新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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ネズミと獣王と金属生命体

 

 ─チウの焦り─

 

 

「てやあああぁぁぁぁぁー!!」

 ポップが目覚めた翌日の午後。パプニカの海を背景にして広がる浜辺で、大ネズミのモンスターにしてマァムと同じ拳聖ブロキーナに師事するチウは苛立ちの余りに近くの岩を砕きまくっていた。

「オウ、チウここにいたのか?どうした?」

「あん?なんか、隊長さん荒れてんなぁ~?」

 かつての魔王軍、百獣魔団長クロコダインと同じくハドラー親衛騎団のヒムがいつもとは違う雰囲気のチウに声を掛けた。

「はぁはぁ……あ、クロコダインさんにヒムちゃん……」

 息を乱しながらチウは振り返る。

「ずいぶんとまぁ岩を砕いたな……」

「なんかの練習か?」

 クロコダインとヒムが周りに広がる砕けた岩の山を見渡しながら言った。

「こんなにムシャクシャする事なんて無いですよ!なんでマァムさんとあの変態魔法使いが仲良くしてるんだぁー!!」 

 チウの心の叫びだった。

「なんだ、そんなことでイライラしてるのか……?」

「隊長さんが怒ってどーすんだよ?あの魔法使い君が武道家のねーちゃんに惚れてんのはみえみえだろ?」

「そうだよなぁ……色恋に疎い俺でもわかるわ……似合いの夫婦になりそうだしな?」

「おおー確かにな!かかあ天下は間違いないだろうけどな!」

「ああ、それをいつか言ってやってらマァムよりポップのヤツが顔を真っ赤にしてたぞ!」

「肝が座ってるのはあのねーちゃんの方かもな!」

 と、二人は盛り上がっていたが、チウはますます腸が煮え繰り返る思いだった。

「二人とも!あの二人がそんなに仲良いワケないだろ!!あの変態魔法使いはいつも、いつもマァムさんの身体をいやらしく触ってるんだぞ!マァムさんだって嫌がって毎回毎回ボコボコにしてるのに~あの変態魔法使いはちっとも懲りてない!!」

 チウはこれまでのポップの悪行?を声を大にして叫ぶ。

「まぁ、確かにマァムはやり過ぎなくらい殴ってはいるが……なぁヒム……」

「そうだぜ、隊長さん。ありゃあ、あのねーちゃんの照れ隠しだよ、それによ本気で嫌がるならポップだって何度もやらないだろ?いくらなんでも、そのくらいの空気は読めるさ」

「いーや、読めない!あの変態魔法使いは僕と違ってそんなスマートなヤツじゃない!ていうか、さっきからヒムちゃん!ねーちゃんじゃなくてマァムさんだ!!」

「へいへい……」

「チウ……気持ちはわかるが、やはり二人の事は二人に任せよう……」

「そうだぜ、隊長さん、人間の女に恋したって俺達みたいな魔物じゃあ相手にされねぇよ……」

「ん?なんだチウ?そういう事なのか?」

「え?クロコダインよ、気付いてなかったのか?ニブイなアンタも…」

「い、いや!?な、何を言ってるんだヒムちゃん!ボ、ボクはあくまでマァムさんが迷惑しているんじゃないかと!同じ、ブロキーナ老師の門下生としてだな!」

「へいへい、そういうことにしといてやるよ……」

 もう既にヒムはこの会話に飽き始めている……

「しかし、ヒムお前はまだ生まれたばかりなのに随分と人間の事がわかるな」

 クロコダインが感心していると……

「ハドラー様の記憶があるからな……なんとなくみてればわかるさ………ま、色恋なんてのは俺には縁がないからどーでもいいんだけどさ、ポップとあのねー……じゃなかったマァムは、見ていて面白いからな」

 ヒムは一応、自分の隊長のチウの換言は素直に聞くようで、今度はマァムの名前をしっかり口にした。

「面白くない!」

「何が面白くないの?」

 三人がその声に気付いて振り返ると、マァムが岩の影から顔を覗かせた。

「マ、マァムさん……っ!?」

「おお、マァム!どうした?」

「うん……ていうか何?この砕けた岩の数……」

 マァムもその異様な光景に眼を見開く。

「隊長さんが説明してくれんじゃねぇか?」

「い、いやぁ!ちょ、ちょっと新必殺技の開発をですね……!」

 と、ヒムがチウをつつくと慌て繕う様に言い訳をする。

「そうなの?私も付き合えればいいんだけど……クロコダインとヒムがいれば大丈夫かしらね」

 チウの気持ちも知らずマァムは屈託のない笑顔で言う。

「い、いや!そんなことないですよ!マァムさんも是非!」

 チウはマァムを誘うつもりで言った。

「ごめんなさい、私ちょっとポップを探してて、三人共見掛けなかった?」

     ガ~ン……!

 唐突にマァムの口から出た、最も聞きたくない名前にショックを隠し切れず崩れ落ちるチウだった。

「どうしたの?チウ…」

「岩を砕きまくってバテたんだろ?ほっといてやってくれ……」

 ヒムが呆れながら言う。

「おお、そういえばさっきポップがマトリフ殿といたのを見掛けたぞ、なぁヒム」

「ああ、確かにここに来る途中にいたなぁ…」

「そう!ならおじさんのところかなぁ?ありがとう!行ってみるわ!チウ、新必殺技!頑張ってね!じゃあ!」

 そういうとマァムは足取り軽く去っていった。

 残されたチウにクロコダインもヒムも哀れみの表情で言うしかなかった。

「こればかりは、諦めろチウ……」

「人間の女なんてやめとけ……きっと隊長さんにはそれなりに、相応しいのが現れるって……」

「うう~……マァムさぁ~ん……グス……」

 チウの初めての恋にして初めての失恋だった……

 

 

 




 チウも大変魅力的なキャラクターなので彼には少し気の毒な役回りですが、彼は彼の魅力をこれからも出していければと思います。案外、チウのエピソードも書いていて面白いので、クロコダインとヒムのこのチームは自分の中ではとても大好きです。また、勿論それぞれの成長も今後書いていきます。戦士としてのこの三人のこれからもみものです。
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