Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変― 作:ビーサイド・D・アンビシャス
カルデア側で初めて【それ】を見に受けたのは、狂王だった。
『領域展開……無量空処とも言ってやがったな、あの目隠しバンダナ』
スカサハからしごかれ、宿儺の指を抜かれた彼の話を聞き、信長は推測する。
呪霊、呪力、術式、領域――――持つ者が圧倒的に優位な今回の特異点。
ならばあるはずだ、と織田信長は考える。
――強者の蹂躙から逃れる【弱者の業】が。
『読みは的中したぞ、第六天。僕と可愛い香子と……ついでに狐にも感謝しろ? かんら、からから!』
高専内に侵入してしまった藤丸達との会話にて、禅院真希は【結界】の存在を明言していた。更にクーフーリンオルタが喰らった五条悟の領域展開【無量空処】概要が呪術解析班――――鬼一法眼・藤原香子・玉藻の前の分析を推し進めた。
『じゃろうなじゃろうな、持つ者と持たざる者がいるならば! 必ず持たざる者の工夫が存在する! 己が身を守るためか、持つ者へ距離を詰めるためかは知らぬが……』
信長は奇しくも【シン陰流】開祖・芦屋貞綱の思考をトレースしていた。
芦屋貞綱は、凶悪な呪詛師・呪霊から、門弟を守るため。
織田信長は、最強の呪術師への下剋上を為すため。
目的も、会得した術の名も違えど、その効果は全く同一であった。
**********
「領域!」と、長尾景虎が楽し気に叫ぶ。
「展延」と、沖田総司が冷酷に告げる。
瞬間、サーヴァントの宝具すら防ぐ絶対不可侵領域が前後から削られ始める。
張り巡らされた【無限】が確実に中和され、刀身が刻一刻と迫ってくる。
――――バウンッ‼ と五条が上空へ退いた。
景虎の八刀と沖田の一刀、合わせて九撃が五条を失った大地を深々と切り裂く。
上空へ脱出した五条は二騎から少し離れた所へ着地した。
「――シン陰の簡易領域と同じだね」
本来、相手を閉じ込める筈の【結界】を自らに薄く纏う。
そうすることで、相手の術式を確実に中和して攻撃してこれる。
「うん、それなら僕にも当たるね」
五条は顎を擦って、愉快気に笑う。
思ったよりも面白くなりそうだ、と言わんばかりに。
「沖田殿沖田殿、どうでしたか? 宝具と領域の併用は?」
「駄目ですね。発動した瞬間、領域の方が弾けました。パシャッと」
「あちゃ~そうですか残念!」
「全然、残念そうじゃないんですけど」
沖田が「くぅ~」と唸る景虎を、ジトっとした目で見上げる。すると景虎は「バレましたか」とまたもや大笑する。
「いやはや話に聞いた時からウズウズしていたのですよ! 攻撃を一切寄せ付けぬ防壁! 砕いた時の手応えが非常に楽しみ
声と姿が掻き消える。
長い銀の髪が残滓のように追い縋った頃には、刀を振りかぶったままの軍神が、五条の真横にまで接近。胴の捻りも加わった一閃が剛迅に【無限】に突き立った。
「心行くまで愉しみましょう、戦いを! どうやらあなたも退屈そうですし!」
「光栄だね、こんな美女に誘われるなんて。――――ところで、君、何の英雄?」
長尾景虎……知名度で云えば上杉謙信の方が有名な英霊は、笑顔と瞳孔が凍った。
【軍神】景虎はその後、口を真一文字に引き結び、反対の手で槍を振るった。
「いやほんとに分かんないんだよね。というか今んとこ日本の偉人みんな女の子じゃん。そこの沖田総司とか、ぶっちゃけ半信半疑だし」
「うるさいですよ! 世界観の違い……ですっ!」
突っ込みながら、斬りかかりに行く沖田。
依然として刀は術式を中和するが、鉄筋コンクリートにじっくりと包丁を押し当てているだけのようで、以前として五条本人には届かない。
「まぁ、それでも三段突きと羽織で分かったけどさ。今んとこ、槍とか刀いっぱい持ってるくらいしか印象無いんだよね。大丈夫? キャラ薄いんじゃない?」
「やめてあげてください! まだ追加されたばっかりなんですよ‼」
「あーもしかしてあれ? 弁慶? お姉さん、実は女の子の弁慶」
「―――にゃぁあああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼」
景虎ちゃん、怒る。
八華、咲き誇る。
刀と槍を持ち替え、リフティングのように得物を打ち上げては、絶え間なく得物を持ち替えて際限なく斬り掛かる。
時折、滞空している得物の柄を打つことで刃先を操り、二刀流を越えた疑似的な六刀……七刀……八刀流を体現する。
「我こそは刀八毘沙門天が化身‼ 長尾景虎‼ もはや退かせる間もなく――――神速にて押して参る‼」
名乗りと共に有言実行、絶え間ない連撃が五条に無下限呪術を解かせない。
クーフーリンオルタの戦闘データでは、五条悟は現在使っている『止める力』の他に『引き寄せる力』と『弾く力』を有している。
中でも『弾く力』は、クーフーリンオルタの宝具【
(持つ手札は強力! しかし! 使えるのは、どれか一つでしょう⁉)
絶え間ない連撃で五条に『止める力』を使わせ続け、そして削り切る。
軍神の神速に壬生浪の瞬剣が加わり、【無限】が確実に削られていく。
(技を出す前に潰す! 今度は上にも逃がさない! 飛んだ瞬間、私の縮地で……)
「 仕方ないな 」
散歩中に財布を忘れたような。
そんな声をあげて、五条は肩をすくめた。
刹那、沖田は目にする。
五条の肩越しから、景虎の背後で形成される…………蒼き空間を。
「術式順転・最大出力」
銀の髪が、後ろに引かれる。
八華の花びらが一枚、また一枚と散って……無手となった軍神が最後、強制的に後方へ吹き飛んだ。
「――ふっ!」
壬生浪が裂帛を吐く。
五条の頸動脈を撫で切りにせんと、菊一文字の刀身が鋭く滑らかに迫る……【無限】に阻まれることなく、するりと。
(今すり抜け)
沖田の双眸が大きく見開かれる。
あれほど斬り掛かって尚届かなかったのが嘘のように、五条の肌へ刃紋が急速に近づいていく。
刃が肌の産毛を撫で、白磁の肌に鮮紅の線を刻む寸前――――五条の親指と人差し指が、菊一文字の峰を摘まんだ。
それだけで、沖田の斬撃は止まった。
息を呑む沖田の腹に、五条の踵がズンッと沈み込む。
浅葱色の羽織が土砂粉塵に塗れた。
まっさらな白紙に鉛筆で無造作に線を引いたように……上空から見下ろした森に土煙の一線が巻き起こった。
中々、予定通りに行かない……ライブ感で書くのは駄目だなぁ、と思った今週でした。
申し訳ありません!
さて、できればこちらもよろしくお願いします。
https://tieupnovels.com/tieups/1011 ← Vtuberラブコメ
https://tieupnovels.com/tieups/1012 ← きらら系麻雀