Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第31話 配下は試合、主人は取引

「第一試合でフィジカルを、第二試合で攻撃力を測るには、あのお二方が最適でした」

 

 高専内にある無数の寺社仏閣。

 その内の一つの寺に、二人の特徴的な美女が立っていた。

 

 片や新雪の髪を長く伸ばし、簾のように垂らした黒布の美女。

 片や豊満な肢体を晒し、獣の耳と尻尾を情感たっぷりに揺らすアラビア風の美女。

 

 清水寺を参考にした懸崖造りの舞台で、二人の美女は欅の手すりにもたれて、森と空を眺めていた。

 

「何の話かな?」

 

 黒布の美女――冥冥は手すりに頬杖を突いたまま、顔を動かさず訊ねる。すると、同じく手すりに乳房を載せて頬杖を突いていたアラビア美女――シバの女王は茶化した。

 

「え~? あなたなら、もう分かってるいるでしょう? この交流試合、勝敗なんて二の次だってこと」

 

 高専側は、【サーヴァント】の力を測る。

 カルデア側は【呪術師】という存在の力量を測る。

 

 利用できるように、もしくは――敵対した時、勝利を収められるかどうか。

 

 マスター藤丸立香の秘匿死刑は、試合を成立させるためのブラフだ。

 実質、交流試合が行われている今、藤丸の死刑が執行されることは無い。

 

「先程の2試合を観戦してみたところ……1級術師(あなたたち)のフィジカルは英霊(われわれ)で云うところのC相当です」

 

 玉藻の前・紫式部・鬼一法眼の呪術解析班の見立てを口にするシバ。

 

 一戦目、フェルグスが選出された理由は、レイシフト可能な英霊の中で最も屈強なフィジカルを有していた。対する相手は、五条悟が実力を認めた学生・東堂葵。

 

 あの二人のぶつかり合いで、カルデアは1級術師――トップクラスの呪術師の平均戦力を特定した。

 

「私のようなキャスタークラスや正面戦闘は劣るアサシンクラスには厳しいでしょう。実際、刑部姫さんの攻撃は軽くあしらわれていましたし」

「ふふっ、けれど中々頑張っていたじゃないか。まぁ、頑張らせたと言うべきだけど」

「あっ、やっぱり分かってたじゃないですかぁ」

 

 冥冥の微笑に、シバは艶のある尻尾をぶんぶんと振り回す。

 

 二戦目、刑部姫が選出された理由は、レイシフト可能な英霊の中で最も防御に優れていたから。対戦相手・七海の打撃力の凄まじさは、五条が渡してくれた資料で分かっていた。

 

 更に【拡張術式】・時間制限や能力開示による【縛り】などの呪術テクニックによって、一時的にB~Aランク相当の攻撃を可能にすると判明した。

 

「それで? 私にそれを聞かせたということは……ここで話すことは他言無用、ということで良いのかな?」 

 

 そう言って冥冥は編み込んだ長い前髪を指に差し込んで、僅かに持ち上げる。

 髪の簾が上がり、耳に輝くのは、試合開始前にシバに渡されたイヤリング。それは正真正銘、シバの女王が有する財宝の一つであった。

 

 シバは唇に人差し指を立て、瞬きを送る。『沈黙は金なり』と、ピコピコ動くケモ耳が冥冥にそう告げていた。

 

 鳥が鳴く様に、冥冥は軽やかな笑い声を口ずさみながら空を仰ぐ。

 

 

 

 ――――雲と見紛う程の、黒鳥の大群が覆う空を。

 

 

 

 冥冥の術式【黒鳥操術】は戦闘よりも索敵・偵察に適した術式だ。

 

 その上で第三試合は『宝さがし』。

 

 無数の黒鳥が森の上を旋回する様は、事情を知らぬ者から見れば壮大な景色だった。

 

「いいのかな? 勝敗に価値が無いとはいえ、ポーズでも競わなくて」

「おっと! そうでしたそうでした……そ~~~れ、よいしょお!」

 

 頬杖をついて手すりにもたれかかっていたシバは、冥冥の指摘を受けて姿勢を正し、手に握ったランプを上下に振る。

 

 すると、ランプの注ぎ口からもうもうと白煙が噴き出した。

 清水の舞台から森へ漂う白煙は風によって小さく千切れ……一体一帯は小さな霊鬼(ジン)の群れと化した。

 

 煙人形もとい霊鬼は続々と森の中へ入っていく。

 空から宝を探す黒鳥、森を探索する霊鬼によって、第三試合はなんとも不可思議な様相を呈してきた。

 

「ふふふふ、見つけた【宝】はそのまま貰ってしまっても良いなんて……雰囲気に似合わず太っ腹だね。私はなんとなく君に守銭奴(シンパシー)を感じたんだが」

「いえいえ、そんなそんな~。あなたには負けますよ。フリーの呪術師というのは、さぞかし便利な立場でしょう。なにせ金払いの良い方に付けば良いのだから」

 

 冥冥は呪術高専に所属していない、フリーランスの呪術師だ。

 今回のように呪術高専の招集には応じるが、それも金次第。

 そう、金次第なのだ。

 

「冥冥さん――――私と主従の契約を交わしませんか?」

 

 ひらひらと気ままに舞う蝶のような、軽率で間延びした声音に含みが生じる。

 甘い蜜の香りがする含意をちらつかせて、シバの女王は冥冥との距離を詰める。

 

 試合など配下の黒烏と霊鬼に任せて、二人の美女が清水の舞台で向かい合った。

 

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