新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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神の神聖

 

 

 ─祝福されし者─

        ─受け継ぎし者─

 

「お祖父様」

「どうしたアバン?」

 祖父ジニュアールⅠ世が他界する数ヶ月前のある日、アバンは祖父から破邪の力についての教えを受けていた。

「破邪の力とは神が魔の力に対抗するべく生み出した力とありますが、人が神の偉大な力を扱うことなど本当に出来るのでしょうか?」

 この時点で先ずジニュアールⅠ世は、ジニュアール家に代々伝わる魔導書や古い文献、更にジニュアールⅠ世自身がそれらから読み解いた破邪の秘法の詳細などを孫のアバンに指南していた。そんな中でアバンは神が扱う破邪の力を本当に人が扱えるような力なのか疑問を感じていた。

「なぜそう思うのだアバン?」

「それは……私には人が神のような力を持てる程の器に思えないからです」

「ホウ……」

「人は時に自分の基準でものを判断し、過ちも犯します。また自分達と異なる存在には過ぎた恐れを抱いて遠ざけたり酷いときには迫害する行為に走る者もいます……ですからそんな要素のある人が神のような神聖な破邪の力を持つことなど不可能なのではないでしょうか?」

 アバンは真剣な眼差しで祖父に告げる。

「そうか…お前には人という存在はそう見えているのか」

「もちろん全ての人間がそうとは言いませんっ!!正しく生きている人々だってたくさんいるのもわかります!しかし、やはり神と人との間には大きな隔たりがあるのではないかと……ましてや神聖な神の力を持つなど……」

「ウム、そうだなアバン……良い疑問を抱いたな」

「え……っ!?」

「お前の言うことは決して間違いではない……むしろお前のその若さでよく現実というモノを捉えていると言えよう……ではアバンよこの魔導書を読んでみよ」

 するとそう言いながらジニュアールⅠ世はアバンに一冊の魔導書を手渡す。

「お祖父様これは?」

「これは遥か昔、偉大なる大賢者がこの地上の未来を憂いて神の力を求めた末にしたためられた書だ……それ故にここには神の神聖な力について書かれている」

「魔導書にですか?」

「フフそうだな……魔導書に神の神聖な力のことを収めるとは確かにどうかとも思うが……その魔導書の113ページにある人と神と魔の章を開いてみよ」

「えっと……113ページ……人と神と魔……の章…っと……」

 アバンは言われるままに祖父から手渡された魔導書のページを捲り始めた。

「あった!ここだ!」

「その始めにはなんと書いてある?」

 ジニュアールⅠ世はそのページをしげしげと見つめるアバンに目を細めながら訊ねた。

「“人の中に眠る魔は神の力によって変革を遂げよう。神聖なる力は時にあらゆる魔を凌駕し得る、故に偉大なのは神の神聖”」

「ウム…ではその言葉を聞いてアバンお主はどう感じる?」

「そうですね……人が神の力を求めること……いや、人の中に眠る魔と表現していますから……人が神の力を求めて力を得る為ではなく自身の中の魔の誘惑から打ち勝つ為と読み解けないでしょうか?」

「“人の中に眠る魔は神の力によって変革を遂げよう“……そうだなまさにこの部分はお前が読み解いた通りだ……ならばその後はどうだ?」

「“神聖なる力は時に魔を凌駕……”時にというのはいつでもというコトではありませんね……つまり仮に神の神聖な力を得てもそれは使い方次第……ということはその使い方次第で魔を凌駕出来る!つまりこれは正義の為に神の力を使うことを示されている!!」

 アバンはその瞳を輝かせながらやや興奮気味に祖父に自身の説を告げるとジニュアールⅠ世はアバンを試す様な顔から一転して柔らかくその表情を崩し満面の笑みを浮かべた。

 そして、そんなアバンの頭を優しく撫でながら告げる。

「”故に偉大なのは神の神聖“なのだアバン…そして人の中にはその偉大なる力を扱うに足る光がある……それが“希望”という光なのだ」

「お祖父様……」

 この後もアバンは祖父の教えを請い、更に深く学び今のアバンのまさに礎を築くことになるのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「う……っ!!?うぅ……っ!!!?」

「マギサさんっ!!!?」

 突然、苦悶の表情を浮かべながらうめき声を上げるマギサにアリアを始め皆が彼女の身を案ずるように見つめる。

「フフ…どうやら長居し過ぎましたね……」

 そんな中でマギサは額に汗を滲ませながら薄く笑う。

「まさかマギサさん……っ!?マナルガが……っ!!?」

 アバンがマギサの様子をみてそう告げると彼女は目を細めてアバンに真っ直ぐと視線を向けた。

「私の中のマナルガは完全に抑え込めたわけではありません……」

「マギサさん!貴女はっ!?」

 アバンが慌ててマギサに駆け寄ろうとすると、彼女は右の手の平をアバンに向けてそれを拒み冷たい汗を浮かべながらアリア達の方に視線を移す。

「……アリア様……そしてミネルヴァ様……私の本来の使命は祈祷師一族の血を絶やすことなく永劫の時を超えて繫がるその道を見守ることでした……」

「なんですって!?マギサさん貴女っ!今なんて…なんて言ったの!!?」

 するとそのマギサの言葉を受けてミネルヴァはどこか狼狽するように訊ねる。

「ええ、そうですミネルヴァ様……姉上様のルティナ様からもお伺いのことと思いますが………あなた方祈祷師一族の血族を守る使命を持つ者が必ずあなた方の傍に仕えると……そうお聞きですね……」

「まさかっ!?まさかそれが貴女だったの!?マギサさん……っ!!」

 ミネルヴァの脳裡にはマギサと初めて出逢った日の思い出が蘇りその瞳からは滂沱の涙が溢れていた。そして傍らのアリアの瞳からも……

「私も血筋なのです……母の血はかつて祈祷師一族に仕えた巫女の血筋……そして私は……私は……あぁっ!!!うぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」

「マギサさぁぁぁぁーーーーんっ!!!!」

 アリアの悲痛な叫び声が響く中、マギサの身がドス黒い闇色のエネルギー体に徐々に飲み込まれていく。

(「あれは先程のマナルガから感じられた暗黒魔力……っ!!マギサさんの意識を奪おうというのか…っ!!?」)  

 アバンはマギサを飲み込もうとしている暗黒魔力がマナルガのモノであることに気付き密かに自らの懐に手を伸ばす。

「アリア……様……ミネルヴァ様……私は…私は……あなた方と出逢え幸せでした………」

「マギサさんっ!!」

「ですが…どんな理由があろうとも……お仕えし守るべき主である貴女方に……私は苦しみを齎してしまいました……」

「何を言ってるのっ!!?それは”時の魔力“を狙ったマナルガの所為じゃないっ!!」

 アリアは涙を零しながら強く叫ぶ。

「いいえ……そんなマナルガの……うぅ……っ!!謀を止められなかった私の……力不足……です……」

「マギサさんっ!!!」

 マギサの身が少しずつ黒いエネルギーの膜に覆われていく中、アリアは泣き叫ぶように彼女の名を呼んだ。

 と、その時。

「いいえマギサさん……あなたはしっかりとその使命を果たしています……何故なら神はこうして私とあなたを引き合わせてくれた……」

 アバンは強い眼差しで闇色の暗黒エネルギーに苦しむマギサを見据えながらその手には最後のゴールドフェザーを構えている。

「アバン殿っ!!それは最後のフェザー!!」

 ディードックの声にアバンは頷く。

「はい!私の最大の破邪の力を込めてあります!!マギサさん……あなたは祖父のジニュアールⅠ世から琥珀色の瞳を授けられた後に神の声を聴いたのではないですか?」

「……っ!!!?」

「……っ!!!?」

 マギサを始め皆がそのアバンの言葉に驚きを表すとその中からオルヴァが彼に訊ねる。

「神の声?」

「ええ、私の祖父ジニュアールⅠ世から私はマギサさんの話しを過去に聞いていました……そしてその時に神の神聖の話も……」

 そしてアバンは最後のゴールドフェザーを構える。

「“人の中に眠る魔は神の力によって変革を遂げよう。神聖なる力は時にあらゆる魔を凌駕し得る、故に偉大なのは神の神聖”」

「その言葉は……ま、まさか……っ!!?」

 マギサは暗黒魔力の支配から抗いながら、アバンの言葉に目を見開く。

「ベンガーナ領の北端の教会であなたが神の啓示を受けたのは、凶神という魔の存在からミネルヴァ様やアリア様を始めとする祈祷師一族の血を守るため……その時にあなたは同時に神の神聖な力を施されていたのです!故にあなたの中には祖父ジニュアールⅠ世からの破邪の力と神の神聖な力があったのです」

「そうか……っ!?破邪の力だけでなく神の神聖な力もあったからマナルガの力を抑え込んでこれたのかっ!?」

「ええ、破邪の力の効果を最大限に保つにはその源である神の神聖な力は必要不可欠ですから……しかしその神の神聖にはもう一つ役割がありました……それが祖父からマギサさん……あなたが伝えられた言葉です……」

「アバン様……そうです……ジニュアールⅠ世様は貴方と出逢う未来を願って私にこの琥珀色の瞳を授けてくれました……そして同時に貴方との出逢いが私の使命を託す時でもあるのだとその言葉を…」

「アバン様が……マギサさんの使命を…?」

 アリアはアバンの背を真っ直ぐに見つめて呟く。

「はい!その通りですマギサさん!!

    はぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!」

 すると、アバンは最大の破邪の力を込めたゴールドフェザーを手にしながら自らの全身に闘気を込める。それはヒュンケルが目覚めた光りの闘気に似たエネルギーだった。

「先刻は影の戦士としてあらわれた愛弟子であるヒュンケルでしたが、本来の彼は既に私を超え光りの闘気に目覚めた究極の戦士に成長しました……そんな弟子の姿に私は学ばせて頂きました……この光りの闘気を最後のフェザーに込めてマギサさんっ!!アナタを救いますっ!!!」

「アバン様……っ!!!!」

 マギサの瞳からは滂沱の涙が溢れていた。そしてその真っ直ぐに見つめる視線の先には35年前琥珀色の瞳を授けてくれたあのジニュアールⅠ世の姿と重なるアバンの姿があった。

「ブリリアント

    ゴールドフェザーーーっ!!!!」

 アバンの全身全霊の光の闘気と最大の破邪の力が込められた光り輝くゴールドフェザーがマギサに向けて放たれた!

 ジニュアールⅠ世から破邪の力を受け継いだアバンと神の神聖な力を受け継いだマギサ。

 光に満ちた二人の使命は今、この強き破邪の力と大いなる神の神聖の輝きの中で継承されるのだった。

 

 

 




 マナルガの中でマギサは長い時を経てその邪悪な力を抑え込んで来ました。と、同時にそれはマギサとマナルガが互いの意識を支配する戦いに明け暮れた時間でもありました。その互いの意識をその度に上回ればその表情を表に表せるということです。
 そしてここで、マギサはアバンとの出逢いを果たし自らの使命を託します。アバンはこれからマギサに代わり神の神聖な力を込めた破邪の力を後世に残すことになるのです。
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