新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

108 / 124
マギサ

 

 

 ─ベンガーナの空─

 

 

カアァァァァァァァァァーーー!!!!

 

 アバンの放ったブリリアントゴールドフェザーはマナルガの姿をしたマギサの胸に突き刺さるとそこから凄まじい光を放ち始めた。

 

「な、なんという神々しい光だっ!!!?」

「これが神の神聖な力っ!!!?」

 クルテマッカやオルヴァを始め皆がその強烈な光りのエネルギーに驚愕していると、マギサを飲み込もうとしていた闇色の暗黒エネルギーが徐々に霧散する様に消滅していった。

「あぁ……っ!?マギサさんが……っ!!?」

 するとアリアの声を合図にしたかのように、マナルガの身体からマギサの姿が分離され少しずつその輪郭が露わになっていく。

「マギサさん……っ!!?」

「ウゥ……グゥァァァァ………お……おのれ……アバン……っ!!!」

 アバンの放ったブリリアントゴールドフェザーの破邪の威力に、堪らずマギサの身を分離させたマナルガは恐るべき形相でアバンを睨みつけた。

「はぁ……っ!!はぁ……っ!!」

「暫く振りですね……マナルガ」

 するとアバンは鋭い視線をマナルガに向ける。

「ふ、ふざけた口を利きおって……っ!!!」

「ブリリアントゴールドフェザーの破邪の力はマギサさんの神の神聖な力と融合された特別性です。おそらく簡単には身動きが取れないでしょう?」

「だからなんだ……っ!!!?」

 アバンの言う通りマナルガはその身が思う様に動かない状態に悔しさを露わにしながら声を上げる。

「なのでこの機会に一つ確かめておきたいことがありましてね……あのマギサさんと思われていた魔物の遺体になぜモシャスが掛けられていたのですか?」

 そうアバンは唯一その部分を気にしていた。アバンの破邪の力とマギサ自身の神の神聖な力でマナルガの闇の束縛からマギサが救い出されたことにはこの場の皆が安堵していたが、彼だけはあの遺体の不可解な状況をずっと気に掛けていたのだ。

「フ……それを知ってどうする?」

「ええ、今更かも知れませんが……私も一度気になると我慢できないタイプでしてね……」

「貴様に教える義理はない……」

「そうですか……それは残念です……」

「それは私がお答えしましょうアバン様……」

「……っ!!?マギサ……っ!!?貴様っ!!」

 マナルガは身動きの出来ない身でマギサを睨み付ける。

 と、マギサはゆっくりとアバンの前に歩み寄るが、その身はまるで実体のない幽体の様に見えた。

「マギサさん…もしやその貴女の身は既に……」

「どういうことです?アバン様……っ!!?」

 アバンがマギサに告げた言葉にアリアが反応する。

「はい、おそらくマギサさんの肉体はもう既にこの世に存在していないのではないかと思われます」

「ええ……っ!!?」

 この時、驚きの声を上げたのはアリアだけではなかった。クルテマッカやオルヴァ達も皆がマギサのその幽体に目を見開いている。

「その通りですアバン様……私は35年前マナルガに接触された際にその肉体を奪われ彼女の暗黒魔力により消滅させられました」

「そ、そんな……っ!!?ということはまさかその時にマギサさんは……っ!!?」

 ミネルヴァは狼狽しながら声を上げる。

「はい、いわゆる人としての私の生はその時に終わりを遂げたのです……」

「そんな……そんな……マギサさん……」

 アリアは涙を零してミネルヴァと寄り添い嘆く。

「ですが……私には神の神聖な力が働き魂までは滅ぼされることはありませんでした」

「え……?」

 その言葉にアリアもミネルヴァも顔を上げて再びマギサを見つめた。

「そしてその時に私は神の示された啓示に気付いたのです……魂となりマナルガの身に入りその邪悪な野望を抑え込むと共に破邪の継承者との邂逅を果たすというその使命に……」

「破邪の継承者っ!!?」

「まさかそれが……っ!?アバン殿だということかっ!!?」

 マギサが真っ直ぐとアバンに視線を向けると皆の視線も同時に彼に集まった。

「我が祖父ジニュアールⅠ世はこの世を去る時に私に破邪の継承者としての道を示してくれました……破邪の継承者いわゆるマエストロとしての道を……」

「破邪のマエストロ……」

「ということはマギサさん……貴女は私との邂逅を果たすために35年もの間、魂となってマナルガの身に自ら入り込んでいたのですか?」

「ええ、そうすればマナルガの闇の力を抑え込みながらアナタを待っていることが出来るから……それに私はジニュアール様の言葉を信じておりました……」

「祖父の言葉?」

「必ずやジニュアールⅠ世様ご自身の意志と破邪の道を継承する存在を育てて見せると……」

「祖父が……そんなことを……」

「本当に不思議な方です……ですがとても素晴らしい方です……ジニュアールⅠ世様は……」

「そうでしたか……ありがとうございます」

「ですが……」

 そう呟くとマギサはゆっくりと未だ動けないマナルガの方を見やる。

「マナルガとて黙って大人しくしていたわけではありませんでした……」

「ククク……当然だ……何もかもマギサや貴様の祖父ジニュアールⅠ世の思い通りにさせてなるものか……妾もそして我が主である凶神レノクス様もただ指を咥えて見ていたワケではないっ!!」

「マナルガは暗黒魔力を注いだ絶対に解けないモシャスでもって魔界の配下である魔物を私の姿に変えこのベンガーナ王国に送り込んだのです……」

「そういうことでしたか……それは先刻も話に出たアリア様に受け継がれた“時の魔力”を探る為ですね?」

「はい」

「なんということだ!!まさかそんなことがっ!!?」

 長年、自らの城に仕えていた侍女のマギサがまさか魔物がその姿を変えていたという事実にクルテマッカやミネルヴァ達は大きなショックを受けていたがここでマギサが告げる。

「そうして同時にマナルガはその魔物をベンガーナのお城に潜り込ませて、この国を内側から支配することを企んでいました…ですが私は彼女に気付かれない様にここでもう一つの手を打っていたのです」

「もう一つの手?」

「はい私はマナルガにモシャスを掛けられた魔物自体に入り込んだ……つまり取り憑いたのです」

「魔物に取り憑くっ!!?」

「マギサさんがマナルガにその身を滅ぼされた幽体だったからこそ出来たことですね?」

「その通りです……そしてマナルガは今回ああして用済みとなった自らの配下である魔物を切り捨てました……」

 マギサは朽ち果てている魔物の遺体を見据えて呟く。

「なんて奴だ……っ!!自分の仲間をまるでボロ雑巾のようにっ!!」

「ククク……我が配下など掃いて捨てるほどいる……それをどう使い捨てようが妾の勝手よ……」

「なんだと……っ!!!?」

 オルヴァは熱く厳しい視線をマナルガに向ける。

「貴様ら人間にもいるはずだ……そうした輩がな……ククク……ハハハハ……」

「だがマナルガよ……お前はマギサさんの奸計に気付けなかった……」

「……っ!!?そ、それは……っ!!?」

「凶神レノクスとか言ったなお前の主は……だとしたら今回のこと……お前の主はどう思っているかな?」

「クルテマッカ……貴様っ!!!?」

 マナルガは忌々しい思いでクルテマッカを睨み付ける。

「クルテマッカ王の言う通りですマナルガ……確かに人間の中にもお前のような考えを持つ者も残念ながらいます……しかし必ずやそんな者もお前のような考えを持つ限り同じ運命を辿るのですよ……それが憐れだと愚かだと思えませんか?」

 そう言ってアバンはマナルガに厳しい視線を送ると、彼女は再び悔しさを顕にして忌々しく呟く。

「フ……だか、まさかこんな女の奸計如きに足元を掬われるとは……今思い出しても口惜しい限りだ……」 

「マギサさんの身を滅ぼしたことが裏目に出ましたねマナルガ…」

 と、その時マナルガの胸に突き刺ささったゴールドフェザーから再び激しい光が放たれ始めた。

「こ、これは……っ!!?くっ……!!?おのれまさか……っ!!!?」

「ええ…どうやら時間のようです……」

「時間……っ!!?アバン殿っこれは一体!!?」

 クルテマッカ達がマナルガの様子に驚きの表情をみせる。

「一種の時限装置のようなモノでしょうか?ブリリアントゴールドフェザーには私の込めた破邪の力とマギサさんの神の神聖な力が込められておりますが、それぞれの発動に微妙なズレが生じた様です……」

「始めに発動してマナルガの動きを封じたのははアバン様の破邪の力ということでしょうか?」

「ええ、そしてここからがマギサさんの神の神聖な力による完全なる封印……」

 そう言ってアバンはマギサに視線を送ると彼女も頷いて応えた。

「マナルガ……これでお前はもう地上には出てこれませんよ……」

 アバンがマナルガに毅然と告げると同時にその神の神聖な力の勢いが更に強くマナルガを包み込み最後の輝きを放ち始めた。

「ククク……侮るなよアバン……妾は……いや我ら凶神の軍勢は必ずやこの地上に侵攻する!!!凶神レノクス様の元に魔界の闇そのものと言える我らが集結しこの屈辱を晴らすためになっ!!!その時はアバン……マギサ……そして忌々しい祈祷師一族の血族も……全て滅ぼしてくれよう……何度も貴様らには計画を挫かれては来たが我らは滅びぬっ!!!何度でも何度でもこの地上を狙うぞ!!!……そして貴様らと次に顔を合わす時こそが……この地上の最後の時と思え……ククク……ハーーーハハハハハハーーーー!!!!!真の闇でこの地上を染めてやるわぁぁぁぁーーーーーー!!!!!ハーハハハハハハーーー!!!!」

 そうしてマナルガは完全にブリリアントゴールドフェザーの光に覆われ、彼女の姿は醜悪な最後の言葉と共に清浄なる神の神聖な光りと破邪の力の彼方に封じられ消え去っていった。

 

 シュウゥゥゥーーーーーーーーーーー

 

 

 やがてマナルガの姿が完全に消え去るとその場にはマギサの幽体だけが残った。

 

「マギサさん……まさか……まさかアナタまでこのまま消えてしまうの?」

 そう涙ながらにマギサに歩み寄るのはアリアだった……そしてマギサ自身もそんなアリアを優しく見つめている。

「アリア様……そしてミネルヴァ様……私はあなた方と過ごした日々をずっとこの命の記憶に留めております……」

「マギサさん……うぅ…っ」

「ミネルヴァ……」

 ミネルヴァも思わず嗚咽を抑えてクルテマッカの胸で涙を流すと彼は優しく妻の背中に手を置いた。

「でも大丈夫……私はどこにもいきません……クルテマッカ様……」

「ん……っ!?なんだ?どうした?」

 突然自身の名を呼ばれたクルテマッカはやや驚いてマギサをみる。

「このベンガーナ王国の現国王である貴方様にお願いがこざいます……」

「な、なにかね……突然あらたまって!?」

「こればかりはこの地を代々治めるクルテマッカ王族家である貴方様のお許しがなければいけませんので……」

 そういうとマギサはゆっくりとクルテマッカに歩み寄りやや頭を下げると自らの右手を胸に当てクルテマッカに敬意の姿勢をみせる。

「私は神の神聖な力を受け肉体を消されても、こうしてこの魂は存在することが出来ます……ベンガーナ王国国王陛下クルテマッカⅦ世様……私は今日よりこのベンガーナ王国の守護を担う神の使いとして皆様のお側にいさせて頂くことをお許し頂きたく存じます……どうか……どうか……この私にこの国とこの国の全ての命を護らせて下さい……」  

 そうしてクルテマッカに請うマギサの姿に当然、異を唱える者などいなかった。それどころかクルテマッカを始め皆が熱い涙を浮かべながら深くその胸でマギサのその想いを受け止めるとその想いを感じたのか彼女はゆっくりと頭を上げクルテマッカ達の暖かい表情を見渡した。

「もちろんだとも…マギサ……いやマギサ様……末永くこのベンガーナをどうか御守りください……」

「クルテマッカ様……」

「マギサさん……ありがとう……そしてこれからも……私達と共にいて下さいね……」

「ミネルヴァ様……」

「マギサさん……私もそして……彼女もこれからもあなたと共にこの国を守り抜く決意です」

 オルヴァはそういうとメティスと共にマギサに微笑む。

「オルヴァ様……メティス様……」 

 そして……

「マギサさん……みて…マギサさんにもらったお人形よ……私……ずっとずっと傍に置いて大切にする……」

「アリア様……」

「マギサさん……ありがとう……ありがとう……ずっとずっと傍にいてくれるって……言ってくれて……」

「はい……私はずっとずっとアナタのお側におります……そのお人形と共に……」

「マギサさん……」

「そのお人形は私が幼い頃に母から与えられた手作りのお人形なのです……」

「マギサさんのお母様が……?」

 アリアは少し驚いたように手にした人形とマギサを交互にみる。

「はい……母の暖かい想いが込められています……ですから母も…きっとこのベンガーナの国の皆さんを見守ってくれていることでしょう……」

「マギサさん……」

 するとその瞬間、不思議な光景に皆が目を見開いた。

 それはアリアの手にある人形から優しい光が放たれたかと思うとその柔らかな光がこの場の全ての者達を包み込んだのだ。

「こ、これは……?」

「なんと……!」

「まるで奇跡だわ……」

 光のドームのように皆を包み込むその光景に一人一人が穏やかな表情を浮かべている。

「マギサさん……これは……もしかして?」

 アバンが優しくマギサに訊ねる。

「ええ…お母様が……お母様が私達の新たな船出にプレゼントを下さったのですわ……祈祷師一族を守る巫女の血筋……その力はずっと…ずっと…この人形の内に込められていた」

「祈祷師一族を守る巫女の血筋……」

 ミネルヴァのその瞳にはこの世のどんなモノよりも美しい輝きが湛えられている。そしてそこから溢れる一筋の涙が頬を伝うと娘のアリアの瞳からも同じ雫が零れた。

 

 やがてベンガーナ王国の空に漂っていた分厚く重い黒雲の間から一筋の光が差し込むと、その邪悪な気配は立ちどころに消え去っていった。

 そしてそこには澄み切った青い空が広がっていた。

 

 

 




 ようやくベンガーナ王国編の締めくくりです。次回で今回のまとめに入りますが、長かった……(-_-;) なかなかまだまだ物語をまとめる力がありませんが、今後とも力をつけながら頑張りますので宜しくお願いいたします。そう言いながら2周年を過ぎてました(笑)
 さて、アバンとベンガーナ王国にもこうして強い絆が生まれ、ちょっとネタバレしますが更に次回で奇跡の剣のとある秘密も明らかになります。
 というワケで次回もお楽しみ下さい✨
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。