─魔道武神流─
月が満ちた夜。解呪の洞窟に足を踏み入れたマトリフとブロキーナは、記憶を頼りにその歩を進めて行った。
「14年振りでも、なかなか覚えてるモンだな……」
「ホホ、流石は世界一の大魔道士の記憶力じゃのう」
「年の割にはだろ?ダテに100年近く生きちゃいねぇさ♪」
マトリフは得意気に笑うとブロキーナも頷いた。
「しかし、ポップ君に出逢えて良かったのう……」
「あん?なんだ急に」
「お主が求めていた後継者が見つかったのだからのう……」
「………」
マトリフはブロキーナのその言葉に沈黙で応えた。しかし……
「わかっとるよ……お主がポップ君を危険な目に遭わせたくないという気持ちは……しかし、ワシも彼の力はやはり必要じゃと思うよ……それに、マァムに深く関わりのある事でもあるからのう……」
「ブロキーナ……おめぇ……マァムが弟子入りしに来た時にどう思った……?」
「ん?まぁそりゃあ、本人にも言ったが運命だと思ったよ……ワシがアバン殿と共にハドラーと戦う事になったきっかけが、あの子の誕生でもあるからのう……」
「そうだよな……俺もよ……ポップに関しては最初は情けねぇヤツだとは思ったが、魔法の才覚は元々あった……アバンもそれを見抜いていたからこそ、アイツを弟子にしたんだろうからな……俺がポップを弟子にしたのもアバンのヤツが持ってきた運命かもな?」
マトリフは感慨深く語る。
「メドローア……フッ……今考えてもヤツにアレを授けた時の事はゾクゾクするぜ……」
「そうか……よほど嬉しかったんじゃな……」
「自分でもあんなに素直にヤツを認める言葉が出たことが不思議なくらいさ……普段はおちゃらけてるくせにやる時は驚く事をやりやがる……」
「まるでマトリフ殿じゃな……」
「俺?そうか……?」
「ワシはよく似とると思うよ……お主達師弟は……」
「そうかぁ?……ま、人生まで似て貰っちゃ困るがな……」
言いながら、マトリフが歩を進めると前方に何かを見咎めた。
「ん?なんだぁ……ありゃあ……」
ブロキーナと共にその場に行くと、そこには巨大な黒い扉が聳え立つようにあった。
「前に来た時はこんな扉なかったと思うがのう……む?」
「ん?なんだ?この魔法力……いや、ただの魔法力じゃねぇ……」
「うむ……なんとも禍々しい力を感じるのう……もしや、これがロン・ベルク殿が言っていた……」
ギロッ!!
「………い"っ!!!?」
「………っ!!!?」
その瞬間、扉に巨大な二つの目玉が出現し、マトリフとブロキーナを睨み付けた。
「我の眠りを妨げる愚昧なる者よ!!」
「なっ!?扉がしゃべりやがった!!!」
「ウォォォォォ---!!!」
突如扉が呻き声を上げ始めると、その扉から感じられた禍々しい力が急激に増大し扉全体を覆い尽くした。
「こ、この力は……!!!?」
「魔法力には違いねぇが……!!くっ……!!今まで味わった事もねぇ胸糞悪ぃ感じがするぜ!!!」
「ホウ……この暗黒魔力を感じても立っていられるとは……貴様らタダ者ではないな……」
扉の左右の目玉がそれぞれマトリフとブロキーナを捉える。
「右側のヤツはかなりの魔法力……左側のヤツはかなり武術に長けておるな……」
「あったりめぇよ……世界一の大魔道士と武術の神がここにいんだよっ!!!」
「フッ!?フハハハハ!!!」
扉は洞窟内に響き渡る大きな声で笑い出す。
「なるほど!!これは素晴らしい客人だ!!ならば丁重にお相手しなければな!!!我の名はデスペアドア!!!黒眼巨竜ヒュルト様よりこの地の門番を仰せつかった者!!地上世界の強者の首!ヒュルト様へ献上させて貰うぞ!!!」
「黒眼巨竜ヒュルト!?」
「なんと……!?」
デスペアドアと名乗る巨大な扉のモンスターは暗黒魔力を更に放つとマトリフとブロキーナはそれに応じる形で戦闘態勢に入る。
「扉のバケモンめ!!くらえ!!ベギラマ!!!」
ドオォォォーーーン!!!
マトリフは渾身のベギラマを放つ!!しかし……!!
「グハハハハ!!それがどうした!!!」
「なんだとっ!?魔法が効かねぇ!!!」
「ならば!これはどうじゃ!!!」
ズドォォォーーーン!!!
すると、今度はブロキーナが素早く飛び出すとデスペアドアに強烈な正拳突きを食らわす。
「なっ……!?なんと!?」
「グハハハハ!!何も感じぬぞ!!!なんだそれは!!!」
しかし、デスペアドアは全くダメージを受けている様子はない。
「めんどくせぇ野郎だなぁ~」
「やはり、あの暗黒魔力とやらがあヤツへのダメージを消しているのじゃろうな……」
「さぁて、次はこちらからいくぞ!!ガアァァァ----!!!」
そう言うとデスペアドアは巨大な口を広げ、強烈な吹雪を吐き出した。
「うぉ!!!?こいつはヤベェ!!フバーハ!!」
すかさずマトリフはフバーハを唱えて強烈な吹雪によるダメージを軽減させた。
「クソッ…!?片手な上にこの猛吹雪じゃメドローアも作れねぇっ
!!おいっブロキーナ…!!ん……!?」
マトリフが呼び掛けながら振り向くと、ブロキーナはその身体全体に白い光を纏って構えを取っていた。
「ブロキーナ!?」
「ホホ……マトリフ殿、久しぶりにアレをやってみんか?どうやらこヤツは並みの攻撃じゃあビクともしないようじゃからな……」
「アレ?……!?ああ、アレか………ヒヒ…わかったよ!!」
そう言うとマトリフはフバーハで吹雪を抑えながら、もう片方ではメラ系呪文を作り出した。
「タイミングが命だからな……」
「うむ……」
ブロキーナは全身を覆う回復系の魔法力を維持しながら、右拳に闘気を集中させる。
「メラゾーマでいくぜ!!」
「承知した!!はぁっ!!!」
ブロキーナは気合いを込めて飛び出すと右腕を開いて右拳を外側に掲げる。
「メラゾーマーーー!!!」
マトリフは、そのブロキーナの右拳に目掛けてメラゾーマを放った。すると、ブロキーナはメラゾーマの炎を右拳に受け更に全身に纏いながらデスペアドアに向けて突進する。
「なっ!!?なんだとぉ!!!」
炎を纏いながら、猛吹雪を突き破って現れたブロキーナにデスペアドアは驚愕した。
「魔道武神流!!
猛虎焔烈拳!!!」
ドガァァァァ----ン!!!
「ぐがあぁぁぁ----!!!」
バゴォォォォーーーーン!!!
デスペアドアは断末魔の叫びと共にブロキーナの炎の拳によって貫かれ粉々に砕け散った。
「久々だったが、腕は衰えてねぇようだな」
「ホホ、マトリフ殿ものう……」
粉々になったデスペアドアの残骸からは既に暗黒魔力は感じられなかった。
「しかし厄介だな……この先にもコイツみてぇなヤツが待ち構えてんのか……?」
「暗黒魔力と言っておったのう……マトリフ殿の呪文やワシの攻撃も通用せんとは……」
「だがよ、おめぇの闘気は通じたろ?でなきゃコイツは今頃まだピンピンしてた筈さ……」
「うむ、ワシの闘気を帯びた拳があの暗黒魔力とやらを無効果させたのは確かじゃ……しかし暗黒闘気ではなく暗黒魔力と言うのは初めて耳にするのう……」
「確かにな……破邪呪文の様な光魔法に対する闇魔法なら訊いたことはあるがな……」
「闇魔法……この地上では先ずお目にかかれないモノじゃな……」
「ああ、おそらく暗黒魔力とやらはその闇魔法の眷属という事になるんだろうが……あの禍々しさはかなりヤベェな……」
「魔界の輩か……やはり、ロン・ベルク殿の感じた危惧は当たっていたようじゃな」
「だな、さてと、んじゃ黒眼巨竜とやらの顔を拝みに行くか?」
「うむ、そんなヤツがいるのでは放っておけんしのう、それに今度こそあの解呪の実も手に入れなくては……」
『ホウ……貴様等の目的はあの実か……』
「………っ!!?」
「………っ!!?」
突如、何者かの声が洞窟内に響いた。
『暗黒魔力で強化したデスペアドアを一撃で粉砕するとはな……面白いぞ地上の強者よ……』
「へっ!高みの見物でもしてやがったか!?もしかしておめぇが黒眼巨竜とやらか?」
マトリフはその声の素性を問う。
『如何にも……中々に面白い見せ物だったな……このヒュルト、お前達と相まみえる時を楽しみにしておるぞ………最もここまで辿り着ければの話だがな……』
「おやおや何か仕掛けでもこしらえたかのう?」
『フフフ……それは自分達で確かめることだな……黒き暗黒魔力の満ちたこの迷宮がお前達の墓場とならんようにせいぜい頑張ることだ……』
黒眼巨竜ヒュルトと名乗る男の声はそれ以降聴こえなくなった。
「よしっ!!おもしれぇ!!その面拝んでやろうじゃねぇかっ!!ブロキーナ!ついでに魔界の情報を色々聞き出してやろうぜ!!」
「うむ、そうじゃな!ロカ殿の事やバーンのピラァについても何かわかるやもし知れん……」
そう言って二人が駆け出したその瞬間。
………っ!!!?
「ん……?」
「おりょ……?」
まさに、今この瞬間まで踏み締めていた足元の床が何の前触れもなく消えてしまった。
「ぎょえぇぇぇーーー!!!?」
「な!なんと……っ!!!?」
マトリフとブロキーナは奈落の底に落ちていく。
「こんなコテコテのトラップも暗黒魔力だってのかよ~!?」
「やれやれ先が思いやられるのう~」
暗黒魔力に満ちた解呪の洞窟。その最深部には黒眼巨竜ヒュルトと名乗る魔界の強者が待ち受けている。
しかし、同時にそこにはマトリフとブロキーナが求める解呪の実と更には数少ない魔界の情報があると確信した二人は奈落の底に落ちながらも、決してその歩みを止める事はなかった。
始まりました。いよいよバトルモード突入です。そして、いきなりの大技登場です!元々、個人的にマトリフとブロキーナは気が合う良いコンビなのではないかな?と、常々思っていまして、それをなんとか自分の書く物語のなかで実現させたいと考えていました。本編の凍れる時の秘法のエピソードで、ブロキーナもアバンやマトリフ達と戦った仲でもありましたし、獄炎の魔王でもブロキーナからのヒントでアバンが大地斬を極めるエピソードが、ありました。かつての英雄達の強さもしっかりと描いていきたいと思います。
そして、いずれはこの魔法と武術コンビはポップやマァムにも繋がるというイメージです ✌️