─アバンの親友─
「ほぉ~これがポップのお部屋ですか~なかなかキレイに片付いてるじゃないですかぁ~」
そう言いながらアバンはポップの実家の彼の自室にいた。アバンはここランカークス村のポップの実家にて、つい先程ポップの両親に対面し、ジャンクとスティーヌに断りもなくポップを一年以上も連れ歩いたこれまでの不義理に際して心からの陳謝を表した。しかし、そんなアバンの姿勢にポップの両親であるジャンクもスティーヌも自身の息子を強く育ててくれた事に深い感謝の意を伝えたのだった。
「い、いやぁ~多分母さんが片付けてくれたんじゃないッスかね~俺、片付けとか苦手だから……」
「おやおや、それはノンノンですね~そんなことでは将来のお嫁さんが困りますよぉ~ポップ!」
「は、はぁ~」
ポップはマァムとメルルが呆れている顔をなんとなく思い浮かべて冷や汗を掻く。
「それにしても、マトリフはまた随分とあなたにお土産を持たせましたね♪」
「お土産って……これ全部パプニカ城の図書室にあった魔導書ですよ~師匠が見繕って持たせてくれたけど、流石に量が半端ない……」
ポップは足元に置いた何十冊もの魔導書を入れた大きな袋を見ながら辟易していた。
「しかし、あなたにはこれから重要なお仕事がありますから、先ずはその為の知識を充分に身に付けて頂かないといけません……」
「う~……アバン先生やマトリフ師匠がいるんだからいいんじゃないですかぁ~?俺なんかがそんなに頑張らなくても~」
「おやおや、また悪いクセですよ~あなたはスグにそうして自分の限界を作ってしまう……今やあなたは私やマトリフをも凌ぐ力があるのですから……」
「せ、先生や師匠を……!?そんなバカな……」
「いいえ、あなたがダイと始めから共に潜り抜けて来たこの数ヶ月はあなた自身が気付かないところでも随分とあなたを大きく成長させていたのですよ!あの大魔王バーンとの最後の決戦でもそれをいかんなく発揮していたじゃありませんか!」
「バーンとの最後の決戦で……ま、まぁ……でもあの時は本当に夢中で……」
「日頃の積み重ねがそういう夢中な時に発揮されるモノなのですよ♪だから、ホラ日頃の鍛練ですよ♪」
そうして、アバンはポップの足元の大きな袋から魔導書を一冊取り出しながらポップに手渡す。
「は、はい……わかりました……」
「よろしい!」
アバンは満足そうにニッコリと笑って頷くとポップも苦笑を浮かべながら応えた。
「ま、しかし今日くらいはゆっくりしましょう♪久しぶりの里帰り、親子水入らずな時間を過ごすことも大切です!私ももう一度ご両親にお話をさせて頂いたら、スグにお暇しますので……」
「えっ!?先生帰っちゃうんですかっ……!?せめて今日くらいは泊まっていって下さいよっ!おっきい家では無いですけど、先生一人くらい泊まれる部屋ならありますから!」
「いえいえ!とんでもありませんよっ!いきなり来て泊まるだなんてご両親だって困ってしまいますから!!」
「いんや……コイツの言う通り、泊まっていってくれよ、アバン殿……」
「……!?」
「……!?」
二人が振り返るとポップの部屋の開かれた扉の前にはジャンクがいた。
「親父……」
「コイツの話しももっと訊きたいしアンタの事や、それに……ちと気になっている事もあるしよ……頼むよアバン殿……」
「いや、しかし……」
「あ、それともアレか?国に美人さんでも待たせてるのか?それなら無理強いは出来ねぇかな……?」
「へ……?」
「あ~なんだぁアバン先生♪フローラ様に早く会いたいんですね~」
「な、何を言うんですかっ!?」
「はははは!そっかカールの王女様を待たせてるとは、なかなかスミに置けねぇ!さすが勇者だな!!」
「わ、わかりました!?い、一泊だけお世話になります!!」
アバンはポップとジャンクの思わぬ攻撃にタジタジで、思わず彼等の持ち掛けた話しに頷くしかなかった。
(「やっぱり親子ですね~ハハハ……」)
その後、アバンはスティーヌが用意していたランチをジャンク達と味わいながら、ポップとこの村を旅立ってからの話やダイと出会ったデルムリン島での事、そしてポップ達と再び再会したバーンパレスでの戦い等、ジャンクとスティーヌに丁寧に伝えていった。二人はその話しに真剣に耳を傾けながらアバンだけでなく、自身の息子であるポップを始めとするアバンの使徒と呼ばれる者達の使命の尊さに深い感銘を覚えていた。
「しかし、本当にコイツがそんなすげぇ事をやらかしたなんて……今だに夢でも見ているようだ……」
「親父……」
「でも、とても誇らしいわ……」
「い、いや……俺なんてダイや他のヤツ等に比べたらよ……それに、アバンの使徒でなくてもすげぇヤツは沢山いたぜ……」
「なんだ?謙遜まで覚えたのか?いっちょまえに!」
「べっ別に!?そんなんじゃ!けどよ、ホラやっぱり時々考えちゃったりしたんだよな……俺以外のヤツ等は例えばダイなんかは、竜の騎士とか言われてるヤツだったり……マァムだってこのアバン先生と昔一緒に戦った仲間だった人達の子供だし……俺だけ普通の武器屋の息子だしさ……最初の頃は逃げ出しちゃったりしたんだぜ……」
ポップはそんな話をしながら、自分の事を振り返った。
「でもね、ポップ……母さんは思うのよ……」
「えっ……?」
「誰だって始めから凄い人なんていないわ……そりゃあダイ君やマァムさん、それとヒュンケルさんに、お姫様のレオナさんはあなたとはそれまで違う人生だったかも知れない……元々強かったり、過酷な時を過ごしてきたり、私達なんかでは確かに想像も出来ない生き方があったのかも知れないけど、でも皆一生懸命生きてきたからこうして平和を勝ち取れたのよ……そんな人達の中でしかも最後まであなたはダイ君と頑張って戦ったのでしょう?という事はあなたもそれだけ凄いって事なのよ?ポップ……」
「母さん……」
「その通りですよポップ……私があなたを勇気の使徒として選んだのは、どうしてだかわかりますか?」
「え?あ、ああ……そう言えば勇気の使徒って、てっきり勇者だからダイの事だと思ってたけど……師匠もそんな事言ってたし……」
「私は元々あなたには、人より優れた知性を感じていたのです……」
「お、俺に!?知性……!?」
今でこそ、アバンやマトリフの薫陶を受け大魔道士としてその知性を発揮し、あの大戦を勝ち越えて来れたポップではあったが、アバンと出会うまでは、まるでそんな事考えもしなかった。
「ええ、あなたには他に類をみない程、魔法の才覚があることを私は直ぐに見抜いていましたよ。しかし、あなたはそんな自分の力に気付くことなく過ごして来ました。そこで私はあなたの中に眠る力を引き出すにはあなた自身が、もっとあなたを信じる事が大事だと思い至ったのです」
「俺が俺自身を信じる……?」
「そうです。人は自信を持てば本人が驚く程の力を引き出せる事があります。しかし、それにはやはり自分を信じるきっかけが必要なのです」
「ほう?きっかけ……?」
今度はジャンクがアバンに訊く。
「はい、それが彼の場合、勇気を奮い起こす事だったのです。ポップ思い出してみて下さい……あなたが私と別れダイと共に旅に出た後、どんな場面であなたが強くなって来れたか……一つ一つ……」
「ダイと旅立ってからの俺の強さ……」
ポップはダイと共にデルムリン島を出てからの事を一つ一つ思い出していた。マァムと出逢い、彼女には一度は失望されたがその時に勇気を振り絞ってあのロモス城でのクロコダインとの戦いに挑んだ……
また、ある時は不死騎団の軍団長だったヒュンケルとの戦いでダイと共にライデインの特訓に挑んだ事もあった……
ハドラーと初めてバルジ島で戦ったあの時も……
バランとのテランでのあの辛い戦いも……
そして、バーンとの最終決戦でも……
「あなたは仲間の為に、世界の平和の為に、自身の中の恐れと常に戦い成長して来た、それは勇気なくしては絶対に出来ない事……あなたが始めから何もかもに恵まれていては絶対に得られなかったその成長の軌跡は勇気という源がなければ決して果たせない事だったのですよ……」
「先生……」
「アバン殿……」
「ありがとうございます……アバン様……」
「いえ、それに……前にも話した通りポップ、私はあなたに救われた……」
「アバン殿が?どういう事で?」
ジャンクが再び訊ねる。
「私は彼と出会うずっと昔に大切な親友を無くしました。しかし、その親友にどこか似ている彼に救われたのです……」
「ポップがアンタの親友に?」
「ええ、ロカという先程話しに出た私の弟子の一人である、マァムの父親です」
「アバン様と昔、仲間として戦っていたという……?」
「はい、彼は真っ直ぐで、でもとても不器用で……そして、いつも明るく頼りになる男でした……しかし、彼はある理由から、もう……この地上にはいません……」
「そうかい……アンタにもそんなツラい過去が……ん?この地上?この世ではなくて……か?」
「……??」
アバンのその物言いにポップ達はお互いに首を傾げている。
「はい……話せば長くなりますが……ある呪いによって彼はこの地上にいられなくなったのです……そう、彼はおそらく魔界と呼ばれる地にいます……」
そうして、アバンはここでかつてロカの身に起きた出来事を語り出した。そして、それはポップやジャンク、スティーヌ達に更なる驚きをもたらす始まりとなった。
この物語は完全にポップ主役なので、何度もポップを持ち上げてますが、彼の強さの源である勇気を師であるアバンに語って貰う事で、説得力を増せればと思い改めてアバンからジャンク達に丁寧な説明をさせました。ポップ自身の今後の戦いに挑む為の覚悟も少しずつ定めていって貰うという事も考えながら、アバンは語っています。
そして、終盤にロカの話しに持っていくという展開。我ながら悪くない展開だとこっそり思っています(笑)