新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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待ち侘びた勇者

 

 ─復興の希望─

 

「やれやれ……すっかり遅くなってしまいましたね……」

 アバンはそう呟くと、やや憂いを込めた瞳で未だ復興の最中の故郷を見渡す。

 日もとうに落ちて、獣除けか防犯のためか……僅かなかがり火が置かれているだけで、全体を隈なく見ることは適わないが、それでも自身の祖国が大きなダメージを受けたことはアバンの目によく写った……

「これ程とは……ん?」

 すると、遠くに一つ灯りの灯るテントが目に付いた。その中にはまだ誰か居るようだった。

「もうかなりの時間なのに……」

 そう言うアバンの頭の上にはすでに幾つもの星星が煌めいている。

 

 ザッ……ザッ……

 

「……!足音……!?」

 復興現場の簡易的な執務室のテント内で、雑務を熟していたフローラは近付いて来る足音に身を固めた。

 一瞬……自身の机の脇に常備してある細身のレイピアに視線を向けるとスグさまテントの入り口に意識を向ける。

(「今は兵士たちも早めに休ませてしまった……自分の身は自分で守らないと……」)

 フローラはもしもの事態を想定して身構える。

「失礼します!灯りが見えたモノですから!宜しいでしょうか?」

「え……まさか……っ!?その声は……っ!?」

 フローラはそう叫んで慌ててテントの入口に下がる布を上げると、そこには長い間……その帰りを待ち侘びていたその人がいた……

「アバン……」

「フローラ様……本当に長い間……お待たせしてしまい申し訳ありません……このアバン……ようやくこのカールに……っ!!?」

 アバンが主であるフローラに帰還の報告とその遅れの謝辞を告げていると……

 突然、その彼の胸にフローラは飛び込んだ。

「フ、フローラ様……っ!!?」

「本当に……!本当に!勇者って存在は……しっかり掴まえて置かないと……」

 アバンの胸にその顔を埋めながらフローラは告げる……そして……

「すぐどこかに行ってしまうんだから……っ!!」

 そう言って顔を上げたフローラの瞳は美しく潤いを湛えていた。

 そしてアバンはその表情に柔らかい視線を向けながら優しく告げる……

「もう私はどこにも行きませんよ……ずっと……アナタの傍に……」

 その言葉にフローラは目を見開くと…アバンの首に手を回し……優しく唇を重ねた……

 

「おかえりなさい……アバン……」

 

───その翌日

 

 アバンは復興現場にて改めてカール王国の兵士たちや復興支援に訪れていたベンガーナ王国のアキームたちやロモス王国の兵士たちに報告を兼ねて挨拶に立った。

「皆さん!遅ればせながら昨夜わが祖国カールに帰還致しました!本当に遅くなり申し訳ありませんでした!」

 アバンは先ず最初の一声で謝辞を示した。

 そして、ゆっくりと顔を上げると優しい微笑を湛えて告げる。

「しかし今日までこうして皆さんがわが祖国カールの為にそのお力をお貸し頂けてること、心より御礼申し上げます!本当にありがとうございます!!」

 

 わぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!

 パチパチパチパチ!!

 

 万来の歓声と拍手がアバンに向けられる。

 アバンは再び深々と頭を下げると隣に立つフローラと満面の笑みを交わした。

「皆さん!こうしてようやくかつての勇者アバンもわが祖国カールに帰りました!というワケで!随分と我々を待たせたアバンをとことんこき使ってあげましょう!!」

「ワハハハハハーーーー!!!」

「いやぁハハ……参りましたね……」

 フローラの呼び掛けに皆が大爆笑している中、アバンは冷や汗をかきながらもその笑顔で皆の心を癒していた。

「また、これからパプニカからの復興支援隊も到着します!よりたくさんの頼もしい尽力を頂けますので、皆さん!!改めてそのお力をお貸し下さい!!そしてわが祖国カール王国は必ず必ず復興を成し遂げて参ります!!!」

 

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!

 

 フローラの意気軒昂な言葉にカール王国の兵士たちもベンガーナ、ロモスの復興支援隊も大歓声で応えた。

 

(「やはりこの国はフローラ様なくしてはあり得ない……希望の女神……か……」)

 アバンはそう優しくフローラを見守っているとその視線に気付いたのかフローラが振り返り優しい笑顔をアバンに返した。

 

 

「そろそろだなヒュンケル……」

「ああ……アバンはもうカールに帰還しているのだろうが……」

「ポップと帰っていったからな……もう既に母国カールの復興に参加していることだろう」

「ああ……」

 アバンがカールに帰還して2日……ヒュンケル達を乗せたパプニカからの復興支援隊の船は、途中なんのトラブルもなく至って穏やかな航行を保っていた。

 その為、予定よりもかなり早くカール王国に到着することが見込まれた。

「アバン殿の故郷か……」

「出港前にアバンから言われたのだが…カール王国の騎士団はかつて世界最強と謳われていたほど多くの手練れ揃いだったようだ……俺もあの鬼岩城が移動した際に探りを入れる為にカールに足を踏み入れたことがあったが……」

「あの時か……だが既にあの時にはカールはバラン率いる超竜軍団に滅ぼされていたのだろう?」

「ああ、しかし生き残った人たちに話を訊いたんだ……カール騎士団のその強さを……それにアバンにも言われたがカールにはその長い年月で受け継がれて来た剣術や槍術など研鑽するに値するようなモノも多くあるらしいのだ」

「カールの剣術と槍術か……なるほどな……確かにそれは興味深いな……」

「復興と同時にアバンの故郷でそれらを学ぶのもまた良いと言われてな…」

「そうか……そうだな……そういうことならば俺も是非付き合おう」

「ああ、宜しく頼む……」

 その後、航海は滞りなく航行され、かつてあのハドラー率いるオリハルコンの親衛騎団と初めて顔を合わせたサババの港に着港した。

 

 ワァァァァァァァァァーーーーーー!!!

 

「これはスゴイ歓迎ぶりだな!」

「ホントですね!!よぉぉぉーーし!!我ら獣王遊撃隊はこのカール王国の復興に全力を尽くすぞーーーー!!!」

「おーーーーーーっ!!!」

 チウの掛け声に獣王遊撃隊のメンバーも元気いっぱいに応えた。

「はっはっはっ!!頼むぞチウ!!」

「おまかせください!獣王遊撃隊!!クロコダインさんの獣王の名を汚さないようお役に立ってみせます!!」

 そうして彼等はカール王国の大歓迎の中船を降りると人垣が割れ、カール王国王女フローラとその傍らにはアバンの姿が現れた。

「パプニカ復興支援隊の皆さん!遠路はるばるよくぞお越しくださいました!!わが祖国カール復興の為に本当にありがたく思います!!心から御礼申し上げます」

 フローラが深々とパプニカからの復興支援隊に頭を下げ謝辞を述べるとアバンもそれに倣った。

「長旅のところお疲れかと思われますので、未だ些末な宿舎で恐縮ではありますが、ご案内させて頂きます」

 更にフローラがそう述べるとアバンに振り返り互いに頷いた。

「改めましてこの度はわが祖国カールの為にありがとうございます!パプニカからようこそお出で下さいました!ここからはこのアバンがご案内させて頂きますので、宜しくお願い致します」

 アバンはフローラと入れ替わる様にパプニカ復興支援隊の前に出ると、視線の先に一際目立つクロコダインやヒュンケルの姿をみつけた。

「ヒュンケル!クロコダインさん!」 

 アバンがそう呼び掛けると彼等も笑顔で応えた。

「アバン殿!」

「復興は順調なのか?」

「ええ、おかげ様で我がカールの民や兵士だけでなくベンガーナやロモスの皆さんにも本当に大きな力をお借りしましてかなり順調です」

「そうでしたか!それは良かった!ん?ロモス?となると……俺はあまり目立たない方が良いかもな?」

「いえいえ、そこのところは大丈夫ですよフローラ様がちゃんとご説明してくれてますから」

「フローラ様が?」

「かつての百獣魔団はもういないと…団長のクロコダインは我々人間の大きな味方となったと…」

「フローラ様がそんなことを?」

「ええ、あの方は本当に分け隔てなく希望を与えられる素晴らしい人です」

 アバンはそう言ってフローラに視線を向ける。

 と、ヒュンケルはそのアバンの柔らかな瞳に深い愛情をみたような気がした。

「そうか……」

「フローラ様にもご挨拶しなくてはな……ヒュンケル」

「ああ」

「ええ是非とも!」

 クロコダインとヒュンケルの言葉にアバンはフローラの元に二人を案内する。

「フローラ様!」

「よくぞ我がカールに来てくださいました!クロコダインさん!そしてヒュンケル……」

 フローラはそれぞれと握手を交わすとニッコリと微笑んだ。

「アバンからも聞いているけど、カールの兵法を学びたいとか?」

「はい、復興作業はもちろんのことカール王国の剣術、槍術は他のどこにも類を見ない程のモノだと聞き及んでおりましたので……」

「ええ、カールはかつては最強の騎士団と呼ばれていたから……今は残念ながら傷付いてしまってるけど……でも必ず復活してみせるわ!そう簡単にカール騎士団は負けないわよ!それにヒュンケル、そしてクロコダインさん、あなた達の技や強さも是非カール騎士団に御教授いただきたいわ!ね、アバン!」

「ええ、そうですね!是非とも!」

「しかし、オレならともかくヒュンケルの技はアバン流の技……だとすればアバン殿がカール騎士団に伝えても良いのでは?」

「もちろん私のアバン流の技も伝えていくつもりですが、ヒュンケル自身が独自に身に着けた技や強さもある筈ですから……私はそこに期待もしているのです」

「期待?」

「ええ、これからの戦いに際しての備えはいくらでもあった方が良いですから」

「……っ!?これからの戦い?アバン……何かあったのか?」

 アバンの言葉にヒュンケルもクロコダインも表情を固くする。

「ええ、実はお話しておきたいことがたくさんありましてね……っと……まぁとりあえずそこら辺は後にして……皆さんの宿舎にご案内致しますよ」

「ん?あ、ああ……そうですな……ヒュンケル話しは後にしよう……」

「そうだな……」

「そういえばチウ達はドコへ行ったかな?」

 クロコダインはまわりを見ながらチウ達の姿を探すがドコにも見当たらなかった。

「チウさん達も来てるんですね〜?はてさてドコに行ったのか?」 

「しようのないヤツだな……あとで叱っておくとしよう」

「ハハハハ!いえいえ……ソレには及びませんよ!彼はああ見えてしっかりしてますからね~」

「そうですかな?ワハハハ!!」

 そうしてアバン達は姿の見えないチウを話しの魚にして盛り上がる。

「彼らのことは兵士たちにも伝えておくから、とりあえずアバンご案内をお願いするわ」

「ええ、お任せ下さい……それではこちらへどうぞ……」

 アバンたちに促されたヒュンケルとクロコダインは、パプニカの復興支援団と共にカール王国の宿舎にむかった。

 




 ここから少しカール王国復興編に入ります。
 はい、戦闘もなくとても地味な回となりますので、退屈してしまったら書き手の力不足です(-_-;)申し訳ありません 
 ただ、今後のヴェルザー陣営や凶神、更にエルフや新しい展開などなど……今回はかなり重要な伏線がありますので、お楽しみ頂ければなによりです。
 それにしてもなかなか物語の進みが遅いなぁと…… 
 書いているとそう感じてウズウズしてしまいますね……(^_^;)
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