Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変―   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第4話 五里霧中―乱

「 バチ殺し‼ 」

 

 弟を刻まれた憤怒に、コンプレックスである背中を見られた赫怒が加わり、壊相は躊躇なく【(きゅう)】を解除。

 殺人鬼の頬に浮かぶ薔薇の紋様が消失するが、次瞬。

 

蝕爛腐術(しょくらんふじゅつ)極ノ番(ごくのばん)――――翅王(しおう)

 

 背中から吹き出した毒血のレーザーが、背後にいた殺人鬼の肩や太腿に突き刺さる。 ドドドンッッ!! と、血の噴射で殺人鬼は吹き飛ばされ、木の幹に叩きつけられた。

 

「いっ……たぁい」

 

 苦痛に歪む幼き相貌目掛けて、壊相は背から出ずる蝶の羽に模した血液を噴射する。

 幾本ものレーザーが殺人鬼の四肢を、臓腑を貫き、腐蝕の痛みを与える。

 喉が張り裂けるほどの絶叫が飛び出て、死ぬほどの激痛に殺人鬼が転げ回る。

 見てくれは幼女、けれどそんなことは壊相の殺意を収める理由足りえない。

 

(朽では殺さん! 翅王で全身を貫く!)

 

 ものの数分で死を与える【(きゅう)】よりも、【翅王(しおう)】で嬲ることを選択する壊相。

 霧に紛れさせる暇も与えず、【翅王(しおう)】による蹂躙を始めようとして、

 

 ピィィィィッッと、呪力の弦を引き絞る音を鼓膜が拾う。

 

 咄嗟に飛び退いた瞬間、さっきまで壊相がいた空間を呪力の矢が穿つ。

 

 遠方の木々まで貫き倒れていく矢の破壊音を聞きながら、ケタケタと笑う呪霊に意識を傾ける。すぐさま壊相は【翅王(しおう)】の毒血を噴射。

 

 殺人鬼を産み落とした影響か、木の幹にもたれる呪霊に六条のレーザーが迫る。

 対し、呪霊は笑みを消さず、全身に呪力を漲らせ、両腕を前に突き出すことで周囲に展開。

 

 呪力のバリアがレーザーを掻き消し、飛び散る飛沫が木々を、地面を溶かした。

 壊相は【(きゅう)】を解除した己の浅慮さに、舌を打つ。

 

(あの小娘にばかり気を取られた。宿手の呪霊にもう一度当てるには……)

 

 そこまで考えて、壊相は思考を止める。

 八十八橋に巣くう宿手の呪霊には、弟の血塗とのコンビネーションで毒血を被せ、【(きゅう)】で祓った。だが、もう弟はいない。

 

 ――俺達は三人で一つだ。

 思考を止めた脳裏に、長兄:膨相の言葉がよく響く。

 

(ごめん兄さん)

 戦闘中、2対1の状況でも堪え切れず流れる慈愛と後悔の涙。

 その一瞬の涙に躊躇する魔性は、この場にはおらず。

 

「しゃあ!」

 

 濃霧に紛れ、背後に迫った殺人鬼が壊相の背中を切り裂いた。バツ印を刻まれた苦痛に顔を歪めながら、展開していたはずの【翅王(しおう)】からレーザーを射出。

 

 しかし殺人鬼は空中で身をよじり、周囲の木々を足場にレーザーの間をかいくぐる。

 

(っ、まただ!)

 

 壊相は違和感を覚える。

翅王(しおう)】による周囲警戒・呪力による肉体強化。どれだけあの殺人鬼の奇襲を警戒していても、必ず先手を取られる。

 

 霧に溶け込み、気配に気づいた時には斬られている。

 

「おかあさん。無茶しないで」

 

 レーザーを避けきり、殺人鬼は今も横たわる呪霊の前に立ちふさがる。呪霊の身を案じ、下がらせるその光景は先刻の自分達と重なる。

 

(……すまなかった、血塗)

 

 自分の不甲斐なさを呪いながら、眼前でナイフを舐める殺人鬼を睨み据える。

 

「今すぐに、私が、仇を取る」

「あはは! お兄さんも解体してあげる! それでお揃いだよね!」

 

 無邪気に、邪気を放ち、殺人鬼は小さな体躯を縮めさせる。

 バネを抑え込むように、地面に足をめり込ませて、二刃のナイフを逆手に構える。

 濃霧立ち込める大気がひりつき、隙と間合いを伺う両者。

 膨れ上がる呪いと殺意が今まさに弾けようとした瞬間、

 

 

「―――――――【(ぬえ)】」

 

 

 猛風が、霧の都を払い飛ばした。

 





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