【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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91話

「……戻ってください。アマルルガ。お疲れ様です」

 

 勝鬨をあげるアマルルガに対して、労いの言葉をかけながらボールに戻していく。勝ったことが余程嬉しかったのか、ボールに納まってもしばらくカタカタとゆれるそのすがたに、思わず頬が緩んでしまう。そんなちょっとした感傷に浸っている時に聞こえる足音。

 音の発生源に視線を向けると、先程まで僕と大勝負を繰り広げていた母さんが近づいてきていた。

 

「母さん……」

 

 こうして面と向かって話すのはいつぶりだろうか。逃げ出すように家をとび出たあとはロトムフォンの連絡すらしなかった。なにから話せばいいのかと言う気まずさこそあれ、ここに感動の2文字は存在しない……と思っています。そんな返答に困っている僕に対して、それでも無遠慮に、全く気にもとめないような姿でガツガツと歩いてくる母さん。そして……

 

「……ほら、手をお出し」

 

 こちらに右手を突き出しながらそういう母さん。何故かその言葉に逆らうことが出来ず、無意識のうちに僕も右手を返していた。手のひらを上にして伸ばした僕の手の上に置かれるひとつの塊。それは、このキルクススタジアムを突破した証である、こおりバッジ。渡されたその小さな欠片は、握りしめるとほんの少しだけ温かみを感じる。

 

「言っておくけど、このジムチャレンジはまだまだ通過点。知ってるだろうけど、あたしの手持ちも全力とは言えジム用に調整もされている。つまりここで勝っても誇るにはまだ早いってことさ。だから……」

 

 バッジを手にしたことに、謎の温かさを感じながら母さんの言葉に耳を傾けていると、母さんの言葉が途中で切れる。言葉の続きが気になり、顔を上げるとそこには……

 

「っ!?」

 

 アマルスを僕にプレゼントしてくれた時にもしていた、あの優しいほほ笑みを浮かべており。

 

「絶対に、あんたのしたいこと、貫くんだよ。途中で投げたら、あんたを凍らせるからね」

 

 今度は握手をするための右手を差し出してきた。

 

 家を飛び出して、わがままを言うだけ言って縁を切ったと思っていた親不孝の息子なのに、それでもこうやって変わらない笑顔と優しさを向けてくれるのが嬉しくて、恥ずかしくて。

 

「……ええ、肝に銘じていきますよ」

 

 左手でサングラスを押し上げながら、ニヒルな笑みを浮かべて誤魔化す。こうでもしないと、少しお見せできない顔になってしまいそうで。そんな自分を隠すために、はっきりと声を出して告げる。

 

「今度は、本気のあなたに勝ちます」

「上等さ。いつでも挑んできな。待ってるよ」

 

 面と向かって話した時、どれだけ気まずくなってしまうのか、そんな心配はいつの間にか空の彼方に消え去っていて……

 

 お互いの健闘と未来を称える右手同士の握手は、今までしてきたどの握手よりも強く、暖かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パチパチパチパチ。

 

 キルクススタジアム内を響き渡る拍手の雨。それは、先程まで激闘を繰り広げていた2人に対して惜しみなく降り注いでおり、その大きさが先程のバトルに対するみんなの感動の大きさをそのまま表していた。かく言うボクもそのバトルにあてられた身であり、雨の一部となってマクワさんたちに感動の意を落としていた。

 

(本当に凄かった……お互い守ることを考えていないガン攻め同士のぶつかり合い……)

 

 メロンさんの扱うこおりタイプでこの戦法を行うのは理解出来る。元々防御に回るよりも攻めに回った方が強いタイプだからだ。けど、特性や性質を含めて防御の方が得意ないわタイプ使いであるマクワさんまでもが、からをやぶるやメテオビームと言った、攻めるための行動を多めにしていたことも、この試合が盛り上がっていたひとつの……いや、大きな原因だろう。

 

(特に『メテオビーム』がやばい。見た感じソーラービームのいわタイプバージョンかなって思ったけど全然違う。メテオビームを貯めている時にアマルルガが少しオレンジ色に光った所を見たから、多分貯めながら自身の能力をあげるタイプの技だ。初めて見る技だけど……威力と言い効果と言い、そんな凄い技を仕込んでいたなんて……)

 

 キョダイマックスラプラスのキョダイセンリツを真正面から打ち破った所からも、その威力の高さがよくわかるだろう。確かにこうかばつぐんの技で攻めている以上有利であるのはわかるんだけど、それにしたってキョダイマックスの技を、通常状態のポケモンの技で打ち破ったというのはかなりの快挙だ。うちのメンバーでも、こおりに対しては最近進化したばかりのエルレイドが弱点を突くことに長けているけど、正直エルレイドの技であの技をくだけるとは到底思えない。これはエルレイドを信じていないわけではなく、そもそもエルレイドの拳ではあのこおりの重量を跳ね返し切れない。エルレイドが得意としているのはすばやく、的確に、切れるように、鋭い一撃を叩き込むことであるため、力業によるゴリ押しは出来なくはないかもしれないけど、本領ではない。少なくともダイマックスをきって、ダイナックルを何回か行って火力を底上げしないときついだろう。

 

 そしてさらに問題なのが、エース以外の他のポケモンたちもやばそうなこと。

 

 まず思い浮かんでくるのは間違いなくあのヒヒダルマだ。つららおとし以外の技をついぞ見ることは出来なかったけど、たとえひとつしか技を覚えていなかったとしてもあの威力を何回も叩きつけられたらたまったものでは無い。それも、つるぎのまいやビルドアップといった、自己強化技すら使わずに、だ。となってくると、何かしらの特性やアイテムが関わっていると考えてよさそうなんだけど……

 

(一つだけ心当たりがあるアイテムが……でもあのヒヒダルマ、特に何もつけてないんだよね……)

 

 その可能性自体にはバトル中にたどり着いたため、ヒヒダルマがなにか身につけてないかを確認はしたけど、結果は何もなし。となると、やはり特性によるものと考えるのが妥当だろう。

 

「あの〜……」

「は、はい!?」

「そろそろここのバトルコートを閉じますので……」

「あ、あれ!?もうこんな時間に!?」

 

 なんて考えこんでいるうちに空の色は茜色に近づいており、バトルコートはおろか、観客席にも掃除目的で残っているジムトレーナー以外誰もいなくなっていた。どうやら今日のジム戦は人数が少なく、マクワさんが最後だったらしい。夕方なのに閉めようとしているあたり、本当に少ないのだろう。多い時は夜も戦っているからね。

 

 失礼しましたと声をかけてくれたジムトレーナーに返事を返し、ボクも慌てて観客席を後にしながら、それでも頭の中は再びメロンさんのポケモンたちに向けられる。

 

 あれだけ賑やかだったスタジアム内が嘘のように静まり返っている中、廊下を歩いてロビーへ向かいながら、次はコオリッポに向けて思考を飛ばす。

 

 はらだいこにこうそくいどう。このふたつを組みあわせていたあのコオリッポもまた、ヒヒダルマクラスに火力の高いポケモンのはずだ。こうそくいどうを覚えさせているところから、でんこうせっかやこおりのつぶて、アクアジェットのようなそもそも素早く攻撃できる技がない可能性はあるけど、こうそくいどうがあるせいでその弱点も実質帳消しだ。こちらも対策をしっかりとしておかないと簡単にやられる可能性が高いだろう。

 

(う~ん、どこに誰を当てるか……やっぱり弱点を突くことが出来るエルレイドを誰とぶつけるかが大事になりそうだなぁ。あとは……)

 

「おーい!フリア~!!」

「ん?」

 

 メロンさんの手持ちのどのポケモンに誰を当てるかを考えながらキルクススタジアムのロビーへと足を進めていくと、ボクを呼ぶ声が聞こえ始めたので顎にあてていた手を下ろし、うつむき気味だった顔を持ち上げると、視線の先にはこちらに向かって手を振っているホップの姿。その周りには他のメンバーもそろっており、ボクを迎えに来たというのがわかった。

 

「やっほ~ホップ、みんな。わざわざ迎えに来てくれたの?」

「迎えに来たの?って……マクワさんのジム戦終わったって聞いたのに、フリアがなかなか中から出てこないからみんな心配してたとよ?」

「特訓終わって寒い思いしながら外で待ってたのに~」

「無茶苦茶寒かったよォ……これはフリアっちに美味しいご飯作ってもらわなきゃねェ~」

 

 合流してみんなからの思い思いの反応を受け、さっきまで見ていたハイレベルな戦いによって高揚してしまったテンションと、メロンさんを想定してずっと働き続けたことによるほんの少しの知恵熱がさがっていくのを感じる。やっぱりみんなの声を聞いていると落ち着くね。

 

「ごめんごめん。マクワさんの試合が凄くって、ついつい……」

「そんなに凄かったのか……そっちも後で見たいぞ!!」

「メロンさんに挑む前に見るのもよかとね」

「それよりもマリィセンパイ。フリアっちに聞くんじゃないのォ?」

「あ、そうだった」

 

 先ほどボクが見た試合に関しての感想を言っていると、その話を割り込むようなクララさんの声。その声にマリィも反応して、ボクに何かを伝えようと言葉を続ける。

 

「あれから練習したんだけど、それを最後に見て欲しかと」

「もうちょっとで日も暮れるしィ、夜になる前の最終確認ってことで、フリアっち、お願いィ!!」

「結構練習したけん、自信はあるけどね」

「うちとマリィセンパイの出来を見たら、フリアっちびっくりするよォ?」

 

「「ね!」」っと2人で声を重ねながらしめた言葉からわかる通り、いつの間にか仲よくなった2人。そのことが微笑ましくてついつい頬が緩んでしまう。

 

「そんなに自信があるのなら楽しみかも」

「あっと驚く準備しててよね」

「よねェ!!」

 

(……本当に仲良くなっているなぁ)

 

 一体練習中にどんなやり取りがあったのだろうか。とても気になるね。

 

「先に行って準備しておくけん、早く来るとよ!」

「じゃあおっさきィ!」

「俺たちも先に行っておくぞ!」

「マリィたちの方を見たら私たちのことも見てよね!」

 

 そう言葉を残してそれぞれ走り出す4人。今まで外で練習していたことを考えると体は冷え切っているだろうに、そんなことを思わせないような快活な姿は、みているこちらまでもが暖かくなるようだ。本当に一緒にいて賑やかなメンバーである。

 

「さて、じゃあボクも……」

「あ、いました。よかったです。まだここにいて」

「この声は……」

 

 みんなが向かった場所に行こうと思たところで、またもや声をかけられたので振り向くと、そこには先ほどまで激闘を繰り広げていたマクワさんの姿。ほんのりと髪が湿っているあたり、スタジアムのシャワーでも借りたのかもしれないその姿は、ただでさえスタイリッシュな雰囲気を醸し出しているマクワさんのさわやかさがさらにマシマシになったような気がする。こう見るとすごくイケメンだよね。いや、マクワさんはいつもかっこいいけど。

 

「マクワさん。先ほどは勝利おめでとうございます!」

「ありがとうございます。あなたの応援のおかげで勝てましたよ」

「あはは……聞こえてたんですね……」

「ばっちりと」

 

 こうして真正面切って言われると恥ずかしさがこみあげてくる。けど、ボクの言葉が届いて、それが力となってくれたのなら嬉しい限りだ。

 

「お返しは……試合を観戦したことによって得られた、母さんのポケモンの情報提供ということで」

「本当に、貴重な情報ありがとうございます。気を付けないといけないことが沢山わかりました」

「……冗談のつもりだったのですが」

「え?」

 

 あらかじめ準備をして戦うスタイルのボクにとっては、情報というのは何よりも貴重な宝だから、正直これをお返しと言われたら頭が上がらないというか、むしろこんな貴重なもの貰っているのにボクからあげたものが応援だけでいいのかと頭をかしげてしまうレベルだ。

 

「ボクにとっては十分すぎるものなんですけど……」

「なんというか……欲がないですね。あなた」

「?」

「まぁ、いいです」

 

 なぜかマクワさんに呆れられてしまった。何かおかしなことあったかな?

 

「とりあえず。ボクから渡せるものは二つです。一つは情報……というかヒントを。コオリッポとヒヒダルマは両者とも特性に気を付けてください。本来ならヒヒダルマに関してはジムチャレンジャーには使わない固体ですが、他のジムリーダーがあなたに対してのみ難易度を上げているあたり、母さんもその例に漏れないでしょう。コオリッポはともかくとして、ヒヒダルマには特に注意を」

「2匹とも特性が厄介なんですね。わかりました。」

 

 コオリッポの方はともかく、ヒヒダルマに関しては何かが見えてきそうだ。このあたりは後でロトム図鑑とにらめっこして考えるとしよう。

 

「そしてもう一つ……」

「もうお腹いっぱいなんですけど……」

「これに関しては預かっていたものなので、『お礼』というよりかは『お返しします』という言葉が適切なんですけどね……どうぞ」

「これって……」

 

 マクワさんが懐から取り出した二つ目の渡し物。それは水色の装飾品をぶら下げているひとつの輪。要はネックレスと言われるものだ。なぜネックレスなんてものをボクに渡すのか。その答えはわっかの一部にくっついている水色の装飾品にある。まさかと思い、その水色の装飾品を鼻もとに近づけて匂いを嗅ぐと、ほんのりと感じるのは海を連想させるような不思議な香り。

 

「やっぱり!!これってさざなみのおこうを……?」

「はい。僕なりに加工してアクセサリーに。残念ながら破損が激しかったので元の形に戻すことはかないませんでしたが、せめてこういう形でのこせたらとおもいまして……いかかです?」

「とてもうれしいです!!ありがとうございます!!うわぁ~、あとでユウリにも見せよっと!!」

 

 さざなみのおこうが割れたと聞いて、ボクと同じくらいショックを受けていたユウリ。彼女にこのネックレスを見せたら、きっと同じくらいに喜んでくれると思う。

 

「にしてもマクワさん、こんなこともできるんですね」

「化石や鉱石に触れる機会もあるので、その過程で手先が器用になりましてね。これはその延長のようなものです」

 

 なるほどと納得。たしかに、化石の復元とか化石堀りって細かい技術が必要みたいだし、そういったものにいわタイプを知る過程で触れているのなら、この回答も納得だ。

 

「ただ、プロではないので正規品と比べると少し見劣りするかもですがね」

「いえいえ!最高のプレゼントです!!」

 

 こんな素敵なものを貰って文句を言う人なんていないだろう。これはまた大切な宝物ができてしまった。

 

「喜んでもらえてよかったです。これで心置きなく次の街に進めますからね」

「……ということは、マクワさんはもう先に進むんですね」

「ええ。もうこの街に残る理由はありませんし、母さんにあそこまで発破をかけられた手前、むしろこの街に滞在するのはどこか気が引けましてね」

 

 そんな舞い上がっていたボクにかけられた次の言葉は、マクワさんが先に進むという事。まだ先に進む権利を手に入れていないボクたちは、当然マクワさんについて行くことはできない。それはつまり、ここでマクワさんがパーティから離脱するという事を意味する。

 

「ちょっと、寂しいですね」

「僕も同じ気持ちです。が、シュートスタジアムで再会できるのでしょう?」

 

 そう言いながらニヒルな笑みを浮かべるマクワさんからは、挑発的な意思を感じる。

 

 あなたなら当然最後まで来ますよねと。

 

「勿論です!!むしろ、途中で追い抜かれても文句言わないでくださいね?」

 

 その挑発にわざと乗っかり、こちらも挑発し返しておく。この返しがお気に召したのか、さらに笑みを深くしたマクワさんは、そのままくるりと体を反転させ、キルクススタジアムの外へ。手を上げながら小さくなっていくその姿を見ながら、ボクは胸拳を当てて握りこみ、マクワさんに対して心の中で誓う。

 

 次に会う時は、ライバルとして、スタジアムで。

 

 マクワさんの姿が完全に見えなくなったのを確認したボクは、ほんの数秒程マクワさんが消えた先を見つめ、改めてユウリ達が待つ方向へと足を運ぶ。

 

 一時的に離れる道。だけど、マクワさんの道とボクたちの道が再び交わる時は、そう遠くないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウリ、ホップ、マリィとみんな順調にクリアしてるし、最後のクララさんも無事クリアできそうで安心安心。特訓の成果がでたね」

 

 マクワさんと別れてからユウリたちの練習の成果を確認させてもらい、全員問題ないことを確認して、外での練習によって冷えたからだを温めるために温泉へ直行し、夜ご飯を一緒に食べた昨夜。マクワさんのことはその時に伝えて、ユウリにも例のネックレスを見せてあげたのだけど、やっぱりみんなマクワさんが離脱することに関しては大なり小なり寂しいという感情を抱いていた。けど、ジムチャレンジを続けていけば、再会することは確定なので、言う程気落ちはしておらず、むしろボクと同じく早く追いついてやるという対抗心を燃え上がらせていた。

 

 ネックレスに関してはユウリもものすごく喜んでおり、こんなに喜んでいるのなら渡そうかとも考えたけど、ボクにつけておいて欲しいと言われたので未だに僕の首元にぶらさがっている。

 

 そんな昨夜を超えて今。みんなのジムミッションを観戦しているボクは、昨日の練習通りの動きができているみんなにほっとしていた。既にクララさん以外の3人はクリアをしており、そのクララさんも制限時間に余裕がある中、吹雪地帯を今突破したのでクリアも時間の問題だろう。

 

「みんな揃ってメロンさんに挑めそうでよかった〜」

「ほんと、よかったわね。ユウリたちがジムミッション失敗したって聞いた時はちょっとびっくりしちゃったけど」

 

 ホッと一安心しているボクの横で、同じく安心したような笑みを浮かべているのはソニアさん。色々な街で英雄伝説について研究をしていく中、ボクが予想してた通り、この街の英雄の湯について調べるためについ昨日キルクスタウンに到着したらしい。早速英雄の湯について調べようと街を歩いていた時にたまたまジムミッションを受けに行くボクたちと出会い、どうせならということでボクと観戦席に行くということになり今の状況だ。

 

 どうも研究が行き詰っていたらしく、そんな時にボクたちと出会ったので、気分転換のために観戦するみたい。あとは、ボクからの意見も聞きたいのだとか。ボク、専門家でも考古学者でもないからあんまりあてにされても恐れ多い気持ちが勝っちゃうんだけどね。役に立つのなら協力は惜しまないけど。

 

「しっかし、あんた達みんな順調ね。わたしとは大違い」

「そういえばソニアさんもジムチャレンジ経験者でしたっけ……?」

「ええ。と言っても、わたしはここまでたどり着くことすらなかったけどね」

 

 そう言いながらジムミッションの会場を見つめる目は、会場を見ているようで見ていなくて……。今も無事にミッションをクリアしたことに喜んで、変な歌を熱唱するクララさんと、その姿に困惑するアナウンサーが面白くて笑う観客という意味のわからない状態になっているものの、ソニアさんの表情はそんなに動かない。

 

「え、えっと……」

 

 そんなソニアさんの姿になんて声をかけたらいいのか分からず、ついついどもってしまう。

 

「ああ、ごめんごめん。確かにジムチャレンジの結果は良くなかったけど、今はもう区切りはついているから大丈夫よ」

 

 困っているボクの顔に気づいたソニアさんが、いつもの明るい表情に変えながら、気にするなと声をかけてくれる。その言葉に強がりの意思は感じなくて、本当に区切りがついているんだなと一安心。

 

「それにね?」

 

 と言葉を続けたソニアさんの視線は、会場の天井へと向けられた。

 

「あんたたちのジムチャレンジを見守りながら一緒に旅をして、研究をして、過去に触れて……おばあさまに言われて始めたこの旅だけど、楽しくて楽しくて仕方がないの。今、わたしは自分の歩きたい道を歩けている。それで十分なの。だから安心しなさいな」

 

 ボクの頭をポンポンと撫でながらそういうソニアさんは本当に楽しそうで。

 

「あんたたちはわたしがずっと応援してあげるんだから、この調子でメロンさんもやっつけなさいよ?」

「……はい!」

 

 微笑みながら激励してくれるソニアさんに元気が湧いてくる。

 

「うん。よろしい。さて、みんな突破したってことは、明日にでもメロンさんに挑むの?」

「そうですね。足並みを揃えたくて待ってただけなので、みんな突破した今となっては留まる理由もないので早速挑戦しようかと」

「なら早めに予約しておきなさい。ここまで残っている挑戦者は少ないから予約取れないなんてことは無いでしょうけど、ゼロではないからそういうことはちゃちゃっとね」

「ですね。じゃあボクは一足先に……」

「ハミュ!!」

「ユキハミ……?」

 

 ソニアさんに言われ、明日のための予約を取るために席を立とうとして、突如右腕にくっつくように現れたユキハミに行動を止められる。

 

「どうしたのユキハミ?」

「……」

 

 ボクの質問に返答せず、じっと見つめてくるユキハミ。その視線が、何を言っているのかわからないけどとりあえず待って欲しそうな顔をしていて……

 

「うん。わかったよ」

 

 ユキハミの意思を尊重して席にとどまる。正直意味がわからないけど、ユキハミがこう言うには何かあるのだろう。

 

「変わった子ね?」

「ですね」

「やっぱりトレーナーに似るのかしら?」

「どういう意味ですか!?」

 

 ソニアさんの心外な言葉に思わず反対してしまう。そのまま賑やかになるボクたちの会話は、程なくしてユウリたちが合流することによりさらにやかましくなる。

 

 全員無事突破したので当然話題はジム戦の予約の話に移っていくけど、その時にはユキハミは特に反応を示さなかった。ますます分からないユキハミの行動に首を傾げながら、今度こそボクたちはジム戦の予約へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ネックレス

マクワさん、こういう手芸が意外と得意そうだなぁという独断と偏見です。
どうでもいいですおけ度、どんどんフリアさんがヒロイン化してますね。どうして……

ソニア

実際にはどこまで行ったんですかね?

ユキハミ

時間にしてみれば一時間ほど予約が遅れただけですね。
はてさて、その意味とは……?




地震凄かったですね。
私は特に被害は受けていませんのでご安心を。
ただ、余震等心配事はたくさんありますので、皆様お気を付けを。









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