Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第34話 領域の初動

 ――――【縮地】

 

 実際に多くの武術・武道にも取り入れられている、現存する技術である。

 瞬時に相手との間合いを詰めることを目的に研鑽された、足法の極み。それは単純な素早さだけでなく、足運び・体捌き・呼吸・死角など幾多の技術を必要とする。

 

 この技術を英霊特有のスキルランクに当てはめるならば、人間が実現できる最高峰はBランクだと言われている。

 

 ならば、人の身から逸脱した存在ならば、どうなる?

 【英霊】が用いれば、どうなる?

 その答えは――――瞠目された六眼によって明かされる。

 

 

「―――――マジか」

 

 浅葱色の羽織が、五条の懐に潜り込んでいる。

 近づけば近づくほどに低速し、停止させる無下限のバリアを――――沖田総司の縮地が飛び越えた。

 

 極限の集中が引き上げたAランクの【縮地】。

 沖田は今、技を超越した仙術の領域に足跡をつけていた。

 

 翻ったダンダラ模様の袖口が手元を、切っ先を隠している。そこから放たれる無明の絶剣に五条は―――――拍手を送った。

 

「凄いね、アキレスが亀との距離を詰めた瞬間だよ」

 

 切っ先の狙いは依然として五条に定めている。後は曲げた肘を伸ばすだけ。

 たったそれだけの挙動が……()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 沖田は、ここで痛感する。

 無下限のバリアを飛び越えたその先もまた、【無限】であったことに。

 

「はい、沖田ちゃんみーっけ」

 

 ポン、と薄い桃色の髪に手を乗っける五条。

 反対の手で空き缶を掲げ、前を向いたまま踵を一歩下げる。

 

「これで円に缶を置いたら、ゲーム失格だね。それじゃ……ついてきてごらん」

 

 背後に【蒼】が発動し、五条の体が一気に引き寄せられる。同瞬、無下限に囚われていた壬生浪が追って弾き飛んだ。呪力で強化した後ろ走りで疾走する五条目掛けて猛進し、斬撃を繰り出し続ける沖田。

 

 前のめり気味に放たれる剣閃は幾度も止められるが、繰り出される速度は落ちない。

(当たるまで放つって本気で言ってたんだなぁ。でもそれに付き合ってあげる義理はこっちにないんだよ)

 

 無下限を飛び越えられたことには驚いたが、それも五条にとっては脅威ではない。何度斬りかかられようと気にすることなく、真っ直ぐ円陣へ駆ける。

 

「…………」

 ギンギンギンと、五条の眼前で火花が散る。

 

(…………まてよ)

 何度止められようと無下限へ斬りかかる様子を見つめ続ける。

 

 五条の脳裏に違和感が芽生える。

 

「そういえば最初の突きの時、刀を引き抜いたよね」

 初撃の三段突きと、今の連撃、両方に置いて鳴り響く金属音。

 岩に突き刺さった刀を抜く様に、沖田はごく自然と無下限に囚われた筈の刀を引き抜いている。

 

 途端、五条の脳裏に芽生えた違和感がとある感覚に変じる。

 

「……まさか」

 

 違和感の正体に思い至った刹那――――五条の頭上から、八華の刀槍を携えし毘沙門天が飛び掛かった。

 

 

「あっははははははは‼」

 高笑いと共に振り下ろされた八つの武具が【無限】によってビタリと止まる。

 

「やっと来ましたか」

 それに遅れて、沖田の上段の斬撃が、五条の額間近で停止する。

 

 前門の狼、後門の虎に挟まれるも、英霊達に五条悟の無下限を突破する方法は存在しない。

 だがしかし――――ここで魔王が積んだ準備が、二騎の手によって火を噴いた。

 

              「 領域! 」

 

 

              「 展延 」

 

 ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリッッッッッッッ‼‼‼ 

 

 沖田の菊一文字と長尾景虎の八刀槍が確実に【無限】を削り始めた。

 




久々に、予定通りに投稿できました。そしてずっと書きたかった英霊による領域展延!
満足です!

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