Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第15話 なにそれダブルパンチ

 

 虎杖悠仁は以前、人を殺した。

 3人、殺した。

 特級呪霊真人によって、その魂を歪められ、肉を作り替えられた改造人間を。元に戻す方法は無い。「ころして」とお願いされた。

 

 そして、今、幼女が遺した血だまりの中で俯く藤丸とマシュを見つめて思った。

 ――自分はまた引き金を引いたのだと。

 

「……いってぇ」

 

 殺人鬼を貫いた自身の拳を見下ろしながら、虎杖は独り呟いた。

 すると、その呟きをかき消すかのように、背後の茂みがガサガサと揺れた。

 

「なにこれ? どういう状況?」

「っ! 釘崎!」

 

 茂みから現れた釘崎に虎杖はすぐさま駆け寄った。釘崎の前で立ち止まって、傷が無いことを確かめると、虎杖は安堵の息を漏らした。

 

「よかった……無事で。ほんとによかっ」

「はいはい分かった分かった」

 

 安心する虎杖の反応を、釘崎はうっとおしそうにあしらった。

 虎杖は眦に少し滲んだ涙を拭いてから、釘崎への礼を口にした。

 

「ありがとな釘崎。おかげで助かった」

「あ? あー……あれね」

 

 あの幼女に打ち込んだ共鳴りのことを言っているのだと気づく釘崎。

遠慮なく虎杖からの感謝を受け取る。

 

「ん、苦しゅうない」

「ははっ、なんだそれ」

 

 喉の奥からこぼれた笑い声は、思っていたよりも乾いていた。そんな虎杖の様子を怪訝に思って、釘崎はズバッと口を開く。

 

「なにウジウジしてんのよ? キモいわよ」

 

 直球な釘崎の言葉に俯いてから、虎杖はポツポツと紡いでいく。

 

「――大丈夫かなって、思ったんだ。あの子を……呪ってさ。殺したのは、俺だけど」

「明らかあんたの方が大丈夫じゃないでしょ。んー……ぶっちゃけ私はなんともない」

 

 釘崎は虎杖の視線を追って、そして見つめる。

 

「あのガキ自体、よく分かんない存在だけど……そもそも相手が何なのかなんて気にしてる余裕なかったじゃない。あの子達が来てなかったら、危なかったのは私達の方だったし」

「……それは、そうだ。俺は、釘崎が助かって嬉しい。ホッとした。あんな姿見た後だから余計に。でもさ」

 

 幼女に切り裂かれた釘崎の姿が脳裏に浮かぶ虎杖。

 あの時、確かに虎杖は、はっきりと幼女を呪おうとした。

 けれど、虎杖が目にした彼女の最期は――――――――――

 

「あの子、泣いてたんだよ。最後、自分のやったことに謝ってた」

「……そっか」

「俺はただ……自分が呪おうとした相手にも涙はあって、それを看取る人がいるんだって……そう思っただけ」

「……そっか」

 

 釘崎と虎杖。

 二人の呪術師はただ真っ直ぐに、マスターの藤丸とそのサーヴァントであるマシュを見据える。

 

「じゃあ――加害者ね、私達」

 

 虎杖は目蓋を閉じて、釘崎の一言を噛み締める。

 そして目蓋を開くと……涙を拭って顔を上げる彼女達が映った。

 

「――おう」

 

 釘崎の言葉に応じてから、虎杖と釘崎は宿儺の指を手にする藤丸の下へ駆け寄った。

 

           ************

 

「あの、これってなんでしょう? 人の指? ですか?」

「あーあーもう黙んなさい、素人は。さっさと私達に渡して。でないと呪霊寄ってくるわよ」

 

 首を傾げるマシュに釘崎は「よこせ」と手を差し出す。

 すると釘崎の言葉に、藤丸はギョッと反応する。

 

「え⁉ そんな代物がなんでわたしの胸から⁉」

「さっきあの子が呑み込んでた分だろうなぁ」

 

 怒りに支配されて気にならなかったが、虎杖はジャックが指を呑み込んだことを思い出した。

 

「それ特級呪物。応急で封印の手当てしないと。だから私達に渡せ。オーケー?」

「せ、先輩。ここは渡した方がよろしいかと……」

「それか俺が食べようか?」

「食べるの⁉ これを⁉ 喉詰まらない⁉」

「何の心配してんのよ、あんたは! つーか残飯じゃねぇんだぞ虎杖!」

 

 虎杖の喉を心配する藤丸と、軽い口調で提案する虎杖にキレる釘崎。しかし現状、善人だが何者か分からない藤丸とマシュや、まだ傷が響く自分よりは……と釘崎は判断した。

 

「おいバカ。念押すが食うなよ絶対。あんたの指の許容量は分かんないんだから。食うなよ絶対!」

「そんな言わなくても良くない⁉」

 

 何度も言い含める釘崎を横目に、藤丸はおそるおそると虎杖に指を渡した。

 虎杖も何の気なく指を受け取り

 

             グパ パク ゴクリ

 

 受け取ったその手で、指を食してしまった。

 

「食うなっつっただろーがぁ!」

「え、俺ぇ⁉ へぶっ!」

 

 釘崎の鉄拳を喰らう虎杖。その相貌にズズッと黒い線が浮かぶ。

 

「せ、せせ先輩⁉ いま、手の平に口が……っ⁉」

「お、落ち着こうマシュ。とりあえず落ち着こう」

 

 口をパクパクさせるマシュの肩を優しく叩く藤丸。その口元は理解不能と言わんばかりに引き攣っている。

 

 動揺する二人を置いて、虎杖は苦い顔で手のひらを見つめる。

 

「こいつほんっと……っ! 全然働きやがらな」

【 なんだこれは 】

 

 傲岸不遜な声音が、手のひらから発せられる。

 それは虎杖の内に宿るもう一つの魂。

 呪いの王、【両面宿儺】の声だった。

 

【紛い物をよこすな、小僧】

 

 宿儺の口はそう言うと、もごもごと唇を歪め――――ブッと虎杖の額目掛けて何かを吐き出した。

 

「あだっ⁉」とのけ反る虎杖。

 

 額に跳ね返った何かは放物線を描いて……呆気に取られた釘崎、藤丸、マシュの間に落ちる。

 

 キン、と甲高い金属音が鳴る。

 吐き出された何かが放つ黄金の輝きが、少女達の瞳を照り返す。

 

【――不愉快だ】

 

 そう言い残して、呪いの王は虎杖の奥底へと退去した。

 マシュは震える指先で、呪いの王が吐き出した黄金色の金属片を拾い上げた。

 

「先輩……これって」

「――聖杯の、欠片」

 

 藤丸とマシュが驚愕に打ち震える中、今度は釘崎達が首を傾げる番だった。

 

「「 なにそれ? 」」

 

 






 オリジナル八十八橋編、これにて完結!

 次回からはカルデアと呪術高専の他キャラが関わっていく、かも!

 というか昨日はほんとすみません。おかげさまで続き書けました。
 がんばった!

 また来週ー! ただそろそろ3話更新キツイかも! プロットが無い。
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