Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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書き上げた衝動で上げちゃった……25時まで待てなくて……
更にちょっと今話、長いかもです。
2話に分けることもできたのだけれど、来週で新章に行った方が綺麗だと思った…
ぜひともお付き合いくだせぇ!



第38話 買うより作った方が早い説

 刻は第四試合が始まった直後に戻る。

 

 五条が出て行ってすぐに藤丸は秘匿死刑部屋から出された。依然として呪符の注連縄が両腕を拘束するが、藤丸はそんなことよりも第四試合のことで頭一杯だった。

 

(ノッブがやらかさないようにノッブがやらかさないようにノッブがやらかさないように)

 

 ただでさえ、これから呪術総監部(腐ったミカン:五条談)の審問だというのに、世界観がぐだぐだ時空に変性したらとんでもないことになるからだ。

 

(お願い沖田さん、景虎さん……暴走しかけたらノッブを止めてね)

 そうして切に祈るが、残念ながら頼みの綱の二人の方が血気盛んになっていた。

 

 そんなことなど知る由もない藤丸は……柱の立ち並ぶ空間に通された。

 柱の中身がくり貫かれ、そこに燭台が置かれている。柱の蝋燭が道標になって、藤丸は固唾を飲み込んでから進んでいく。

 すると途中で、蝋燭の灯りが途切れた。

 

「……こ、これって、進めば、良いのかな」

 

 暗闇の中で自問する藤丸。答えは返ってこない。おそるおそる爪先を前に出していき……コツンと感触。床があることを確認して、暗闇に一歩踏み出す。

 

 

「――――貴様が藤丸立香か」

 

 

 突如として現れた障子の向こうから、突如として声が響いた。

 正面に現れた障子を境に、藤丸を囲むように5つの障子が闇の閨に白く浮かび上がる。呪術総監部……呪術界を取り仕切る上層部達の空間に、藤丸は立っていた。

 

(なんだろう、ここ)

 

 藤丸はこれまでとんでもない身分の方々が座す空間に訪れたことがある。

 エジプトのファラオの間、ウルクの賢王の間エトセトラ。

 そのどれもが王の威圧感が肌を痺れさせるが……同時に深い敬服を自然と覚える暖かな空気だった。

 

 ここは違う。

 

 ひたすらに空気が澱み、肌に重く粘つく。

 この空気感を形容するならそれは……臭気。魂から滲み出る腐敗の匂いが部屋の暗闇に溶け込み、藤丸の肺にもたれかかった。

 

 いやいやと藤丸は首を横に振る。

 消失したサーヴァントを助けるには、上層部の許可(力だけなら五条で充分)が必要なのだ。藤丸は気を取り直して、上層部へのファーストコンタクトを試みる。

 

「あのっ、初めまして! 私はふじま」

「貴様に用はない」

 

 口が塞がらなくて、澱みを思いきり吸い込んでしまう。パチパチと瞬きする藤丸に、障子の向こうの老人は不躾な声を投げかける。

 

「五条から報告は受けている。カルデアにいる顧問と通信を繋げろ」

『――おやおや、どうやら向こうからご指名が来たらしい』

 

 不意に耳に吹き込まれる可憐な声に、藤丸の肩が跳ねる。

 気づけば、青いホログラムが藤丸の顔の傍らに浮かび、映像の向こうで可憐な声の主がウインクする。

 

『ではカルデアを代表して……この私、レオナルド・ダヴィンチが交渉を担当しよう』

 

 こうして、蚊帳の外の藤丸はぼーーっと上層部とダヴィンチちゃんのやり取りを眺めていた。

 

 まとめると、次のような利害関係もとい【縛り】を結ぶらしい。

 

 カルデア側は、残り17体のサーヴァントの情報提供および対応を求める。

 代わりに上層部は、指令に応じて、藤丸が同時に使役できる3体のサーヴァントの協力を求めた。

 

 ジャック・ザ・リッパ―がもたらした被害は、クーフーリンオルタが五条と会敵するまでに祓った土地神3体(1級案件)と宿儺の指の呪霊1体、そしてキャスターのジルドレで帳消しにされた。

 

 そして交渉は今……マスター適正のある呪術師の扱いに入った。

 

『マスター適正が確認されている呪術師は4名。七海建人・禪院真希・伏黒恵・釘崎野薔薇。この4名が英霊契約をすれば、戦力となるサーヴァントは計7騎となる。補填戦力としては十分な筈……』

 

「必要ない」

 

 流れがひりっと変わるのを、藤丸は肌で感じた。

 

『どういうことだろう? 今回の交流戦でサーヴァントの力は充分証明した筈だ。有事の際の戦力は多いにこしたことは無いだろう?』

 

「必要ない」

『……理由は?』

 

「3体で充分だからだ。それ以上の戦力は、我々は必要としていない」

「ヒッ、ヒヒッ、どうしてもその4体を召喚させたいなら、そう願い出るべきだろ?」

「そも宿儺の指の偽物――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()宿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 藤丸は悟る。

 これは誘導だ。

 

 4名の呪術師との英霊契約と聖杯の欠片の所有権譲渡。

 これらをカルデア側の要求とすることで、上層部は何か――――他の利益をカルデアに求める気だ。

 

 そしてすぐ、彼らの狙いが分かる。

 

「藤丸立香と共に、高専内に侵入したサーヴァント……マシュ・キリエライト。アレは真っ当な英霊では無いだろう?」

『真っ当? 何のことだか。彼女もまたれっきとした英雄さ』

「いいや、いいや! 違うなぁ! あれは受肉体だ‼ 呪物を取り込んだ受肉体と同じ‼ ()()()()()()()宿()()()()()()()()⁉」

 

 無意識に握り締めた爪が手の平に食い込む。

 ダヴィンチちゃんが静かに鋭く、藤丸に注意を飛ばす。

 

「呪力……いや魔力の廻りが交流試合で見た英霊と異なる。窓や観戦していた呪術師の報告だ。問うぞ、カルデア。アレは何と言う名称の存在だ?」

「教えぬのなら、この契約は無効だ。直ちに特級術師五条悟に――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 藤丸の頭の中でカッと怒気が駆け抜ける。

 

 第四試合が行われている最中にそんなことを命じ、更に……上層部は英霊を特級呪霊として見ていることがハッキリと分かった。

 ダヴィンチちゃんが下唇を噛むが、ほどなくしてマシュの一つの側面・一つの過去が半強制的に明かされる。

 

『デミサーヴァント。サーヴァントが人間に憑依し、融合した存在だ。でも彼女は極めて特殊なケースだ。事実、多くの命が』

「製造方法は?」

「こちらの技術でも可能か?」

「確率は何分の一だ? 百か、千か? ヒッヒッ、母数は幾らでも。何事もやり様よ」

「サーヴァントは要らぬ。余りに強力、余りに制御不能。しかし! デミサーヴァントならば話は別だ!」

「英霊4体の追加召喚! 偽宿儺の指の所有権譲渡! それに見合う利益は払ってもらわねば!」

 

 バツン、と鼓膜の裏で何かが弾ける音を、藤丸は聞いた。

 次の瞬間、喉から叫びが駆け上がる。

 

「ふざけないで‼ そんな条件呑むわけないでしょ⁉」

『駄目だ! 藤丸ちゃ』

 

 ダヴィンチの制止は止まらず、藤丸の叫びが闇と障子に響き渡る。

 ――にたり、と障子の向こうで唇が裂ける音がした。

 

「ならば……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それで偽宿儺の指もとい聖杯の欠片の所有権を渡し、英霊4体の追加召喚を許可する」

 

「尚、下閾乃鐘(かしきのかね)の発動を確認次第、保留されていた藤丸立香の秘匿死刑を執行。死刑執行役として、特級術師五条悟を任命する」

 

 ********

 

 特級呪具【下閾乃鐘(かしきのかね)】。

 その鐘の音を聞いた装着者の意識を強制的に昏倒・無意識化に落とす呪具である。

鐘の音が鳴る条件は、鐘を贈与した者が設定できる。

 

 上層部が設定した鐘の音の条件は――――()()()()使()

 こうして藤丸立香は魔術礼装・令呪を含めたあらゆる魔術を封じられた。

 

 文字通りの首輪をつけられた藤丸は自身の胸の上で沈黙する呪具を見つめて……思わずぽつりと漏らした。

 

「鐘というより鈴ではなかろうか?」

「うはははははっ‼ マスッ、マスター! なんともいぶし銀な装いじゃのぉ! まるでケモ耳メイド……ぶはっはははははっ‼」

「ノッブごらぁ~なに爆笑してんだごらぁ~。っていうか! 森燃やしてんじゃないよ‼」

 

 大笑いする信長の頬をむにょんと引っ張る藤丸。信長はシュパキランッとキメ顔イケボで宣う。

 

「いやぁ楽しかったぁ、やっぱ放火って最高だよネ。特に『あ、こりゃ勝てないな』って思った後にやる放火は格別ヨ。儂それで敵領地の田畑・城下根こそぎ燃やしまくったもん」

「この倫理観戦国時代がぁ! スッキリした顔してんじゃないよぉ!」 

 

 第四試合終了後、ようやく注連縄から解放された藤丸は五条や信長達と合流できた。

 マシュはというと、出会い頭の抱擁に始まって藤丸から離れず、さっきから背中に顔を埋めている。

 

「よかった……ほんとうによかった……」

 ぼそぼそと当たる吐息の熱さと肩の震えに、藤丸は居たたまれなくなって目を逸らしながら紫髪に手を置く。

 

「心配させてごめん。それに下手こいた」

 一見、無茶な要求をして断らせてから、本命の要求を突きつける。交渉の基本術に、まんまと引っ掛かってしまった藤丸は申し訳なさに苛まれていた。

 

(ダヴィンチちゃんは気づいてたのに……)

 マシュのことを人外と呼ばれ、更には犠牲を度外視してデミサーヴァントを製造しようとした上層部への怒りが、首輪の息苦しさを産んだ。

 

「――良いんです。ありがとうございます、先輩」

 

 言葉少ない分を補うように、マシュは藤丸の手をぎゅっと握る。その感触が藤丸の目に光を宿らせ、胸に炎を灯す。

 

 いつだって、この繰り返し。後輩がいるからこそ、藤丸は先輩として顔を上げるのだ。

 

『という訳で早急に【呪術】を習得させたいんだ。これまでは我流の調査だったけれど、可能な限り再現できる呪術を教えて欲しいんだ。もしかしたら新しい魔術礼装……もとい【呪術礼装】が出来るかもしれないからね』

「オッケー。呪力を出す訓練はもうさせたから、今でもある程度の呪術は使えるかもね」

 

 五条とダヴィンチちゃんはテキパキと話を進めている。前に進もうとした藤丸にとってはナイスなタイミングで。

 

(……ありがたい)

 藤丸立香は恵まれている自覚がある。周りの人に、恵まれている自覚が。

 だからこそ、立ち止まってはいられない。

 

 先程、五条から手渡された服に藤丸とマシュは袖を通した。

 漆黒の制服に渦巻き模様の学生ボタン。

 

「仮入学ってことで……ようこそ、呪術高専へ」

 

 特異点時刻:2018年10月11日。

 現刻を以て、藤丸立香とマシュ・キリエライト両名の呪術高専仮入学が認可された。

 

「という訳で早速、二人には極秘任務を任せたい。本当は悠仁達に任せる気だったんだけど、サーヴァントが多才なのは今回の試合で分かったからね」

 

 高専敷地内の森を半焼、その詫びとして五条に頼まれた『お願い』。

 

 それは、呪詛師もとい特級呪霊の徒党と組んでいる内通者の捕縛。

 

 京都校2年・与幸吉(むたこうきち)――――通称『メカ丸』の捜索兼捕縛だった。

 




オリジナル呪具出しちまったぁ~~~~ひゃあ~~~~。
何はともあれ、ようやく2章完結! 
なっが、トーナメントって長い。想定の倍くらい長くなった。

という訳で、次回から3章メカ丸救出編スタートです!
それが終われば4章……オリジナル渋谷事変編! 限りなく本編に近くしたいけど、メカ丸生きてる時点でだいぶ様変わりすること確定。まとめきれるのか、自分ァ! 
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