Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第33話 無限を越える

「五条くんが鬼! 缶蹴ぇーーーった!」

 

 独逸(ジャーマン)の軍服で身を固めた少女が、見た目通りの無邪気な声を上げて、缶を蹴り上げた。

 

 遥か遠く、星となって輝く空き缶には目もくれず、五条悟は自身の対戦相手となる英雄を興味深そうに見やる。

 

「まさかあの織田信長と缶蹴りすることになるなんてねぇ。人生何があるか分かんないもんだ」

「うっはっはっはっ! 儂もまさか英霊になってから『缶蹴り』なんて児戯をするとは思わなんだ! 是非も無し!」

 

 呵々大笑する黒髪ロングの美少女こと織田信長(ノッブ)

 その身体の若々しさは、呪術高専の生徒達と同い年かそれより年下に見えるほどだった。快活に笑っていたノッブはふと顎に手を添えて、思案する。

 

「まて? 遊びというならば【吉報師】の姿に変じた方が良かったか? なんたってあの儂ぶっちゃけ少年漫画の主人公じゃし。ジャンプを愛読しとる作者ならばそっちの方が書きやすいか……?」

「うーん! 聞いてた以上のぐだぐだっぷり! 確かにこのノリは厄介だね!」

(――中身の方も、ね)

 

 呪力を詳細に見通す六眼が織田信長という霊基……否、【織田信長】という概念の可能性を視認する。

 

 何重にも重なり揺らめく、獄炎。

 その火炎の一つ一つが【英霊】として確立させられる程の熱量を有している。

 

「――良い慧眼を持っておるようじゃの、五条とやら」

 

 複数の可能性(すがた)を見通した五条に流し目を送って、頬を持ち上げる信長。対して、五条はニッと軽薄な微笑みで返した。

 

「まぁね、昔から目は良い方で」

 

 蹴り飛ばされた空き缶を拾いに行こうと、五条は円陣を跨いだ。

 そのまま歩を進めて、後ろ手でひらひらと信長に手を振った。

 

「それじゃ僕缶拾ってくるから、それまでゆっくり隠れてなよ」

「くっははは! もっとよく見て置かなくて良いのか? 次会う時はこの姿とは限らんかもしれんぞ?」

「大丈夫っしょ。どんな姿の君だろうと――――勝つのは僕だから」

 

 六眼が空間上の微細な呪力を掌握し、その身に刻まれた相伝の術式が【順転】する。 瞬間、英霊の目に残像すら残さず、五条悟は姿を消した。

 

 場に残された信長は「ふむ」と顎に手を添えて、今しがたの瞬間移動の構造(からくり)を考察する。

 

「なるほどのぅ。あらかじめ設定した地点に己を引き寄せた、か。ふぅ~む……さて」

 

 外套を翻し、少女が燃やすには余りに苛烈な戦意が紅蓮の双眸に宿り、ギラつく。

 

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 既に各々動きだしているであろう二騎のサーヴァントの行動に思考を巡らせる。

 第四試合『缶蹴り』の盤面で、魔王は最強に挑むべく軍略を巡らせる。

 

「まさかこの儂が下剋上とはのぅ。よもやよもや、まことにこの世は――是非も無し!」

 

 自分が挑戦者であることを面白おかしく笑いながら、悠々と歩み、姿をくらます。

 ――――合戦とは、そこに至るまでに積んだ事の帰結である。

 合戦に至るまでに何をするか、それが戦、それが勝負。

 

「最後の合戦、愉快痛快に、火花血潮散らせようぞ」

 

 この特異点にレイシフトするまでに積み上げてきた事物を、信長は脳裏で反芻した。

 

  *******

 

「あったあった。まったく思いっきりかっ飛ばしちゃって」

 

 五条はごく自然に空を飛び、広大な森の只中に落ちていた空き缶を見つけるなり、拾いに降りる。塗れた土を払って空き缶をつまみ上げる。

 どうやら壊れてはいないようだ。

 

「いや、加減したのかな?」

 

 五条は来た道、もとい空を振り返る。とにかく空き缶を円陣に戻さなければ、缶蹴りはスタートしない。

 

(ざっと見渡した感じ、寺には居ないな。気を遣ってくれて助かるよ)

 

 五条にしろ、英霊の誰かにしろ、壊れても困る物が無い森の中は都合が良かった。

【無下限呪術・蒼】で跳躍しようと強化した呪力を流し込もうとして――――背後で鳴った一歩の足音が、【無下限呪術】のギアを切り替えさせた。

 

 バウンッ‼ と音を越え、無間に至った絶刀の切っ先が、五条悟の前で停止した。

 

「――――本当に当たらないんですね」

 

 平晴眼の構えから放たれた三段突き。

 それは、一つの突きに三度の突きが内包された、局所的な事象崩壊現象。

 宝具として昇華された防御不能の絶技も、無下限の不可侵領域の前には届かない。

 

「おぉ~、ダンダラ模様。また女の子だけど……君、沖田総司でしょ」

 

 ギャリン‼ と無限に突き刺さった日本刀を引き抜き、華奢な少女が距離を取る。

 浅葱色の羽織を纏った薄桃髪の少女は、五条の軽薄な問いに答えず、再び平晴眼の構えを取る。

 

「妙な切っ先だったけど無駄だよ。事象崩壊(それ)じゃ無限(ぼくに)越えられない(当たらない)

「なら、何度でも、超える(当たる)まで放ち続けるだけです」

「だいたい鬼が戻るのを防ぐのって有り? 缶蹴りのルール知ってる?」

「あいにく……現代の遊びには疎いもので」

 

 ――白染めの袖口が翻って、消える。

 次元を跳躍する【縮地】が【無限】を飛び越えんと、五条悟に迫った。

 






遅れた……すみません。
もっと計画的に動くよう、気を付けます。
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