Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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書けなかったよ……

やっと書けたよ……眠い、眠いよパトラッシュ


第30話 大人げない

「はぁーーーーーーー‼ やっぱり実家が一番落ち着くわぁ~~~~‼」

 

 宝具で再現した仮の姫路城(実家)でゲームもペンタブもマンガも無いが、それでも長年引きこもってきた安寧の空間に、刑部姫は溶けるように寝転んだ。

 

「最初っから、こうしておけば良かったんじゃーーん。もう無駄に走りまくって疲れたぁ~」

 

 刑部姫には七海を気絶に追い込む火力が無く、七海には刑部姫を捕獲できる程の索敵能力が無い。互いに決め手が欠けたイタチごっこ、永遠ループの鬼ごっこ。

 ならば反則技(バリア)を使えばいい。

 

「これで私には触れられないし、壊せない」

 

 城に籠ることは隠伏行為ではなく、あくまで防御行為なので5分間の制限も気にする必要は無い。向こうの呪力が尽きるまで引きこもるか、向こうが降参するまで引きこもるか。

 

 どちらにせよ――――刑部姫にとっての最善はやはり『引きこもる』ことだった。

 

「人に降伏を勧めるということは、自分も降伏することを覚悟するということなのよ、ナナミ――――ン‼」

『その呼び方、誰から聞いたんですか。引っ叩きますよ』

「うひぃあ⁉」

 

 刑部姫は仰向けから飛び上がり、城の外を飛行させている折り鶴の視界(カメラ)を覗き込む。鉈を弾き返された七海は姫路城の前で棒立ちになって、見上げていた。

 

『英霊というのは……何でもありなんですか』

「あー、まぁ割と。で、どうする? 降参する? ここだったら、姫は幾らでも引きこもれるよ。少なくとも普通の人が代替わりするくらいの時間までは余裕☆!」

『健全とは言い難い生活ですね……それに付き合わされるのもごめんです』

 

 七海は秋の青空にそびえる姫路城を仰ぎ見ながら、長くため息を吐き――――ネクタイを外す。

 

(え? なに? 何する気?)

 

 モンキーが人に敵わないように、城に立ち向かう人間などいる筈無いと高を括っていた刑部姫。そんな彼女を置いて、七海はネクタイを拳に巻き付ける。

 

『……休日出勤。五条さんから聞かされた勤務時間は2時間ほど』

 

 聞いてて心が痛くなる刑部姫。

(休日返上で森の中で鬼ごっこって……そりゃ早く終わらせたいよね!)

 しきりに七海が降参を勧めてきた理由にようやく得心がいく。

 

 城の中で共感されてることも露知らず、城の外にいる七海は腕時計を確認した。

 

『――――残念ですが、ここからは【時間外労働】です』

 

 

 瞬間、七海の体躯から蒼炎の火柱が立ち昇った。

 

 

 いや違う。

 自ら呪力を半減させる【縛り】によって底上げされた莫大な呪力が今この時をもって解放。間欠泉のように勢いよく、噴き出した。

 

「いぃっ⁉」

 

 姫路城内部にいて尚、伝わってくる呪力の威圧感に飛び上がる刑部姫。

 

「あんなのサイヤ人じゃん⁉」

『私の術式は対象を千分した時、7対3の比率点を強制的に弱点とします』

 

 刑部姫の言葉を無視し、術式の開示で更に術式効果を引き上げる。

 ザッ!ザッ!ザッ!ザッ! と、開示を進めながら、七海は姫路城の城壁へ近づいていく。

 

『そしてこの術式の対象は――――生物以外にも有効です』

「え? え、え、え、え、嘘でしょ嘘でしょ嘘でしょ⁉」

 

 刑部姫はバタバタと足を滑らせ、天守閣の天窓から身を乗り出して七海を見下ろす。

 

 美しき白鷺城の壁の前で、七海は拳を構える。

 脇を絞り、腕を引き、顎を噛み締め、

 

 

 

    【 十劃呪法・瓦落瓦落 】

 

 

 

 一撃粉砕の鉄拳を、堅牢な防御型宝具に叩き込んだ。

 バギギギギギギギギンッッ‼‼ と白磁の城壁が砂糖菓子の如く粉々にひび割れた。

 拳撃の爆心地から波状した亀裂に、呪力が迸った。

 

「ひゃん⁉」と振動が天守閣を揺らし、刑部姫は天窓からゴロゴロと転がされる。

 

『このまま――引きずり出します』

 

 ひきこもりにとって、呪いの言葉を吐きながら、七海は二発目の鉄拳を構えた。

 

(まずいまずいまずいまずい‼⁉)

 

 刑部姫は城壁にスキル【変化】を発動させて、魔力を集中。

 城化物としてのスペックを防御に全振りし、七海の拳に備えようとしたが、

 

「あれ? なんで? 強化が上手くいかない⁉」

 

【十劃呪法・瓦落瓦落】

 破壊した対象に呪力を籠める拡張術式により、姫路城の城壁は刑部姫の魔力を受け付けなくなった。

 

 つまり――――純粋な防御能力で受け止め切るしか無くなる。

 

 ドゴォッッ‼‼ と、鉄拳による地響きが刑部姫を揺らす。

 うぐっ、と苦い声を漏らす刑部姫。

 

 両手を伸ばし、スキル【変化】で姫路城全体に防御バフを掛け続ける。

 断続する拳の破壊音が天守閣を揺らし続ける。

 揺れに耐えようと、姫路城を持ちこたえさせようと、刑部姫は城の支柱に腕を回す。

 きつくきつく抱きしめて、城主として最大限の守護を与え続ける。

 

「……けない」

 パラパラと天井から塵が振り落ちる。

 

「……負けない」

 ギシギシと、城郭全体が軋みだす。

 

「負けたく、ないっ‼」

 きつく瞑った眦から、透明な水がうっすら滲み出る。

 

 何度も何度も追い詰められて、降参を勧められて、それでも刑部姫が折れないのは――『楽』に逃げようとしないのは、この霊基にマスターの存在が刻まれてるから。

 

 姫路城の天守閣に設けられた自室。

 宝具で仮想再現されて、こざっぱりしているが、それでも刑部姫はここで泥のような安寧に浸り……マスターと一緒にゲームをしたのだ。

 

 追い出すでもなく、引きずり出すでもなく、一歩踏み入って、共に楽しんでくれた。

 

『カルデアに来てくれてありがとね、おっきー』

 

 誰にでも言ってるんでしょ、と返したら、『バレた?』と屈託なく笑っていた。

 底抜けに明るくて、当たり前のように優しくて、大英雄にもひきこもりにも区別なく必要だと言ってくれた彼女。

 

「こんなのっ、姫らしくないって、そんなの分かってる! でも‼」

 

 そんな彼女の信頼に報いたい。そんな彼女の窮地を救いたい。

 過酷な状況に置かれて隔てなく助けを求める彼女が、開いた毛穴を気にするような。

 

 そんな小さな絶望潜む平穏に、彼女を送り届けられたら、カルデアにいるサーヴァントはみんな満足する。信頼に応えたって胸を張れる。

 

 だから

 

「姫だけが諦めるなんて、そんなことできるわけないっ‼」

 

 頑なで、子どもじみた思いの丈を吐露する刑部姫。

 自分の声が空間にワッと震えるのを肌で感じ……そして気づく。

 

「―――――揺れが、止まってる?」

 

 きつく閉じた目蓋を開くと、眦に溜まっていた涙が頬に一条落ちる。それを指先で軽く脱ぎながら、刑部姫は静まり返った城を見渡す。

 

 鉄拳奏でる轟音も、城の土台を揺らがす震動も止んで、静寂に満たされていた。

 

 城の外に徘徊している折り鶴の視点を覗き見る刑部姫。

 すると亀裂だらけの城壁の前で、空を仰ぐスーツ姿の男が長い長いため息を吐いた。

 

 額には汗が浮かび、立ち昇っていた火柱のような呪力もその勢いは衰えている。

 

『――降参です』

 

 心身の底から疲れ切った声で、七海は告げる。

 刑部姫の円らな目が、更に丸みを帯びる。

 

『これ以上は……大人げないというものでしょう』

 サングラスが傾き、折り鶴の視線と七海の視線がぶつかる。

 

 七海の拳から、ゆらりとまだ蒼炎が揺らめく

 視界越しに見つめられた刑部姫は、ムッと唇を尖らせた。

なんだか釈然としない気持ちになったが――――兎にも角にも、勝負が終わったことに安堵して、大の字になった。

 

 

呪術高専・カルデア交流試合 

第二試合 七海建人 VS 刑部姫

勝者――刑部姫

 





ナナミンの時間外労働の法則は公式だと
80%制限 → 解放後、120% らしいです。
だから今回は50%制限 → 解放後、150%のイメージで書きました。

なんとか書けた……夜にあげられず、すみません。
今週は2話更新にとどめさせてもらいます、ちゅかれた……すみません。
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