Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第36話 斬華咲き乱れ

 塵風、吹き荒ぶ。

 枝葉を薙ぎ倒し、土中を掻きだして粉塵を巻き上げる。

 3秒。

 無造作に大地に刻まれた破壊の一線が始まり、終わるまでの時間。

 

 その時の中で、両者が攻撃を交わし合った回数は――――38合。

 

 腹に沈み込んだ蹴りの一閃。沖田は自ら後ろへ吹き飛んで、衝撃を受け流す。それでも流し切れなかった大部分のダメージは【領域展延】によって和らげられる。

 

 地面にバウンドする前に身を捻った回転で態勢を戻すと同時に、閃く沖田の秘剣。蹴りを放ったと同時に間合いを詰めてきた五条のこめかみに迫る。

 

 またもや寸分まで接近する剣閃。沖田は思考を介さず、体感で悟る。

 

(やはり――無下限の術式を解いてる!)

 

 カルデアと契約する、数多のサーヴァント。その中でも五条悟の【無限】を突破できる者は数少ない。確実に突破できると云えるのは冠位(グランド)の霊基を有する英霊だろう。その無敵の防壁が解かれたことは千載一遇の好機。

 

「斬る」という一念が瞳孔を狭窄させる。

 石穿つ水滴と化す沖田の意識が、眼前の光景を捉える。

 

 ――――斜めに構えた腕によって、剣筋が逸らされる光景を。

 

 そうして、その光景を五条の掌底打が塗り潰した。

 沖田は大きく上体を捻じって掌底を紙一重で躱し……鳩尾に叩き込まれた掌底の二連撃が突き刺さる。

 

 五条なりの三段突きが、水の如く覆っている【領域展延】越しに、沖田の内蔵を穿ち抜く。

 

 口腔を満たす鉄の匂いに、沖田は嗤った。

 

 瞬間吹き飛ばされるより早く、沖田は伸ばされた五条の手首を掴む。

 そうして衝撃を喰らいながらも、沖田は手首を掴んで離さず、離さないまま―――菊一文字による斬華を五輪咲かせた

 

 片手を封じられた五条。

 しかし純然たる呪力の肉体強化で砥がれた手刀が華を散らせる。

 

 沖田、嗤う。

 口の端から血潮が拭き零れる。闘争の果ての果てを望む。

 

 大木が木っ端と化す。土中に深々と刃圧が入り込む。破壊の一線の只中で交わされる手刀と斬撃の菊華。

 

 その光景は傍から見れば、まるで――――爆風の只中を、手を繋いで踊り明かす男女の如しだった。

 

 咲いては散ること、38輪目。

 

 爆ぜ飛んだ菊一文字の刀身が、大の字で倒れ伏す沖田の上方に突き立った。

 

「……こふっ」

 

 咳き込む沖田を五条は見下ろす。

 その僅かに乱れた息遣いを見上げて、沖田は…………満足げに笑ってみせた。

 

「はぁー……戦い切った(やりきった)ぁーー」

 

 花やぐ笑顔がスゥッと寝顔に変わる。

 五条は指でバンダナをずらす。

 

 遊び疲れた子どもを一目見てから静かに息を吐き……静かに【無限】を励起させる。

 その刹那――――傾きかけた日輪を後光にした軍神が【無限】に八華を炸裂させた。

 

「ややぁっ⁉ 私とは打ち合っては頂けないのですか⁉」

「術式解いて誘うのは止した方が良いかもって思ってね。【越後の龍】相手に」

「っ! あははっ、ようやく気付きましたか! 私からすれば謙信の名が馳せてることに驚きですが……ねっ‼」

 

 崩れない笑顔が一瞬で消え、煌めく銀髪だけが残像のように残って宙を揺蕩う。

 無下限の術式を強く保ちつつ、五条は景虎の姿を捉えようと周囲を睥睨する。

 

 六眼が、正のエネルギーで構築された英霊特有の反応を追いかける。追いかけることはできるが――――追いつかない。

 

「早過ぎんだろ」

 五条が悪態をついた瞬間、軍神が斬り掛かってきた。

 

 バウッ‼ と無下限の術式が斬撃を止めたと思えば、バッと景虎はすぐさま茂みに引き下がる。

 

「姫鶴飛んで」

 姫鶴一文字の大太刀が【無限】を逆袈裟斬りで駆け上がり

 

「山鳥遊ぶ」

 山鳥毛一文字が、無限】を袈裟斬りで駆け降りて

 

「谷切り結び」

 谷切りが【無限】を圧し斬らんと豪快に振り下ろされ、

 

「松明照らすは」

 小松明薙刀が【無限】を存分に薙ぎ、

 

「毘天の宝槍!」

 無銘の宝槍が、【無限】に深々と突き刺さる。

 

 八つの得物、そのどれもが人理に名を遺した名刀・名槍。それらを惜しみなく振るって、ヒット&アウェイを繰り返す。

 

 五条も景虎の姿を捉えたと思った瞬間、【術式順転・蒼】を発動させる。しかし、空間に突如発生する蒼の引力は、軍神の脚力で千切られる。

 

 神速の斬撃が五条に当たることはない。だが五条の方も絶え間ない辻斬りの連撃で動けず、また【蒼】で引き離すこともできない。

 

(――思い出すな)

 学生時代、青い春の時に対峙した呪力の全く無い男――禪院甚爾が脳裏に甦る。

 

「にゃぁああーーーーーっ‼」

 ガギィン‼ と、斬撃と【無限】の間で火花爆ぜる。

 高らかに笑い続ける眼前の女と、五条の喉をぶち抜いて破顔した男が重なる。

 ククッと喉が鳴る。

 

「似ても似つかないね」

「何が可笑し」

 

 問いかけた景虎の胸谷に、ひたりと五条の指が差し込まれた。

 その指先に生成される【無限の発散】

 

       「 術式反転 赫 」

 

 瞬間、五条の指先に生じる赫の虚空が景虎の胸の中で弾けた。

 五条の眼前で景虎の胸を覆った鎧が爆散し、破片が耳を掠めた。

 あらゆる飛び道具を無効化する長尾景虎のスキル【鎧は胸に在り】を、【反転の無限】が貫通した。

 

 二画目の破壊の一線を前に、五条は長く息を吐いて肩を落とした。

 

「とんだ缶蹴りだよ、ホント」

 

 ポケットに入れておいた缶を取り出し、五条は蒼の引力で瞬間移動。ザッ! と円陣に戻ると、その中心に缶を置いた。

 

「……沖田ちゃんと景虎ちゃんみーっけ。缶踏ん」

 

 

『 駆けよ、宝生月毛 』

 

 

 五条の宣言を、馬の嘶きが掻き消す。

 騎馬武装した長尾景虎が円陣に屹立する五条目掛けて、襲い来る。

 ――――八方向同時に。

 

『 毘天八相車懸りの陣 』

 

 八体の分身した長尾景虎が代わる代わる敵陣の五条に攻めかかった。

 




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