Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変― 作:ビーサイド・D・アンビシャス
「五条くんが鬼! 缶蹴ぇーーーった!」
遥か遠く、星となって輝く空き缶には目もくれず、五条悟は自身の対戦相手となる英雄を興味深そうに見やる。
「まさかあの織田信長と缶蹴りすることになるなんてねぇ。人生何があるか分かんないもんだ」
「うっはっはっはっ! 儂もまさか英霊になってから『缶蹴り』なんて児戯をするとは思わなんだ! 是非も無し!」
呵々大笑する黒髪ロングの美少女こと
その身体の若々しさは、呪術高専の生徒達と同い年かそれより年下に見えるほどだった。快活に笑っていたノッブはふと顎に手を添えて、思案する。
「まて? 遊びというならば【吉報師】の姿に変じた方が良かったか? なんたってあの儂ぶっちゃけ少年漫画の主人公じゃし。ジャンプを愛読しとる作者ならばそっちの方が書きやすいか……?」
「うーん! 聞いてた以上のぐだぐだっぷり! 確かにこのノリは厄介だね!」
(――中身の方も、ね)
呪力を詳細に見通す六眼が織田信長という霊基……否、【織田信長】という概念の可能性を視認する。
何重にも重なり揺らめく、獄炎。
その火炎の一つ一つが【英霊】として確立させられる程の熱量を有している。
「――良い慧眼を持っておるようじゃの、五条とやら」
複数の
「まぁね、昔から目は良い方で」
蹴り飛ばされた空き缶を拾いに行こうと、五条は円陣を跨いだ。
そのまま歩を進めて、後ろ手でひらひらと信長に手を振った。
「それじゃ僕缶拾ってくるから、それまでゆっくり隠れてなよ」
「くっははは! もっとよく見て置かなくて良いのか? 次会う時はこの姿とは限らんかもしれんぞ?」
「大丈夫っしょ。どんな姿の君だろうと――――勝つのは僕だから」
六眼が空間上の微細な呪力を掌握し、その身に刻まれた相伝の術式が【順転】する。 瞬間、英霊の目に残像すら残さず、五条悟は姿を消した。
場に残された信長は「ふむ」と顎に手を添えて、今しがたの瞬間移動の
「なるほどのぅ。あらかじめ設定した地点に己を引き寄せた、か。ふぅ~む……さて」
外套を翻し、少女が燃やすには余りに苛烈な戦意が紅蓮の双眸に宿り、ギラつく。
「
既に各々動きだしているであろう二騎のサーヴァントの行動に思考を巡らせる。
第四試合『缶蹴り』の盤面で、魔王は最強に挑むべく軍略を巡らせる。
「まさかこの儂が下剋上とはのぅ。よもやよもや、まことにこの世は――是非も無し!」
自分が挑戦者であることを面白おかしく笑いながら、悠々と歩み、姿をくらます。
――――合戦とは、そこに至るまでに積んだ事の帰結である。
合戦に至るまでに何をするか、それが戦、それが勝負。
「最後の合戦、愉快痛快に、火花血潮散らせようぞ」
この特異点にレイシフトするまでに積み上げてきた事物を、信長は脳裏で反芻した。
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「あったあった。まったく思いっきりかっ飛ばしちゃって」
五条はごく自然に空を飛び、広大な森の只中に落ちていた空き缶を見つけるなり、拾いに降りる。塗れた土を払って空き缶をつまみ上げる。
どうやら壊れてはいないようだ。
「いや、加減したのかな?」
五条は来た道、もとい空を振り返る。とにかく空き缶を円陣に戻さなければ、缶蹴りはスタートしない。
(ざっと見渡した感じ、寺には居ないな。気を遣ってくれて助かるよ)
五条にしろ、英霊の誰かにしろ、壊れても困る物が無い森の中は都合が良かった。
【無下限呪術・蒼】で跳躍しようと強化した呪力を流し込もうとして――――背後で鳴った一歩の足音が、【無下限呪術】のギアを切り替えさせた。
バウンッ‼ と音を越え、無間に至った絶刀の切っ先が、五条悟の前で停止した。
「――――本当に当たらないんですね」
平晴眼の構えから放たれた三段突き。
それは、一つの突きに三度の突きが内包された、局所的な事象崩壊現象。
宝具として昇華された防御不能の絶技も、無下限の不可侵領域の前には届かない。
「おぉ~、ダンダラ模様。また女の子だけど……君、沖田総司でしょ」
ギャリン‼ と無限に突き刺さった日本刀を引き抜き、華奢な少女が距離を取る。
浅葱色の羽織を纏った薄桃髪の少女は、五条の軽薄な問いに答えず、再び平晴眼の構えを取る。
「妙な切っ先だったけど無駄だよ。
「なら、何度でも、
「だいたい鬼が戻るのを防ぐのって有り? 缶蹴りのルール知ってる?」
「あいにく……現代の遊びには疎いもので」
――白染めの袖口が翻って、消える。
次元を跳躍する【縮地】が【無限】を飛び越えんと、五条悟に迫った。
遅れた……すみません。
もっと計画的に動くよう、気を付けます。