Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第21話 最も強者と接したマスター

『霊基パターン一致。間違いなく眼前にいるのは、カルデアで消失を確認された二十騎のサーヴァントの一騎。クーフーリン・オルタだ』

 

 マシュの耳のインカムから極小の音量でホームズの声が流れる。お堂から流れてきた魔力を感じた時から、マシュは何かの間違いだと思いたかった。

 

 しかし今こうして対峙すると、カルデアの分析を待たずとも分かってしまう。

 

 太陽神ルーの息子にして、アイルランドの光の御子。「アルスターの猛犬」と謳われた、間違いなく『大英雄』と称されるに足る英霊だ。

 

 その別側面(オルタ)と戦い、傷どころか何の消耗も見えない。

 それが、目の前の目隠しの男の実力。

 この特異点における最強。

 

「青森で派手に暴れてるやつがいるっていうから行ってみたら、こいつがいてさ。いやぁ、うっとおしかったなぁ。幾らボコっても起き上がってくるし。だから奥の手を使わせてもらったよ。数日はこのまんまでしょ。――――で、もう一回だけ聞くよ」

 

 男がおもむろに目隠しをずらす。

 そこから覗いたのは、眼孔に閉じ込められた天空。

 有り体な言葉では形容できない、埒外の美しさを秘めた双眸から、轟然たる圧が放たれる。

 

「こいつは、君らの仲間か?」

 

 マシュの全身の肌がビリビリと痺れる。明らかな格上。人間より完全に上位に位置する存在からの眼圧に、藤丸とマシュは吞まれてしまった。

 答えない二人に、男は肩をすくめて目隠しを戻した。

 

「この眼はちょっと特別でさ。まぁ、色々よく見えんの。で、こいつと……そこの盾の君。ほぼほぼ同じ存在(もん)なんじゃない? 呪霊と受肉体みたいな違いはあるけど」

 

 ごく一部の人間しか知らない筈の、自分の正体をあっさり見透かされ、マシュはびくっと肩を震わせた。

 

 マシュはデミ・サーヴァント。召喚した英霊と子どもを一つの存在にして、英霊の「人間化」を目指した実験の唯一の成功体だ。

 

 そこまでの詳細を、たった今男が見抜いた訳では無いと思うが、それでも男の目が特別である証左にはなった。

 

「でもさぁ~、妙なんだよ。呪霊の体って呪力で出来てんだけど、君やこいつは呪力で構築されてないんだよね~。体の組成は一緒なのにね。なんなの? 反転術式で生まれた生のエネルギーに似てるけど」

「……それが、クーフーリンを、私達を消さない理由?」

 

 息を整え終えた藤丸が、軽薄な声音と言葉を交わす。男は顔の前で手を組んで、さらりと言ってのける。

 

「うん。正体不明のエネルギーじゃなかったら、君もこいつも構わず殺してたよ」

 

「―――っ!」

 

 マシュが動いた。

 

 円盾を大きく振りかぶって、十字杭による殴打を男に繰り出す。

 男はクーフーリンを下敷きにしたまま、ぼぅっと自分の膝で頬杖を突いていた。

 

(当たる!)

 

 そう確信したまま、マシュは杭を振り抜き――――――見えない何かが男と杭撃の間に挟まった。

 

「僕には触れらんないよ? 君との間にある『無限』がある限り」

「なっ……」

「気済んだ? ちょっとカマ掛けただけだーけ。僕は生徒想いのナイスガイで通ってんの。生徒と同い年のガキんちょに早々手は出さないさ」

「~~~っ、マスター! 直ちに離脱」

 

「私達のこと全部教えたら、私達の仲間を探すの手伝ってくれる?」

 

 切迫したマシュの声を遮って、藤丸は目を逸らさずに最強の男を見据え続ける。藤丸は頭ではなく本能で分かっていた。

 

 今この場で、武力において彼に敵う者はいないと。

 

 だからこそ、それ以外の所で負けないように、対等である気構えを固める。

 自分より遥かに強力な【英霊】と言葉を交わし続け、交流し続けてきた藤丸だからこそ、この短時間で男に気圧されることなく、条件を提示できたのだった。

 

 男は、藤丸のそんな瞳を興味深そうに見つめ返した。

 

「ふ~ん……面白いね」

「さっき青森って言ってた。それって呪術高専って組織は、日本全国に情報網を敷けてるってことでしょ? いなくなって、散り散りになった皆を探すのにうってつけ」

「北海道だけは別。あそこはアイヌ呪術連の管轄だから。でもそれ以外なら、大方君が言った通りだ。うん、いいね。細かい条件詰めとか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

「バレてるって、ダヴィンチちゃん」

『うそぉ~~? なんでぇ?』

 

 藤丸は肩をすくめて、カルデアの通信機を起動させる。するとすぐに青い立体映像が投影されて、仰天してるダヴィンチちゃんが映った。

 

「おぉ、未来感」と感心してから男は、初めて藤丸達に名を明かした。

 

「五条悟。東京都立呪術高専の一年担任を務めるグッドルッキングティーチャーさ。惚れられても困るから、そのつもりで」

「藤丸立香。こっちの可愛い子はマシュ。私の後輩。大丈夫です、この二年くらい美形に囲まれ過ぎたから」

 

 こうしてカルデアと呪術高専、初の交渉の場が開かれたのだった。

 

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