Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変― 作:ビーサイド・D・アンビシャス
更新遅れてすみません。雨続きのせいか肩が重い……
藤丸立香に結ばれた四つの糸。
それはマスターとサーヴァントを結ぶ
糸を通じて藤丸はサーヴァントに魔力を供給し、糸の繋がりを意識すればサーヴァントの概ねの位置も把握できる。
目の前にいる虞美人、高専内にいるメディア、堤防で戦っているマシュとの糸は今も繋がってる感覚がある。
「――――え?」
けれど、一本。
ジェームズ・モリアーティと繋がる糸だけが、たった今……途切れた。
それが意味することを悟れない藤丸では無かった。ついで言えば、その糸が切れる感覚に痛みを覚えこそすれ、動揺する精神も無かった。
「――先輩、今すぐマシュの所へ行ってください」
「はぁ⁉」
藤丸の唐突な指示に虞美人は声を荒げ、疾走にブレーキを掛ける。途端、踵と道路の間に生じた擦過音が霧の中、甲高く響き渡る。
人攫いもしくは米俵のように藤丸を担いでいた虞美人は停止するなり、ぼとんと藤丸を捨て落とした。
「えぇえ……後輩の扱い雑ぅ……」
「お黙り後輩! そんなことで傷つくほど柔な鍛え方されてないでしょうが! それよりも……何? この状況でマスターを一人放っていくバカになれと。そう言ったのかしら?」
「アラフィフがやられた」
令呪を刻まれた手を掲げ、今、糸が繋がっている虞美人に見せる。モリアーティとのパスが切れたことを言外に示し、それを理解した虞美人の眼がすぅっと細められた。
藤丸はそのタイミングでキッと眼差しに力を込め、自分の意見を訴えかける。
「アラフィフが相手していた敵がマシュの方に行くかもしれない。だから」
『その心配は無イ』
「ひゃあっ⁉」
藤丸は文字通り飛び上がって、口をふさぐ。
唐突に耳元から人工音声が飛んできたからだ。耳元に手をやると、何かヘッドフォンのような固い金属質の物体が引っ付いていた。
『聞こえるカ藤丸立香……ってやめろやめろやめロ! 俺だメカ丸だ与幸吉ダ‼』
自分の悲鳴が恥ずかしかった藤丸は耳についた機械をガンガン道路に叩きつける。しかし機械から流れた人工音声の名乗りに気付いて、破壊の手を止めた。
『一度しか言えなイ。一度で覚えロ。奴らの決行日は、10月31日ダ』
藤丸は素早く夏油やツギハギを始めとした呪霊連合の顔ぶれを思い浮かべる。
「何をする気なの?」
『っ……分からなイ』
「はぁ? 何よそれ」
虞美人が怪訝な声を上げて、小型メカ丸の傀儡を睨みつける。
自分が荒唐無稽なことを口にしている自覚があるんだろう。小型メカ丸から聞こえる語気に苦しみが混じってきた。
「信じられないのは分かル……だが成就すれば、日本が確実に終わル……頼む、必ず高専に、五条悟に伝えてくレ! 根拠が無くて信用できないかもしれないが……」
「――分かった! 10月31日ね、ぜったい五条さんに伝える!」
根拠は無くとも、藤丸立香はすぐに小型メカ丸の言葉を信じた。
彼女にとって、メカ丸の苦し気な口調には覚えがあるから。藤丸自身、信じてもらいたくても信じてもらえなかった経験があったからできた判断だった。
『現状を伝えるゾ。敵勢力に藺草の笠を被った法衣の男と円盾の騎士が加わっタ。法衣の男はモリアーティを殺害。円盾の騎士はこの道の先で陣取っていル』
ドクッと心臓が嫌な感じに跳ねる。藤丸はレイシフト直前に見た夢――――法衣の男がギャラハッドを召喚した夢を思い出した。
(あれはやっぱり……勘違いじゃなかった)
藤丸は顔を伏せた。
メカ丸はモリアーティから授けられた行動方針を二名に伝える。
『俺の本体も合流するが、まともな戦力は虞美人だけダ。虞美人を軸に戦闘、騎士を突破して帳の外に脱出するゾ』
「……どうやらそういう訳には行かないみたいよ」
『エ?』
ここまでずっと閉口していた虞美人が霧に覆われた道の彼方を見つめ、そう呟いた。短く戸惑いの声を上げるメカ丸だが――すぐにその意味を理解して、叫ぶ。
『走レ、藤丸立香‼』
同時に藤丸も気付く。
足裏にまで伝わってくる振動が、道路の上の砂利を舞い上がらせていることに。
その振動の正体が霧向こうから押し寄せてきていることに。
そしてメカ丸の叫びで弾かれたように顔を上げた藤丸は、振動の正体をその目に映す。
――――改造人間の大群を。
「~~~っ! 今日、こんなんばっか!」
「えぇそうね。ほんとうんざりするわ。分かったらさっさと行きなさい後輩」
本当にうんざりした顔で虞美人は大群の前に一歩出て、だらりと腕を横に突き出す。
気だるげだけど、ここから先には進ませないという意思を表示した腕を尻目に、藤丸は駆け出した。
「ねぇ! 幸吉君、聞きそびれたんだけど!」
『なんだこんな時二⁉ 真人が狙ってるのはお前だゾ⁉ とにかくここから離れて……』
「マシュはどうなったの?」
顔の横を併走して飛行する小型メカ丸が沈黙する。
最初、マシュを危惧していた藤丸にメカ丸は『心配ない』と声を掛けた。いったいあれはどういう意味なのか? 藤丸に見つめ続けられる小型メカ丸は重苦しい雰囲気で、藤丸の問に答える。
その答えに藤丸立香は――――「は?」と目を見開いた。
****************
(これは……どういうことなんでしょう?)
マシュは今しがた起こった出来事、その結果を見下ろして目を丸めていた。
鐘蓋の中に存在するジャック・ザ・リッパ―の霊基に気を取られ、ツギハギに背後の不覚を取られたマシュ。
ツギハギは手をドリル状に変形させて、背中側からマシュの心臓を穿とうとした。
肩に手を掛けられ身動きを封じられていた。攻撃も防御も、何もかもの対応が遅れ、一瞬のミスで命を失いかけたマシュを救ったのは―――――――
【蒼穹破殻・拡張之一……雷迎招】
鐘蓋の指先が眩く閃光する。
空間が一瞬の内に一万℃に熱せられ、膨張した空気の爆発力が音速に達する。
刹那、雷鳴が響いたと同時にマシュの背後の存在が雷霆に撃ち抜かれた。
そうして今、マシュは
「カッ……カカッ」
ツギハギは舌を出して痙攣し、体内で収まり切れない電荷がプラズマとなってバチバチと放出、大気を焼いている。
(なぜ、どうして私を……助けたんですか?)
マシュは振り返り、天上を見上げる。
雷を放った、存在を。
自分の命を助けた存在を。
ジャック・清姫・クーフーリンオルタ……複数の霊基を内包する呪霊を。
「……鐘蓋」
ツギハギが言っていた法衣の男の名前を口にして、見上げるマシュ。
そして鐘蓋もまたマシュをずっと見下ろしている。
両者の視線が交錯する。
一方は困惑、もう一方は――――羨望。
自分の胸の内に戸惑うマシュ。
これまで自分以上の存在が強敵に回ることは多々あった。その度に恐怖を覚え、その度に恐怖する己を克己し、足を前に出してきた。
鐘蓋。
この存在もこれまでの敵同様、マシュよりも遥かに上位の存在であることはマシュ自身が肌で理解していた。
しかし……湧かないのだ。
恐怖が、湧かないのだ。
まるで自分自身を見ているように思えてしまって、敵意を、抱けない。
「どうしてあなたは……私をそんな風に見るんですか?」
(なぜそんなに――――羨ましそうな目で)
***************
「どうして助けたんだい?」
夏油は真人に向かって雷を放った鐘蓋に、疑惑の視線を送る。
10月の初頭、壊相と血塗にお使いを頼んだ後、入れ替わるようにしてやってきたのが鐘蓋だった。彼から『聖杯戦争』や『サーヴァント』の存在を知り、その有用性を実感した。
鐘蓋が差し出してきたとあるサーヴァントの利便性は、協力を要請していた数多の呪詛師を合わせても上回るほどだった。
だから夏油は鐘蓋との同盟を受け付けた。元々、真人達の特級呪霊達との関係もビジネス。その相手が一人増えようと構わないと思っていたが……
【
「……名乗った覚えは無いんだけどなぁ」
その名は、夏油傑の中に潜む者の名だ。
1000年間、他者の体を転々としてきた、人類のネクストステージを求めている本来の自分の名だ。
「どうして知ってるんだい? 誰かから聞いた?」
【それは……】
藺草の笠、その縁を指で押し上げる鐘蓋。
羂索もとい夏油は、僅かに垣間見た鐘蓋の素顔に……1000年の時で忘れかけていた驚愕の味を思い出す。
【
鐘蓋の顔は、羂索が最初に生を受け、生まれ得た顔だったからだ。術式を行使する前、誰かと入れ替わる前の顔が、再び笠に覆われる。
「――1000年ぶりに見たよ。案外覚えてるものだね、自分の顔ってものは」
【マシュ・キリエライトはこのまま見逃す】
「無視しないで欲しいなぁ……」
【あ奴は吾の計画の要なのだ。未だ利用段階に到達していないがな。
「私の計画? 確かに渋谷では真人にも頑張ってもらうが……要という訳では」
【
ピクッと、腕が震える。
それは羂索の意志の揺らぎが起こした行動。
今ここで殺す可能性がよぎったが、すぐにその考えを消したという一連の思考が起こした行動だった。
「まぁいいか……邪魔する訳でもなさそうだし、今や渋谷の計画においてサーヴァントは不可欠の存在になってしまった」
【それで良い。吾も渋谷で騒乱を起こしてもらわねば、計画に支障をきたす】
「記憶さえ消してくれれば、あの子の扱いにも目をつむるよ。で、実際の所、あの子どうするんだい?」
羂索は堤防の上でこちらを見上げている紫髪の少女、マシュを一瞥する。すると鐘蓋は手を持ち上げ、指先からポゥンと雲を生み出す。
【藤丸立香の元へ届ける。ギャラハッドにも手出しはさせんよう命ずる】
雲はまるで西遊記の如くフワフワとマシュの元へ飛んでいき、目を白黒させるマシュをあっという間に運んでいく。
鐘蓋曰く、記憶消去は94%済んでいるらしく、与幸吉や藤丸達は既に夏油の顔も能力も忘れている。
【ジェームズ・モリアーティだけは別だがな。あの推理力……例え忘却したとしても吾と汝の計画に気付く】
「あぁ、だからあの怪獣をけしかけたんだね。数秒と保たずに霧散したけど」
【クーフーリンオルタ……。霊基が破壊されれば宝具情報を全て読み込めたが……五条悟め、無力化せしめるとは】
「なにか違うのかい」
【レイシフト帰還をさせてしまえば、
初めて鐘蓋の声に動揺が滲み出た。
これまでずっと虚空のような印象だった鐘蓋の、その反応に新鮮味を覚えた羂索は腕を組んで尋ねる。
「どうしたんだい?」
【吾が簒奪したサーヴァント、その一騎が移動を始めた】
カルデアから奪った20体の混沌・悪サーヴァント。
一月にも満たない短期間で真人や羂索が早期にサーヴァントを取りこめたのも、鐘蓋の感知能力のおかげだった。
「ふぅん? 移動ね……今までのサーヴァントは自分に縁ある場所に留まる傾向が多かったけど、それとは違うんだね」
【あぁ、京都から東京へ高速で移動している】
「京都から? それって……京都校に住み着いていたあのサーヴァントかい?」
呪術高専京都校に潜んだ、サーヴァント。
鐘蓋をして、「あの存在には手出しするな」と忠告した埒外。
****************
「歌姫せーんせ。着きましたよ~」
「――あら、三輪さんありがとう。知らせてくれて」
東京駅に着いた新幹線の中、青い髪の少女が座席で眠りこけていた袴姿の美女に呼びかける。美女は傷跡の一つもない顔で淑やかに微笑みかけた。
窓から差し込む光が照らしたこともあって、美女の微笑みは神々しささえ感じるほどのものとなった。
青髪の少女は思わず息を呑み、放心するが……
「三輪。この荷物持って」
不躾に自分のキャリーバッグを押し付けた黒髪の美少女によって、放心状態から帰ってきた。
ツカツカと同い年とは思えない大人びた歩き方で遠ざかっていく美少女に、三輪は「も~」と唸って追いかける。
「待ってよ真衣~」
「三輪さん。わたくしも手伝うわ」
美女は三輪が手に持つ荷物を受け取ろうとして……ふと三輪がじぃと自分を見つめていることに気付く。
美女が首を傾げた途端、三輪はハッと我に返る。また見惚れていたらしい。
「歌姫先生……最近すっごい綺麗になりましたよね」
「フフフ、そんなことないわよ。前から変わってないわ。でも――――ありがとう」
細く滑らかな指先が青い髪にするりと入り込む。明らかに鼓動を高鳴らせる三輪。
美女の指先が青髪を梳いていき…………頬に手の平を添えようとしたところで、着信音が鳴る。
『ちょっと二人とも! 早く出なさいよ! いつまで待たせる気⁉』
「え、あっ! ごめんごめん、すぐ出るね」
三輪はたははと頭を掻いて笑うと、キャリーバッグを引いて新幹線を出た。美女もその後に続いて新幹線を出ると――――一斉に周囲からギラギラした視線を向けられる。
新幹線のホーム内を行き交う男性に。
美女はそんな獣同前の視線を向ける男達に舌なめずりをするが――「我慢我慢」と言わんばかりに首を横に振って、談笑する三輪と真衣に付いて行った。
最近、忍者と極道・ゴールデンカムイ最新話まで読んだ。一つどころの戦いをあまり長く書くの良くないなと思いつき、急遽プロット変更。
予定より早めに出てきたこの美女は果たして誰〇院なのか!
一方その頃の七海宅――多分、マンションの一室。
七海「………………(ほとほと呆れ果てた目)」
おっきー「あ、ナナミンおかえり~」
七海「帰宅早々、憂鬱ですが部屋の掃除に取り掛かります」
おっきー「あーー!! ナナミンやめてぇーー!! ゲーム機は不燃ゴミじゃないから! 乱暴しないでぇぇえぇぇぇ! 乱暴するなら私に」
七海「あなたご近所に聞こえるよう言ってるでしょう」
帰宅早々と砂漠葬送ってなんか似てる。さらば、おっきーのスイッチ&プレステ