新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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王国への帰還

 

 ─壊滅の傷痕と希望の女神─

 

 

 ダイが空に消えた黒の核晶(コア)の爆発の後、最終決戦前に備えていた砦に一旦戻り、大戦後の疲れを癒していたカール王国の女王フローラは、その翌日の午後には共に生き残った配下の兵士達と既に魔王軍に破壊し尽くされ、廃墟となっていたカール王国城に帰還していた。

 カール王国は世界の中でも特に武力に優れた国として名を馳せていた。隣国のベンガーナが戦車や砲弾などの兵団に於いて名を馳せているのに対し、こと騎士団としての武力はベンガーナの兵士を凌ぐ程で、世界最強のカール騎士団と呼ばれている程だった。

 しかし、そんな騎士団も魔王軍の超竜軍団の前にたった5日でほぼ壊滅されてしまった。

「我がカール王国がこんなみる影もないことに………」

「ちくしょう……!俺達だけみすみす生き残ったって!どうすりゃいいんだ!」

 フローラのお供について生き残った兵士達は悔しさを露にして言い放った。

「そうね……あの勇壮なカール城も……」

 そう言うとフローラは愁いを含んだ眼差しでかつて城があった場所を見つめた。

「女王様、これからどうすれば……」

 側近の兵士がフローラに神妙な面持ちで訊ねる。すると、フローラは愁いていた表情をその一瞬で消し去り、ニコッと笑ってその場にいた全ての兵士に言い渡した。

「何もなくなってしまったわね、だけどモノは考えようよ、これからどんな形にでも国を作り直していけるわ!だってもう魔王軍に怯える必要はないんだから!みんな忘れないで!私達は!ここにいる全員は!勝ったのよ!」

 そう皆に力強く言い放つ女王フローラの眼差しは驚く程に輝いていた。かつてこのカールの地に於いて勇者アバンのその言葉が皆に勇気を与えたように、今この時のフローラの言葉は皆に希望を注いだのだった。そうしてやがて兵士達は皆、フローラの言葉にその力を取り戻し気持ちを新たにフローラの指示の元、国の復興に向けて歩み出した。

「ところで、フローラ様。アバン様はいつ頃お戻りになるのでしょうか?」

 兵士の一人がフローラに訊ねる。

「今は、あの黒の核晶(コア)による爆発でダメージを負ったポップの回復治療にあたっているから、彼の回復を待ってだと思うけどアバンも必ず戻ると言っていたから、それまでは私達で頑張りましょう!」

 フローラは拳を小さく掲げて言った。

「そうですかっ!わかりました!アバン様がお戻りになられたら色々とご教授頂きたい事もありますので、楽しみにしながら頑張ります!」

「あら、ご教授って何を?」

 フローラが兵士の言葉に首をかしげると……

「それは、やはりあれ程の立派なお弟子さん達がいらっしゃる方ですから、アバンの使徒の方々とまではいかないにしても我々も鍛えて頂きたいたいと思います!」

「ええ!是非とも!」

 その場の兵士達は皆、一同に頷いて、アバンの教えを求めた。

「あらあら、アバンは引く手数多のようね、まぁでもずっと何処かに消えていたのだから戻ってきたら、うんっ!とこき使ってあげましょう!」

「あははははは!!」

 そうして、フローラとカールの兵士達はアバンの帰りを待ちながら国の復興に取り組んでいった。フローラは先ず始めに多くの傷付いた民のことを第一に考え、生き残った国民のケアや家族を亡くした者達への心身を支え、更に生活の面でも立ち直る為の政策を次々と推し進めていった。フローラはそれぞれの役割分担を決めて指示を出しながら、自身も兵士達と共に作業にあたる。瓦礫の撤去などの力仕事は騎士団の兵士達に任せて、回復魔法が使える者や薬草や医療に明るい者達は救護班として配置し、フローラ自身もまた、怪我人の介護や未だに残されたままの遺体の弔い等を担って、時に励ましや慰めの言葉を届けながら一人一人に寄り添っていった。

 そんな中、彼女はある家族に出会った。父親と母親と七つになる女の子の三人の家族。しかし、父親は魔王軍が町を襲った際、大怪我を負ってしまい、母親もまた献身的に夫の介護を務め、更に子育てや今後の生活の不安なども重なり、見るからに疲労困憊な様子だった。その為、フローラは救護班の兵士を呼び迅速に父親への回復呪文での治療を指示し、母親には疲労回復効果のある薬草やスタミナの種を施しながら身体の回復を図り、これまでの苦労を優しく労いながらその心のケアも忘れなかった。

 すると、それまで静かにその様子をみていたこの夫婦の娘である女の子が、ずっと大事そうに胸に抱えていた絵本をフローラに差し出して言った。

「お父さんとお母さんを助けてくれてありがとう!これ、お礼にあげます!」

 見ると何度も何度も読み返していたのか、その本の端の方は傷んでいて所々が色褪せてもいた。しかし、フローラはその表紙を目にした瞬間、やや驚いた表情になると、すぐに優しく目を細めて少女に語りかけた。

「この本が好きなのね、あなたの宝物かしら?」

「はい!でもあげます!」

 少女は口を真一文字にしてフローラを見つめている。その瞳はやや潤んでいた。

「そう、ありがとう。あなたは優しい子ね。こんな大切な本を私にくれるなんて……大切にするわ」

 フローラは少女からそっとその本を手に取った。

 その瞬間、少女は小さく

「あ……」と、名残惜しそうに口にした。本当は大好きなその本を渡したくはなかったのだ。しかし、彼女はフローラに父と母を助けてくれたお礼をどうしてもしたかったのだった。

 すると、今度は……

「それじゃあ今度は私があなたにお礼をするわね」

「え……?」

 フローラのその突然の言葉に少女だけでなく、側にいた彼女の父と母も不思議そうな顔をしている。

「私達があなたのお父さんとお母さんが元気になるようにお仕事をしていた時にあなたはきっと心配で不安で堪らなかったでしょう?」

 コクンと少女は頷く。

「でも、あなたは一度も泣かずに大人しく静かに待っていてくれたわ」

「………」

「だから、そんな私の素敵なお友達にこの大切な本をお礼にプレゼントしたいの。貰ってくれるかしら?」

「その本を……いらないって……こと……?」

 フローラはゆっくりと頭を左右に振ると優しく語る。

「いいえ、私はこの本を今、あなたという大切なお友達に貰った時とても嬉しかったの、だから大切なあなたにどうしてもお礼がしたかったから、私の宝物をあなたにあげたいの」

 フローラのその言葉を訊くと、少女の顔がパァッと花が咲くように明るくなり、その瞳には涙を浮かべながらも満面の笑みを見せてくれた。

「ありがとう!私も大切にする!」

「ええ、きっとその本も喜ぶわ。これからもお父さんとお母さんと仲良くね、あ、そうそうお友達のお名前教えてくれるかしら?」

「ポアラよ!」

 少女は元気一杯に答えた。

「そう、ポアラ!ステキな名前ね!その本のお話したくさん他のお友達にもしてあげてね、約束よ?」

 そうして、フローラはポアラに小指を差し出す。ポアラは嬉しそうにフローラの小指と自分の小指を絡めて笑顔で指切りをした。

 

 やがて、フローラと救護班の兵士はポアラ達家族と別れて次の被災者の元へ向かった。

「フローラ様、ステキなお友達が出来ましたね」

「本当ね、良い出会いだったわ!」

「そういえば、あのポアラという子が持っていた本は確か……?」

 兵士がフローラに訊ねると。

「ええ、15年前に魔王ハドラーを倒したアバンがモデルの絵本よ。ずいぶん読み込んでくれていたわね」

 15年前、それは当時、魔王と呼ばれ恐れられていたハドラーが世界を蹂躙していた頃、カール王国の兵士だった勇者アバンが親友の戦士ロカやネイル村で出会った僧侶のレイラ、そして、魔法使いのマトリフと共に魔王ハドラーとその配下のモンスター軍団を打倒し、世界に平和をもたらしたのだった。

 そして、ポアラが大事そうに持っていた絵本というのが、勇者アバンが魔王を倒し地上の平和を取り戻した記念として、その当時にアバンの故郷であるカール王国から発行出版された「ゆうしゃアバンの冒険」という絵本だった。

「アバンは始めは恥ずかしがって渋っていたけど、勇者の功績を世に伝えるのも私の役目って言ったら最後は協力してくれたわ」

「え!?ということはあの本の発案は?フローラ様だったんですか!?」

 兵士は驚いて訪ねる。

「発案どころか、あの絵本のおはなしも絵も私が作ったのよ?」

「ええっ!?そうだったんですか!?」

「だから、アバンは恥ずかしがってたのよ、でもなんだか懐かしいわ……」

 昨日未明までの大戦が終わるまでフローラは一国の長としての指揮をとりながら緊張感を保って過ごしてきた。しかし、今や魔王軍の驚異は去り、ようやく昔を懐かしむ余裕が生まれたことに心から安堵していた。

「実は私も子供の頃にあの絵本を読んで、アバン様に憧れたものです」

「あら!?そうなの?」

 救護班の兵士は幼い頃のことを話し出した。

「私達のヒーローでしたから、アバン様は!みんながアバン様になりたがっていましたよ!勿論、私も!」

 そう語る彼の瞳は子供のように輝いていた。

「ですが、私は子供の頃から身体が弱くてアバン様がいた騎士団には到底入れないと思っておりました。しかし、薬草の知識や医療については得意分野でしたし魔法の方も回復呪文や回復補助呪文は人より出来たので、こうして救護班兵になれました!」

「そうね、さっきのあなたの手際には私も驚いたもの。あなたを連れてきて本当に良かったわ」

 「そんな!とんでもありません!ありがとうございます!」

 救護班の兵士は思わず畏まって敬礼していた。

「さて!これからまだまだ忙しくなるわよ!しっかり私とアバンに着いてきてね!」

「はい!」

 フローラはそうして、再び前を向く。この後、彼女はパプニカのレオナ姫やリンガイア王国のバウスン将軍とその息子、北の勇者ノヴァ、またベンガーナ王やロモス王そしてテラン国の王とも連携し合ってお互いの国の状況を伝え合い、足らない食糧や建築資材、また医療部門においても提供し合いながら世界中の復興を進めていった。

 そして、やがて彼女のそのリーダーシップと実行力はその希望に溢れた一挙手一投足によって、まさに"希望の女神″と呼ばれ自国のカールのみならず世界中で称賛される事となった。

 

 




 今後フローラの存在は大人の女性として、重要な立ち位置となるので、ここら辺りでフローラの存在の大きさを出しておきました。彼女は原作にもありましたが、カールでは希望の女神と謳われていました。それを、ヒントにバーンが倒れて世界に平和が戻った後の復興を通して、その陣頭指揮を取るリーダーとしての姿勢から、カール一国を越えた世界の希望の女神としての姿を書いてみたいと思いました。そこにアバンという存在の大きさも際立って来る事も狙いですね。カール自体が世界の指揮を取る国になる可能性もあるのではないかと思っていまして、一時期完全に滅亡したと思われた国が不死鳥の如く甦ったというエピソードは世界中に大きな衝撃と共に希望をもたらすという展開もいいなぁと……そんな事も考えています。
 因みにアバンモデルの絵本は15年前に発行された本ですが、ポアラちゃんはお母さんからその本を貰って大事にしているという設定です。因みにお母さんとお父さんの名前はミルファ(お母さん)、キッス(お父さん)です。ビィト君はどこかで出るのか?出ないのか?
という感じで楽しく書いてますvvv
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