Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第37話 現人神よ、灰燼と化せ

 円陣の中央で八方見回す五条。その眼孔に嵌る六眼が騎馬に跨る八体の長尾景虎、その宝具の本質を看破する。

 

(――すべて本物!)

 

 これまで同時に振るってきた八華の刀槍を、それぞれの分身が一振り握り締めて馬を駆る。缶を踏む僅かの間もなく、八方同時攻撃が寸前まで近づいてくる。

 しかし五条は攻撃そのものには驚かず、むしろ攻撃の意図に眉をひそめた。

 

(解せないな)

 

 宝具と領域展延の併用は出来ないことは沖田の初撃で分かっていた筈。そして宝具と云えど、五条の【無限】を貫通することは困難。

 

 景虎ならば分かっている筈だ。

 意図は不明。

 けれど、この状況で無下限を解くわけにはいかない。

 

 八体それぞれの景虎が神々しいまでの魔力を名刀宝槍に宿らせ、まったく同一の刹那の中で必殺の一撃を振るう。

 

 絶大な威力、極大な白光が五条の視界を一時的に白く染め、【無限】に大輪の斬華が咲き誇る。八輪の衝撃と発光が、円陣の中央まで届くことは無い。

 

 景虎の放つ退魔の白光に囲まれる。五条は缶を踏まず、【無限】を埋め尽くす景虎の八撃を睥睨する。

 

「……まさか」

 

 五条の脳裏に【炎】がチラつく。

 数多の揺らめき(可能性)を内包した、神仏灰燼の炎を。白光に埋め尽くされる八方を無視し、頭上を見上げる。

 

 次の瞬間――――夥しい数の【波旬】の砲撃が天上を赤く染め上げながら、景虎ごと降り注いできた。

 

 

 ************

 

 

 着弾と同時に立つ火柱は遠方から放って尚目視できる程、高く高く空へそびえ立つ。一発で一切万象を灰燼に帰す砲炎を、後光輪を背負いし六腕の骸骨が無限に放ち続ける。次々と突き立ち、地を揺るがす火柱を見つめながら、織田信長は破顔した。

 

「ようやっと――――()()()()()()()()()()()()()()

 

 軍神、長尾景虎。

 生前、毘沙門天の化身と信じられたことで、彼女の霊基には『神性』のスキルが刻まれている。

 

 ならば、それを圧倒した五条悟は何者か?

 ――――『現人神』と呼ぶのではないか?

 

(沖田の馬鹿が先行するのは分かっておった)

 

 斬り合いは気合、と信じる沖田。戦闘に己の人らしさを見出す、景虎。

 そんな二人に授けた、攻撃の届かない相手に攻撃を届かせる術……領域展延。

 

 サーヴァントの中でも有数の敏捷性を誇る二騎の連撃。無下限だけでは速度で封じ込められる。だからこそ、五条はより速い沖田を潰しに行く。

 

 この時、五条は見誤った。

 宝具を使用すれば、単独で連撃を行える景虎を先に沈めるべきだった。だがしかし沖田との戦闘で、五条を疲弊に追い込んだのは、信長にとっては思わぬ幸運であったが――些細な違いでしかない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「貴様に『現人神』という()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 信長は己に【縛り】をかけていた。

 五条悟に『神性』が付与されるまで、自らの宝具と全スキルを禁ずるという縛りを。

 

 そうして発動した六腕の骸骨、その名は【波旬変生・三千大千天魔王】。

 それが放つ砲炎は数多の衆生と神仏を毀す、破神の焔。

 更には【縛り】の底上げにより、砲炎の一発一発が【固有結界】となっていた。

 

 領域または結界ならば【無限】は貫通し、『現人神』となった五条に信長の一撃は絶対的な優位を誇る。

 

「ここまで想定通りに進むとはのぅ。否、あの軍神のおかげか」

 

 最後の最後で宝具を発動し、五条悟を動けなくさせた。だからこそ、信長の砲撃が炸裂できたのだ。

 

「一体いつ儂の思惑に気付いたのやら……さて」

 

 信長が腕を上げる。

 砲撃が鳴り止み、後光輪を背負いし六椀の骸骨が粉骨崩壊する。これまで姿を隠していた寺社仏閣から信長は離れる。

 

 魔力で浮遊させた火縄銃に乗って、悠々と森林地帯の空を飛ぶ。その眼下の光景は――――灰燼すら残さぬ焼野原と化していた。

 

「一応、同盟相手の領地だしのぅ。全て焼き尽くすのは駄目じゃよなぁ~」

(いや……もしかしたら既にアウトかの?)

 

 やり過ぎたかもしれないと思う反面、まだまだ攻勢を緩めてはいけなかったという不安がくすぶる。

 

 神性概念の付与、【縛り】による宝具効果の底上げ、それらを為してもまだ信長は【無限】を貫けたという確証を抱けなかった。

 

(最悪通じなかったとしても、じゃ。砲炎の余波と振動で缶は倒せてる筈じゃろう)

 

 光や振動など、人体のダメージとならない物体・現象ならば【無限】の停止は受けない。缶が五条悟の足元にあったならば、砲撃の地響きは【無限】で防がれずに倒れているはずだ。

 

 地形すら変わってしまい、最早、空き缶を置いた円陣がどこかも分からなかった。信長はため息を吐きながら、荒野に降り立ち、ところどころ熱波で溶解した土を踏みしめた。

 

       「 ノッブみ~~~っけ、缶踏んだ 」

 

 コン、と拍子抜けするほど軽い金属音が、信長の真後ろから鳴り響いた。

 紅眼を丸めて振り返ると、爆睡してる沖田と笑顔で正座してる景虎がいた。

 

「いやぁ、どうすんのこれ。ちょっと賠償請求しちゃおうかな~、これは」

 ニヤニヤと口の端を持ち上げる五条悟を、

 

「……うっそじゃろお主」

 口の端をひくひくと痙攣させた信長が凝視していた。

 

 かくしてカルデアは、五条悟の『お願い』を何でも一つ叶えることと相成った。

 

 呪術高専・カルデア交流試合 

 第四試合 五条悟 VS 織田信長

 勝者――五条悟。

 





アーチャーノッブの宝具【第六天魔王波旬】は固有結界。
そこを縛りの底上げによって、アヴェンジャーノッブの宝具【三千大千天魔王】に上記の宝具効果が融合。結果的に射出する固有結界というナニソレな技が成立したのだった……。

そんな技ですが、普通に【蒼】や【赫】、たまに【茈】で相殺しました。
六眼によって、呪力は一切減らないから大技連発しまくり。
更に五条の無限は基本だしっぱのオートマですが、止める対象はいつでも任意変更可能。地響きの揺れも防いで、空き缶は倒れませんでした。

ダメだ、この目隠し早く何とかしなきゃ。


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