新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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帰還 Ⅱ

 

 

 ─想い 手紙─

 

 先に故郷ネイル村への出立を迎えたのはマァムだった。仲間達が見送りに揃う中で、やはりポップだけはその姿を見せなかった。わかってはいたことであったが、マァムはその事が少し心残りでもあった。

 しかし、ほんの小一時間前にレオナとメルルと深い友情を確かめ合ったマァムは清々しい気持ちも確かに感じていた。

「マァムさん、ポップさんなら大丈夫ですよ」

「メルルさん……」

「信じてポップ君を!マァム!!」

 メルルが優しく、レオナが力強くマァムの不安な心を和らげてくれる。マァムは涙を浮かべて二人と抱き合った。

「マァムさぁぁぁ~ん!!」

「チウ!」

「うぅ~道中気を付けて下さいね、ボクも一緒に行ければ……うぅ……」

 チウは涙を拭って悔やんでいる。

「しょ~がね~だろ?隊長さん、里帰りくらいゆっくりさせてやれよ~」

「ヒムちゃんにボクの気持ちがわかるものかっ!!」

「わかってますけど~」

「おい、チウ!いい加減にしないかっ!!男なら黙って見送ってやれ!!」

「うぅ……!?は、はい……」

 クロコダインに一喝されてチウは小さくなる……

「すまないなマァム…だが、コイツも寂しいんだろう……」

「ええ、ごめんねチウ……でも、あなたも修行頑張ってね!あなたの成長を楽しみにしてるわ!」

「マァムさん……マァムさぁぁん!!」

 思わずマァムに抱きつくチウだったが……

「それにしてもあの変態魔法使いは何してんだ!!!マァムさんの晴れの里帰りの出立に遅刻とは!!」

「……!?」

 その言葉にマァムは勿論、レオナやメルル、更にはアバンまでもが驚くが、そこにある人物がフォローの言葉を告げた。

「チウ、すまないなポップには俺から伝えておく……それで勘弁してやってくれ……」

「え……ま、まぁそう言うなら……」

「ヒュンケル……」

 そう、あのダンス会場の一件からヒュンケルもまたポップとマァムの間に何かしら事が起きたことをなんとなく気付いていた。しかし、今のマァムの表情をみてヒュンケルは決して心配はしていなかった。

「ゆっくりと骨を休めて来たらいい……マァムまた会おう……」

 ヒュンケルはマァムと握手を交わした。

「ええ……ありがとうヒュンケル…」

 マァムはヒュンケルに心からの謝辞を示すと同時に、今後の彼の先行きにある成功を深く祈らずにはいられなかった。そんな時ふと、彼の少し後方に他の三賢者と共に微笑を湛えるエイミの顔がみえる。二人は目が合うと互いに改めて微笑を交わして頷いた。

「では、マァムこれを……」

 マァムとヒュンケルの二人の握手を見つめていたアバンが白い封書をマァムに手渡した。

「先生、これは……?」

「ポップからの手紙です……」

「……!?」

 マァムは手渡された手紙をゆっくり手にしながらアバンの顔を見上げた。アバンは優しく柔らかい微笑をマァムに向けて頷いた。その瞬間……マァムの瞳から滂沱の涙が溢れた。マァムは涙で濡れない様に、そしてこの手紙の暖かさをしっかりとその胸で感じる様に両の掌と胸の間にその手紙を納め深く目を閉じた。

「ポップ……」

 マァムは熱い想いを込めてその名を口にする……。

 仲間達がその光景をまるで何かの儀式を見つめるかの様に静かに静かに見守っていた。そしてその瞬間、この場にいる全ての者がマァムのポップに対する気持ちを深く理解していた。先程まで騒いでいたチウでさえもようやくマァムの気持ちに気付いた様だった。

「先生……本当にありがとう……」

「いえ、私こそあなたにたくさん助けられました……」

「え……?」

「あなたの慈愛の心に救われました。ポップの事を一生懸命、看護してくれたその姿や心に何度も私も励まされましたから……無論、それだけではありません……先の大戦に於いても本当に懸命に戦い、仲間を世界を救ってくれました。だからこそ私はあなたを誇りに思いますよマァム……あなたを慈愛の使徒とした私の目に狂いはなかった……それをあなたは見事に証明してくれました。本当に本当にありがとうございます」

 アバンの心の言葉だった。そして、その一つ一つがマァムの心に染み込まれ、刻み込まれ、再びマァムの瞳から熱いものが零れる。

 誇り……マァムはその言葉をその熱い心に浮かべた。

 慈愛……マァムはその言葉をその優しい心に浮かべた。

 目を閉じるとこの場にいる皆の心が優しく優しくマァムの内側に注がれる。そして、あの光景がマァムの頭に……心に浮かんだ。

 ダイがいる……そして……その隣には……大好きな……緑衣の彼がいる……二人はゆっくりと振り返り緑衣の彼がマァムにその手を差し伸べる。

 一緒に旅をする決意で二人の背を追いかけた……あの時が今はとても懐かしく……涙がまた、いやまだ、溢れて止まらない……

「うっ……うぅ……」

 マァムは思わず嗚咽を漏らして泣いた。

「マァム……」

「マァムさん……」

 寄り添ったのはレオナとメルルだった。

「ありがとう……二人とも……ありがとう……みんな……ありがとう……」

「ゆっくり、休んでねマァム……」

「また会いましょうマァムさん……」

「うん……」

 マァムは涙を拭った。みんなの顔が見える……ヒュンケルもエイミも、アポロもマリンも……チウもクロコダインやヒムも……ラーハルトも……バダック、マトリフも……そして……師アバン……そして、ここにはいない……ダイとポップもマァムにはとても暖かくそこにいるように感じられた。この胸に彼等はちゃんといるから……

「行ってきます!!」

 マァムは彼女らしく力強く、清々しい表情で声を上げるとマトリフのルーラでネイル村への帰路に就いた。

 

 清らかな蒼い空に師マトリフのルーラの光が走る。ポップは城の宛がわれた部屋の窓からそれを見送った。

「マァム……また……な……」

 ポップの瞳には熱いものが感じられた。が、決して涙は流さなかった。目を細め、マァムと二人きりでみた星空を心に浮かべながら……一時の別れをその心で受け止めた。

 




 今回と次話は、ポップとマァムのとりあえずの決着とした話しになります。まわりのフォローもありながら、二人は今後の事をそれぞれの時間の中で考えて自分達の進むべき道を定めていくという展開になっていくと思います。実家はそう言った意味で大事な空間ですからね、ちょっとクールダウンして気持ちを落ち着けて再出発、といった感じでポップとマァムにもそんな、良い時間を過ごさせて上げたいと思います。
 
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