕はこのジムで沢山の特訓を受ける過程で、これらの試験を何回か行っているという経験値があり、それはこのジムミッションに関しても例外ではありません。

 勿論、落とし穴の場所は毎回違うのでルートを憶えるというのは不可能ですが、どこまで振動すればどの位置にあるのかの感覚はもう体が覚えてしまっています。

 

 少しずるいかもしれませんが、それはまぁ……身内特典ということで。恐らく、各ジムから推薦されて出ているチャレンジャーはほとんど理解していそうですしね。

 

 無難に吹雪の中を歩き進め、制限時間にも余裕はある。程なくしてゴールにたどり着くことでしょう。そうすれば、いよいよここのジムリーダーとの対決です。

 

「証明したいのです。だからこそ……僕は……っ!」

 

『マクワ~っ!!』

 

「……」

 

 改めて気を引き締めたところで響き渡るは、もう耳にオトスパスができてしまう程聞いた声。相変わらずのその声に、思わずため息が出そうになるのをぐっと我慢して……

 

「……何ですか()()()

 

『あんたなら絶対ここまで来るって信じてたわよ~!!』

 

「今ジムチャレンジ中且つ、生放送しているという自覚あります?」

 

『久しぶりに愛する息子と話せるんだからいいじゃないの!』

 

「公私混同しないでいただきたいのですが……やはりこのジムを抜けたのは英断だったのでは?」

 

 そんな話をしている間に吹雪地帯も抜けてしまい、だんだんと観客たちの声と表情が確認でき始める。当然、僕と母さんの関係性を初めて知る人が多いので、みな驚きの反応を見せており、しかし、母さんはそんな周りの反応などお構いなしにしゃべり続ける。

 

『さあ早くここにきて、あたしに挑みに来な!そして、いわタイプよりもこおりタイプの方がいいってことを叩き込んであげるよ。確かにあんたを破門にはした。けど、頭を下げて帰って来るというのなら……またあんたの席を用意してあげなくもないよ』

 

「……」

 

 ゴール地点に足を運び、ジムミッションクリアの判定を受けるまでの間に投げかけられる言葉。その言葉に対して、僕は無言で貫き通す。母さんも、僕が返答をしてくれることに期待はしていないみたいだ。

 

『明日を、楽しみにしてるよ』

 

 その言葉を最後に、母さんの声が消える。

 

(……悪いとは思っています。けど、それでも僕は……この子のために、いわタイプ最強のトレーナーでありたいのです)

 

 消えた母さんの声を追いかけるように、奥へと足を進める僕。

 

(さあ、ここが僕の思いの見せ所です!)

 

 僕の思いをつなげる戦いが、いよいよ始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




落とし穴

実機だと時間制限がないのでいつかはクリアできますけど、リアルだと制限時間がありそうだなと思ったので制限をかけました。
実際問題、こうなってくると、落とし穴に落ちた後、上に戻ってくる時間も含めてなかなか難しそうですよね。

エルレイド

ナイト様。主人公絶対守るマン。
ちなみにエルレイドにお姫様抱っこされているフリアさんをテレビで見て、サーナイトのコスプレを作ろうと、とある方がアップを始めたそうな……()
実際、お姫様抱っこされているところを他者にみられるのって凄く恥ずかしいんですよね……(経験者の顔)この気持ちがわかる方がいると信じて……。

メロン

息子大好きお母さん。
その中でもマクワさんは特にお気に入り?
地味に五人兄弟なんですよね。マクワさんは長男です。




今のアニポケの新OPを見て無茶苦茶感動してしまいました。正直少し涙が……
本当に集大成って感じがしますよね。これからますます楽しみです。









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