Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変― 作:ビーサイド・D・アンビシャス
「 バチ殺し‼ 」
弟を刻まれた憤怒に、コンプレックスである背中を見られた赫怒が加わり、壊相は躊躇なく【
殺人鬼の頬に浮かぶ薔薇の紋様が消失するが、次瞬。
【
背中から吹き出した毒血のレーザーが、背後にいた殺人鬼の肩や太腿に突き刺さる。 ドドドンッッ!! と、血の噴射で殺人鬼は吹き飛ばされ、木の幹に叩きつけられた。
「いっ……たぁい」
苦痛に歪む幼き相貌目掛けて、壊相は背から出ずる蝶の羽に模した血液を噴射する。
幾本ものレーザーが殺人鬼の四肢を、臓腑を貫き、腐蝕の痛みを与える。
喉が張り裂けるほどの絶叫が飛び出て、死ぬほどの激痛に殺人鬼が転げ回る。
見てくれは幼女、けれどそんなことは壊相の殺意を収める理由足りえない。
(朽では殺さん! 翅王で全身を貫く!)
ものの数分で死を与える【
霧に紛れさせる暇も与えず、【
ピィィィィッッと、呪力の弦を引き絞る音を鼓膜が拾う。
咄嗟に飛び退いた瞬間、さっきまで壊相がいた空間を呪力の矢が穿つ。
遠方の木々まで貫き倒れていく矢の破壊音を聞きながら、ケタケタと笑う呪霊に意識を傾ける。すぐさま壊相は【
殺人鬼を産み落とした影響か、木の幹にもたれる呪霊に六条のレーザーが迫る。
対し、呪霊は笑みを消さず、全身に呪力を漲らせ、両腕を前に突き出すことで周囲に展開。
呪力のバリアがレーザーを掻き消し、飛び散る飛沫が木々を、地面を溶かした。
壊相は【
(あの小娘にばかり気を取られた。宿手の呪霊にもう一度当てるには……)
そこまで考えて、壊相は思考を止める。
八十八橋に巣くう宿手の呪霊には、弟の血塗とのコンビネーションで毒血を被せ、【
――俺達は三人で一つだ。
思考を止めた脳裏に、長兄:膨相の言葉がよく響く。
(ごめん兄さん)
戦闘中、2対1の状況でも堪え切れず流れる慈愛と後悔の涙。
その一瞬の涙に躊躇する魔性は、この場にはおらず。
「しゃあ!」
濃霧に紛れ、背後に迫った殺人鬼が壊相の背中を切り裂いた。バツ印を刻まれた苦痛に顔を歪めながら、展開していたはずの【
しかし殺人鬼は空中で身をよじり、周囲の木々を足場にレーザーの間をかいくぐる。
(っ、まただ!)
壊相は違和感を覚える。
【
霧に溶け込み、気配に気づいた時には斬られている。
「おかあさん。無茶しないで」
レーザーを避けきり、殺人鬼は今も横たわる呪霊の前に立ちふさがる。呪霊の身を案じ、下がらせるその光景は先刻の自分達と重なる。
(……すまなかった、血塗)
自分の不甲斐なさを呪いながら、眼前でナイフを舐める殺人鬼を睨み据える。
「今すぐに、私が、仇を取る」
「あはは! お兄さんも解体してあげる! それでお揃いだよね!」
無邪気に、邪気を放ち、殺人鬼は小さな体躯を縮めさせる。
バネを抑え込むように、地面に足をめり込ませて、二刃のナイフを逆手に構える。
濃霧立ち込める大気がひりつき、隙と間合いを伺う両者。
膨れ上がる呪いと殺意が今まさに弾けようとした瞬間、
「―――――――【
猛風が、霧の都を払い飛ばした。