新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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ロン・ベルクの思惑

 

 

 ─超大呪文継承の決意─

 

「ジャンク悪いがまた留守にする」

 オーザムから戻り自身の工房でアバンとの邂逅を果たした後、ロン・ベルクは自らの師であるルゲル・ベルクに会うため再びオーザムに向かうこととなった。 

「ああ、アバン殿との話しも耳に入って来たぜ……エルフか……なんだか厄介な話しみてぇだが、ま、ノヴァ君のことは暫く俺に任せな」

「恩に着る……それと」

「ん?」

「もしお前の店に俺と同じ魔族が訪ねて来たらコイツを渡してやってくれ……」

 と、ロン・ベルクは小さな小袋をジャンクに手渡した。

「なんだこりゃ?」

「その魔族が喉から手が出るほど欲しいものさ……ま、使うのはそいつじゃないだろうがな…」

「ふ〜んなんだかワケがわからねぇが……ま、わかったぜ!預かっておくよ」

 ジャンクはそう言ってロン・ベルクから受け取った小袋を大事そうに懐に仕舞った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここが俺ん家だ」

 ポップはそう言うとロン・ベルクの小屋の前で出会った女魔族のキュレに自宅を紹介した。

「武器屋か……」

「ああ、俺の親父ジャンクの店だ」

「ジャンク……それがロンの…」

「俺よりもずっと親しい仲さ、ま、とりあえず入ってくれよ」

 ポップはキュレを自宅の武器屋に案内する。

「親父〜客だぞ〜」

 バーンも倒れ平和になった世では武器の売れ行きも落ち込んでいた為に、開店休業状態の店の奥に引っ込んでいたジャンクをポップが呼び出した。

「あん?客だと?」

 と、その店の奥からしかめっ面のジャンクが顔を覗かせる。

「ああ、この人ロン・ベルクの知り合いなんだってよ!」

「ロンの?あ、もしかして……!?」

「私はキュレと言う者だ……アナタがジャンク?」

「ああ、そうだ……ロンのヤツから聞いてるぜ」

「え?」

「親父?」

「おめぇがアバン殿と一緒に帰って来た日にロンに会いに行ったろ?その日にアイツから頼まれてたことがあったんだよ」

 そしてジャンクは店の奥に再び引っ込むとロン・ベルクから渡された小さな小袋を手にして現れた。

「なんだいそりゃ?」

「ロンのヤツから自分と同じ魔族が訪ねて来たらコイツを渡してくれって言われてたんだよ」

 そう言ってジャンクはその小袋をキュレに差し出した。

「……ん?まさか……っ!?コレは……っ!!!?」

「ど、どうしたんだよっ!キュレさんっ……!?」

 小袋の中身をみて声を上げるキュレにポップは驚いて訊ねる。

「お前とも先程少し話したが私とロンにはルゲル・ベルクという師がいる、その師は今とある武器の修復をしているのだが…」

「アンタらのお師匠さんが武器の修復を?」

「ああ、しかしコレがなかなか厄介なシロモノでな……お前達からしたら想像もつかない年月を修復に費やして来たのだが……それにはどうしても手に入れなければならないある珍しい鉱物が必要だった」

「ある珍しい鉱物?」

 ポップとジャンクは互いに顔を見合わせて首を傾げている。

「我が師ルゲル・ベルク自身も過去に数回しかお目にかかれなかった魔界産の貴重な鉱物……ソイツが今この中にあるのさ」

 そう言ってキュレはその手にある小袋を軽く掲げた。

「するってぇと……ロンのヤツはそのアンタらの師匠……ルゲル・ベルクさんって言ったか?その人の為に?」

「私がここに訪ねて来ることをなぜわかったのかは知らないが、恐らく最も安全で信頼できるアナタにコイツを託したのだろう……わかったジャンク……息子同様……アナタもどうやら信用出来る男のようだ……ロンがコイツで証明した」

 そして、その顔に微笑を浮かべて再び小袋を軽く掲げた。

「そうかい……そいつは何よりだ」

「でも……ってことは随分と価値のあるモノなんだな、その小袋の中に入っているのは?」

「ああ、だろうな…あ、中身は見てねぇぜ…一応は俺も武器を扱う者の端くれだ、本人の許可なく勝手なことはしねぇ!」

「フ…そうか……まぁ見たところでロンは怒りはしないさ……この鉱物の名はヒイロカネ……魔界でも特別な場所で少量しか採れないモノだ……」

 キュレはそう言って目を細めながらその小袋を見つめた。

「でもロンのヤツも直接そのルゲルさんって師匠に渡せばいいのにな?なんで俺やアンタに渡すなんて回りくどいことすんだ?」

「さぁな、私も付き合いは長いが時々なにを考えてるのかわからない時がある……」

「ふぅ~ん……てことは〜キュレさんはロン・ベルクのそんなトコに惚れたってことかい?ヒヒヒ♪」

「な……っ!?だ、誰が!!あんなヤツ!!ていうかお前……本当に死にたいのか?」

「いやいやいや!!ジョーダンだよ!!ジョーダン!!おっかね〜なぁ……」

「フンッ!ロンは武器と酒のことしか興味がないような男だ」

「まぁ確かに酒好きだがオンナの色香にほだされるヤツじゃねぇなぁ……てか、ポップお前はどこでそんなコト覚えてくるんだ?まったく……」

「へ?あ、は、ははは……ス、スンマセン……」

 と、ポップは小さくなって反省した。

「ま、そんな下らない話しはどうでもいい……ところでさっきの話はいいのか?」

「あ、そうだそうだ!ちょっと待っててくれ!ていうか中入ってくれよ!いいだろ?親父!」

「ああ、別に構わんよ……まぁ狭いところだが寄っててくれキュレ殿」

「そうかすまないな……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ザザ〜ン……

 

「綺麗だろ?ヒュルト」

「うん!魔界じゃこんな景色見れないから……この前の朝日も綺麗だったけど、昼間の太陽の光が海にキラキラ光っててスゴイね!」

「ここパプニカって国はな、海と太陽と風の国って言われてる世界で最も綺麗な国なんだぜ」

「へぇ〜世界で一番なの!?」

「ああそうだ!」

「へへ♪ならオレはラッキーだな!こんなに綺麗な国に来れて……ありがとうマトリフさん」

「なぁに礼なんかいいさ、それにこれからはもっともっとスゲェもん見せてやるからな!」

「ホントっ!?アハハ♪楽しみだな!!」

 パプニカの海に輝く数多の光を目の前にマトリフとヒュルトは肩を並べて笑顔を交わしていた。

 そしてそんな光景を少し離れたところからカイアが穏やかな笑顔で見つめている。

(「マトリフありがとう……私達を受け入れてくれて……アナタを愛して本当に良かった……」) 

 カイアは暖かい胸の中でそう告げる。

 と、同時に彼女は今いるこの浜辺でマトリフと二人きりで過ごした昨夜の話しを思い浮かべていた。

 

「夢想魔法?」

「ああ、さすがにおめぇも聞いたことなかったか?」

「ええ、初めて聞いたわ……その夢想魔法であの時にアナタは生き返ったということなの?」

「厳密には夢想魔法だけの力じゃねぇぜ、おめぇのザオラルだってなければ俺はこうしてここにいねぇ……」

「でもあの時、私のザオラルだけではアナタを呼び戻すことは出来なかったわ……」

「だからよ、その夢想魔法とカイア…おめぇのザオラルが一つになって俺は生き返れたってことさ」

「それって夢想魔法が呪文の効果を引き上げるってこと?」

「ん〜というか夢想魔法の力とその時に使った呪文の力が一つに合わさって新たな力を解き放つ感じだな……」

「凄いわ……まさに夢の魔法……あ、そういう意味で夢想魔法?」

「ハッハッハッ!!名付けたのは俺の師匠だが、確かにそうだな!夢の魔法だ!でも、誰しも使えるモンじゃねぇ……色々と条件付きの魔法さ」

「条件?」

「夢想魔法の書ってのがあってよ、それはな〜んにも書いてない白紙の魔導書なんだけどな……その夢想魔法の書にはその持ち主の人生を掛けて刻まれた歴史が記されるんだわ……」

「人生を掛けた歴史……つまり命ということかしら?」

「さすが鬼眼の女王だな物分かりがいいぜ!その通りだ……命とも言える魂の歴史を全てのページに刻むことが出来て初めてそれは真の夢想魔法の書となる……そしてそれが完成した暁には……」

「どうなるの?」

「太古の昔に封じられた超大呪文の扉が開く……」

「太古の昔に封じられた超大呪文!!?待って……もしかしてそれってマダンテ……っ!!!?」

「ああ、そうだ、おめぇが俺に教えてくれた究極破壊呪文……デステマ……恐らくはアレと同等の威力を誇る超大呪文だ……」

「マトリフ……私もその超大呪文マダンテのことはは知っている……なぜならそれはあのデステマとある意味対を成す大呪文と言われているから……」

「ん?なんだ?対を成す?」

「ええ、それに私が知り得る限りではその超大呪文はアナタが体得した究極破壊呪文デステマを身に付けないとその身に体得することは出来ないわ……」

「なにっ!!?そうなのか!!?マジかよー!!!てことはアイツにもデステマを覚えさせなきゃいけねぇのか……」

「ただ、その夢想魔法の書とマダンテとの繋がりは私もわからないし……夢想魔法があれば必ずしもデステマを体得する必要があるのか……ところでアイツって、アナタのお弟子さんの?」

「ああ、ポップって言ってな……ま、ようやくヒヨコからそれなりになったって感じだな……まー俺の方が断然いいオトコだ!!

「あ、あはは……そ、そう……」

「んで、夢想魔法についてだが、俺の師匠バルゴートによればさっき言ったように己の魂を刻み込み真の夢想魔法の書を完成させることが先ずは基本でな……そしてそこから夢想魔法の書に認められた者だけがマダンテの謎を解き明かす資格が与えられるってことなんだわ……だからつまり資格だけなら師匠バルゴートは勿論のこと夢想魔法の書を完成させたこの俺にだってあるワケさ……でもよ……そっから先がどうにもわからねぇんだ……俺も師匠も散々色んな文献を読み漁ったり、色んな魔法の契約法や魔術、呪術……果ては禁呪法にまで目を走らせてはみたんだが……」

「解き明かすまではいかなかった……」

「そういうコトだ……解き明かしそして身に付ける……太古の昔に封じられた超大呪文ってのは相当厄介なモンだよな……でもよカイア…」

「なぁに?」

「さっきの情報は有り難いぜ…まぁ厄介なことには変わりねぇが……あのデステマと対を成すなんて話しはこれまで得られなかった話しだ……それにデステマを身に付けることがマダンテを身に付ける条件ってなら……」

「ええ、逆に言えばデステマを身に付けたアナタならその超大呪文……″マダンテ″も身に付けられる可能性はあるってことよ……でも……」

 と、ここでカイアはやや憂いを帯びた眼差しを浮かべる。

「どうした?」

「私の封印を解く為に究極破壊呪文デステマを身に付けたアナタならわかると思うけど……それと対を成すあの″マダンテ″まで身に付けるとなると……アナタの身体が……」

「……!?…………そうか……やっぱそうだよな……」

「マトリフ……」

「ま、だからこそポップのヤツに気張ってもらわねぇとな……」

 そう呟くマトリフはどこか憂いの籠もった瞳で夜の海に視線を走らせた。

「マトリフきっと大丈夫よ……」

 すると、カイアがそっとマトリフの手を優しく包み込む。

「アナタの想いは必ず伝わるわ……」

「カイア……ああ、ありがとな……」

 そうして互いの身を寄せ合いその温もりを感じながら、マトリフはポップへの最後の継承を改めて決意していた。

 




 今回は二つのシーンを展開しました。
 ポップとキュレの出会いは当然、この先ロン・ベルクも絡んで来ますが、ルゲルとの繋がりやエルフとの繋がりにもポップを少し絡めたい考えでいます。
 ポップの物語でもあるので、彼にはあらゆる知識を得ていて貰いたいというコトとポップを動かす上で色々と伏線的なモノを彼にはかけておくと楽かな?という書き手の思惑もあります。
 まぁアバンにその役をつけても良いのですが、師弟で物知りさんなら尚良いかと(笑)
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