─パプニカの復興─
─平和の維持─
パプニカの城下町も随分と復興が成されて来た。しかし、ピラァオブバーンで破壊されたパプニカ西部には、まだ完全には復興が成されてない所もありレオナ姫の命の下、その地域の街中には三賢者が派遣され住民と共に懸命に復興に向け奮闘していた。
「姉さん、これはどうするの?」
「そうね、先ずは幼い子や年配の方を優先しましょう!」
「わかったわ!」
エイミとマリンは食糧の配分や運搬の仕分けをする部署の指揮を取っていた。
「お疲れ様、そっちはどうだ?」
「アポロ!お疲れ様!」
先日、レオナ姫にアポロとの結婚の報告をしたマリンが駆け寄る。
「あらあら~いいわね~新婚さんは~」
「ちょ、ちょっと……エイミ冷やかさないでよ~」
「照れるじゃないか……」
マリンとアポロが顔を赤くしていると、街の住民達も顔を出した。
「いやいや、世界がようやく平和になって、しかも我々の街の復興に大いに尽力して頂いているお二人が結ばれるなんて、我々も我が事のように喜んでいるんですよ!」
「そうそう、幸せオーラで復興も進みますよ♪」
「おめでとう!アポロ様!マリン様!」
街の復興はまだ完全に成されていないとは言え、どうやらアポロとマリンの結婚は不思議と街に活力を与えていたようだった。
「そ、そんな……皆さんがそんな風に思ってくれていたなんて……」
「ありがとうございます、皆さんの街の復興に、これからも二人で力を合わせて頑張ります!」
「ははははっ!そりゃ頼もしい!」
「でも、お二人さん!いちお~私も入れてくれます?三賢者なんで~」
エイミが渋い顔でアポロとマリンに告げる。
「も、勿論よ!エイミ!」
「あ、ああ!宜しく頼むエイミ!」
「はいはい、新婚さん宜しく♪」
「わはははははっ!」
顔を紅く染めているアポロとマリンをしり目にエイミと街の住民達は声を上げて笑った。と、そこへ……
「おやおや?こちらも盛り上がってますね~」
「アバン様っ!」
「これは、これは、どうされましたか?」
「姫様から何か?」
アポロ達は突然のアバンの訪問に驚く、エイミなどはてっきりレオナから何かを言い付けられた使いかとも思った。日頃のレオナの人使いの荒さが思い出される。
「いやいや、実は明日そろそろカールに戻ろうと思いまして、皆さんに挨拶回りをしていたのですよ」
「ええ!そうなんですか?」
「まぁ!寂しくなりますわ!」
「そうなんですか……私達もですが、姫様もきっと寂しがると思います……」
三賢者の面々は本当に残念そうだった。
「大丈夫ですよ、一先ずお暇という感じなので、またきっとフローラ様のお使いでパプニカには来ると思いますから」
アバンば湿っぽくなる空気を晴らすかの様に明るく言った。
「アバン様には、まだまだ色々と教えて頂きたい事もあるので、是非ともお願い致します!」
「ええ!いつでも大歓迎致します!」
「そうそう!アポロとマリン姉さんが結婚するんですけど、その結婚式も是非!」
「お、おいおい!エイミ!」
「そうよ、エイミこんなタイミングで!」
「そうでしたね!なんともおめでたい話しじゃないですかっ!お二人とも改めておめでとうございます!レオナ姫にも伺っておりましたが、その時には是非とも参加させて頂きます!いやぁこれはフローラ様に良いお土産話しが出来ましたよ♪」
皆で平和を実感しているこの空間がアバンは何よりも嬉しかった。魔王軍の破壊行為によって奪われたものは数知れず、未だその傷の癒えていない所もあるなかで、それでも人々は逞しく立ち上がり、共に手を取り合って前に進んでいる。そんな人間の強さや偉大さをアバンは心から信じていた。
「あ、そうだアバン様!彼にはもうお話しされたのですか?」
「彼?」
「ヒュンケルですよ!」
「えっ!?」
反応したのはアバンではなくエイミだった。
「ええ、先程お話ししました。そうそう明日はメルルさんの占いで彼の今後の行き先を占う予定なんですよ」
「えっ!ヒュンケルの今後!?」
エイミは驚きを隠さずに声を上げた。
「彼はダイの探索に出るには自分の身体を完全に回復させる必要があると考えていて、その為にはエルフの住処に訪れて彼等の不思議な力でその回復に望みを賭けているのです」
「そういう事でしたか……」
エイミはホッとしたような残念な様な複雑な気持ちになった。
「あら?エイミったら、なんの占いだと思ったのかしら?」
「ね、姉さん!」
マリンはさっきの冷やかしの仕返しとばかりにエイミをつつく。
「どうかしましたか?エイミさん?」
「い、いえ!なんでもありませんわ……」
「ヒュンケルの事ならアバン様に相談してみれば良いじゃないか?」
「アポロまでっ!」
エイミはもう顔が真っ赤だ。
「何のことかわかりませんが、私で良ければ相談にのりますよ?」
「い、いえ!アバン様もお忙しくなさってますでしょうから……」
「そうですか?まぁ無理にとは言いませんが、でもカールに戻るのは明日なので、それまではこちらにおりますから、いつでもお声掛け下さい」
「あ、ありがとうございます!」
「そういえば明日はいつ頃お立ちに?」
マリンがアバンに訊ねる。
「ああ、そうでした。どうやら明日私の見送りとパプニカの復興に向けての決起会を兼ねたパーティーをレオナ姫が開いて下さるというので、その時にメルルさんの占いを催してくれる様ですよ、私はそのパーティーの後に立つつもりです」
「まぁ!そうでしたか!姫様がそんな提案を!?」
「復興決起パーティーとは姫様らしいですね!」
「しかし、我々も参加してもよろしいのでしょうか?」
街の住民の一人が訊ねると……
「もちろんよっ!みんなで盛り上がりましょう♪」
アバン達が振り向くと、レオナがマァム、メルルと一緒に現れた。
「姫様!?」
「おおっ!レオナ姫様だっ!」
「姫様~♪」
レオナ姫は今やパプニカ国民のアイドル的な存在だ。その美しさはもとより、世界を救ったアバンの使徒の一人として、パプニカ中で人気の的だった。
「みんなパプニカの復興に向けてよく頑張ってくれてるし、ここらでもう一度、復興の気概を共有していく為にも明日は盛り上がりましょうね♪」
「それはそうと姫様、マァムとメルルまで連れてどうかされました?」
マリンはレオナが復興の最中の街中に現れた理由を訊ねた。
「明日のパーティーのお知らせと会場の下見を兼ねて私も時間の許す限りで申し訳ないけど、みんなと復興作業をしようと思って……そしたら他の現場で頑張ってくれていた二人も参加させて欲しいって言うから一緒に来たのよ」
「何でも言って下さい!」
「はい、頑張ります!」
マァムとメルルはポップが目を覚ました後、城内でレオナの仕事を暫く手伝っていたが、二日前からパプニカの各地を二人で回りながら復興の手伝いをしていた。
「他の地域の復興はヒュンケルやバダック達に任せても大丈夫そうだったから二人を連れて来たわ!」
「そうでしたか!それは有難いです!」
「ええ、本当に助かります!」
最も復興が遅れていた現場を任されていた三賢者達だけでなく、その地域の住民達も思わぬ助っ人の登場に喜んでいた。
「そういう事なら私も参加させて下さい!」
「アバン様も!?」
「ええ、ヒュンケルもマァムもそしてレオナ姫も私の弟子達が頑張っているのに、師の私がのんびりしているのはノンノンですからね♪」
アバンは茶目っ気を出しながら復興作業の参加を申し出た。
「わかりました!是非とも宜しくお願い致します!」
「はい!かしこまりました!」
「そういえば、もう一人のお弟子さんはどうされましたか?あの緑の服の……確か、ポップさん!」
街の住民の一人がポップの事を訊ねた。
「ああ、ごめんなさい……彼はまだ病み上がりで……」
マァムが答える。
「病み上がり?どこかお悪かったのですか?」
更に住民が訊ねると、マァムもレオナ達も答えに窮したが、アバンが説明をした。
「ええ、数日前の大戦で彼は少々頑張り過ぎちゃいましてね……ダメージの回復に時間が掛かってしまったものですから、ご心配お掛けして申し訳ありませんが少し負担の掛からない作業をお願いしているんですよ、ね、レオナ姫♪」
「えっ!?あ……ええ、そうなのよ!」
レオナはアバンのフリに慌てて合わした。
「そうでしたか……戦えない我等の為にそんなご苦労を……」
「街中で以前、ポップさんが勇者様と共におられた所をお見掛けした時は気さくに振る舞われていて、すこぶる印象の良い明るい方でしたが、そうですか……やはり命を賭けて戦っていらしたのですね……」
住民達の間に申し訳ないと言わんばかりの空気が漂う。
「確かに、我々はその命を賭けて戦いました。しかし、それは皆さんと共に未来を勝ち得て共に歩みたかったからです。そして、その未来には皆さんと笑い合いたいという希望もあるのですよ。ですから皆さん!お顔を上げて下さい!彼も胸を張って皆さんと笑い合いたいと思っている筈ですから!」
アバンの言葉は力強くそして、暖かかった。下を向く人の心に彼はいつでも優しく暖かい言葉を投げ掛けるのだ。
「そうですな……やはり平和が一番!」
「明日のパーティーにポップさんも来ますよね?」
「ええ、勿論!」
アバンもマァムもレオナも皆が笑顔で頷いた。
「そういえばポップ君、昨日から随分と朝早く出掛けてたわね?」
レオナが思い出したかのように言うと、アバンが反応した。
「そうですか?朝寝坊が得意だったのに、成長しましたねぇ……」
「へっくしょんっ!!」
「何だ?風邪か?」
ポップの大きなくしゃみにマトリフが言う。
「ん?いや……誰かウワサでもしてんじゃねぇかな……どっかの可愛い娘ちゃんとか~♪世界を救った大魔道士さま~って♪」
「はぁ~バカかお前は……」
マトリフは呆れて言うと目の前の魔導書をトントンと指で叩く。
「それで、どれくらい進んだんだ?」
「ど、どれくらいってコイツ読み始めてまだ、二日しか経ってねぇよ!」
「俺ならその二日で、三分の二は頭に入れてるぜ……」
「三分の二?その位は頭に入ってるぜ?」
「あん?」
「ほら、ここら辺までだろ?えーっと……魔界のこれはお伽噺みたいなものなのかな……その昔、魔族は三つの種族に別れた……」
「ほう……お前、本当にレベルアップしたんだな……大したもんだ」
「おっ!いいねぇ弟子の成長を寛大に見守る師匠!」
「るせぇぞ!それにその本を読める様になるのは、あくまで基礎の基礎だ!これから先はそう簡単にゃあいかねぇぞ……」
「おうっ!何でも来い!」
「んじゃ、とりあえずアソコに積んだ魔導書はこの三日の内に頭入れとけ……」
マトリフが親指で指し示す方を見ると、部屋の隅の机に何十冊もの魔導書が乱雑に積まれている。
「へ?あ、あれを……三日…で…?全部……?」
呆けているポップにマトリフは不適な笑みを浮かべて言う。
「まぁ、レベルアップしたおめぇなら大したこたぁないだろ?ケケケ…♪」
「マジかよ~!」
「んじゃ、俺はちとヤボ用があるんで……」
「ちょっ!ちょっと!?師匠!?」
「サボんなよ…!」
そういうとマトリフは出掛けていった。
「くっそ~!やりゃあいいんだろっ!!ぜってぇ!やってやっかんなぁ!!」
ポップはやけくそ気味に叫んでいたが、マトリフはその声に口元を弛めて復興中の街中に向かった。
マトリフがパプニカ西部の復興中の街中に足を踏み入れると、マァムが気付いて声を掛けてきた。
「おじさん!どうしたの?身体は平気なの?」
マァムもマトリフが長年に渡り過度な魔法を多用して来た事で身体を壊している事を知っていた為、気遣った。
「ああ、最近調子が良いんだよ♪弟子イビりにも勤しめるってもんだぜ♪」
「もうっ!またそんな事言って!ポップは病み上がりなんだからね!」
「ヒヒヒ♪冗談だよ、そう怒るな、アイツにはとにかく課題を山積みにしてやってるだけだよ」
「だから!どうしてそんなに無理をさせるのよ…」
「なんだ?アイツの心配してんのか?」
「そ、それは…まぁ…」
マァムは思わず口ごもる。
「心配すんな、お前が思ってるよりもアイツはずっと強い、もう少し信じてやれ」
「それは!わかってるけど……」
「でもよ、ジジイの説教じゃねぇが……お前の両親やお前自身とも長い付き合いだから言っておくが……あまりアイツの気持ちを揺さぶる事はしねぇでやってくれ…」
「えっ…!?」
マトリフは真剣にマァムに言葉を投げる。
「ダイがいなくなった今、アイツの…ポップの肩にはこれまでにない重いモノがのし掛かってくる……無論、お前にも他のヤツ等にも言える事だが、世界を平和にした者の責任ってヤツだ」
「世界を平和にした者の責任?」
マァムもマトリフの言葉に真剣に耳を傾ける。
「ああ、15年前のバドラーが魔王として君臨して世界の平和を壊そうとした時もよ、アバンを先頭にお前の両親のロカとレイラ、そんでもって俺や話に聞いただろうが、当時のブロキーナも含め、力を合わせてハドラーを打倒して平和を取り戻した。だが、その後の俺達はそれぞれが自分の道を見付け平和の維持に努めてきた」
マァムはしっかりと頷く。
「今回だってそれは同じだ。街は破壊され、人々の生活は見ての通りまだまだ平和だった頃の様には元に戻り切れてはいない……」
マトリフとマァムは少し離れた場所から復興途中の中、その作業に勤しんでいる住民の姿を見つめる。
「世の中を恐怖とその破壊行為で支配していた大魔王バーンはお前達の活躍で倒れた。そして、その先頭には勇者ダイがいた。あの時の勇者…アバンのように…しかし、その傍らにはポップやお前の様に仲間達がいて、絆を強く結んで戦い抜いて来た、でも俺達の戦いはまだ終わりじゃあない……」
「私達の……?」
「そうだ、そしてそれは、これまでの様な平和を取り戻す為というよりも平和を維持する為の戦いと言える。例えばアバンは、若き人材の育成に先ずはヒュンケル、そして、お前を弟子にした。それからポップと出会い、アイツと共にダイの元に訪れた……」
「そっか……アバン先生が私達を弟子にしたのは……」
「アバンは昔っから頭の出来が他とは違うが、勘の鋭さに関しても同じだった、だから魔王ハドラーを打倒してもその先の未来に不穏なモノを感じて、その更なる脅威に向けての準備をしていた、それがお前達アバンの使徒の育成だったのさ……」
「このアバンのしるしの意味をフローラ様から聞いた時に私達は、ただ先生の弟子になったわけじゃなかった事はわかっていたつもりだったけど……確かにバーンを倒して戦いは終わっても私達が先生の弟子である事は変わらない……むしろ、先生の弟子として戦い抜いて来た事で学んだことや身に付けた事を今度はこの平和の維持の為に役立てていくべきなのね!」
マァムの瞳には力強く光が宿っていた。
「そうだ、だからマァムお前はこれから自分の道を探して歩んで行かなくちゃならない。しかし、まぁそうは言っても直ぐに見付けられないこともあるだろうから、先ずは復興に尽力したり、世話のやける勇者の捜索に加わったりするのがいいのかもな……因みに俺は15年前の魔王ハドラーとの戦い後はパプニカ王宮で国王の相談役としての道を選んだんだがな……」
「でも、辞めちゃったんでしょ?」
「人間の汚さをみたからな……選んだ道が悪かったのかも知れねぇが……」
「でも、おじさんは私達に力を貸してくれたわ……ポップには特にね」
「アイツを初めてみた時に……お前の親父と最初に出会った頃をつい思い出してな……」
「父さん?」
マァムは以前、アバンからも父ロカの話をされたことを思い出していた。
「俺と初めて出会った頃によ、お前の親父のロカはアバンやレイラの足を引っ張ってるんじゃねぇか?って落ち込んでたんだよ」
「落ち込んでた?」
「ああ、アバンはあの通り呪文も剣技もなんでもござれな野郎だし、レイラも回復呪文でパーティーの役に立てる、だがロカは呪文も使えず役に立てるのは力だけだった、しかしロカよりも力が強い魔物なんてザラにいたからな……そんなことでやがて自分がパーティーのお荷物になるんじゃねぇかって、不安を感じていたのさ……でもよ、そういうヤツってなんとなく放っとけなくてな……」
マトリフは昔を懐かしむように語る。
「でも、ポップが父さんと似ていたの?正直、始めの頃のポップの印象ってお調子者みたいで、父さんみたいにあまり悩んでいるタイプにみえなかったけど?」
マァムは首をかしげる。
「そいつはおめぇがロクにアイツの事に興味なかったからだろ?」
「そ、そんな事ないわよ!」
マァムが声を上げると……
「じゃあ好きだったってのか?」
「え……」
途端にマァムの顔が赤くなる。
「ヒヒヒっ……おめぇはそういうところがかわいいよなぁ♪」
「も、もう!からかわないでよ!」
「でも、よく考えてみろ?確かにお調子者気取っていたが、あの頃のアイツはまだまだ戦う事にビクついていた……無論、ムリもねぇ話だ……フツーの武器屋の息子が家出同然でアバンにくっついて来て押し掛け弟子みたいになっちまったんだからな……でもな、その話だってロカによく似てるのさ……」
「どういうこと?」
「アバンのヤツはカールを旅立つ時にロカの事は誘ってなかったんだよ。旅立つ前日に魔王ハドラーがカールを急襲して、ロカもその時に応戦したが、大怪我を負ったらしくてな……それで、アバンは一人旅立とうとした、ところが、そこに身体中に包帯を巻いたロカが無理を押してくっついて来たみたいだぜ……」
「それなら、母さんに聞いたことがあるわ……そっか……でも考えてみたら確かにポップと父さん……似てるわね……」
マァムはそう言いながら、どこか幸せそうな表情を浮かべていた。
「どっちも最初から勇者の相棒だしな……アバンからその話を最近聞いた時、思わず笑っちまったよ、歴史は繰り返すってな♪」
「フフフ、そうね」
「話を戻すが、アバンは若き人材の育成の道を進み、俺はまぁ結果的にポップの師としてアバンと同じ様なモンになっちまったが……ロカやレイラはどんな道を選んだのかわかるか?」
「………?」
突然の問いにマァムは押し黙って考えていると……
「ヒントはお前さ……」
「私……?」
「家庭だよ……つまり家族を持つ事さ……」
「家族を……?」
「俺やアバンが選ばなかった道……それはロカとレイラが選んだ、愛し合って家族を築くという道だ。そして、それも立派な平和を維持する為の生き方だ……」
「命を育む……そういうこと?」
「その通りだ……アバンや俺とはまた違う未来を築いていく道であり、ある意味最も難しく、しかし意義のある道だ」
「確かに父さんや母さんがどういう想いで私を育ててくれたのかを考えると感謝しかないわ……だから、私もその想いに応えたくてみんなの力になりたい一心で生きてきた気がする……」
「それが、アバンが言うところの慈愛の心……お前の心の力なんだろう」
マァムはアバンのしるしを見つめて微笑む。
「俺達もそして、お前ら一人一人もそうして、これからまだまだ平和の維持に努めていく責任があるのさ…だから、お前はお前の道をしっかり歩めマァム……」
マトリフは自分の娘や孫に言い聞かせる様に優しく言う。そして、マァムもマトリフのそんな心遣いが嬉しかった。
「おじさん……ありがとう……」
「ヒヒヒ……礼はとりあえずこのケツでいいや……」
言いながらマトリフはマァムの尻を撫でようとすると……
ドガッ………!!!
「マ、マァム……お……お前………」
「もう触らせないわよ!ヘンタイ!」
どうやら、寸前でマァムの膝がマトリフのアゴに直撃したようだ。
「く~っ!武闘家になったら素早さが上がりやがって~イチチ……」
「全く油断も隙もないんだからっ!!……でも、まぁ何かわかった気がする……」
「膝蹴りのやり方か?」
「違うわよっ!これからの私の行く道!」
「へっ……そうかい、なら良かったよ……あ!そうだマァム!」
「なによ?」
「そろそろレイラにも顔を見せてやれ……親子二人で長い間暮らして来たんだからよ、今の平和の維持には親孝行も大事だぜ」
「そうね、わかったわ!」
「それとよ……」
「なによ?まだ何かあるの?」
マトリフは照れ臭そうに言う。
「ポップが世話になったな……アイツの師として、礼を言う……ありがとうな……マァム」
マァムは一瞬キョトンとしたが、満面の笑みを浮かべて頷いた。
マトリフはその顔をみてマァムの真意に確信を持った。しかし、彼の口からその事が語られる事がないようマトリフは密かに祈る。何故ならマァムが自分の力で自分のその真意に気付き、その道を真っ直ぐ進んで欲しいと思うからだった。
そうしてマトリフはただ、ただ……マァムのその幸せを祈っていた。
いい話です!書いた自分が言うのもなんですが……(^^;
パプニカの復興や今後の彼等の進むべき道を書く必要もあったので、それぞれの道というテーマを前々回から掲げてみました。復興や平和の維持は大戦下とはまた、違う意味での大変さがあるのも事実ですが、そんな中で人はどう生きていけば良いのか?そういう事を今回はアバンとマトリフの言葉で表現してみました。
また、獄炎の魔王でのロカとマトリフのエピソードも少しだけ、マァムとマトリフの会話の中で出させて頂きましたが、勇者の相棒としてポップとロカの立ち位置というのも少しですが、書けて良かったと思います。