新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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ベンガーナ王国城の風景

 

 

 ─希望の予感─

 

 ベンガーナ城の開かずの地下牢で繰り広げられていた凶神の下僕である魔女マナルガ達との死闘。それを無事に乗り越えたアバンとディードックはベンガーナ城の謁見の間にて国王クルテマッカを始めその家族であるミネルヴァ王妃やオルヴァ王子、アリア王女の前にいた。

「此度の働き誠に見事であられた!何度礼を述べても足りないくらいではあるが、心から深い御礼を述べさせて頂きますぞアバン殿、ディードック殿」

「有難きお言葉痛み入ります!クルテマッカ国王陛下」

 悪しき凶神の手より自らの家族とこのベンガーナ王国を救ってくれたアバンとディードックにクルテマッカは心よりの謝辞を示すと彼らもそれに応えた。

「またクルテマッカ国王陛下におかれましては我が祖国カールに於いても迅速な復興支援の手を差し伸べて頂き、私などではおこがましい限りではございますがカール王国フローラ王女に代わって御礼を申し上げたいと思います…」

「ハハハハ!!なにをおこがましく思うかアバン殿っ!お主とてもう時を置かずしてカールの姫君の隣に迎えられるだろうに、さすればカール王国の将来を背負って立つ身であろうが?ハーハハハハ!!!」

「な……っ!?なにをおっしゃいますかっ陛下っ!!?」

 アバンは真っ赤な顔をして声を上げる。

「フフフ♪お二人はとてもお似合いですわよアバン様っ♪」

「ア、アリア姫まで……!?これは困りましたね……」

 

 ワハハハハハ!!!

 

 そうして、アバンが狼狽える中その場にいた皆の顔に明るい笑顔の花が咲いた。

 

「アバン殿それならば一刻も早く愛しき姫のところに戻らないとな!男のケジメか?」

「ディードックさん!私の弟子のようなことを言わないでください!」

 そう言ってアバンはポップの顔を浮かべる。

「アバン様……やはりもうすぐに立たれるのですか?出来ることならもう暫くベンガーナにご滞在頂くわけにはいかないでしょうか?この奇跡の剣のことについても、もう少しお教え頂きたいこともありますので……」

 ここでオルヴァが一歩進み出るとその手には先刻アバンより渡された奇跡の剣があった。

「ええ、実は私もこの奇跡の剣についてもう少し調べたいと思ってまして…そこで考えていたのですがミネルヴァ様……」

「はい、なんでしょう?」

 ここでアバンはミネルヴァの方に向き直る。

「お姉様のルティナ様にお会いすることは出来ないでしょうか?」

 アバンはこのベンガーナ城の地下牢での戦いの後、ミネルヴァの姉であるルティナが今日このベンガーナに訪れることをミネルヴァ本人から聞いていたのだ。

「まぁ!本当ですかアバン様!それならきっと姉も喜ぶことでしょう!」

「え?お姉様が?」

 アバンがキョトンとした顔で訊ねるとミネルヴァとアリアは二人で顔を合わせながら何やら意味深な笑顔を浮かべる。

「フフフ♪アバン様のファンは私だけじゃないんですよ!」

「へ?私の……ファン?」

「はい、姉のルティナもアバン様の御高名にいたく関心がございまして、よくアリアと交えてアバン様のお話をしていますの」

「いやぁ〜ははは……それはまた嬉しいやらお恥ずかしいやら……」

「フフ♪お母様!今から伯母様が喜ぶお顔が目に浮かびますわね♪」

「ええ本当ね♪」

「ワハハハ!!なら善は急げだ!ルティナ様はもうお着きになられるのか?」

 と、クルテマッカがアバン達の様子に笑い声を上げながら側近に訊ねる。

「は!丁度今しがたメティス様からご到着されたとご連絡を頂きました!香玉の間にてご案内されたとの事です」

「そうかそうか!してアバン殿?先程のお話からすると奇跡の剣の事をルティナ様にお訊ねするつもりかな?」

「ええ、これも先刻ミネルヴァ様から伺ったお話ですがルティナ様は祈祷師としてご活躍されていた頃よりあらゆる知識に秀でていらしたとのことでしたので、もしかしたら詳しく奇跡の剣についても何かご存知かも知れないと思ったものですから……」

「それはメティスさんも言っていました、彼女は幼い頃よりルティナ伯母様に師事をしているので」

 と、オルヴァもここにはいないメティスからの言葉を伝えながら彼女とルティナが師弟関係であることを告げる。

「なるほど、メティスさんのあの優れた魔法技術もルティナ様の教えの賜物ということですね?ふむふむこれは俄然お会いしないといけませんね~」

「そしたら早速いきましょうアバン様!香玉の間は下の階ですからご案内しますわ!」

 そう言ってアリアは張り切ってアバンに告げる。

「わかりました宜しくお願い致しますアリア王女」

「はい!」

 そうしてアバンはディードックと共にアリアの案内でルティナが待つ香玉の間に向かおうとすると……

「ああ!スマンちょっと待ってくれ!」

「お父様?」

 突然、クルテマッカがアバン達を呼び止めた。

「ディードック殿に少し話があるのだが、申し訳ないがアバン殿すぐにワシらも香玉の間に向かうゆえディードック殿を少々お借りして良いだろうか?」

「オレっスか……!?」

 そう言ってディードックはアバンとクルテマッカを交互に振り向いて二人を伺うようにその顔を見るがアバンは少し首を傾げて無言で応える。

「いやいや先刻お主の仕事の話を聞いて少し興味を抱いてな、珍しい品を扱う商いをしているのだろう?だからよければ我が国の専属商人として働いて貰いたいのだ、勿論!要りようなモノがあれば船でも気球でも、おーそうだ!人手も欲しければワシがなんとかしようではないか!」

「ええーーーーーーーーー!!べ、ベンガーナ王国の専属商人!!!!しかも船でも気球でも人手でもーーーーー!!!?」

「それは素晴らしい!よかったじゃないですかディードックさん!ベンガーナ王国の後ろ盾があるなら安泰ですよ!」

 アバンも友人の大出世話しに目を輝かせて喜ぶ。

「い、いやぁ〜でもよ……アバン殿も知っての通り俺はなんつーか結構なゴロツキ共にも顔が利くしよ〜王国専属となるとやっぱちょっと印象良くしないとだろ?」

「ならこうしたらどうでしょう?ディードックさん」

「ん?」

 と、ここでオルヴァが提案する。

「このベンガーナの街にも確かにアンダーグラウンドな場所はいくつかあるのは我々も存じていますが、顔見知りの方がいたら父上の提案にお誘いするというのは如何です?」 

「どういうことだ?」

 ディードックはオルヴァの提案の意味が解りかねて首をひねる。

「つまりディードックさんのお仲間も一緒に王国専属の商人に迎えるという意味ですよ」

 と、アバンが補足を入れるとそれを聞いて振り返るディードックにクルテマッカとオルヴァが笑顔で頷き返した。

「うむ、よかろう!ディードック殿も慣れ親しんだ仲間となら励みにもなるだろう?ん?どうかね?ディードック殿」

「ハッハッハ!!俺だけでなく俺のダチ共にも声を掛けてくれるってんですかい!?参ったな〜そりゃ断る理由はないってもんだぜ!」 

「おおっ!!ディードック殿!!やってくれるか!!?」

 と、クルテマッカが満面の笑みをみせるとディードックは徐ろに片膝を付いて畏まりながら告げる。

「ベンガーナ王国国王クルテマッカⅦ世陛下、此度のお話し謹んでお受け致します!つきましては貴国に必ずやご満足頂ける商いを我が命と生涯を掛けてお約束致します!!」

「うむっ!ては宜しく頼むぞディードック殿!!大いに期待しておるからな!!」

「はいっ!!お任せ下さい!!」 

 その後、彼はベンガーナ王国にディードックあり!と世界中の商人達に讃えられ更に目標とされる様な世界を股に掛ける大商人となっていくのであったが、それはまだ暫く先の話しである。

「ミネルヴァ、アバン殿もそういうワケでこのあとディードック殿と今後の件で諸々話しがあるのでな…姉上様には後ほど伺いたいとお伝えしておいてくれ」

「今後の件で…ですね?畏まりましたちゃんとお伝えしておきますわ」

「……?」

「う、うむ……オホンっ!た、頼んたぞ!!」

「……?」

 そうして、アバン達はクルテマッカとディードックをその場に残してミネルヴァの姉ルティナが待つ香玉の間に向かった。

 

 

「アバン様!ルティナ伯母様はとってもお綺麗な方ですのよ♪ね、お母様♪」

「フフ♪そうね♪」

「そうなのですか〜ハッハッハ!そういえば先程のクルテマッカ陛下の様子が少し気になりましたが…」

 アバンは謁見の間で先刻ルティナの話でやや狼狽えていたクルテマッカを思い出して訊ねる。

「フフ♪それは〜」

 と、イタズラな表情でアリアはミネルヴァを伺う。

「それはクルテマッカ陛下が私の姉のルティナに怖がってるからですわ」

「へ?怖がる?」

「姉のルティナはどちらかと言えばわりと気の強いところがあってクルテマッカはいつも姉にやり込められてしまうのです♪姉は私やアリアそれにオルヴァにはお優しいのですが何故かクルテマッカには少し厳しいのです」

「おやおやそうでしたか?クルテマッカ陛下もそれは大変ですね〜」

 香玉の間に向かう長い城内の廊下を歩きながら、アバン達は話に花が咲いていた。

「そうだアバン様!フローラ様のお話を訊かせて頂けますか?」

「フローラ様の?」

 ふとアリアは思い出したかのようにフローラのことをアバンに訊ねる。

「アリア、不躾に失礼ですよ」

「え〜ダメですかぁ?」

 ミネルヴァに諌められたアリアは俯くがそんな彼女にアバンは優しく応えた。

「いえいえ構いませんよ♪そうですね…確かにフローラ様もルティナ様のように強い女性です。昔から祖国カールを守る為に自ら最前線に立っておられました…思い出します、私が魔王ハドラーとの最終決戦のためその本拠地に打って出た時も彼女はカールの兵士を指揮して私たちの戦いを力強く支えてくれました」

「そうだったのですね…確か希望の女神と呼ばれてましたわね」

「ええ、まさにその名の通りの方です」

 そう言ってフローラを語るアバンの表情にミネルヴァもアリアもその胸が暖かくなるのを感じた。アバンの中でフローラという存在が何よりも大きくそして愛しい存在なのだと二人は心底理解した。

「おや?そういえばオルヴァ王子はどちらに?」

「ええ、実は今日の午後から勇者ダイ様の捜索にオーザムへと向かう筈だったのですが……

 と、ミネルヴァはやや憂いを浮かべで告げる。

「先程の地下牢での騒動でやむなく先延ばしにすることになりまして……一刻も早くあの子も私たちも勇者ダイ様の捜索に動かなければならないとは思ったのですが…」

「ごめんなさいアバン様…オルヴァお兄様も先程の戦いでまだ少しダメージもあって……お兄様はこれからオーザムに向かっても大丈夫だと言うのですが…やはり……」

「いえいえ!そんな謝らないで下さいアリア姫!大丈夫です私の弟子のダイは必ずやきっと皆の元に帰ってきますから、フローラ様からのお手紙やパプニカのレオナ姫からもダイの捜索隊結成の話も伺ってますから皆さんが気に病むことは一切ありませんよ、それに皆さんの選択は決して間違ってはいません、何事も準備万端にコトを進めなければその先に何が待っているのかわかりませんからね、今回の凶神勢との戦いもそうでしたよね…」

 アバンは二人を諭すように語る。

「私も今回の件でやはり魔界の輩は油断のならない存在だと改めて身にしみて感じました……なのでオルヴァ王子にもこれからもっとその強さを磨いて貰いこの国を守っていってい頂きたいと思います!私は期待していますよ!彼の強さに!!」

「アバン様……」

「ありがとうございますアバン様!お兄様もきっと喜びます!だってあの勇者アバン様から期待されてるなんて聞いたらきっと!!」

「フフ♪アリアったらもう、そんなにはしゃいで…」

「フフ♪」

「アリア様は本当にオルヴァ王子が大好きなのですね♪」

「ええ、たくさん楽しいお話を聞かせてくれたりとても優しいお兄様ですもの!あ、そうだ!アバン様!私、勇者様の…っ!ダイ様の夢をずっとみていたんです!」

「ダイの夢を……?」

「ええ、この子には祈祷師一族の血の影響なのか不思議な夢を見る力があるようで、南の島のデルムリン島でしたか…そこでご活躍されたダイ様の勇姿や大魔王バーンが率いていた魔王軍との戦いの中のダイ様の夢をみたいたのです」

「ダイの戦いの軌跡……ということでしょうか?しかしアリア姫はダイと面識は?」

「一度もありませんわ!でも、わかるんですダイ様のお姿もお声も表情もそしてその強さも…」

「なるほど…それは興味深いですね…古来より夢は予知夢などのように不思議な現象に深く関わることもありますからね…」

「ええ、なのでそれも含めて姉のルティナに訊いてみようかと思います」

「そうですね祈祷師一族の血が影響されてるのは確かでしょうから、きっとルティナ様ならなにかおわかりかななるかも知れません」

「あ、アバン様!もうそこの角を曲がればルティナ伯母様のいらっしゃる香玉の間ですわ!」

 と、そう言ってアリアは廊下の少し先の曲がり角を指さして告げる。

 果たしてルティナとはどういう人物なのか?彼女との出会いでアバンは凶神や神聖の神器についての謎に迫れるのか?更なる魔界の強者との戦いに向けて地上を守る為の鍵が得られるのか?新たなこの出会いにアバンはその胸に希望を抱いていた。

 

 

 




 前回、今週のお話でベンガーナ編のまとめで尚且つ奇跡の剣の秘密が……とお伝えしてましが、思いの外長い話しになりそうなので申し訳ありませんがもう少しお付き合い下さい。奇跡の剣については次回に持ち越します (-_-;)申し訳ありませんがご了承下さいませ……m(_ _)m  
 さて、物語は凶神勢との戦いを終えて平和な時がベンガーナ王国に訪れました。そして、これから先の行く末にそれぞれが希望を抱いて再び前進する内容であります。このような日常の風景を書くのも好きなので、優しい気持ちで楽しんで書けました。ディードックもオルヴァもそしてアバンも新たな希望を携えてそれぞれが再び歩み出すという展開になりそうです。
ま、アバンの場合はそろそろカールの王女様の想いに応えて上げないとですね(笑) ✨
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