新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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マナルガの真実

 

 マナルガの真実

 

 ─親友(とも)の熱─

 

「……っ!!?」

 どこまでも続くその硬い大地を強く踏みしめながら、未だ遥か北の地にある呪神冥竜の城を目指していたロカはふと何かを感じてその頭上の漆黒の空を見上げた。

 この魔界の空には地上の様な輝かしい太陽の輝きは存在しない。しかし、地上に於ける太陽が沈んだ後に浮かんでくる月の様な存在はこの魔界にもあった。魔界ではそれを天魔煌と呼んでいた。しかし、その明かりは地上の月光の如く太陽の光には程遠い淡い光を放つだけだった。

「魔界の空は暗いな……」

 一人ボヤくように呟くロカはそれでもその暗い空に浮かぶ天魔煌にその視線を向けた。

「あんな天魔煌の光なんかより遥かにスゲェ輝きを俺は知ってる……」

 そう呟くとロカはその脳裏にアバンが初めてあのカールの城で放った後のアバンストラッシュの閃光を思い出していた。

「もう二度と会えないとわかってはいても……やっぱり忘れらんねぇモンだな……」

 そうして次にその脳裏に浮かんで来たのは親友と共に過ごした旅の思い出だった。

 親友の勇者と共に故郷を旅立ち、やがて将来の伴侶となる相手やスケベでだらしないが心底頼りになる友との掛け替えのない出逢いもあった……

「アイツ等…元気にしてっかな……」

 そんな時、つい数日前のワズの言葉が甦る。

(「いい加減、地上に戻る夢なんか捨てちまえってんだよ!メドゥルザ様の呪いから逃れられるワケないんだからね!)

 あの時は何気ないその言葉にロカは軽くあしらったつもりだったが、この14年……地上に戻りたいという想いを一度たりとも自分の胸の内から消し去ったことはなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 シュウゥゥゥゥゥーーーーーーーー

 

 アバンストラッシュの一閃が影のロカを真一文字に斬り裂いた。

 しかし、影のロカはその場に立ち尽くしながら感情のない表情をアバンに向けている……

「やりおった……」

「はい父上……」

 クルテマッカとオルヴァが静かに告げると、アバンはその手にある奇跡の剣を降ろし影のロカの元に歩み寄っていく。

「アバン殿っ!!?」

「……!?」

 ディードックの呼び掛けにアバンは足を止めると振り返りながら柔らかな笑顔を見せた。

 そして改めて影のロカに向き直ると、もうそこにはその姿はなく光りの彼方に霧散した影の名残だけが僅かに見えただけだった。

「ロカ……」

 アバンはその場で立ち尽くしながら固く拳を握り締めその瞼を閉じた……

「どうだ親友を斬った気分は?」

「……っ!?」

「てっ!?てめぇ…っ!!!?」

 マナルガのその嘲りに思わずディードックが声を荒げる。

「アバン殿がどんな気持ちでっ!?」

 しかし、ディードックはアバンに視線を向けると意外なほど穏やかな表情を見せている彼に気付いた。

「アバン殿?」

「心配お掛けして申し訳ありませんディードックさん、ですが私は大丈夫ですよ……」

「で、でもよ……」

 ディードックはアバンの言葉を信じないワケではなかったが、やはりその憂いは感じていた。

「私が斬ったのは私の記憶の中のロカと言われていましたが、やはりホンモノとは違いました」

「えっ!?」

 ディードックやクルテマッカ達はアバンの言葉に首を傾げる。

「過去に私は何度もロカと剣術の稽古で互いの剣を交えました、確かに今相対した影のロカも一つ一つの動きやクセは彼そのものでした、しかし…」

 アバンは一瞬だけその瞳を閉じると次の瞬間には強い視線でマナルガを見据える。

「その太刀筋に、熱はなかった」

「熱だと…?」

「ええ、彼は……ロカという男はこんな私よりもずっとカール王国の騎士団としての誇りを持っている男です……そしてその誇りは彼自身のその太刀筋の中に常に一つの熱として存在していました、そして長年彼の隣にいた私はその彼の熱を感じることが喜びでもありました……」

「……」

「しかし先程のロカの影人形には一切の熱は感じませんでしたですがそれでも私は目の前のロカ姿に昔を思い出してどこかで楽しんでしまいました……」

「アバン殿……」

 そんなアバンの意外な言葉にディードックは思わず目を見開く。

「そうか……先程のアバン殿の涙はやはり…」

「ええ、ロカ様という方はアバン様にとってそれ程までに大切な方なのですね…」

 クルテマッカとミネルヴァもアバンの今の話しを聞いて深く頷き合った。

 すると、ここでアバンはある気掛かりなことをマナルガに訊ねる。

「ところでマナルガ、私はこうしてあなたとこれまで相対して来ましたが途中から気になっていたコトがあるのですが……」

「ホウなんだ?」

 そうしてアバンは先刻、ディードックが投げ付けたゴールドフェザーを拾う。

「一つ試して置きたいことがありましてね…」

 アバンは手にしたゴールドフェザーに魔法力を込める。

「このゴールドフェザーは一度使ったモノでもこうして再び魔法力を注げば何度でも使えるんですよ?いわゆるリサイクルってヤツですねぇ」

「貴様何が言いたい……」

「こういうコトです……マホカトール!!!」

「なに……っ!!?」

「アバン様が再びゴールドフェザーにマホカトールをっ!!?」

 マナルガやオルヴァ達が目を見開いている中アバンは再びゴールドフェザーに破邪の呪文マホカトールを注ぎ込む。

「それっ!!」

 そしてアバンはマホカトールを込めたゴールドフェザーをなんとマギサの遺体に投げ付けた。

「貴様っ!!?」

 予想だにしなかったアバンの行動にマナルガは反応したが、完全に虚を突かれ対応が適わず焦りの表情をみせた。

 しかし、アバンの投げ付けたゴールドフェザーはそれに構わずマギサの遺体に覆われていた邪悪なエネルギーを掻き消していくと、そうして現れたのは驚くべき事実だった。

「そんなっ!?マギサさんの遺体が…っ!?」

 思わずミネルヴァは声を上げる。

 そして!

 

 ボワァン!!

 

「あぁっ!!あれは……っ!!?」

「なんというコトだ……っ!!?」

 クルテマッカを始めアバン以外のその場の者が驚愕の表情をみせるが、それも決して無理のない事だった。

「アレはまさか魔物……モンスターの死骸っ!!!?」

 オルヴァのその叫びにも似た言葉の通りマギサの遺体と思われていたモノは、まるでなんらかの魔法が解けたようにその真の姿を表した。

「もしかしたらあの遺体には変身呪文モシャスが掛けられていてのではっ!!?」

「モシャスがっ!!?」

 メティスがそう叫んで遺体の仕掛けを見破るとアバンが言った。

「さすがですねメティスさん、その通りです…あのマギサさんと思われていた遺体にはモシャスが掛けられていました…ですがそれはタダのモシャスではなかった様ですが、そうですねマナルガ…いや……マギサさん?」

 アバンはメティスや皆に語りながら、最後にマナルガに向けて驚くべき発言をする。

「……っ!!?」

「な……っ!!?アバン殿っ!!な、何を言っているのだっ…!!?あのマナルガが、マギサだと……っ!!?」

「どういうことですかっ!!?アバン様っ!!!?」

 さすがにこの発言にはクルテマッカ夫妻はいても立ってもいられずアバンに問い質す。

「待ってお父様お母様……」

「アリア……っ!?」

「アバン様はきっと何かにお気付きになったのよ……」

「アリアお前……」

「アバン様を信じましょう……」

 両親を静かに諭すようにアリアは告げると彼女はクルテマッカ達と共にアバンの方に視線を向けた。

「先程も申し上げましたが、マナルガ……アナタと対峙して私は始めの頃こそ魔界の強敵としてその印象を受けました、ですがそう、つい先刻アナタが私に魔界の話しを訊かせてくれた頃からその印象は少しずつ変わってきていたのですよ……」

 アバンはそう言ってマナルガを窺う様にみる。そして更に……

「なので、私は自分の中である一つの仮説を立てました…」

「一つの仮説?」

 と、ここでオルヴァがアバンに訊ねる。

「ええ、オルヴァさん…思い出してみて下さい…私とマナルガが先程会話をしていた時の事を……」

「アバン様とマナルガの会話……?」

 そう呟いてオルヴァは先刻のことを思い出す。

「私を攻撃している際に時折みせていたあの嘲笑う彼女と先刻において魔界の現状を語っていた彼女……私の考え過ぎである可能性も当然有り得るのですが、もしかしたらあのマナルガの内側には二つの人格が同居しているのではないかと考えたのです」

「二つの人格……っ!!?」

 アバンのその説にまさに皆が驚愕の表情を見せている。

「ええ、ですから私は先ずその仮説を証明させる為に……」

 そう言ってアバンはマギサに成り代わっていたモンスターの死骸を一瞥する。

「そうか、さっきのゴールドフェザーの破邪の力を使ってあのマギサって侍女の遺体の仕掛けを暴けば、マギサって侍女の生存の可能性を証明出来るとそう考えたのかっ……!!」

 ディードックの言う通りアバンはマギサの生存の可能性を証明出来れば自身が抱いた目の前のマナルガとマギサの二つの人格が同居していることの証明に繋がると考えたのだった。

「ディードックさん!やはりアバン様はとんでとない方ですねあの熾烈な戦いの中でそんなことまで……」

「ああ、いつもあの人は俺たちの想像の遥か先をみている……怖いくらいにな、だがその怖さがまた頼もしい」

「はい!!」

 ディードックと兵士は互いに笑顔で頷くと近くで彼等の会話を聞いていたクルテマッカ達も皆が同じ様に頷いていた。

「さぁいかがです?マナルガ……もしくわ…マギサさん……?」

 アバンは目の前のマナルガを真っ直ぐな眼差しで窺う。

 すると……

「なるほど、その洞察と聡明さ……やはりアナタはあのジニュアール一世によく似ている……」

 マナルガのその悍ましい魔女の姿こそ変わり映えはしないが、明らかにその口調、そして声のトーン更にはその表情さえもいつの間にか穏やかな一人の女性のものに変貌していた。

「それがアナタの本当の顔なのですね……そして祖父ジニュアール一世とアナタは……」

 アバンはそう告げながら、再び浮かぶ彼女の琥珀色の瞳を見つめる。更に彼女の穏やかな口から告げられた祖父“ジニュアール一世と似ている”という言葉……

 アバンは改めて祖父の過去と凶神との関係を受け止める覚悟を固めていた。

 

 




 漸くこの戦いの根幹というところに入ります。凶神という魔界の強敵と地上との因縁は祈祷師一族やジニュアール一世との関係性から展開してきましたが、最後になぜベンガーナがこの戦いの舞台なったのか?ミネルヴァが祈祷師一族の一人であったから、アリアがその血を継いでいるからというコトだけではないのです……詳しくは次回になりますが…なかなか頭をこねくり回す展開で読みづらかったら申し訳ありません(^_^;) 
 さて、ここでお知らせです。勝手を言って誠に申し訳ありませんが実は来月4月から少し更新スピードを遅くしようと思いまして……毎週これまで土曜に更新してましたが来月からは隔週の更新で暫くやっていこうと思います。色々と個人的に忙しくなりまして、書き溜めていたストックもすっからかんになってしまいましたので自転車操業を回避する為の手段として苦肉の策であります 
 いつも楽しみにしてくださっている皆さんには大変申し訳ありませんが、これからも少しでも楽しんで頂けるように精進して参りますので、何卒ご理解と変わらぬご支援を宜しくお願い致します ✨
※以下は4月の更新日です。ご参考下さい。
(4/1.15.29)
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