Fate/CurseRound ―呪怨天蓋事変― 作:ビーサイド・D・アンビシャス
虎杖悠仁の身体能力は、常人のそれを遥かに凌駕している。
駆ければ50メートル3秒という速力で誰も追ってこれず、投げ方が分からないからと言って砲丸をピッチャー投げした(砲丸はサッカーゴールにめり込んだ)。荒事だって歩き方から相手の力量を読めるくらいには、喧嘩慣れしている。
だからといって、虎杖はそれらを誇ったりなどしない。精々、「俺ちょっと動けるかも」というささやかな自信をつける程度だ。
――俺にしか出来ない、なんて思ったことない。けど、どんな相手でも早々、遅れは取らない。
そんな甘い自己分析を、嘲笑と共に蹂躙したのが、この呪霊だった。
死を覚悟して殴りつける虎杖。その決死の想いを面白半分に小突き回していた特級呪霊……宿儺の指の呪霊は今
―――――――――虎杖に真っ向から殴り潰されていた。
「ガァァーーーーッ‼」
血反吐の混じった雄叫びをあげて、指の呪霊が高出力の呪力矢を引き絞った。原理は呪力をエネルギーとして撃ち出す、児戯のようなもの。しかし、指に宿る馬鹿げた呪力量と特級クラスの出力をもってすれば、児戯は爆風の如き純粋な暴威を振るう。
放つことができたなら。
地を這うような低姿勢から腕を伸ばした虎杖が、呪霊の手首を掴む。虎杖はぐいっと呪霊の手首を上にあげて、呪力矢をあらぬ所へ飛ばした。自らの呪力が遠くの夜空に爆ぜるのを見た瞬間、呪霊の視界いっぱいに虎杖の縦拳が迫った。
ゴギャンッ‼ と、炸裂した虎杖の拳が、呪霊の剥き出しの歯を砕き飛ばした。
「ッ~~~~~~~~‼⁉」
呪霊にとって肉体の再生は容易だ。呪力で構築された体なので、欠けた部位に呪力を流し込めば再生する。しかしその分、呪力は消費する上、何より痛みは感じるのだ。
拳の衝撃を受けきれず、後方へのけ反る呪霊の後頭部に、虎杖は両手を掛けた。
「 下がんな 」
膝を蹴り上げると同時に、虎杖は呪霊の頭部を己の膝へと引き寄せた。呪術師の中でも一歩抜きんでた腕力と脚力が、呪霊の頭を挟み潰す。
ボジュンッ! と、たっぷりと中身を溜め込んだ水袋が一気に破裂するような音が鳴る。呪霊は青黒い血を撒き散らしながら、無音の悶絶に沈められるが――――がら空きの胴体を殴らない拳士はいない。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッッ‼‼‼‼‼
1級術師に引けを取らない拳打が呪霊の胴を滅多撃つ。肉がめり込み、骨がへし折れても尚撃ち続け、内臓は引き千切れ、砕けた骨の破片が体内に散らばる。
4か月の時を経て、虎杖はかの呪霊を拳で蹂躙し、殴り負かしていた。
「――――――ッッ、ウヌァァァアアアアアアアアッ‼」
拳嵐に晒される中、指の呪霊が絶叫し、腕を振り上げる。その手の平には橙色に光り輝く高圧縮した呪力塊。
虎杖を叩き潰さんと、上から下へと振り下ろし、呪力塊が解き放たれた。
森全体が震え、その余波で木々がドミノ倒しのように倒れていく。自分の手が行った破壊の振動に悦を感じた呪霊は、腕を振るって土煙を晴らす。
呪霊の目の前には、呪力塊が圧し潰してできた大地のクレーター。そこに虎杖の姿は無く、血も肉も骨も、虎杖悠仁の存在を証明する一切のものが消え失せていた。
「……けっ、ひひ、ヒャハッ、ヒィァッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ‼‼」
背後で爆ぜる、百万分の一の火花。
「アハッ、アハッ、アッ……バッ、ぶぉ…………?」
ごぼりと込み上げた血潮が狂笑を塞き止める。
目を点にした呪霊は静かに、自身の身体を見下ろす。
右腕を巻き込んで、上半身の右側が、ごっそりと削れ飛ばされていた。
「ハッ⁉」
現実を受け止め切れない呪霊は怖気に震えながら、己の背後を振り返る。
そこには、黒い火花の寵愛を受けた術師が、悠然と立っていた。
「――――黒閃」
狙って出せる者はいない、呪力と空間のひずみが産み出すクリティカルヒット。
残心のように、その拳閃の名を呟いた虎杖は、砂上の城の如く崩れ落ちる呪霊を、ただ静かに見下ろしていた。
ひぃ~~バタバタしてて慌てて投稿してしまいました。
ちょっとリアルの方が立て込んできたけど、続ける意思はあるので、引き続き週1投稿していきます!
そう、例え呪アニが終わっても(泣) はよ2期こいこい