─ポップの使命─
「アバン様……その魔界というのは……やはり、かなり危険なところなのでしょうか?」
アバンの親友であるロカの身に起きたある悲劇を、今そのアバン本人の口から聞いたスティーヌは、彼の親友ロカを救うにはポップの力が必要であるという話もされた。その為スティーヌは息子の身を案じるあまり、その不安な気持ちを抑えきれずにアバンに訊ねた。
「ええ……私も魔界には足を踏み入れた事はないですし、実際に行かなくてはならないか、そうでないかもわかりません……なので、正直わからない事だらけではあります。だからこそ安全が保証されているところではないと思います」
地上世界の事ならともかく魔界という異世界の話となると、いくら博識なアバンでも、どうしても予測不能な事が多かった。しかしジャンクはそんなアバンの様子をみてスティーヌに告げた。
「スティーヌ、確かに心配なのは俺も同じだ……だが……」
「え、ええ……わかってます……ポップの……いえ、私達にとっても恩人であるアバン様やマトリフさん、それにポップの大切なお友達のマァムさんの為にもポップがお役に立てるなら……でも……」
スティーヌは魔界という恐ろしい場所へポップを行かせる事なるかも知れないと思うと、中々その覚悟を定める事が出来なかった。
「母さん……俺も正直怖いぜ……」
「ポップ……」
「でもよ……こんな俺があの大魔王バーンと最後まで戦えた……しかもこうして生きて帰る事が出来た……でも、それはここにいるアバン先生やマトリフ師匠が俺をそこまで強くしてくれたからだ……それに……マァムは……その俺にとって……その…大切な……す、素晴らしい仲間なんだよ……だからさ……」
スティーヌはそう語るポップの手を優しく握る。そして、何故か頬を染めているポップのその異変にも心なしか気付きながら優しく微笑する。
「ポップ……」
「スティーヌ……確かに俺も全く不安がないワケじゃねぇ……ただ、ここは信じてやろうじゃねぇか俺達の息子を……」
「あなた……」
「親父……」
スティーヌとポップはジャンクの言葉に胸を熱くする。
「それに、お前も言っていただろ?最後まで戦ったコイツを誇りに思うって」
スティーヌは俯いて考え込んでいたが、ゆっくりと顔を上げるとポップに向かって言った。
「わかったわ……でも、もしその魔界に行くことになっても、必ず無事に帰ってきてね……私達だけじゃなく、皆があなたを大切に思っているのだから……」
「ああ、約束するよ」
アバンはその光景に安堵する。そして、同時に家族という存在とその温もりに心からの謝辞を覚えた。
「ありがとうございます。私の掛け替えのない友の為に……」
「アバン殿……」
「ポップの事、改めて宜しくお願い致します」
「はい……ポップ、私の方こそ改めて宜しくお願いします」
「えっ!?あ、は、はい!!な、なんかアバン先生に改めてそう言われると緊張するなぁ……」
「ハハハハハ!!」
「ウフフフ!」
「アハハハハ!!」
「お、おいおい!これから魔界に行くかも知れないってのに笑ってる場合かよっ!?」
ポップが思わず苦笑しながら声を上げる。
「それもそうですね、しかしそれなら準備は時間を掛けてでも、充分にしておきたいと思います」
「準備?」
「あなたがマトリフから持たされた魔導書には魔界についての情報が沢山収められていますから、先ずはそれを頭に……」
アバンは人差し指で自分のこめかみの辺りを叩いて、頭に入れるような仕草をする。
「は、はあ……」
「更に魔法力を更に高める事も必要でしょう、先程も言いましたが、魔界にはどんな事が待ち受けているかわかりませんからね……それと新しい呪文も……あ!もちろん身体作りも一から……」
「ちょっ!?ちょっと待ってください!そんなにやることあるんですかっ!?」
ポップは次から次へとアバンの口から出る課題に冷や汗を掻く。
「ハハハ!なるほどな、こりゃ相当気を引き締めないとなポップ!」
「お、親父……」
「そうね、頑張ってポップ!」
「か、母さんまで……こりゃダメだ完全に逃げらんねぇな……」
そうして、ポップは魔界に行く覚悟は決めつつも、それまでの準備の方がよっぽど大変な様相に辟易していた。
前回の場面からの続きになります。ロカを救うためポップは魔界に行くことになるのか?その場面までは、まだずっと先になりますが、マァムの父親といった事を鑑みてもやはりポップには魔界でロカにちゃんとご挨拶(笑)をしといた方が良いかなぁ~と思っての展開にしました。
また、魔界に行くための準備段階でポップのレベルアップも図っていこうと考えてます。強力な呪文!!なんでしょう❔書き手も楽しみです(^^)v