Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第17話 特異点

「――――三十分前だ。カルデア内のサーヴァントの反応が消失した。その数は二十」

 

 カルデアの技術顧問にして天才幼女ダヴィンチちゃんは、藤丸とマシュの到着を確認すると、そう口火を切った。

 

「そしてほぼ同時刻に、新たな特異点の発生も観測された。微小特異点じゃない、正真正銘【人理崩壊の予兆】とされる規模のものだ」

 

 トリストメギスⅡが算出した【黒い淀み】を指さしながら、ダヴィンチちゃんは肩をすくめて、ある人物を見やる。

 

「さて、これで白紙化地球における特異点の発生は2度目になるわけだけど……何か弁明はあるかな?」

「ごめんごめーん×2! まぁ、平安京の時にも言ったけど、特異点ってマップ上に突然できる虫食い穴みたいなものだしぃ~。その起点になる本人にしか未来予測できないから……あとは任せたプロフェッショナル!」

 

「よーし、頑張っちゃうぞーってなるかコラ! ちょっとしっかりしてよアトラスの才女!」

 

 白アリ出たから駆除しといて、とでも言わんばかりの軽さで人理救済を依頼する映像の少女に藤丸はノリでキレる。

 

 立体映像に映る少女は、黒縁眼鏡を掛け、紫色の髪をツインテールにまとめたザ☆委員長という出で立ちだが、言動の軽さと明るさがとても親しみやすい印象だった。

 

 陽キャ委員長とでも言うべき彼女の名はシオン・エルトナム・ソカリス。白紙化地球を放浪していたカルデア一行に、彷徨海ベースの拠点を提供してくれたアトラス院の才女だ。

 

「だからごめんってばー。確かに破滅の予兆は無いって言ったけどー、平安京の時に撤回したじゃーん」と手を合わせるシオン。

 

「ぐぬぬぬ」と唸る藤丸。

 

「先輩、今はそれより事態の把握を……」となだめるマシュ。

 

「まっ、そういうことさ。起こったからにはやるしかない。いつものことでしょ?」とダヴィンチちゃんがウインクした。

 

 藤丸は苦笑交じりに「それもそっか」と納得のため息をついた。

 いつもいつも先手は取られてばかり。けれどそこからいつだって巻き返してきた。色んな人の力を借りて、色んな人の想いを紡いで。

 無論、端からそれを期待して行く訳ではないが……とにかく本当に『やるしかない』のだ。

 

 藤丸はスパッと切り替えた頭で、事態解決のための疑問を投げかける。

 

「特異点の発生場所は? それと消えたサーヴァントの行方。もしかして、その特異点に飛ばされちゃったとか? あ、消失したサーヴァントの共通項は?」

「順番に説明するね。まず特異点の発生場所は日本だよ。しかも時系列にズレの無い現代。藤丸ちゃんにとっては馴染み深い場所だけど、警戒は最大限に。なにせ」

 

「特異点の規模と範囲が異常だからな」

 

 ダヴィンチちゃんの説明を横から割って入ったのは、『トー〇ロ』と言って抱き着きたい立派なお腹をしている男だった。そのふくよかな威厳に、藤丸は生唾を呑み込んだ。

 

「クロワッサン所長……」

「ゴルドルフ・ムジークだ! その呼び方は辞めたまえよ、君ィ! まったくふざけてる場合か!」

 

 ゴルドルフは憤慨するも、金のちょび髭を整えながら、事態の深刻さを説明する。

 

「記録ではこれまで日本で発生した特異点は新宿や京都、秋葉原など限定的だったが、今回は違う! 日本全土を覆う規模の特異点だ!」

「――そして消失した二十のサーヴァントは、今回の特異点を形成した【犯人】の手によってレイシフトされた。日本各地にね」

 

 藤丸の疑問に答える形で現れたのは、カルデアの経営顧問にして名探偵シャーロック・ホームズだった。

 

 ホームズは「これを見て欲しい」と言って、とある映像を空中に再生させた。

 朗らかに遊ぶ子どもの声が、ロビーに響く。

 そこにはバニヤンやナーサリー、ジャンヌリリィといったお子様サーヴァントがかくれんぼで遊んでいる様子が撮影されていた。警備カメラが撮影した映像の一つらしい。

 

「サーヴァントが消失した瞬間の映像だ。消失したのは――ジャック・ザ・リッパ―」

 

 ホームズが補足した途端、映像の端で変化が起こっていた。

 廊下を走り回っていたジャックが不意に立ち止まり、しゃがみ込んだ。そして何かを拾い上げた途端…………とぷん、と足元に広がった影に沈んだ。

 

 隣からマシュが息を呑む声が聞こえて、藤丸はそっと彼女の手を握る。映像の再生が終わり、ホームズは自身の推理を続ける。

 

「何を拾ったかはカメラの角度から確認できない。しかし、この直後にジャック・ザ・リッパ―の反応は消失し、特異点にてその霊基を観測できた。場所は東京奥多摩」

「つまり、他の消えたサーヴァントもカルデアで何かを拾って、それで特異点に転移させられた?」

「その通り。そして消失したサーヴァントに共通する特徴は……混沌・悪属性であること。おそらく今回の特異点を形成した【犯人】と属性は何らかの因果関係があるとみられる」

 

「それを補足するようになっちゃうけど、この特異点の性質って結構寛容なんだよね。現状レイシフト完全同行できる英霊は、混沌属性のサーヴァント全てだ」

 

 ダヴィンチちゃんが告げた完全同行の条件に、マシュは目を見開いた。

 

 特異点の性質。

 それは『異物混入のための隙間の大きさ』と言い換えられる。混入する異物とは、これからレイシフトする藤丸やマシュ、そしてカルデアの英霊のことだ。

 

 そして今回の特異点は、その隙間の範囲が大きいらしい。

 

「混沌属性と言いますと……荊軻さんや牛若丸さんなど、数多くのサーヴァントに適性があるのですね」

「そう。しかも面白いことにペーパームーンで演算を重ねる毎に面白い結果が出るんですよね」

「面白い、ですか?」

 

 首を傾げるマシュに、シオンは好奇心を秘めた眼で頷く。

 

「どんどんレイシフトに完全同行可能な霊基が増えていくんですよ。まるで『こっちに来い』と招いてるような」

 

 シオンの言葉を聞いて、藤丸は思い当たることがあった。

 アルターエゴリンボが平安京で作った特異点。あの時も、リンボ自身の意図が反映されてアサシン風魔小太郎と加藤段蔵がレイシフトについて来れるようになった。

 

 それと同じ意図を感じた藤丸は、一つの懸念を浮かべる。

 

「行けるからと言って、あんまり皆を連れて行かない方が良いかもしれない」

「うん、私もそう思うな。いつものことだけれど、やはり可能な限り同行するサーヴァントは絞った方が良いと思う」

 

 ダヴィンチちゃんの肯定に、藤丸は頷いた。そうしてダヴィンチは今回のブリーフティングの内容をまとめ、任務内容を明確にした。

 

「というわけで、今回のキミ達の任務は二つ。一つ目は、この特異点の調査及び消去。二つ目は消失した混沌・悪のサーヴァントの保護だ」

「特異点がある限り、【犯人】は我々の常識を凌駕する方法で聖杯を用いているだろう。現時点での所業から、敵の脅威は【異星の使徒】アルターエゴ・リンボと比肩している。くれぐれも警戒を緩めないように」

「さぁ、行きたまえ、藤丸立香、マシュ・キリエライト!」

 

 カルデアの技術顧問、経営顧問、新所長の声に、藤丸とマシュははっきりと応えた。

 

「「 了解! 」」

 

 こうして藤丸とマシュのレイシフトが行われた。

 





FGOのシナリオの序盤っぽくしようと思って書きました。
結果、分かったこと。

めぇ~~~~~~~~っちゃ難しいぃいいいいい!
え、すごいなFGOのシナリオライター様達。ほんとにすごいな。もうすっごい難しい何回頭こんがらがったことか。

尊敬します!!
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