新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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ロン・ベルクとの邂逅

 ─光明─

 

 スティーヌのランチに舌鼓を打ちながら様々な話をしたその後、アバンとポップはジャンクが午後からロン・ベルクの仕事場に行くと言うので付いていく事にした。

「お店の方は大丈夫なのですか?」

「ああ、最近は世界が平和になって武器なんか必要ないんだろう、客も殆ど来ないからな……ま、一応スティーヌに店番を任せてるが殆ど開店休業状態さ……」

「それでは生活が困ってしまいますね……」

 すると、ジャンクがニヤリとして言う。

「なぁに、それがそうでもないんだ……ロンのヤツからたんまり貰ってるんでね……指導料ってヤツをさ……」

「指導料?」

 アバンとポップが思わず顔を見合わせて首を傾げていると、ロン・ベルクの小屋が見えてきた。

「しかしアバン殿……付いてきたのはいいが、最近ロンのヤツは出掛けてる事が多いから、いないかも知れねぇぞ?数日前にノヴァ君を連れて来たが、今じゃ殆どほったらかしだしよ」

 ロン・ベルクと話をしたかったという理由で付いて来たアバンにジャンクは告げる。

「そうでしたか……しかし、そういうことならノヴァさんはいらっしゃいますよね?北の勇者である彼とも少し話したいと思っていましたので……」

「北の勇者?」

「ああ、そりゃ前にノヴァのヤツが自分はそう呼ばれてるって言ってたんだよ」

 ジャンクが初めて聞いたノヴァの呼び名にポップが説明した。

「元勇者と北の勇者か……なるほどな……」

「彼はこれから世界を背負って立つ人材ですから、私はとても期待しています!」

「お~い!北の勇者いるか~?」

 すると、ポップが小屋に向かって呼び掛ける。

 

「……!?今のはもしかして……!」

 ロン・ベルクの仕事場で作業の準備をしていたノヴァはポップの声に気付いて入り口の戸を開いた。

「ああ!ポップ君!!それに!アバン様も……!!?」

 驚くノヴァにジャンクが説明する。

「今朝コイツがアバン殿と帰って来たんだよ……んで、ロンの所に来たいって言うから連れてきたんだが……」

 ジャンクは小屋の中に視線を向けるが、やはりノヴァ以外は誰もいない様だった。

「すいません……昨日も帰ってこなくて……」

「そうか……相変わらずか……一体ロンは何処に行ってるんだろうな…?」

「……!?」

 すると、アバンはある気配に気付くと振り返りながら言った。

「フフ……どうやら今日はタイミングが良かったみたいですよ……」

 その場の全員がアバンが振り向いた方をみると、ロン・ベルクがこちらに向かって歩いて来た。

「ロン!?」

「ジャンク……驚いたな……今日は息子と勇者が一緒か……?」

「いやいや元勇者ですよ?ロン・ベルクさん♪」

「フッ……そうか……」

「大戦直後以来でしたね、今日はあなたと色々話をしたいと思いまして……」

 そう言いながらアバンはロン・ベルクに手を差し出すと彼もそれに応え互いに握手を交わした。

「ああ、それは丁度良かった、俺もアンタに聞きたいことがあったからな……ところでジャンク、そっちの方はどうだ?」

 そう言いながら、ロン・ベルクはジャンクとノヴァの方を見る。

「おう!なかなかスジは良いと思うぞ?なぁノヴァ君」

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!!」

「スジ?親父、ノヴァに何か教えてるのか?」

 すると、ジャンクはロン・ベルクから頼まれてノヴァに武器作りの基本的な指導をしている事を話した。そして、ノヴァも大戦時ロン・ベルクが自身の腕を犠牲にしながら人間達の為にザボエラの超魔ゾンビを切り裂いたその強さと心意気に深い感銘と尊敬の念を抱き、彼の腕が完治するまでの間、自分が代わりに武器作りをするという決意でここに来た事も告げたのだった。 

「そうか……俺達がバーンパレスで戦っている間にそんな事があったのか……」

「ノヴァさん、あなたが北の勇者と呼ばれている意味が私にはよくわかりましたよ」

「え……!?」

 ノヴァはアバンの言葉に反応する。

「勇者の資質の一つとは己の姿で人に勇気を与える者の事を言うのだと思います。そう言った意味で言えばあなたのその命を賭して戦う姿が、ロン・ベルクさんの命懸けの覚悟を決意させたのですから……そうですよねロン・ベルクさん……」

「フッ……確かにそうかも知れないな……生命の剣か……お前のあの時の覚悟を俺は忘れることはないだろう……」

「先生……はい!!」

 ノヴァは涙ぐみながらロン・ベルクに頭を下げる。

「だが、武器作りは別の話だ……ジャンクはとりあえずお前の力を認めた様だが、俺はそんなに甘くはないぞ!」

「は、はい!!ご指導宜しくお願いします!!」

 そう言ってノヴァの涙は一瞬で引っ込み直立不動で応えた。

「あ~そっか!さっき親父が言っていた指導料ってノヴァの武器作りの指導料ってワケか!?」

「まぁな、お前は知らないかも知れないがジャンクの武器作りの腕はこの辺では右に出る者はいない……」

「マジで!?親父そんなにスゴいのか!?」

「ロ、ロン!!余計な事言うんじゃねぇ!!昔の事だ!!」

「俺にとってはつい最近の事さ……」

「確かに魔族の感覚なら人の数十年はつい最近ですね♪」

「と、とにかくノヴァ君!今日も始めるぞ!!ロン!仕事場借りるぞ!」

「は、はい!宜しくお願いします!!」

「ああ、ビシビシ鍛えてやってくれ…ジャンク」

 そう言ってジャンクはノヴァを連れてロン・ベルクの仕事場に向かった。

 

「さて、俺に話があると言ったな……」

「ええ、でもあなたも?」

「丁度ジャンクの息子もいるしな……手間が省けて良い」

「なんだよ?俺にも関係ある話か?」

「何を言う、今はバーンが倒れ世界に平和が戻ったとは言えダイがいない状況だ、もしもの時はお前が中心となって世界の危機に立ち向かわなければならないんだ」

「そうですよポップ、そろそろ覚悟決めて下さいね」

「は、はい……なんか色々忙しくなりそうだな俺……」

 そうしてポップとアバンは先ずロン・ベルクの話しを聞く事になった。ここ最近、彼自身も警戒して調査をしているピラァやその頂の黒の核晶(コア)の事、更に昨夜のブロキーナとの話しなどを伝えていった。

「解呪の洞窟……そんなところがロモスのピラァ近くに……そして、アンタはブロキーナ老師とそこへ……」

「ああ、入口付近を見て回っただけだが、正直魔族の俺でも嫌な気配を感じた……拳聖の話からアバンよ、アンタもあの洞窟の事を知っている様だが……」

 ロン・ベルクはアバンに視線を向ける。

「ええ、勿論です……14年前に私とマトリフ、そしてブロキーナ老師はロカがこの地上にいられなくなった原因となる解呪の実を探して何度もその洞窟に入りましたから……」

「先生と師匠と老師がその洞窟へ!?」

「なるほど、それで何かしら手掛かりが……いや、その顔を見ると……結果は芳しくなかった様だな……」

 アバンのその暗い表情からロン・ベルクはその当時の洞窟での成果を察した。

「はい、何もありませんでした……ロカが手にしたと言われる解呪の実もそれが実ると言われた魔界の木も、その他の手掛かりとなる物も何も……」

「そんな……本当にその洞窟だったんですか!?」

 ポップがアバンに問うと、代わりにロン・ベルクが答える。

「間違いようがないだろう……その解呪の実があるという洞窟を記したミーミルの書という本があってな、それを持って戦士ロカはその洞窟に向かった……だから当然アンタ等もそのミーミルの書を見て解呪の洞窟に向かったのだろう?」

 しかし、ロン・ベルクの言葉にアバンは首を横に振る。

「なに?どういう事だ?」

 ロン・ベルクは怪訝な表情を見せる。

「私達はロカが旅立った後にレイラからの手紙でことの次第を知りました……しかし、それはロカがこの地上から消えてから数日後のこと……そして、私の元に来たレイラからの手紙には、実はもう一通手紙が添えられてあり、こうありました……

『すまない、アバン……マァムと子供達に掛けられた呪いを解く為にミーミルの書に記されていた、ある実を口にして俺の身体にその呪いを移した。しかし、俺はそのおかげでこの地上で生きていられなくなった。どうやら今夜の満月の夜が明ける迄に魔界とかいうところに行かなければ、俺の身体は白い灰になって消えてしまうらしい……そして、ミーミルの書にはその魔界の門を開く力があると記されていた。この本がお前の手元にあればきっとすぐに解決出来る事だったのかも知れないがな……それが本当に悔やまれる……

 アバン、最後にお前にレイラやマァムの事を頼みたい。マトリフやブロキーナ老師にもレイラから伝えて貰うつもりだが……アバン、さよならも言わず消える事を許してくれ……

  我が生涯の友 アバンへ

 

           ロカ 』」

 

「ロカさんから……そんな手紙が……」   

「なるほどな……ミーミルの書が魔界への片道切符だったと言う事か……」 

「なので解呪の洞窟の場所は我々がレイラの元に駆け付けた際に彼女からその場所を訊いて向かったのです……」

「だが、もうそこには……」

「何もなかった……」

 落胆するロン・ベルクとポップ……しかし、アバンはそんな二人に言った。

「しかし、それでも私は……私達はまだ諦めてはいません……」

「えっ……!?」

「アバン……」

「確かに現時点では、ロカを救い出す手掛かりはありません……ですが大魔王バーンが倒れた今、ようやくロカの救出にその力を注げます……そして、私達にはその為の新たな力がある……ポップ……」

「そ、そうか……だから俺に……」

「はい、大魔王バーンとの戦いの中であなたの成長とその力をみて私は確信しました……」

「先生……」

「バーンのあの天地魔闘の構えを破ったり、更にカイザーフェニックスを分散させた姿には本当に感嘆しましたよ……」

「なに!?あのバーンの最強奥義や最強呪文もだとっ!?」

 流石のロン・ベルクもアバンのその言葉には驚きを隠せなかった。いや、むしろバーンの強大さをこの地上の誰よりも知っていたロン・ベルクだからこその驚きでもあった。

「ま、まぁ……人間必死になるとなんとかなるモンで……へへ……そっか、でも先生や師匠、それに老師にとっても大切なロカさんを助ける為なら俺も頑張ります!!」

「ええ、それに大事なマァムの父親ですからね♪ポップ!」

「へ!?あ、ああ……そ、そうですね……」

 そう言ってアバンはウィンクをするとポップは顔を紅くした。

「あ、そうそう……ロン・ベルクさんそれともう一つ……」

「なんだ?まだ何かあるのか?」

「ええ、実はヒュンケルの事で……」

 そう言ってアバンは、現在ヒュンケルが先の大戦で負った深い傷を完治させる為にエルフの力を頼れないかと模索している状況を説明した。

「なるほど……エルフか……」

 ロン・ベルクは暫く思案する様な表情を浮かべると、呟くように言った。

「心当たりがないワケではないが、正直向こうの出方次第でもある……」

「向こうというとエルフの?」

「いや、無論最終的にはそうなるが俺が言いたいのはそうじゃない。我が師ルゲル・ベルクの出方だ……」

「ルゲル・ベルク!?」

 驚きの声を上げたのはポップだった。

「ああ、俺の祖父にあたる男だが、同時にかつての武器職人としての師でもあった存在でな、先日久方振りにヤツの住居に足を運んだのだが、会えず終いだった……まぁ手紙と土産はとりあえず置いて来たが、反応があるかどうか……」

「そうでしたか……因みに差し支えなければ、そのルゲル・ベルクさんはどちらに?」

 アバンがロン・ベルクに訊ねる。

「オーザムにあるコタムカイン雪原と言われているところだ、しかしあそこは……」

「コタムカイン雪原!?もしかしてエルフの皆さんの住まいもそこにあるのでは!?」

 アバンはメルルの占いで、エルフの住処がコタムカイン雪原にあるとわかった事を説明した。

「そうか、あの占い師の娘が……なるほどな……」

「それで、どうなんだ?本当にあるのか?そのコタムカイン雪原ってトコにエルフの住処は……」

 ポップの問いにロン・ベルクは頷いた。しかし……

「確かにあるにはある……だが、お前達では到底辿り着く事は出来ないだろう」

「えっ!?な、なんでだよっ!?」

「それはですねポップ、エルフはあまり他の種族と交流を持たないようでしてね、かなり警戒心が強い事で有名なのですよ」

 アバンがそう説明すると、ロン・ベルクが更に補足する様に言う。

「加えて言えば厳格さにおいても知られていてな、昔からヤツ等に仇を成せば必ず手痛いしっぺ返しを食らうとも言われているんだ」

「仇を?でも、ヒュンケルの身体を回復させて欲しいってのは別にエルフにとって仇でもなんでもないんじゃねぇか?」

「それがですね……どうも雲行きが怪しくなっていまして……」

 そう言うとアバンは、メルルがエルフの住処を占った時にエルフの側から辛辣な返答があった事を詳しく話した。

「そうか……それは、少し不味いな……」

 意味ありげにそう呟くロン・ベルクにアバンが訊ねる。

「何か心当たりが?」

「いや、俺もエルフとの関わりがあるワケじゃないから正直はっきりとはわからんが、それ程までに強い反応があるとすると、相当警戒を強める何かがあるな……エルフ達の界隈で何事かあったのかも知れん」

「なるほどな、エルフか……そういやぁ魔界で石みたいになってるヴェルザーって天界の精霊が封印したんだよなぁ?」

 ポップが唐突にかつてヴェルザーを封印した天界の精霊の事を訊ねると、ロン・ベルクが何かに気付き思案し始めた。

「ヴェルザー……天界……精霊……そうか確かになくはない話だな」

「…!?」 

「バーンが倒れ、魔界では今やヴェルザーの一人天下……だが、ヤツの封印は未だ完全に解けてはいない……しかし、不死身の命を持つヴェルザーがこの機をみすみす逃す筈もない……そう考えると精霊の封印を解こうとするのも考えられる……」

「そこにエルフが関わっていると?」

 アバンが深刻に訊ねる。

「元々エルフの国は天界に住んでいたフレイルという精霊戦士がエルフの神とされた事でその国を作ったのだ。そして、エルフの国を統治している現在の女王はその子孫にあたるのだが………エルフの女王にはその先祖にあたるフレイルの精霊戦士としての特殊な力も受け継がれていると聞いたことがある。つまり、ヴェルザーがそこに目を付けたとしたら………こうなると、やはり会って話を訊かない事にはどうにもならんな……」

「話ってエルフの女王に?」

 ポップの問いにロン・ベルクは軽く首を振る。

「いや、先ずは我が師ルゲルにだ。ルゲルはエルフの国の武器や防具を昔から拵えている、つまりエルフはルゲルにとっての客という事さ……」

「なるほど、それならばエルフの国で何が起きているかわかりますね!」

「そうなるな」

「なら、今すぐにでもそのルゲルさんって師匠のところに行ってみればいいんじゃねぇか?」

 ポップが最もな事を言うと、ロン・ベルクは頷きながら告げる。

「ああ、そのつもりだ……」

「わかりました。それでは大変申し訳ありませんが、現状ではエルフの件に関してはロン・ベルクさんにお任せするという事で宜しいでしょうか?」

「ああ、構わん……ただ少し時間をくれとヒュンケルには伝えておいてくれ……」

「はい、ロン・ベルクさんありがとうございます」

「礼なら全て上手くいった後でいいさ……こちらとしても、色々と乗り越えなければならないことも多いしな……」

 そうして、アバンはエルフの件をロン・ベルクに託す事にした。

 やがて日も落ちる頃になると、ジャンクはノヴァの武器作りの指導を切り上げて、ポップ達と自宅への帰路に就いた。

 アバンはその時に、ふと日が落ちていく薄暗い空を見上げる。そして、そこに輝く一番星の光に一筋の光明を見るのだった。

 

 




 ようやく、アバンとロン・ベルクの話を書くことが出来ました。ポップの実家に行くといったエピソードを書こうと考えた際にセットにしようと思っていたので、色々と悩みながらこのような形で落ち着いた感じですね。また、ジャンクが言っていた元勇者と北の勇者、アバンとノヴァの会話を書けたのは個人的には楽しかったです。
 さて、いよいよ少しずつエルフの話にも肉付けがされてきました。果たしてロン・ベルクからルゲル、ルゲルからエルフに順調に話が通るのか………それとも……?まぁ、色々あると思います(笑) 
※誠に勝手ながらお正月休みのため来週の更新はお休みさせて頂きます。
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