新章 ダイの大冒険 第一部 ポップ   作:平月

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前進

 ─封印されし者─

 

【パプニカ城】

 

「姫様……またこちらでしたか……」

 パプニカ三賢者の一人アポロが執務室を空けていたレオナをようやく見付けて声を掛けた。

「ああ……アポロ……ごめんなさい……1日に一度はここに来ないと、どうにもね……」

 ポップはアバンと共に故郷のランカークスに帰り、マァムもまた故郷ネイル村に帰ったその日の夜、レオナはダイの剣が保存されている部屋にいた。

「ポップ君やマァム、それにアバン様と立て続けにこのパプニカを立たれましたから……やはり少し寂しいですか……?」

 アポロはレオナの気持ちを汲み取る様に優しく接した。

「うん、そうね……でも彼等には彼等のやるべき事があるし、私もまたポップ君やマァムやアバン先生と一緒に前に進める様に色々とやらなければいけないこともあるから、寂しいなんて言ってられないわ!」

 レオナは力強くそう言って笑う。

「ええ、そうですね!我々三賢者も彼の捜索の為にはもっとレベルアップしなくてはいけませんので!」

 そう言うとアポロはダイの剣にその視線を向ける。

「うん、お願いね!」

「はっ!」

 一礼しアポロはその場から離れていく。そして、彼が去った後、レオナはダイの剣に向き直る。

「ダイ君……必ず、私が必ずあなたを探し出すわ……この地上があなたの居場所なのよ……」

 レオナは胸の前で強くその手を握り締める。小さな拳だがそこには彼女の熱く強い想いが籠っていた。

 そして、レオナは誓っていた。ダイが戻るその時まで、この瞳からはもう涙を溢さないと……彼の為の涙はもう、その時まで流さないと……

 ダイの剣はそんなレオナの誓いを見守る様に彼女の決意を込めた表情を映していた。

 

 

【解呪の洞窟】

 

「ベギラゴン!!!」

「閃華裂光拳!!!」

 マトリフとブロキーナは数々のモンスターを退けながら解呪の洞窟の最深部に近付いていた。

「ふぅ~前に来た時はモンスターなんか出なかったのによ……」

「そうじゃのう……しかもどうやら殆どが地上のモンスターではないようじゃな……」

「ああ、どいつもこいつも見たことねぇヤツ等ばかりだな……そういやぁおめぇはいくらか魔界のモンスターとやりあったんだったな……」

「ウム、ダイ君達アバンの使徒がバーンパレスに向けてミナカトールを発動させる直前にのう、魔王軍が大層な数の未知のモンスターを差し向けて来おったわ」

 ブロキーナはロロイの谷での魔界のモンスター達との戦いを振り返った。

「じゃが、あの時のモンスター達よりもここのモンスターは遥かにレベルが上じゃな……」

「ああ、ベギラゴンやメラゾーマで応戦しないと、ちと厳しいな……パプニカから魔法の聖水や祈りの指輪をいくらか貰って来て正解だったぜ……ヒヒ」

『ほう……どちらも年老いてはいるが、中々やるようだな……』

 すると、突然目の前の暗闇から怪しげな声がする。

「ホホッ確かにワシ等は年寄りじゃがな」

「ただの年寄りとはワケが違うぜ」

 そう言いながら、ブロキーナとマトリフは戦闘態勢に入る。

『フフ……なぁにそういう私も立派な年寄りよ……しかもお主達よりも遥かにな……』

 しかし、怪しげなその声の主は不思議と敵意を見せてこない。

「あん?何モンだおめぇは……」

「姿を見せないのは何故かのう?」

 マトリフもブロキーナも声のする暗闇を見据えているが、その声の主はやはり姿をみせない。

『残念だが、今はお主達に姿を見せたくても見せる事が出来ないワケがあってな……』

「なぁに~?ワケわかんねぇ事言ってんじゃねぇぞ!」

「ふむ、ワケとはなんじゃろうなぁ?」

 訝しむ二人に声の主は更に言う。

『お主達に頼みがあるのだ。道中急いでいるのかも知れないが、どうか私の頼みを訊いてやってくれないだろうか……?』

 声の主は今度は恭しく頼み事をして来た。

「頼み事だぁ?」

「ホホッなんじゃろう?のうマトリフ殿」

「ん?あ、ああ……まぁとりあえず訊くだけ訊いてやるよ……」

 マトリフはやや乗り気ではない様子だが、人のいいブロキーナの様子を見てとりあえず話しを訊く事にした。

『すまないな……実はお主達も気付いているようにこの洞窟には、暗黒魔力が満ちていてな、私は黒眼巨竜ヒュルトとやらの力でこの洞窟内のとある場所に封印されてしまっているのだ』

「封印?」

『うむ、私は元々はこの洞窟をある目的で管理していたのだが、ある時突如この洞窟の最深部から暗黒魔力が吹き出して来たのだ』

「なんだと?」

「最深部……」

『そして、その最深部からは暗黒魔力だけでなく、黒眼巨竜ヒュルトが魔界から多くのモンスターと共に現れ、瞬く間にこの洞窟を支配してしまった』

「なるほどな……そういう事か……」

「という事はヤツとは敵対関係なのかのう?」

『まぁそうなるな、今はな……』

「今は?じゃあ前までは違ったってのか?それとも……」

 マトリフが訝しむ表情で、謎の声の主に訊ねる。

『それについては私の封印が解かれてから詳しく話そう……なので、どうか私をこの封印から解き放って貰えないだろうか?』

 声の主は懇願して来たが、マトリフはブロキーナに小声で話す。

(「どうするよブロキーナ……かなり怪しい気がするけどよぉ……」)

(「う~む、確かにいきなり封印やらと言われてものう……ただ、ヒュルトや魔界の事についてはどうやら詳しいようじゃが…」)

(「ん~まぁなぁ……でも、もし敵だたとしても最悪やっつけちまえば問題ねぇか?」)

『聴こえているぞ!』

「うぉっ……!!?」

「ホホッ!ヒソヒソ話しは通じないようじゃな」

『当然だ。お主達の意識に語り掛けているのだからな、だが案ずるな…お主達をどうこうしようという気はない……それにタダで私の封印を解いて貰おうとは思っていない』

「ん?どういう事だ?」

『封印が無事に解けたあかつきにはお主達にとって必ず役に立つモノを礼として与える事を約束しよう』

「役に立つモノ?なんじゃろうのう」

「フン、モノで釣ろうってのか?」

『どう思って貰っても構わん。だがこの封印だけは、なんとかして貰いたいのだ……』

「やれやれ……わ~ったよ!どうすりゃその封印とやらを破れるんだ?」

「それに、お主が封印されておる場所も教えて貰えるのかのう?」

『無論だ。すまないな、本当に恩に着る……道案内はお主達の意識にこのまま話し掛けるから、ヒュルトのヤツにもバレる事はない……ただ……』

「ん?ただ、なんだよ?」

 声の主はやや神妙な声色に変わる。

『私の封印されている部屋には、二体の強力な魔物が番をしている。なので申し訳ないが、そいつ等を倒さなければ私の封印を解くのは難しい……ところで、お主達は二人だけなのだな?』

「あん?ああ、そうだぜ……俺は大魔道士のマトリフで、こっちは地上で武術の神と呼ばれてる武闘家のブロキーナだ」

『そうか、二人だけなのは少し心配だが、先のお主達の戦い振りなら恐らくは大丈夫だろう』

「なんだぁ?恐らくだぁ!?俺達二人だけじゃあ、心許ないってのか?」

 マトリフは声の主の言葉が気に入らないのか、悪態をつく。

『それ程、強力な番人がいるという事だ……』

「強力ねぇ……でも、まぁやるだけやってやるさ」

「うむ、そうじゃな」

『因みに私の封印の間の前には体力と魔法力を完全回復させる魔法陣があるから安心してくれ』

「おっ!?そいつはありがてぇ!!このまま大した回復もしねぇで、最深部まで行くのも確かにキツいしな……よしっ!そうと決まれば後はそのおめぇさんが封印されている場所に向かうだけだ!!」

「ホホ!なんだかワクワクするのう」

『宜しく頼む。では先ずは、この先を真っ直ぐ進んで最初の角を右に曲がってくれ』

 そうして、マトリフとブロキーナは謎の声の主の指示に従いながら、その声の主が封印されている部屋に向かった。

 




 今回のタイトルである『前進』は序盤のレオナの姿勢と解呪の洞窟を前進するマトリフとブロキーナという意味で付けました。まぁ正直なところ、タイトルも毎回悩ましいところなのです……(-_-;) あんまり、的外れでも駄目だし、一つの事に特化して付けたいと思っても、色々と重要な展開が含まれてしまうとあれもこれもと考えてしまうので、そういう時は結構タイトルで時間掛けてしまいますね…… 
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