【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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92話

「……」

 

 マクワさんからもらったネックレスを眺めながら、控室の真ん中で座って自分の番を待つ。ユキハミからのお願いのせいで少しだけ予約の時間が遅れたボク。その影響は、メロンさんへの挑戦の順番という形で現れることとなった。これまでのジム戦、およびジムチャレンジに関しては、特に意識していたわけではないんだけど、毎回ボクが一番最初に挑戦して、そのあとにみんなが挑戦するという並びだった。そのため、ボクがクリアしたら観客席に回って、みんなの挑戦を応援するという場面が多かったと思うんだけど……

 

「なんか……こうして一番最後に回されると変なプレッシャーがかかるね」

 

 いつもよりもほんの少し早く打つ胸の鼓動に少しだけ笑ってしまう。もしかしたらユウリたちもこんな気分で自分の順番を待っていたのかもしれない。

 

 いつもよりも少しだけ緊張する理由は、単純にユウリたちに初めてリアルタイムのジム戦を見せるから。

 

 今まではボクが挑んでいるときは控室にいたせいでスタジアムのことはわからなかったから、観客の声から試合を想像することしかできなかっため、確認するためにはアーカイブを待つしかなかった。リアルタイムで見れないことに関してユウリたちがあまり不満を言う事もなかったから、今まで順番を変更しようという話はあがらなかったので、この先もずっとボクが初手で戦うんだなぁとなんとなく思っていたけど、ユキハミがきっかけで起きたこの順番の変更。メロンさんに勝っているにしろ、負けているにしろ、恐らくもう観客席にユウリたちは到着しているだろう。そのことを想像すると、また少し緊張する。はたから見たら影響なんてないかもだけど、いつもと違うというのはちょっとの差異でも大きく感じてしまう。

 

 こんなことを意識してしまうあたり、予想以上に緊張しているっぽい。改めてさざなみのおこうのネックレスから漂う香りで心を落ち着ける。

 

(大丈夫。いつも通り戦うだけだし、今回に関してはマクワさんのおかげで情報はたくさんあるから戦えるよ)

 

 自分に言い聞かせるようにして心を落ち着ける。そんなことをしている間に聞こえてくる一際大きな歓声。

 

 恐らくボクの一つ前に戦っているクララさんの戦いが終わったのだろう。ほどなくしてボクの番が回ってくる。その予感を裏切らないようにジムトレーナーからの声がかかる。

 

「フリア選手。準備をお願いします」

「ふぅ~……はい!」

 

 深呼吸を一つおき、ネックレスを服の中に入れ、マフラーをたなびかせながらバトルコートへ足を進める。暗い通路を抜けて、光あふれるコートに足を踏み入れた瞬間響く歓声。

 

 いつもよりも大きいせいか、三割くらい増して耳が痛くなりそうな声量に耐えながらふと視線を感じる方を向けば、ユウリ、ホップ、マリィがこちらに向けて手を振っていたので振り返しておく。クララさんは先ほど戦いを終えたばかりだから、おそらくバトルの途中に観客席につくだろう。もっとも、そのころにはバトルに集中しているため、クララさんの到着に気づくことはないだろうけどね。

 

 そのままバトルコートの真ん中へと足を進めていくと、いつもよりもバトルコートがまぶしく感じたため、視線を上げてみるとそこには星空が輝いていた。ガラル地方のスタジアムのバトルコートは、閉めることもできるとはいえ基本的に天井を開けているため空の様子が見えるんだけど、どうやら今は夜になりたての時間らしい。ナイター仕様となったスタジアムのライトがボクを照らし、いつも以上に注目度を上げてくる。どうやら今日の挑戦者は昨日に比べて多かったみたいで、クララさんの挑戦中にナイター仕様へと変わったみたいだ。

 

 ちなみに、メロンさんに挑んだ順番は、ユウリ、ホップ、マリィ、クララさん、ボクの順番だ。さらに追加で言うなら、ユウリの前には何人か挑戦者がいたけど、ボクの後ろには誰もいない。つまり、今日一日という単位で見てもボクがトリを飾ることとなっている。そりゃ観客もいつもより多いわけだ。

 

(夜のスタジアムってだけで雰囲気違うのに、賑やかさも凄いなぁ……)

 

 所謂ゴールデンタイム。テレビで見ている人もきっと多い事だろう。

 

 ボクが入ってきた入り口と反対側に視線を向ければ、そちらから現れる白い服に身を包んだ女性。あの夜、『英雄の湯』で会った時と変わらないその姿だけど、纏う雰囲気がまるで違う。

 

「やっと来てくれたねぇ、てっきり昨日挑んでくるとばかり思っていたのにさ」

「みんなと足並みそろえたかったので……お待たせして申し訳ありません」

「本当だよ。あたしも観客も、昨日を楽しみにしていたのに来ないもんだからちょっとテンション下がったんだよ?まぁ、挑むタイミングはチャレンジャーが選ぶもんだし、昨日は昨日でなかなか刺激的な試合ができたから満足はしているんだけどね」

「昨日の試合はボクも観戦してました。とても熱い試合をありがとうございます!」

「そういえば、あとから聞いた話だと最近マクワと一緒にいることが多かったそうじゃないか。じゃああのステルスロックの戦法とかはあんたが教えたのかい?」

「いえ、あれはマクワさんのオリジナルですね。ボクもびっくりですよ」

「そうだったのかい?……なるほどねぇ、少なくとも、誰かさんに影響はされているみたいだねぇ」

 

 纏う雰囲気はまるで違うとは言っても、顔を合わせれば話す内容は案外穏やかなもので、とてもこれからジム戦をするとは思えないようなまったりとした時間だった。ちょっと雑談しすぎな気もするけど、この間に実況解説の人が、自己紹介や今回のバトルのレギュレーションの説明を行っているので、少々の長話なら許されるだろう。

 

 そこからメロンさんと交わしたのは、ボクとマクワさんの出会いからキルクスタウンに来るまでのお話。決して長いとは言えないものの、それでもメロンさんにとっては久しぶりに聞く息子のお話ということで、とても満足そうに頷いていた。

 

 こうして笑いながら頷いているところを見ると、やっぱり家族のことが大好きなんだなぁというのが伝わってくる。家族の仲が良いのはいいことだよね。いや、マクワさん自体は出禁されてるみたいだけどさ?

 

 和やかな空気の中流れる会話だったけど、そんな時間も程なくして終わりを迎える。どうやら実況解説の方の説明が終わったみたいだ。周りを確認すれば、さっきよりも会場のボルテージと、ボクたちへの注目度が上がった気がする。

 

「さて、アイスブレイクはこんなものでいいかい?」

「え……?」

 

 メロンさんに言われて、緊張のし過ぎによって起きていたらしい自分の体の固まりがいつの間にか解れていることを感じる。別に戦闘モードが切れているわけではないけど、無駄な力は抜けているおかげで、いつもと違う環境、時間帯でも、いつもと同じパフォーマンスが出来そうだ。

 

「ありがとうございます」

「いいんだよ。あたしも、あんたには本気で来てもらわないと……困るからね!!」

「っ!!」

 

 言葉と同時に膨らむ重圧。ジムリーダー特有と言っても過言ではない強敵のオーラ。先ほどまでの和やかな空気は消え、張りつめた空気にあふれていく。けど、アイスブレイクのおかげで程よく解れたこの体は、むしろ今のこの状況を楽しんでいるかのように高揚していく。

 

 キルクスタウンのジム戦が始まる。

 

 ぐっと拳を握り締め、前を向き、いざ勝負へ!

 

 

「さあ、あたしのこおりを砕いてみな!!シンオウの挑戦者!!」

 

 

ジムリーダーの メロンが

勝負を しかけてきた!

 

 

「さあ行きな!モスノウ!!」

 

 メロンさんの初手は昨日観戦した時と同じでモスノウ。こおりのりんぷんをまき散らしながら空中を漂う姿は、あの夜見た時と同じでとても美しく、思わず見とれてしまいそうになる。

 

(さて、こちらの初手は……ん?)

 

 あらかじめモスノウにあてようと思っていたポケモンに手をかけようとしたところで震えだす一つのモンスターボール。そちらに目を向けると、さらに振動を強くして自分を主張してくる。

 

(今ここで主張するって……いや、もしかして最初からこのために……?)

 

 その振動を見てふと上を向けば、さっきも見た星空の景色。そして思い浮かぶは夜に関係するボクの手持ちのあの子。

 

(……そこまでして合わせてきたってことは、そういう事って期待していいんだよね?)

 

 その子を手に握り、モンスターボールのスイッチを押してボールを大きくする。選ばれたことが嬉しかったのか、更に震えだす。

 

 ここまでやる気を前面に押し出すこの子も珍しい。存分に期待させてもらうとしよう。

 

「じゃあ行くよ!!ユキハミ!!」

「ハミュ!!」

「……ほう」

 

 メロンさんのモスノウに対して繰り出すのは進化前のユキハミ。進化後と進化前の対面と言うこともあって、観客から聞こえる声は驚きと困惑。それも当然で、進化前と進化後どちらが強いかと聞かれれば、誰だって進化後の方が強いって答えるし、実際にそうだから進化って言われている。子供でも分かる簡単なことだ。だからこそ、観客から困惑の声が聞こえるわけだし、既に期待外れの声を出している人も少なくない。

 

 けど、メロンさんだけはむしろ嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

 恐らく観客からしたら楽に勝てそうだから浮かべていると思われそうなそれだけど、対面しているからこそわかる。

 

 この笑みは、メロンさんも気づいている。

 

「いいねぇ。いきなりその子で来るかい。粋じゃないか!さあ、見せてみな!!」

「はい!!」

「モスノウ。『ふぶき』!!」

 

 ボクの返事を聞いてすぐさ攻撃へと転じてくるメロンさんとモスノウ。モスノウの翅から繰り出される氷の風。全てを凍らせるこおりタイプ随一の威力を誇るその技に対して、しかしユキハミは全く恐れを見せない。

 

「ユキハミ!糸!!」

「ハミュ!!」

 

 自身の周りに糸を伸ばし、その糸で自身を包んで繭のような姿になる。氷の結晶によって補強されたその糸は、ふぶきの中にさらされているというのにびくともしない。

 

「『むしのさざめき』!!」

 

 続いて飛んでくるのは緑色の波動。むしの力を内包したその攻撃は、再びユキハミを襲うものの、それすらをも防ぎきる。

 

 メロンさんのモスノウから降りそそぐ苛烈な攻め。そのすべてを守り切っていくユキハミの繭は、ダメージこそ防いでいるものの、相手の攻撃が強烈すぎて徐々に地面からはがされそうになっていく。

 

「このまま繭を地面から引きはがして、ユキハミを遠くまで吹き飛ばすわよ!モスノウ!!」

「ユキハミ!!がんばって!!」

 

 メロンさんの指示によりさらに攻撃を激しくするモスノウに対して、一向に動くことなく、ひたすらモスノウの攻撃に対して耐えることのみを続けるユキハミ。

 

 まさかの防戦一方から始まったこの試合。

 

 あまりにその一方的な展開に、観客のテンションが少し下がったのを感じるが、そのテンションと逆比例するかのようにメロンさんとボクの思いは加速的に熱くなっていく。

 

 ユキハミのこの現象を止められるか否か。それでこのバトルの開幕の流れをどちらが握ることになるのかを理解しているからこその攻防。

 

 精神的にきついのはボクの方だけど、プレッシャーが大きいのはメロンさんの方だ。

 

 こちらは耐えることしかできないうえ、糸の中に隠れているため出来ることもないので本当に耐えることを祈ることしかできない。一方で、メロンさんはこの守りを何としてでも突き破らないといけないため、その方法を素早く見つけて正確に攻撃を打ち込まないといけない。

 

 耐えきるのが先か、はたまた攻め切るのが先か。

 

 観客からでは感じることが出来ない、本人たちしか知ることの無いこのやり取り。

 

 場面が変わらないまま数分経ったとき、ついに場が動き出す。

 

 

 

 

 ドクン。

 

 

 

 

「「ッ!?」」

 

 激しい攻撃の嵐の中、確かに聞こえた、まるで心臓が脈を打つような音。その音の発生源である、ユキハミが包まれている繭にボクとメロンさんの視線が突き刺さる。

 

 

 

 

 ドクン。

 

 

 

 

「来た!!」

「モスノウ!!全力で『ふぶき』よ!!」

「フオオオォォォッ!!」

 

 メロンさんの指示でさらに強く翅を羽ばたかせるモスノウ。それにより、さらに強くなったふぶきがユキハミの周りを包み込み、無理やりにでも地面から引きはがそうとしてくる。

 

 ドクン……ドクン……ドクン……

 

 どんどん激しくなっていく吹雪の中で、同じく緩やかに、しかし確実に激しく鼓動を打ち始めていくユキハミの繭。この場が動くのももう時間の問題となる。

 

 祈るボクと、攻めるメロンさんの焦りがさらに募っていく。そのあまりにも異様な空気感に流石の観客たちも違和感を感じ始めたのか、下がっていたテンションが徐々に引き締まっていくのを感じる。最初の方からわずかに聞こえてきていたヤジも徐々に収まっていき、会場はとうとうボクの祈る声とメロンさんの指示、そして荒れ狂うふぶきの音のみが響き渡る。

 

 実況解説の人までもが口を閉ざして見守るその状況。ここにいるみんなが、意味が分からないなりにもこのバトルの開幕の主導権を握る重要な場面だと気づいたその時。

 

「……」

「ユキハミ!?」

「ようやく動いたかい!!」

 

 ついにユキハミの入っていた繭が地面から引きはがされて空中に打ち上げられる。

 

 ふぶきに巻き上げられてきりもみ回転しながら宙を舞うその姿は、誰がどう見ても格好の的。

 

「モスノウ、ここで決めなさい!!『ぼうふう』!!」

 

 メロンさんがこの隙を逃すはずもなく、ユキハミにこれ以上変な動きをされる前にぼうふうで仕留め切る構えに移る。

 

 ただでさえ、ユキハミの弱点を突く技であるぼうふうが、元々荒れ狂っていたふぶきを巻き込みながら襲い掛かってきているため、とんでもない威力となってユキハミを襲い始めていく。その姿はまるでミキサーにかけられたかのように見え、繭の表面が徐々に削られていくのが目に入る。ドクンドクンと脈を打っていた繭がどんどん小さくなっていくその姿は、みているだけで心が締め付けられるような気がし、早くこの攻撃が終わってくれと願う事しかできない自分が物凄くもどかしい。

 

 心なしか、削られていく繭の大きさに比例するかのように徐々に鼓動が小さくなってきており、繭そのものの、そして中にいるユキハミの限界が近づいているのを感じる。

 

 そしてついに。

 

 ピキリ。

 

「ユキハミ!!」

 

 繭から何かが割れるような音が聞こえ、繭が徐々に開いて行いき、その中から何かの影が頭をのぞかせているのが確認できた。

 

「モスノウ!!よくやったよ!!とどめの『ぼうふう』さ!!」

 

 ユキハミの限界が来た。そう読み取ったメロンさんがとどめの技を指示する。全身全霊を込めたその技は、空中で繭を切り刻んで弾けさせ、まわりににきらきらと氷の結晶をまき散らせる。

 

 ボクが、観客が、実況が、観客が、ここにいる全員が上空に視線を向けた。そして誰もその状況に声を出すことが出来ずにいた。

 

 それは、メロンさんのモスノウが圧勝したことに驚いたからではない。

 

 それは、繭が壊されたことによって起きると予想された惨劇が起きたからでもない。

 

 ではなぜか。理由は……

 

 

 

 

「フィイイイイイィィィ!!」

 

 

 

 

 壊された氷の繭と一緒に、あたりにこおりのりんぷんをまき散らしながら、つきのひかりを美しく反射する、2()()()()()()()()()見とれてしまっていたから。

 

 突如現れた二匹目のモスノウ。これが表す意味。それは……

 

「間に合ったね……ユキハミ……ううん、()()()()!!」

「フィイイッ!」

 

 モスノウへの進化。

 

「モスノウ!!今までのお返しだよ!!『ぼうふう』!!」

「フィィイイイイッ!!」

 

 モスノウへの進化を確認してすぐに攻撃の指示を出すボク。その指示に対して、文字通り、ようやく翅を伸ばせると高らかに鳴いたモスノウが激しく翅を羽ばたかせてお返しとばかりにぼうふうを叩きつける。

 

「ッ!?モスノウ!!下がりな!!」

「フォォッ!?」

 

 ボクのモスノウに見とれてしまったため、わずかに反応が遅れてしまったメロンさんのモスノウが、何とか下がることに成功するものの、攻撃の余波にあおられてダメージを受けてしまう。空中で何とか態勢を立て直して、不時着を拒否したメロンさんのモスノウが翅を広げてボクのモスノウへと視線を向ける。

 

「フォォォ!!」

「フィィィ!!」

 

 繭から孵化するかのように生まれた新しいモスノウは、その視線を受けて高らかに声を上げる。夜になつきによって進化をするユキハミが、自身の進化をするべきタイミングと、進化して最初に戦う相手を選んだことによって起きたこの対面。やる気を全身で表現するその姿に、観客たちはさらに魅了され、先ほどまでの一方的な展開からようやく本格的なバトルが始まると感じ取り、一気にボルテージが上がっていく。

 

「やられたよ。このタイミングで進化をさせるとはね……おかげで空気は完全にあんたのものだね」

「ユキハミ……いいえ、モスノウがここまで自分を押し通してきたんです。それに応えてあげるのがトレーナーってものです!」

「ちがいない!」

 

 お互いのモスノウが、翅を羽ばたかせてにらみ合う。

 

「「モスノウ!『ふぶき』!!」」

 

 会場の応援に背中を押される形で両者同時にふぶきを放つ。ぶつかり合う雪風はお互いの真ん中で激しい音を奏でながらあたりにその威力をまき散らしていく。冷たい風が勢いよく顔にかかってくるのを、マフラーを少し持ち上げることで防ぎながら前を見据える。

 

 開幕のふぶきのぶつけ合いは、進化したばかりで力があふれているとはいえ、流石に年季の入っている重い一撃には勝つことは難しかったみたいで徐々に押されているのがわかる。例え空気を支配してこちらの流れになっているとはいえ、厳しいものは厳しいと思うのでここは少し工夫が必要だ。

 

「モスノウ!右下!!」

 

 ボクの指示を聞いて右下に向きを逸らせるように調整されたふぶきは、相手のふぶきを左上に逸らしていき、そのまま自分が放った右下へのふぶきを追いかけて相手のモスノウの下側を陣取る。

 

「『ぼうふう』!!」

「『ふぶき』に乗って飛びな!!」

 

 そこから巻き起こす風の暴力を、相手も自分のふぶきに乗って空を駆けて避けていく。

 

「追いかけて!!」

「『こごえるかぜ』で妨害しながら突き放しな!!」

 

 そこから始まる空中戦。縦横無尽に駆け回る2匹のモスノウが、ふぶきとぼうふうをまき散らしながら暴れまわるその姿は、自然災害が起きているかのような激しさを醸し出す。積み重ねて打ち出されたふぶきのせいで地面がうっすらと雪化粧に覆われており、現在進行形で積雪量が増えている。その雪たちがぼうふうによって巻き上げられることで、技の中に雪玉が混じってより複雑化された戦場がこのバトルの激しさをさらに物語っていた。

 

 観客席は不思議なバリアによって守られているためなんともないはずだけど、当事者であるボクとメロンさんは、吹雪の打ち合いによる気温の低下も受けてしまうため、持ち込んでいたカイロを使って体を温めながら場を見つめる。

 

(火力もスピードもほんの少しだけど負けている。レベルが違うからそこは仕方がないけど……ポプラさんのところでも感じたけど専門家相手だとどうしても練度で勝てないね……)

 

 さっき説明した、地面から巻き上げられた雪によって出来上がる雪玉の攻撃も、メロンさんの方がうまく使えているように見える。その証拠に、ぼうふうの向きを調節して雪玉の弾丸がこちらに多く飛ぶようにしており、そのせいでこちらがよけるのに使う時間が増えてしまい、どうしても攻撃の速度が一手足りない。流れを取られたからと言って、焦らずに自分の得意分野を生かして戦うその姿は、ジムリーダーとしての実力を見せつけられているようだ。このまま真正面から戦っていたら間違いなく負けるだろう。なら……

 

「モスノウ!!糸の防壁!!」

「フィィィッ!!」

「……来たね」

 

 ユキハミの時のように自分の周りに糸を張り巡らせて、自分を守る簡易的な防壁を作る。その様子を見て警戒心を上げ、少し様子見をしてきた相手のモスノウ。その様子見こそがチャンス。

 

 ボクのモスノウは知っている。こういった自分が劣勢の時に覆すことが出来るその技を。自分の能力を一気に上げることのできる、むしタイプの強力なその技を。今回、相手のモスノウが覚えていない積み技を。

 

「モスノウ!!『ちょうのまい』!!」

「っ!?」

 

 ウルガモスとの激闘を見てきたこの子ならこの技を再現できる。それほどまでにボクのモスノウにとって強烈な出来事だったから。

 

 糸の防壁の中で舞うモスノウ。自身の特攻、特防、素早さに磨きがかかっていくその姿は、みる人には感動を、対戦相手には焦りを与えていく。

 

「『ぼうふう』でとめな!!」

「舞いながら自分に『ぼうふう』!!」

 

 その舞を止めるべくぼうふうを放ってくるメロンさん。それに対してボクはぼうふうの鎧をまとう指示を出す。お互いのぼうふうがぶつかり合い、あたりに風が吹き荒れ、そしてその風が止み……

 

「モスノウ!!もう一度『ぼうふう』!!」

 

 ちょうのまいを終えたモスノウによる、強化されたぼうふうが、メロンさんのモスノウを襲う。これで力関係は逆転した。

 

「フィィィッ!!」

「うん、行くよモスノウ!!ここからが本当の反撃だ!!」

 

 ジム戦最初の山場を迎えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ユキハミ

彼がフリアさんを引きとめた理由ですね。
夜にしか進化できないのでちょっと悩みましたが……やはり進化タイミングはここかなと。
これでフリアさんのポケモン全員最終進化になりましたね。
繭による防御はカービィのコピー能力、スパイダーの防御を想像すればわかりやすいかと思います。

ちょうのまい

進化したてですけどウルガモス戦の経験から。
いつ見てもこの積み技は強いですよね。

ぼうふう

自分にぼうふうを打って鎧にするのは、新無印にてサトシのカイリューが行っていましたね。
アニポケはやっぱりいい教材です。




少し関係ない話をするんですけど、実は私カービィも狂おしいほど好きな作品なんですよね。そしてそんなカービィ、今週の金曜日新作発売です。もしかしたらのめりこんでしまって更新が……(小声)
勿論できる限りいつも通りに行きたいなぁと思ってはいますげ、もし更新ちょっと遅れたりしたら、カービィにのめりこんでいると思ってください。
ディスカバリーに埋もれてきます。()









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