「ふぅ……疲れたぁ……」
キルクススタジアムのジムミッション。吹雪の中を落とし穴を探しながら進むという、今までに比べてかなり難易度の高い方であるミッションを越えたボクは、スタジアム内の休憩所にて一足先にくつろいで皆を待っていた。
ヤローさんやルリナさん曰く、最初のジムの方が挑戦者が多いため、チャレンジャーを選別するという目的でジムミッションの難易度を高くしているとの話だったけど、正直いって今回のジムミッションがいちばん難しかったのではないかと思っている。
まぁ、ボクが今までのジムミッションを割となあなあだったり、邪道でクリアしてしまっていたりというのもあるんだけどね。ただ、それを考慮しても今回のジムミッションは難しかったと思う。
「吹雪と落とし穴のコンボって、こうしてみるとかなりえげつないよなぁ……道幅が長方形で良かったや」
これが正方形だとゴールの方向まで見失ってしまっていた可能性が高い。そうなるとボクも普通に落ちていた可能性がある。途中からダウジングの振動具合を見て、そこから落とし穴がどれくらいの距離にあるのかを計算できるようになったのもクリア出来た要因だと思う。少なくとも今ならその感覚はしっかりと残っているので、たとえ今からもう1回ミッションを受けて、且つ落とし穴の位置を変えられたとしても、今回より早くゴールできる自信はあったりするけどね。
「ルリナさんや、カブさんのところと違って、慣れたらまだクリア出来そうになっている点を見れば、そういう意味ではまだ温情……なのかなぁ?」
とりあえず今言いたいことは、ダンデさんがチャレンジしていた頃にこのジムミッションが来なくてよかったねと言ったところか。申し訳ないけどあの方向音痴っぷりを見ていると、あのミッションに関してはダンデさんがクリア出来る未来が見えない。むしろ、ダンデさん時代はどんなミッションだったのかが気になる。
「今度はその辺のお話も聞きたいなぁ……」
「なんの話です?」
「いえ、ただの独り言です」
ぼそっと呟いた、誰にも向けていないただの独り言に帰ってくる返答。少し驚いたけど、時間的にそろそろかなとも思っていたので、特に態度に出ることも無く自然とその声を受け入れる。振り向けば、そこには自慢のサングラスの真ん中を、指で軽く持ち上げて微笑む少し恰幅のいい男性が1人。
「お疲れ様ですマクワさん」
「ええ。その様子ですと、無事ミッションはクリアしたみたいですね」
「あはは、結構ギリギリでしたけどね。マクワさんは結構余裕ありそうですね?」
「まぁ、元々ここのジムにいましたからね」
「あ、そうですよ!!マクワさん、メロンさんと親子だったんですか!?」
ボクがジムミッションを終えて、この休憩所まで歩いてきた時に聞こえた言葉。
『今挑戦しているマクワ選手とメロンさんが親子なんだって!!』
その言葉を聞いた瞬間思わずその声を発した人を2度見してしまったほど、ボクにとってはなかなか衝撃的な発言だった。道理でバトルも強いし知識もたっぷりあるわけだ。それに、今思い返してみれば目の形や体型もそこはかとなく似ている気がする。と同時に、メロンさんの姿を見た時に感じた、どこかで見たことがある感じはこのことだったんだと納得した。
(しかし、マリィと言いホップと言い、身内にすごい人が多くないですかねほんと)
もしかしたら、今年は当たり年(同期たちにとっては地獄の年)なのかもしれない。
「ってことはジムミッションについても事前知識あったりです?」
「まぁ……ずるいと思いましたか?」
「いいえ全然。そんなことを言えば、ボクもカブさんのところをずるで突破しちゃいましたし……」
「そういえばそんなこともありましたね。あの突破方法は思わず笑ってしまいましたよ」
「お恥ずかしい限りで……」
今振り返ってもエンジンスタジアムでの出来事はかなり頭を抱えるものだ。ほんと、よく許可が通ったよね。
「あなたのミッション攻略はいつも楽しませてもらっているんのですが、今回も斬新な突破をしていることを期待していますよ」
「こ、今回は勘弁してくれませんか!?」
今回は割とお恥ずかしい所をお見せしてしまっているので、できることなら見てもらいたくないのだけど……
「「「「…………」」」」
「あ、皆が戻ってきましたよ!!」
「?……みたいですね」
珍しく出力高めで反論してきたのが意外だったのか、少し首を傾げながらも、帰ってきたみんなをマクワさんも発見できたみたいなので2人で迎える準備をする。いつも通り机にポフィンとお茶を並べていき、もはや恒例のティータイムセット。これでみんなの疲れや緊張を癒して、明日のジムリーダー戦に備えるための会議をする。
今回もそんな流れで話が進む。……と思っていたんだけど……。
「フリアさん、どうも皆さんの様子が……」
「なんか、いつもより元気が……もしかして……」
いつもならボクのポフィンに飛び込んでくるユウリさえも下を向きながらゆっくり歩いており、食べ物に対して見せてくるあの覇気が感じられない。その少し暗い雰囲気はユウリたち4人全員を覆っており、その姿からなんとなーく嫌な予感が浮かび上がってくる。マクワさんも同じ回答に思い当たったのか、こちらに顔を向けていたので、ボクも目を合わせてそっと頷く。
「み、みんな……大丈夫……?」
意を決して声をかけるも、特に反応もなくボクたちの前に座るユウリたち。追加で声をかけた方がいいのかななんて思ったけど、程なくしてユウリたち全員の腕が持ち上がり始めたので、きっとなにか反応を見せてくれるだろう。挙げられた4本の腕はゆっくりと机の真ん中に伸ばされていく。その伸ばされた腕が、ポフィンへとたどり着いた瞬間……
「「「「うわああああぁぁぁぁん!!」」」」
物凄い勢いでポフィンのやけ食いが開始され、同時にボクとマクワさんの中で答えが確定してしまった。
『ああ、みんなミッションを達成できなかったんだな』と。
「なんなのあの……あぐ、ミッション!!後半の……むぐ……吹雪物凄く……っん、辛かったよ〜!!」
「もぐ……いきなり難易度……んぐ、おかしかと……!!」
「おふぇなんかふゅっかいはおほひあふぁひおひふぁふぉ!!」
「あぐあぐもぐ……こんなの、フリアっちのポフィン食べるしかないよォ!!」
「見事なまでのやけ食い、ですね……そしてホップさん、せめて飲み込んでから喋らないと何言っているかわからないですよ……」
「おそらく『俺なんか10回は落とし穴に落ちたぞ』ですね。はい、ホップのお茶だよ」
「……ものすごく手馴れてますね」
「文字通り慣れたので……」
健啖家という意味ではユウリの方が暴食量は上なんだけど、言い方を悪くすればお行儀が悪いのはホップだ。今までも何回かご飯を一緒に食べたことはあるメンバーだけど、ホップがこうやって口の中に物を含めたまま喋ることはそんなに珍しい事じゃない。そんな人と食べ続けると嫌がおうにもこんなスキルが身についてしまうというもの。
……もっとも、ボクの場合、最強のせっかちマンであるジュンの存在がでかいけどね。言ってもホップは口元を手で押さえたりとちょくちょく気遣いがみえるんだけどあいつ、絶対口に食べ物含んだまま喋り続けるんだもん。ブレーキ壊れてるよ絶対。
「うう!!悔しい!!ストレートで突破したかったのに~!!」
「俺もだぞ……って言いたかったけど、よくよく考えたら、俺とっくに失敗しているところがあった……」
「あたしも、ダンデさんを目標にするのならストレートで突破するくらいの気概を持たんとって思っとったけど……まあ、こうなったらしかたなかとよね……となると今ノーミスなのはフリアだけと?」
「まぁ……そうなるのかな?」
よくよく考えたら確に、これで現状ボクだけがノーミス状態だ。だからと言って何かあるわけでもないんだけどね。結局、このジムチャレンジって最終目標がダンデさんとのバトルに勝つということに集約されている以上、このジムの突破率とか、勝率、失敗回数なんてぶっちゃけどうでもいいもんね。勿論、だからと言ってわざと負ける気はないけど。
「そう言えばマクワさんはストレートなんですか?」
「いえ、ルリナさんのところで一度負けていますね。ヤローさんのところはまだよかったのですが……くさタイプの方が弱点が多かったのでまだ戦いやすかったですよ」
「ああ、確かに……マクワさんの手持ちを見たら納得です」
確かにいわタイプに弱点をつけるという点においては、くさタイプもみずタイプも変わらないけど、マクワさんの手持ちで言えばツボツボ、アマルルガ、セキタンザンがそれぞれ複合タイプの方でくさタイプの弱点を突くことが出来る。その点を見てもヤローさんよりもルリナさんの方がつらかったという意見は物凄く納得だ。
「クララさんは……」
「ん?なぁにィ?」
「……いや、何でもないぞ」
「ちょっとォ!?うちにも今のところノーミスか聞きなさいよォ!!うちのちからでジムリーダー全員中毒にさせてるかもでしょォ!?ホップきゅん酷い!!」
「えっと……それは悪かったぞ。じゃあ、クララは今までノーミスなのか?」
「……オニオンちゃんのところで負けました」
(((((やっぱり……)))))
「そんなことよりも!フリアに聞きたいことがあるぞ!!」
「そんなことォ!?」
クララさんの予想通りの答えにみんなの心が一致したところで、ホップがこの話題をぶった切るようにカットインを入れる。クララさんが若干ショックを受けているみたいだけど、ポフィンを食べてすぐに頬を緩ませているところを見るに放置して問題ないだろう。そう判断したボクはクララさんを一瞥して、ホップの方に視線を向ける。
「で、ホップが聞きたいことって何?」
「フリア、お前は明日メロンさんに挑むのか?」
「ああ、その件についてね」
ホップの質問を聞いて、何となく先の展開を予想しておく。
「もしお前が明日メロンさんに挑むなら、これからメロンさんの対策を練る時間を取った方がいいから無理強いはできないんだけど……もしそうじゃないなら俺にあのジムミッションのクリア方法を教えてくれないか?」
ホップからのお願いは大方予想通りの物だった。キルクススタジアムのジムミッションは受けるたびに落とし穴の位置が変わるみたいだから、ルート教えることに意味はないけど、落とし穴探知マシンの振動具合から、落とし穴までの距離を計算する方法や、おおよその感覚を教えることくらいはできるはずだ。
「俺は落とし穴に落ちている回数が圧倒的に多いからな。せめてもう少し感覚をつかんでおかないと絶対に突破できないと思う。だから頼む!!」
「そこに関しては私もお願いしたいかも……正直、どこがダメだったのかとかいまいちつかめてなくって……」
「あたしも。ちょっと今までのジムミッションと比べて難易度高そうだし、まだまだ期間はあるとはいえ、ここでずっと足止めも嫌だから、今はなりふり構ってられなかと」
「う、うちもォ……それにちょっと便乗したいなァ~……フリアっちィ?」
ホップの言葉を皮切りに、一斉にボクの方に向けられる願望の視線。そのあまりにもすごい圧と熱量に思わずのけぞってしまいそうになるけど、みんなの目の奥にある光を見ればこれが本気だという気持ちが……いや、クララさんはよくわからないけど……物凄く伝わってきたので、ボクもその思いを真っすぐ受け止める。ここまで真剣なまなざしを向けられているのだから、こちらも真剣にお返しするのが筋というものだ。なんて、ちょっとカッコよくいっているけど、もともとボクに先に進む意思はなかったので、ホップたちがどのような行動を取ったとしても、メロンさんに挑まないというのは変わらないけどね。
「大丈夫。この盤面になった時点でボクに先に進む意思はないから、そんなに真剣にお願いしてこなくても最初から教えるつもりだったよ。まぁ……みんなからこんな真剣な目でお願いされることなんて初めてだったから……ちょっとびっくりしちゃったけど……」
「ほんと!?」
「嘘じゃなかと!?」
「ほ、本当だから、ユウリもマリィも落ち着いて?ね?」
2人でずずいっと近づいてきたことに少しおののきながらもなんとか肩を押して席に戻す。しかし、ボクが協力をすると聞いて興奮しているのはこの2人だけではなくて……
「うおおお!!フリアが手伝ってくれると聞いたら俄然やる気出てきたぁ!」
「ちょ、ホップ!?言ってもボクもギリギリだったからあまり参考にされても困るからね!?」
ユウリとマリィを抑えられたと思った瞬間、今度はホップが立ちあがり外へ向けて走り出す。ボクに手伝ってもらえるとわかった瞬間、エンジンフルスロットルだ。
「大丈夫だ!!とりあえずはフリアの挑戦していた様子がアーカイブに残っているはずだからそれを見て、そこからなにか掴んで見せるさ!ユウリ!マリィ!クララ!まずはみんなでフリアのジムチャレンジの様子を見ようぜ!!」
「あ、それは気になるかも!!」
「あたしも。よくよく考えたらそんなにフリアのジムミッションを詳しく見たことないからみてみたか」
「そうと決まれば皆で見に行きまっしょォ!!」
「ちょ、ちょっとみんな!?」
ホップの言葉に続いて、せっかく落ち着けさせることが出来たユウリとマリィ、しまいにはクララさんまでもがまた盛り上がってスタジアムの外へ駆け出していく。
「全くもう……みんなせっかちなんだから……」
「の割には、どこか嬉しそうですね?」
「……顔にやけてました?」
「物凄く」
微笑みながらそう返してきたマクワさんの言葉を聞いて慌てて頬に手を当てる。そんなつもりはなかったんだけど……マクワさんが言うならそうなのかな?とても冗談を言う人ではないし……
「しかし、フリアさんは挑まないのですね……」
「その言い方をするってことは、マクワさんはメロンさんに?」
「ええ。先延ばしする理由も特にありませんしね」
「ですよね」
正直ボクも別にメロンさんに挑むのを先延ばしする必要はない。さっきはああいったけど、先に進む気がないなら先にクリアだけしてみんなが来るのを待てばいいだけだしね。だけど、個人的にはやっぱり一緒に挑みたいなぁという思いが強かったのでこういった行動に出ているんだけど……それに対してマクワさんは間違いなく何かしらの因縁というか、熱い何かを抱えているとみて間違いないだろう。じゃなきゃ、家族のもとを飛び出して違うタイプに走る必要もないしね。となるとやっぱりカギになるのは……
(アマルルガ、かなぁ?)
初めて手持ちを見せてもらったときのあの表情。エースはセキタンザンらしいけど、それ以上に愛着を持っているように見えるそのポケモン。
(タイプもいわ、こおりタイプ……もう何かあるって言っているようなものだと思うけど……)
勿論過去に何があったなんてボクには何もわからない。だからボクから言えることなんてほとんど何もない。けど、これだけは言わせてもらおう。
「……絶対勝ってくださいね。マクワさん」
「!?……その発言は意外でした」
本当に意外に思っているらしく、マクワさんの表情が面白いくらいに変わっていった。そんなにおかしなことを言っただろうか……?
「いえ、おかしなことは言っていないんですが……単純に何も言わずに無関係を貫くのかと」
「確かに、ボクも最初はそうしようと思ったんですけど……ボク、マクワさんとも大舞台で戦いたいって思いました」
「……なるほど、そう来ますか」
ボクの発言を聞いて、驚愕の顔をニヒルな笑みへと変えていく。サングラスを触りあがらその表情へ変えていく姿を見るに、『ああ、この人もポケモンバトルが好きなんだ』と心から思えた。強くて、ポケモンバトルを楽しんでいる。そんな人と大舞台で戦いたいと思ってしまうのはトレーナーの性ではなかろうか。
「ええ、実に楽しそうです。シュートスタジアムにてあなたとぶつかり合う……実に楽しそうです」
「ですよね!!だから勝ってください!!ボクもすぐに追いつくので!!あ、あと明日絶対に試合見に行くので!!」
「ええ。その激励、しかと受け止めます」
マクワさんと拳を軽く合わせてお互いの健闘を称える。マクワさんと一緒に旅をした期間は短いんだけど、それ以上に密な話をたくさんしたせいか、無茶苦茶仲良くなった気がすると思うのは自分だけかな?
ボクとマクワさんでさらに絆が深まったような感覚を感じたボクは、それが少しうれしくてちょっと笑ってしまう。
「しかし、いいのですか?」
「何かありました?」
そんなボクに対して疑問を投げかけるマクワさん。その行動が気になって思わず首を傾げ……
「僕にジムミッションを見られたくないと言っていたと記憶しているのですが……ホップさんたちに見られてよかったのですか?」
「…………あああああああッ!?」
すぐにホップたちを追いかけるべく、ポフィンなどをカバンに詰め込んで走り出す。このままではボクの恥ずかしい姿を見られてしまう。
「待ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「やれやれ、騒がしいですね」
そんなマクワさんの言葉を後ろに、とにかくボクは駆けた。絶対にあの姿を見られる訳には行かなかったので。
……が。
結論から言えば間に合いませんでした。
全員にボクの痴態を見られることとなり、特に女性陣から黄色い声が上がった時は、素直に死にたいと思いました。ちくせう……。
☆
ボクのジムチャレンジが終わって次の日。
あれからホップたちには落とし穴探知マシンの使い方のコツと、落とし穴の予想、及び距離の計算の仕方を教えた後、ユキハミの力で擬似的なステージ作成を行い、各々が練習できるフィールドを作って練習を行った。こういった探知マシンを使いこなすのになれていたボクですら、なかなか突破に骨が折れそうになっていたジムミッションだけに、みんな練習ステージでもかなり苦戦していたものの、そこはさすがここまで生き残ったエリートたち。アドバイスを少ししただけでみるみる成長していき、昨日の夜を迎えそうな段階で、ボクが教えられることなんてほとんどなくなってしまった。あとはボクが教えたことの反復練習をすれば、すぐにでも突破できるだろう。おそらく今日挑んでも問題ないとは思うのだけど、今回初めて失敗したユウリとマリィが、少し慎重気味になって、あと1日練習をしたいとの事だったので、今頃4人で明日の再挑戦のための最終調整に入っていることだろう。その様子を見て、ボクが近くにいると集中が途切れてしまいそうだから、ボクはそっとその場を離れた。
そんなみんなとはぐれたボクがどこへ向かっているかと言われると、答えはキルクススタジアム。
ジム戦を行う訳でもないのになぜここにいるのか、それは昨日約束をしたとある戦いを見守るため。その戦いは……
「ようやく来たわね……本当に待ちくたびれたわよ」
「……そうですね。少し、時間をかけすぎました」
メロンさんとマクワさんの対戦。親と子。普通に行けば、メロンさんのあとを継ぎ、下手をすればボクが次に戦う相手だったかもしれない選手が、こおりタイプではなくいわタイプを引っさげて向かい合っているこの状況。
このバトルは、ボクたち部外者にとっては親子という特別な立場はあるものの、ジムチャレンジ中に起きた試合のひとつでしかない。しかし、マクワさんたちにとってはおそらく、何かがかかっている大事な試合。
「さぁ……もう反抗も冒険も充分楽しんだだろう?いい加減帰ってきな」
「申し訳ないですけど、そのお願いはのむことが出来ません。僕の道は僕が決めます」
「全く……昔は可愛かったのに……」
「今と昔では、何もかも事情が違うので」
かすかに聞こえてくる、久しぶりだけど感動とは程遠い対面。周りの人は盛り上がっている為か、はたまたバトルしか興味が無いのか、マクワさんたちの会話を聞いている様子はない。
思わず唾を飲み込む。
「じゃあ、無理矢理でも連れて帰るとするかね!!」
「断ります。今ここで、僕の思いを押し通します!!」
両者ハイパーボールを構えてバトルの準備。
そんなふたりの様子を見て審判も準備が完了と判断し、開戦の合図を宣言する。
「行きなさい!!モスノウ!!」
「行きなさい!!ガメノデス!!」
親子を感じさせる同じ口上を述べながら、メロンさんは高く垂直ジャンプをしながら、マクワさんに至ってはバク転をしながらボールを投げるという、これまた親子そっくりなアクロバティック投法にてポケモンを呼び出す。現れたポケモンはどちらもボクが1度見たポケモン。お互いがポケモンを呼び出したのを確認し、すぐさま技を指示する。
「モスノウ!!『こごえるかぜ』!!」
「ガメノデス!!『がんせきふうじ』!!」
「どっちも初手が相手のすばやさを落とす技だ……本当に、親子なんだなぁ」
そんな感想を思わず浮かべながら観戦するボク。
ジムチャレンジ中のスタジアムという大きな舞台で、盛大な親子喧嘩が始まった。
ジムミッション
ちょっとした滞在理由ですね。
メタ的に言えば、マクワさんたちのバトルを見せるため()
マクワ
この小説ではルリナさんに一度負けている設定。
このメンツでどうやってあのすいすい艦隊に勝ったのか……
クララ
オニオンさんに負けた理由はクララさん曰く、『ゴーストにどくいまひとつやんけェ!!』という事らしいです。
親子喧嘩
マクワさんの話をするうえでやはりこの展開は避けられないかと。
ぜひとも殴り合っていただきましょう。