Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変― 作:ビーサイド・D・アンビシャス
『伏黒、恵君だよね?』
自分の声が聞こえた。
視界に、自分が映っていた。
五条悟。
一人で最強に成ったばかりの――――青き青春。
『アンタ誰?』
小学一年生にしては鋭すぎる目で訝しむのは、幼い頃の教え子。
若い自分と幼い教え子が幾ばくか語り合い、結論をつけ、若い五条悟が背を向ける。
そしてつぶやく。
何を?
『強くなってよ。僕に置いて行かれないぐらい』
甘えだ。
唾棄すべきというほどでも、甘受すべきというほでもない、たわいのない甘え。
夜眠る前、幼子が母の袖を握りしめるような、甘え。
『伊地知、後でマジビンタ』
『ま……まじびんた?』
今度は、虎杖悠仁が死んだ時の場面だ。
そうだ、この時も自分は生徒を失っていた。
守れていなかった。
『教師なんて柄じゃないそんな僕がなんで高専で教鞭をとっているか聞いて』
『なんでですか…?』
『夢があるんだ』
何が夢だ、と反吐が出そうだった。
視界の中の五条悟に、夢を見てばかりいる自分に憤懣やるかたない。
――夢じゃなくて現実を見ろよ。
『クソ呪術界をリセットする。上の連中を皆殺しにするのは簡単だ。でもそれじゃ首がすげ替わるだけで変革は起きない』
――でも、それが最適解だったよ、結局。
あの、どうしようもない発情女モドキが、そうしたけど。
『そんなやり方じゃ誰もついてこないしね』
ついてこなくてもいいだろ。
一人でも――なんでもできる。
『だから僕は教育を選んだんだ。強く、敏い仲間を、育てることを』
教え子達が歩いている。
棘が、パンダが、真希が、乙骨が、野薔薇が、悠仁が、恵が、秤が、綺羅羅が、肩を並べて歩いている。
けれど僕の
教育者になろうとも――――|最強≪ぼく≫に並び立つ生徒なんて、今後現れる訳がない。
見る、見る、見る。
自分の
甘い甘い、夢を見ていた日々を。
そして見ろ、見ろ、見ろ。
現実を。
すぅっ、と内省していた六眼と魔眼を開く。
分子の一粒一粒までを、六眼が感知する。
その一粒一粒にも、赤黒い、
自分の後釜になるかもしれないと期待していた生徒――乙骨が、無い脚引き摺って叫んでる。――ケダモノと化して、空を見合上げる真希に、必死に声を呼びかけてる。
空が、大地が、森が、大気が、――――愛すべき生徒二人ですら、今も【線】でひび割れている。
「あぁ……」
ようやく、其れは息をした。ためて、息をした。
(今はただ……)
光輪を背に携え、無数の眼球を宙に浮かべていた、貌の無い霊が――――悟る。
世界は斯くも脆いと。
命とは斯くも儚きと。
悟り、霊は掌印を結ぶ。
右手を天に、左手を地に指し示し、告げる。
「 天上天下唯我独尊 」
(ただただ、この世界が寂しい)
そうして無貌の霊――――五条悟は【特級呪霊】に解脱した。
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(ぜんぶけしてって、マイはいってた。)
ケダモノは欠片ばかりの思考で、思い巡らせる。
それは魂にかけた【縛り】。
すべて、すべてだ。
ギランッ! と天空を睨み上げる。
存在ごと【死の極点】に落とされた殺生院キアラ、その霊基が、移動している。
蒐集されている。
天蓋の呪霊【鐘蓋】の元へと。
腹の奥から、喉の奥から、獰猛な唸りが響き、轟く。
「まっ、て……っ! 真希ざ……!」
奔る、駆ける、跳ぶ。
それだけで片足で追い縋ってくる奇妙な少年の、血反吐交じりの叫びは遠くなる。
それなのに少年は歯をギリっと食いしばって、苦渋の顔で呪力を絞り出す。
「……ッ、リ、カァァァーーーーーーーーーー‼‼‼‼」
自分も跳躍して、虚空に揉まれているというのに、着地のことも考えずに、手を伸ばす。
伸ばした手のひらの先で、黒い渦が生じ――――壊れかけの【リカ】が顕現する。
なんとか体裁をなした、今にも崩れそうなリカがその巨腕を伸ばす。
【GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA―――――――――――――――――――――――――――――――――‼‼‼‼‼】
美しきケダモノの、その後脚を、握り潰してでも掴んでやる!
そう思わせる迫力でリカは手を伸ばして……。
『蝶よりも、花よりも、丁重に扱え』
乙骨の声を思い出した。
それは有る筈の無い、
走ったノイズが、バグを引き起こし、伸ばした手の力が緩む。
するりと、ケダモノは、蝶のように華麗に、通り過ぎ去っていった。
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一方その頃―――――
「なぜ儂が貴様らを迎えに山まで
山中のカーブを華麗に曲がり降りながら、ハンドルをバンバン叩いて、頭富士山は社内で噴火していた。
アマプラで呪術0見返しました! やっぱりミゲル最高!
五条先生を呪霊にするのは、キアラさん出した時から考えたけど、ようやく出せたわ~。
呪霊五条の、なんとなくの見た目は「フォスフォフィライト第五形態」のイメージです!